セグメントとは何か?ビジネスで使われる市場細分化の基本
マーケティング担当者として、「セグメント」という言葉を耳にしたことがあるけれど、正確にどう活用すればいいか分からない...そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
顧客ニーズが多様化する中、すべての顧客に同じアプローチをするマスマーケティングでは、効率が悪く成果が出にくくなっています。セグメント化によって顧客を分類し、それぞれに最適なアプローチを取ることが、現代のマーケティングでは不可欠です。
この記事では、セグメントの定義から、マーケティング・IT・会計での使い分け、B2B企業における実践方法、成功事例まで、体系的に解説します。
この記事のポイント:
- セグメントとは市場や顧客を特定の基準で細分化したグループのこと
- マーケティング・IT・会計の3分野で意味が異なる
- マーケティングでは4つの分類軸(人口動態・地理・心理・行動)を活用
- B2B企業では企業規模・業種・課題・購買プロセスでセグメント化すると効果的
- セグメント化→ターゲティング→実行の一連の流れが重要
セグメントとは何か
(1) セグメントの定義
セグメント(Segment)とは、市場や顧客を特定の基準で細分化した一つ一つの要素やグループのことを指します。英語で「部分」「区分」を意味する言葉で、ビジネスでは主に以下の3分野で使われます。
マーケティング分野: 市場細分化(セグメンテーション)を行い、顧客を属性・行動で分類したグループを「セグメント」と呼びます。例えば、年齢層別(20代・30代・40代)や地域別(関東・関西・九州)に分けた各グループがセグメントです。
IT分野: ネットワークを複数の小さな単位に分割したもの。セキュリティや負荷分散のために使われます。
会計・財務分野: 事業別・部門別・地域別といった単位で分けた各部門のこと。例えば、「国内事業セグメント」「海外事業セグメント」といった形で収益性を分析します。
この記事では、主にマーケティング分野でのセグメントに焦点を当てて解説します。
(2) セグメントとターゲットの違い
セグメントとターゲットは、マーケティングでよく混同される概念ですが、明確な違いがあります。
セグメント: 市場を分類したグループ全体。例: 「30代男性ビジネスパーソン」「中小企業の経営者」
ターゲット: セグメントの中から、さらに絞り込んだ具体的な対象者。例: 「30代男性ビジネスパーソンの中でも、転職を検討している人」
セグメント化は、市場全体を複数のグループに分ける作業です。その後、各セグメントの魅力度や自社の強みを考慮して、最も重点的にアプローチする対象を選ぶのがターゲティングです。
実務では、**セグメンテーション(Segmentation)→ターゲティング(Targeting)→ポジショニング(Positioning)**の3ステップ(STP分析)で進めるのが一般的です。
セグメントが使われる分野
(1) マーケティング分野(市場細分化)
マーケティング分野では、顧客ニーズの多様化に対応するため、市場を細分化して各グループに最適なアプローチを取ります。
主な効果:
- 低コストで効率よく利益を上げることが可能
- マスマーケティングと比較して、無駄な広告費を削減できる
- 各セグメントに合わせたメッセージで、反応率が向上
例えば、B2B SaaS企業が「中小企業向け」「大企業向け」にセグメント化し、それぞれ異なる料金プラン・機能・サポート体制を提供するケースが一般的です。
(2) IT分野(ネットワーク分割)
IT分野では、ネットワークを複数のセグメントに分割することで、セキュリティと負荷分散を実現します。
主な目的:
- セキュリティ向上(部門ごとにアクセス権を制限)
- ネットワーク負荷の分散(トラフィックを分散)
- 障害の影響範囲を限定(一部セグメントの障害が全体に波及しない)
この記事では詳細は割愛しますが、マーケティング担当者でも、社内システムの構成を理解する際に「セグメント」という言葉が出てくることがあるため、基本的な意味は押さえておくとよいでしょう。
(3) 会計・財務分野(事業別分析)
会計・財務分野では、企業全体の業績を事業別・部門別・地域別といった単位で分析するために「セグメント情報」を作成します。
主な活用方法:
- 各事業の収益性を明確化(どの事業が利益を生んでいるか)
- 経営判断の根拠(撤退・拡大の判断材料)
- 投資家への情報開示(上場企業はセグメント情報の開示が義務付けられている)
例えば、パナソニックのような大企業では、「家電事業」「自動車関連事業」「産業機器事業」といったセグメントごとに損益を公表しています。
マーケティング担当者が事業計画を策定する際にも、「どのセグメントに注力すべきか」という視点で、財務データを参照することがあります。
マーケティングにおけるセグメンテーションの4つの分類軸
マーケティングでセグメント化を行う際、一般的に以下の4つの変数(分類軸)が使われます。
(1) デモグラフィック変数(人口動態:年齢・性別・職業)
デモグラフィック変数は、年齢、性別、職業、所得、家族構成などの客観的な属性で分類する方法です。
主な分類例:
- 年齢層: 20代、30代、40代、50代以上
- 性別: 男性、女性、その他
- 職業: 会社員、経営者、フリーランス、学生
- 所得: 年収300万円未満、300–500万円、500–700万円、700万円以上
- 家族構成: 単身、既婚(子供なし)、既婚(子供あり)
特徴:
- データ収集が容易(アンケート、会員登録情報などで取得可能)
- 測定しやすく、客観的に分類できる
- B2B企業では「企業規模」「業種」「役職」などに置き換えて使う
(2) ジオグラフィック変数(地理:地域・気候)
ジオグラフィック変数は、地域、気候、文化、都市部の進展度などの地理的要因で分類する方法です。
主な分類例:
- 地域: 関東、関西、九州、東北など
- 気候: 温暖、寒冷、多雨
- 都市規模: 大都市、地方都市、郊外、農村部
- 文化圏: 関東圏、関西圏、九州圏
特徴:
- 地域特性に応じた商品・サービスの提供が可能
- 配送コストや物流の最適化にも活用できる
- B2B企業では「国内/海外」「都市部/地方」といった分類が一般的
(3) サイコグラフィック変数(心理:価値観・ライフスタイル)
サイコグラフィック変数は、価値観、ライフスタイル、性格などの心理的要因で分類する方法です。
主な分類例:
- 価値観: コスト重視、品質重視、ブランド重視、環境配慮重視
- ライフスタイル: アクティブ、インドア派、健康志向、時短重視
- 性格: 保守的、革新的、リスク回避型、チャレンジ志向
特徴:
- 購買動機や意思決定プロセスに深く関わる
- 測定が難しく、データ収集に時間とコストがかかる場合がある
- アンケートやインタビュー、行動データ分析などで推測する
注意点: サイコグラフィック変数は、デモグラフィック変数と比較してデータ取得が難しいため、まずはデモグラフィック変数とビヘイアル変数でセグメント化し、その後に補完的に使うのが実務的です。
(4) ビヘイアル変数(行動:購買履歴・使用頻度)
ビヘイアル変数は、購買履歴、使用頻度、ロイヤルティ、購入タイミングなどの行動パターンで分類する方法です。
主な分類例:
- 購買履歴: 新規顧客、リピート顧客、休眠顧客
- 使用頻度: ヘビーユーザー、ライトユーザー、非ユーザー
- ロイヤルティ: 高ロイヤル、中ロイヤル、低ロイヤル
- 購入タイミング: 定期購入、季節購入、イベント購入
特徴:
- 実際の行動に基づくため、信頼性が高い
- CRMやMAツールのデータから比較的容易に取得できる
- B2B企業では「導入済み製品」「契約期間」「年間取引額」などで分類するケースが多い
実務での活用: ビヘイアル変数は、既存顧客の分析やリテンション施策に非常に有効です。例えば、「直近3ヶ月間購入がない休眠顧客」に対して、特別キャンペーンを実施するといった施策が考えられます。
B2B企業におけるセグメント分類の実践方法
B2C企業とB2B企業では、セグメント化の軸が異なります。ここでは、B2B企業特有のセグメント分類方法を解説します。
(1) 企業規模・業種によるセグメント分類
B2B企業では、企業規模(従業員数・売上高)と業種が、最も基本的なセグメント分類軸です。
企業規模別の分類例:
- 小規模企業: 従業員50人未満、売上高10億円未満
- 中堅企業: 従業員50〜500人、売上高10〜100億円
- 大企業: 従業員500人以上、売上高100億円以上
業種別の分類例:
- 製造業、卸売・小売業、金融・保険業、情報通信業、サービス業など
実務での活用: 企業規模によって、予算・導入プロセス・意思決定者が大きく異なります。例えば、小規模企業向けには「低価格・簡単導入」、大企業向けには「カスタマイズ性・セキュリティ強化」といった形で、提供する価値を変えます。
(2) 課題・購買プロセスによるセグメント分類
B2B企業では、顧客が抱える課題や、購買プロセスの段階でセグメント化することも重要です。
課題別の分類例:
- 業務効率化を求めている企業
- コスト削減を求めている企業
- 売上拡大を求めている企業
- コンプライアンス対応を求めている企業
購買プロセス別の分類例:
- 課題認識段階(まだ具体的な解決策を探していない)
- 情報収集段階(複数の選択肢を比較検討中)
- 比較検討段階(2〜3社に絞り込んで詳細を確認中)
- 導入決定段階(最終決裁待ち)
実務での活用: 課題や購買プロセスの段階に応じて、提供するコンテンツやアプローチ方法を変えます。例えば、課題認識段階の企業には「業界動向レポート」、比較検討段階の企業には「導入事例集」を提供するといった施策が考えられます。
(3) セグメント化後のターゲティング(STP分析)
セグメント化を行った後、どのセグメントに注力するかを決めるのがターゲティングです。
ターゲティングの判断基準:
- 市場規模: セグメントの規模が十分大きいか
- 成長性: 今後成長が見込まれるか
- 競合状況: 競合が少なく、自社が優位に立てるか
- 自社の強み: 自社の製品・サービスがそのセグメントのニーズに合っているか
- 収益性: 利益が見込めるか(価格感度、購買力)
実務での活用: すべてのセグメントに同じリソースを割くのではなく、最も成果が見込まれるセグメントに重点的にリソースを投下します。これにより、限られたマーケティング予算で最大の効果を得ることができます。
セグメント活用の成功事例と注意点
(1) 成功事例(パナソニック等)
パナソニックは、営業マン向けに特化したノートPCを開発し、長期間トップシェアを維持しました。
成功のポイント:
- セグメント: 外回りの多い営業マン
- ニーズ: 軽量、長時間バッテリー、防水・防塵、耐衝撃
- 提供価値: 上記ニーズに特化したPC「Let's note」シリーズ
このように、セグメントを明確に定義し、そのニーズに徹底的に応える製品を提供することで、競合との差別化に成功しました。
他の成功事例:
- SaaS企業が「中小企業向け」と「大企業向け」でプランを分け、それぞれに最適な機能と価格を提供
- 製造業が「国内市場」と「海外市場」でマーケティングメッセージを変え、各地域の文化・商習慣に対応
(2) セグメント化の注意点・よくある失敗
セグメント化には注意点もあります。
セグメントを細かく分けすぎる: 各セグメントの規模が小さくなり、費用対効果が悪化する可能性があります。バランスを取り、実行可能な範囲でセグメント化することが重要です。
古い基準でセグメント化: 顧客ニーズは変化します。定期的にセグメントを見直し、最新の市場動向に合わせて再分類することが必要です。
セグメント化だけで満足: セグメント化は第一歩に過ぎません。適切なターゲティング、メッセージのカスタマイズ、実行が伴わなければ成果につながりません。
(3) 費用対効果の考え方
セグメント化には、データ収集・分析・施策実行のコストがかかります。
費用対効果を高めるポイント:
- まずは大まかなセグメント(企業規模・業種)から始める
- 既存の顧客データ(CRM、MAツール)を活用する
- 小規模でテストし、効果が見込まれるセグメントに拡大する
特にB2B企業では、リード数が少ない場合、細かすぎるセグメント化は逆効果です。月間リード数が100件以上になってから、詳細なセグメント化を検討するのが実務的です。
まとめ:セグメント化を行うべき企業・シーン
セグメント化は、顧客ニーズの多様化に対応し、効率的なマーケティングを実現するための基本的な手法です。
セグメント化を行うべき企業:
- 顧客層が多様で、一律のアプローチでは効果が出にくい企業
- 複数の製品・サービスを提供しており、それぞれターゲットが異なる企業
- リード数が月50件以上あり、分析・施策実行のリソースがある企業
セグメント化を行うべきシーン:
- 新規事業・新製品の立ち上げ時
- マーケティング予算を効率化したい時
- 既存顧客のリテンション施策を強化したい時
次のアクション:
- 自社の顧客データを整理し、どのセグメント分類軸が有効か検討する
- まずは企業規模・業種・購買履歴など、取得しやすいデータでセグメント化を試す
- 各セグメントに最適なメッセージやコンテンツを設計する
- 小規模でテストし、効果測定しながら改善を続ける
セグメント化は一度やって終わりではなく、継続的に見直し、改善していくプロセスです。自社に合った分類方法を見つけ、効率的なマーケティングを実現しましょう。
