マネージドサービスが注目される背景
「サーバーの運用管理に時間を取られて、本来のビジネスに集中できない」「セキュリティ対策が追いつかない」――BtoB企業の情報システム部門が抱えるこうした悩みは、年々深刻化しています。
IT人材の不足、サイバー攻撃の増加と巧妙化、クラウド環境の複雑化といった課題に直面する中、企業はIT運用をどう効率化すべきか。その解決策として注目されているのが「マネージドサービス」です。
この記事では、マネージドサービスの基礎知識から、導入のメリット・デメリット、選定ポイントまでを徹底解説します。
この記事のポイント:
- マネージドサービスはIT運用業務を外部委託し、専門知識と24時間365日体制の監視を活用できる
- 2024年度のマネージドセキュリティサービス市場は前年比114.9%と急成長
- コスト削減と予算の安定化、コア業務への集中が主なメリット
- 自社内にIT知識が蓄積されにくい、委託範囲によっては運用が煩雑化するデメリットもある
- 導入前に自社の課題を明確にし、部分委託から始める段階的アプローチが推奨される
1. マネージドサービスが注目される背景
(1) IT人材不足とサイバー攻撃の増加
BtoB企業の情報システム部門は、深刻な人材不足に直面しています。経済産業省の調査によれば、IT人材の需給ギャップは年々拡大しており、特に中堅企業では専門的なスキルを持つエンジニアの確保が困難な状況です。
同時に、サイバー攻撃は増加・巧妙化の一途をたどっています。ランサムウェア、標的型攻撃、ゼロデイ脆弱性を突いた攻撃など、企業が自社だけで対応するには限界があります。
こうした背景から、専門的な知識と24時間365日体制の監視・対応を提供するマネージドサービスへのニーズが高まっています。
(2) マネージドサービス市場の急成長(2024年度114.9%増)
デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査によれば、マネージドセキュリティサービス市場は2024年度に前年比114.9%の成長が見込まれています。この急成長の背景には、サイバー攻撃の増加に加え、EDR(Endpoint Detection and Response)、SASE(Secure Access Service Edge)、SIEM(Security Information and Event Management)など、監視対象の拡大があります。
企業は単なるサーバー運用だけでなく、セキュリティ全般の管理を外部の専門家に委託する動きが加速しています。
※出典: デロイト トーマツ ミック経済研究所「マネージドセキュリティサービス市場の現状と展望 2024年度版」
(3) メガクラウド市場の拡大(2022年度1兆円超え)
同じくデロイト トーマツ ミック経済研究所の調査では、メガクラウドCI(インテグレーション&マネージド)サービス市場は2022年度に前年比27.6%増の1兆211億円を記録しました。2023年度は前年比23.6%増の1兆2,616億円と予測されています。
AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、GCP(Google Cloud Platform)といった3大クラウドプロバイダーのマネージドサービスを活用する企業が増加しており、クラウドネイティブな運用が主流になりつつあります。
※出典: デロイト トーマツ ミック経済研究所「メガクラウドCI(インテグレーション&マネージド)サービス市場の現状と将来展望【2024年版】」
2. マネージドサービスの基礎知識
(1) マネージドサービスの定義とMSPの役割
マネージドサービスとは、サーバー運用、ネットワーク管理、ソフトウェア管理、セキュリティ対策など、企業のIT環境に関わる業務を外部に委託するサービスです。これらのサービスを提供する事業者をMSP(マネージド・サービスプロバイダー)と呼びます。
MSPは、専門的な知識を持つエンジニアチームと、24時間365日体制の監視・インシデント対応体制を持ち、企業のIT運用を包括的にサポートします。
※参照: NTTドコモビジネス「マネージドサービスとは? - クラウドを含むIT運用をサポート」
(2) マネージドサービスとフルマネージドサービスの違い
マネージドサービスとフルマネージドサービスの違いは、委託範囲の広さです:
マネージドサービス:
- サーバー監視、バックアップ、セキュリティパッチ適用など、部分的な業務を委託
- 自社で一部の運用管理を継続する場合に選択
- 段階的に委託範囲を拡大できる柔軟性がある
フルマネージドサービス:
- ITインフラの運用管理・保守に関わる業務を全面的に委託
- 自社ではほとんど運用管理を行わず、すべてMSPに任せる
- 完全なアウトソーシングモデル
企業は自社の状況に応じて、部分委託から始めて段階的に範囲を拡大することも可能です。
※参照: NTTドコモビジネス「マネージドサービスのメリット・デメリットとは?フルマネージドサービスとの違いも解説」
(3) 主要なサービス種類(AWS・Azure・GCP等)
マネージドサービスは大きく分けて以下の2種類があります:
クラウドプロバイダー提供のマネージドサービス:
- AWS: Amazon RDS(データベース)、AWS Lambda(サーバーレス)、Amazon ECS(コンテナ管理)など
- Microsoft Azure: Azure SQL Database、Azure Kubernetes Service、Azure Monitorなど
- GCP: Cloud SQL、Google Kubernetes Engine、Cloud Monitoringなど
これらは、各クラウドプロバイダーが自社のインフラ上で提供するマネージドサービスです。運用負担が大幅に軽減され、スケーラビリティも高いのが特徴です。
MSPによるマネージドサービス:
- NTTドコモビジネス、日立システムズES、楽天モバイルなど、通信事業者やSIer(システムインテグレーター)が提供
- オンプレミス環境、マルチクラウド環境の運用代行が可能
- カスタマイズ性が高く、企業の既存環境に柔軟に対応
※参照: STNet「マネージドサービスとは?メリット・デメリットやフルマネージドサービスとの違いについて解説」
3. マネージドサービスのメリット
(1) 専門知識の活用(24時間365日監視・インシデント対応)
マネージドサービスの最大のメリットは、専門的な知識を持つエンジニアチームを活用できることです。
24時間365日体制の監視:
- 夜間・休日のトラブル対応から解放される
- システム障害の早期発見と迅速な復旧
- セキュリティインシデントへの即座の対応
最新の技術・ノウハウの活用:
- クラウド技術、セキュリティ対策、パフォーマンスチューニングなど、専門的な知識をすぐに活用可能
- 自社で人材育成するコストと時間を削減
※参照: NTTドコモビジネス「マネージドサービスのメリット・デメリットとは?フルマネージドサービスとの違いも解説」
(2) コスト削減と予算の安定化
マネージドサービスは、中長期的にコスト削減につながるケースが多いと言われています。
自社運用との比較:
- 人件費: エンジニアの採用・育成コストが不要
- 設備投資: サーバー機器、ネットワーク機器の購入・更新が不要(クラウドマネージドサービスの場合)
- 緊急対応コスト: トラブル時の残業代、外部ベンダーへの緊急依頼費用が削減
予算の安定化:
- 月額定額制のサービスが多く、予算を組みやすい
- トラブルの有無で費用が変動しない
- 突発的な支出を抑えられる
※費用はサービス範囲により異なります。導入前に複数のMSPから見積もりを取得し、自社運用とのコスト比較を行うことが推奨されます。
※参照: NTTドコモビジネス「マネージドサービスのメリット・デメリットとは?フルマネージドサービスとの違いも解説」
(3) コア業務への集中(戦略的IT投資への時間確保)
マネージドサービスを導入することで、情報システム部門の社員がコア業務に集中できるようになります。
時間のシフト:
- サーバー監視、パッチ適用、バックアップ確認などのルーチンワークから解放
- DX推進、新規システム導入、業務改善プロジェクトなど、戦略的なIT投資に時間を使える
ビジネス価値の向上:
- IT部門が経営層と連携し、ビジネス戦略を支えるIT戦略を策定
- イノベーションを生み出すための時間を確保
※参照: 日立システムズES「マネージドサービスとは?特徴や導入すると可能になることを解説」
4. マネージドサービスのデメリットと注意点
(1) 自社内にIT管理知識が蓄積されにくい
マネージドサービスを導入すると、IT運用業務を外部に委託するため、自社内にIT管理の知識が蓄積されにくいというデメリットがあります。
リスク:
- 将来的にインハウス化(内製化)を考える場合、知識が不足して困難になる可能性
- MSPに依存し、自社で判断できる範囲が狭まる
対策:
- 重要な意思決定や戦略策定は自社で行う体制を維持
- MSPとの定期的なレビューミーティングで、運用状況を把握
- 一部の業務は自社で継続し、最低限の知識を保持する
※参照: NTTドコモビジネス「マネージドサービスのメリット・デメリットとは?フルマネージドサービスとの違いも解説」
(2) 委託範囲が狭い場合の運用煩雑化リスク
委託範囲が狭い場合、一部は自社で対応が必要となり、運用が煩雑化する可能性があります。
例:
- サーバー監視のみを委託し、パッチ適用は自社で実施する場合、MSPからのアラートに基づき自社で対応する手間が発生
- 責任範囲が不明確になり、トラブル時の対応が遅れる
対策:
- 委託範囲を明確に定義し、SLA(サービスレベル契約)で責任範囲を明記
- 段階的に委託範囲を拡大し、最終的にはフルマネージドサービスを検討
(3) サービス選定時の課題とミスマッチ
マネージドサービスは多種多様であり、自社の課題に合ったサービスを選定しないと効果が薄れます。
ミスマッチの例:
- セキュリティ強化が課題なのに、サーバー監視のみのサービスを選んだ
- クラウド移行を前提としていないのに、クラウドマネージドサービスを選んだ
対策:
- 導入前に自社のICT運用上の課題を明確にする(次章で詳述)
- 複数のMSPから提案を受け、比較検討する
5. マネージドサービスの選定ポイントと導入手順
(1) 導入前の課題明確化(5つのポイント)
NTTドコモビジネスは、マネージドサービス導入前に以下の5つのポイントを明確にすることを推奨しています:
自社のICT運用上の課題は何か?
- IT人材不足、セキュリティ対策の遅れ、コスト増加など、具体的な課題をリストアップ
どの業務を委託したいか?
- サーバー監視、パッチ適用、バックアップ、セキュリティ対策など、委託したい業務を明確化
自社で継続する業務は何か?
- 重要な意思決定、戦略策定など、自社で継続する業務を定義
予算はどれくらいか?
- 月額費用、初期費用、追加費用などを考慮し、予算を設定
導入後の運用体制はどうするか?
- MSPとの連絡窓口、定期レビューの頻度、エスカレーションフローなどを決定
※参照: NTTドコモビジネス「マネージドサービス導入の5つのポイントとは?」
(2) 部分委託から始める段階的導入アプローチ
マネージドサービスは、部分的な委託から始めて段階的に範囲を拡大することが推奨されます。
ステップ1: サーバー監視のみ委託
- 24時間365日のサーバー監視をMSPに委託し、アラート時の初動対応を自社で実施
- 効果を確認しながら、次のステップへ
ステップ2: パッチ適用・バックアップも委託
- サーバー監視に加え、パッチ適用やバックアップもMSPに委託
- 自社の運用負担がさらに軽減
ステップ3: セキュリティ対策も委託
- ファイアウォール管理、侵入検知、脆弱性診断などもMSPに委託
- セキュリティレベルが向上
ステップ4: フルマネージドサービスへ移行
- すべてのIT運用をMSPに委託し、自社はコア業務に専念
このように段階的に範囲を拡大することで、リスクを抑えながら効果を最大化できます。
(3) 自社の規模・予算・目的に合わせたサービス選択
マネージドサービスは、企業の規模・予算・目的によって最適な選択肢が異なります。
小規模企業(従業員100人未満):
- クラウドプロバイダーのマネージドサービス(AWS、Azure、GCP)が適切
- 初期費用が低く、必要な機能だけを利用可能
中堅企業(従業員100〜1000人):
- MSPによるマルチクラウド・ハイブリッドクラウド管理が適切
- カスタマイズ性が高く、既存環境との統合がスムーズ
大企業(従業員1000人以上):
- 大手SIerやMSPによる包括的なマネージドサービスが適切
- 複雑なITインフラを一元管理し、ガバナンスを強化
※参照: 楽天モバイル「マネージドサービスとは?おすすめのケースと活用するポイントを紹介」
6. まとめ|マネージドサービスがおすすめの企業とは
マネージドサービスは、IT人材不足、セキュリティ対策の遅れ、運用コストの増加といった課題を抱えるBtoB企業にとって、有力な解決策です。2024年度の市場成長率114.9%という数字が示すように、多くの企業がマネージドサービスを活用し始めています。
マネージドサービスがおすすめの企業:
- IT人材の確保が難しく、専門知識を外部から活用したい企業
- 24時間365日の監視・対応体制を構築したい企業
- 運用コストを削減し、予算を安定化させたい企業
- 情報システム部門をコア業務に集中させたい企業
次のアクション:
- 自社のICT運用上の課題を明確にする(5つのポイント)
- 複数のMSPから提案を受け、比較検討する
- 部分委託から始めて、段階的に範囲を拡大する
- 公式サイトで最新の料金・サービス内容を確認する
マネージドサービスを戦略的に活用し、IT運用の効率化とビジネス価値の向上を実現しましょう。
※この記事の情報は2024年11月時点のものです。サービス内容や料金プランは変更される可能性がありますので、導入前に各MSPの公式サイトで最新情報をご確認ください。
