インサイドセールスとテレアポ、どう違うのか分からない...
BtoB企業の営業・マーケティング担当者にとって、非対面営業の重要性は年々高まっています。しかし「インサイドセールスとテレアポは何が違うのか」「どちらを導入すべきか」といった疑問は尽きません。
インサイドセールスとテレアポの最大の違いは「目的」と「時間軸」です。インサイドセールスは見込み客との中長期的な関係構築をしながら商談タイミングを見極めるのに対し、テレアポはアポイント獲得のみを担当します。2024年10月には、Inside Sales Conference 2024が虎ノ門ヒルズフォーラムで開催され、1000名以上が参加し、「ビジネス成長にインサイドセールスは必要か?」をテーマに議論が行われました。
この記事では、インサイドセールスとテレアポの違い、使い分けの基準、導入・運用のポイントを詳しく解説します。
この記事のポイント:
- インサイドセールスとテレアポの最大の違いは「目的」と「時間軸」(中長期的関係構築 vs アポ獲得)
- KPI(成果指標)も異なり、インサイドセールスは商談化率など「質と量」、テレアポはアポ数など「活動量」を重視
- インサイドセールスはThe Model(分業モデル)のマーケティング→インサイドセールス→フィールドセールスの流れで機能
- BtoB・高額商材・複雑な製品ではインサイドセールス、短期的アポ獲得ではテレアポが適している
- 成功には、フィールドセールスとの分業体制、MA・CRM導入、中長期的視点が必須
インサイドセールスとテレアポの違いが注目される理由
(1) 非対面営業の普及とBtoB営業の変化
総務省の通信利用動向調査(2023年版)によると、企業のテレワーク・非対面営業の導入が急速に進んでおり、インサイドセールスの重要性が高まっています。
非対面営業の普及背景
- テレワークの普及により、顧客との対面商談が減少
- 営業効率化のニーズ(移動時間削減、商談数増加)
- デジタルツール(Zoom、Teams、Salesforce等)の普及
BtoB営業の変化
- 顧客の購買プロセスがデジタル化(2025年にはBtoB購買プロセスの80%以上がデジタル上で進む予測)
- 顧客は営業担当と会う前に、WebサイトやSNS、資料で下調べを完了
- 営業担当には、より高度な提案力・課題解決力が求められる時代に
こうした背景から、「電話でアポを取るだけ」のテレアポではなく、「見込み客を育成し、商談につなげる」インサイドセールスへの注目が集まっています。
(2) 営業分業モデル(The Model)の浸透
The Model(THE MODEL)と呼ばれる営業分業モデルが、日本のBtoB企業にも浸透しています。
The Modelの構成
- マーケティング: リード(見込み客)を獲得
- インサイドセールス: リードを育成し、商談化
- フィールドセールス: 訪問営業で提案・クロージング
- カスタマーサクセス: 契約後の顧客満足度向上・継続利用支援
The Modelのメリット
- 各部門が専門性を発揮し、営業プロセス全体の効率化
- リードから成約までのデータを一元管理し、PDCAサイクル確立
- 営業担当は提案・クロージングに集中できる
この分業モデルにおいて、インサイドセールスは「マーケティングが獲得したリードを育成し、フィールドセールスに引き継ぐ」という重要な役割を担います。
インサイドセールスとテレアポの基礎知識(定義・目的)
(1) インサイドセールスとは:中長期的関係構築と商談創出
インサイドセールスは、見込み客との中長期的な関係構築をしながら商談のタイミングを見極める非対面営業手法です。
インサイドセールスの主な業務
- リードナーチャリング(見込み客の育成)
- リードクオリフィケーション(見込み客の購買意欲・予算・決裁権の評価)
- 定期的な架電・メール配信でコミュニケーション維持
- 顧客の課題ヒアリング、情報提供
- 商談化のタイミング見極め、フィールドセールスへの引き継ぎ
- 顧客情報のCRM・MA登録、データ蓄積
インサイドセールスの特徴
- 時間軸:月単位・年単位で見込み客を育成
- 目的:商談化(フィールドセールスへの引き継ぎ)
- 評価指標:商談化率、有効商談数、受注貢献度など「質と量」の両方
(2) テレアポとは:短期的なアポイント獲得
テレアポ(テレアポイントメント)は、電話でアポイント獲得を目的とする営業手法です。
テレアポの主な業務
- リストに基づく一斉架電
- その場でアポイント獲得を目指す
- アポイント取得後、営業担当に引き継ぎ
テレアポの特徴
- 時間軸:1日・1週間単位で成果を検証
- 目的:アポイント獲得のみ
- 評価指標:アポイント数、コール数、アポ獲得率など「活動量」中心
テレアポは基本的にBtoC(個人消費者向け)で使用されることが多く、短期的なアポ獲得が必要な場合に有効です。
(3) The Model(分業モデル)におけるインサイドセールスの位置づけ
The Modelにおいて、インサイドセールスは以下の位置づけです:
マーケティング → インサイドセールス → フィールドセールス
- マーケティング: Web広告、展示会、ウェビナーなどでリード獲得
- インサイドセールス: マーケティングが獲得したリードに定期的アプローチ、育成し、商談化タイミングを見極める
- フィールドセールス: インサイドセールスが育てた商談化見込みの高い顧客に対して、訪問営業で提案・クロージング
インサイドセールスはフィールドセールスと営業プロセスを分業して初めて成立します。訪問営業チームとの連携が不十分だと機能しません。
3つの切り口で見る違い(目的・KPI・アプローチ)
(1) 目的の違い:中長期的関係構築 vs アポ獲得
インサイドセールスの目的
- 見込み客との中長期的な関係構築
- 購買意欲を高め、商談化のタイミングを見極める
- 受注につながる「質の高い商談」を創出
テレアポの目的
- その場でアポイント獲得
- 多くのアポイントを効率的に取得
- アポイント取得後は営業担当に引き継ぎ
インサイドセールスは「商談化」、テレアポは「アポ獲得」が目的であり、目的が根本的に異なります。
(2) KPIの違い:質と量(商談化率・有効商談数) vs 活動量(アポ数・コール数)
インサイドセールスのKPI(成果指標)
- 商談化率:アプローチから実際に商談に至った割合
- 有効商談数:受注につながる見込みの高い商談の件数
- 受注貢献度:インサイドセールスが育てた商談の受注率
- リードナーチャリング数:育成中の見込み客数
テレアポのKPI
- アポイント数:取得したアポイントの件数
- コール数:架電した件数
- アポ獲得率:コール数に対するアポイント取得率
- 稼働時間:電話をかけていた時間
インサイドセールスは「質と量」の両方を評価されますが、テレアポは「活動量」を中心に評価されます。
(3) アプローチの違い:定期的架電・デジタルツール活用 vs 一斉架電
インサイドセールスのアプローチ
- 定期的架電(週1回、月1回など顧客の状況に応じて)
- メールマガジン配信、ホワイトペーパー提供
- ウェビナー・セミナーへの招待
- 顧客の課題ヒアリング、情報提供
- MAツールでリードスコアリング(購買意欲の数値化)
テレアポのアプローチ
- リストに基づく一斉架電
- その場でアポイント獲得を目指す
- トークスクリプトに沿った効率的な架電
インサイドセールスは、ターゲットが求める情報を定期的に提供し続け、信頼関係を構築します。テレアポは、一斉にリストに架電し、その場でアポ獲得を目指します。
使い分けの基準:どちらを選ぶべきか
(1) インサイドセールスが向くケース(BtoB・高額商材・複雑な製品)
インサイドセールスは、以下のケースに適しています:
BtoB・高額商材
- 導入費用が数百万円以上の高額商材
- 複数の意思決定者が関与する企業間取引
- 顧客との信頼関係構築が重要
複雑な製品・サービス
- 製品の機能・仕様が複雑で、顧客の理解に時間がかかる
- 導入プロセスが複雑で、社内調整が必要
- カスタマイズが必要な製品・サービス
長期契約サービス
- SaaS(年間契約、継続課金モデル)
- コンサルティングサービス
- 保守・サポート契約
顧客との長期的関係が重要
- リピート契約・アップセルが見込める
- 顧客のLTV(顧客生涯価値)が高い
(2) テレアポが向くケース(短期的アポ獲得・BtoC・低額商材)
テレアポは、以下のケースに適しています:
短期的なアポ獲得が必要
- イベント・セミナーへの参加者募集
- 期間限定キャンペーンの案内
- 緊急性の高いアポイント獲得
BtoC(個人消費者向け)
- 個人向け商品・サービスの販売
- 意思決定者が個人のため、その場で判断可能
低額商材
- 導入費用が数万円程度の低額商材
- 意思決定が簡単で、その場で判断しやすい
単純な商品・サービス
- 製品の機能・仕様がシンプルで、理解しやすい
- 導入プロセスが簡単
(3) 両者を併用する選択肢
実際には、インサイドセールスとテレアポを併用する企業も多くあります。
併用パターン1:初期アプローチはテレアポ、育成はインサイドセールス
- テレアポで初回アポを獲得
- アポイント後の育成はインサイドセールスが担当
- 商談化のタイミングでフィールドセールスに引き継ぎ
併用パターン2:リードの質に応じて使い分け
- ホットリード(購買意欲が高い):インサイドセールスが即座に対応
- コールドリード(購買意欲が低い):テレアポで初回アプローチ
併用パターン3:商材・顧客セグメントごとに使い分け
- 高額商材・大企業:インサイドセールス
- 低額商材・中小企業:テレアポ
インサイドセールス導入・運用のポイント
(1) フィールドセールスとの役割分担と連携
インサイドセールスはフィールドセールス(訪問営業)との分業体制が必須です。
役割分担の明確化
- インサイドセールス:リード育成、商談化、フィールドセールスへの引き継ぎ
- フィールドセールス:訪問営業、提案、クロージング、契約締結
連携のポイント
- CRMで顧客情報を一元管理し、リアルタイムで共有
- 引き継ぎ基準の明確化(リードスコア、BANT(Budget・Authority・Needs・Timeframe)など)
- 定期的なミーティングで情報共有(週1回、月1回など)
- フィードバックループの確立(フィールドセールスからインサイドセールスへ、商談結果をフィードバック)
よくある失敗パターン
- 役割分担が不明確で、インサイドセールスとフィールドセールスが重複アプローチ
- 引き継ぎ基準があいまいで、フィールドセールスに「質の低い商談」が引き継がれる
- 情報共有が不十分で、顧客に一貫した対応ができない
(2) 必要なツール(CRM・MA・架電ツール)
インサイドセールスの導入には、以下のツールが必要です:
CRM(Customer Relationship Management)
- 顧客情報を一元管理
- 代表的なツール:Salesforce、HubSpot、Sansan、Mazrica
MA(マーケティングオートメーション)
- メールマガジン配信、リードスコアリング等を自動化
- 代表的なツール:HubSpot、Pardot、Marketo、SATORI
架電ツール
- 効率的な架電業務をサポート
- 代表的なツール:MiiTel、カイクラ、OSORA
その他のツール
- オンライン商談ツール:Zoom、Google Meet、Microsoft Teams
- 名刺管理ツール:Sansan、Eight
- 営業支援ツール:Salesforce Sales Cloud、HubSpot Sales Hub
(3) 成功事例(Sansan・LIFULL・福利厚生サービス企業)
インサイドセールス導入の成功事例をいくつかご紹介します:
Sansan:顧客企業規模・エリア別チーム編成
- 課題:営業効率化、商談数増加
- 施策:顧客企業規模・エリア別にインサイドセールスチームを編成
- 成果:商談数増加、受注率向上
LIFULL:SalesforceのThe Model営業プロセスをカスタマイズ
- 課題:営業プロセスの可視化、データ活用
- 施策:SalesforceのThe Model営業プロセスを自社向けにカスタマイズ、インサイドセールスチームを新設
- 成果:営業プロセスの効率化、データに基づく意思決定
福利厚生サービス企業:1日4-5件→14件以上に商談数増加
- 課題:商談数不足、営業担当の稼働率低下
- 施策:インサイドセールスチームを新設し、リード育成・商談創出を分業化
- 成果:1日の商談数が4-5件から14件以上に増加
成功事例の共通点
- フィールドセールスとの明確な役割分担
- CRM・MAツールの導入と活用
- 中長期的視点での成果評価(月単位・年単位)
- 効果的なターゲティングと顧客セグメント設計
(4) よくある失敗パターンと注意点
インサイドセールス導入でよくある失敗パターンと注意点は以下の通りです:
失敗パターン1:テレアポを「単なるアポ取り部隊」と捉えて移行
- 中長期的関係構築の仕組み(MA・CRM・育成プログラム)が不足
- 短期的成果を求めてしまい、インサイドセールスが機能しない
失敗パターン2:フィールドセールスとの連携不足
- 役割分担が不明確
- 情報共有が不十分
- 引き継ぎ基準があいまい
失敗パターン3:効果的なターゲティングができていない
- 2024年上半期調査では、約半数が「効果的なターゲティングができていなかった」と回答
- データドリブンな顧客選定の重要性が高まる
失敗パターン4:組織体制・育成・ツール導入の不備
- 2024年調査では、インサイドセールス担当者の74.1%が離職を考えたことがある
- 組織体制・育成・ツール導入の不備がストレス要因
注意点
- 短期的成果を求めず、月単位・年単位で結果を検証する長期視点が必要
- MA・CRM導入だけでなく、運用体制・育成プログラムも整備
- フィールドセールスとの連携を最優先
まとめ:自社に合った営業手法を選ぶために
インサイドセールスとテレアポは、目的・KPI・アプローチが根本的に異なる営業手法です。自社の商材・サービス、顧客特性、営業体制に応じて、最適な手法を選択しましょう。
インサイドセールスとテレアポの選択基準
インサイドセールスを選ぶべきケース
- BtoB・高額商材・複雑な製品・長期契約サービス
- 顧客との中長期的な関係構築が重要
- The Model(分業モデル)を導入し、営業プロセスを効率化したい
- CRM・MAツールを活用したデータドリブンな営業を実現したい
テレアポを選ぶべきケース
- 短期的なアポ獲得が必要
- BtoC・低額商材・単純な商品・サービス
- イベント・セミナーへの参加者募集など、緊急性の高いアポイント獲得
両者を併用する選択肢
- 初期アプローチはテレアポ、育成はインサイドセールス
- リードの質に応じて使い分け
- 商材・顧客セグメントごとに使い分け
インサイドセールス導入成功のポイント
- フィールドセールスとの明確な役割分担と連携
- CRM・MA・架電ツールの導入と活用
- 中長期的視点での成果評価(月単位・年単位)
- 効果的なターゲティングと顧客セグメント設計
- 組織体制・育成プログラムの整備
次のアクション
- 自社の商材・サービスがインサイドセールスに向いているか判断する
- フィールドセールスとの役割分担を明確にする
- CRM・MA導入を検討し、営業プロセスのデジタル化を進める
- 成功事例(Sansan、LIFULL、福利厚生サービス企業等)を参考に、自社に合った運用モデルを設計する
- 短期的成果を求めず、月単位・年単位で結果を検証する長期視点を持つ
自社に合った営業手法を選択し、BtoB営業の効率化と成約率向上を実現しましょう。
