営業組織の課題:訪問営業だけでは効率が上がらない
「営業担当者が1日中外回りしているのに、なかなか成約につながらない」「見込み客へのフォローが遅れて、競合に取られてしまう」といった悩みを抱えているB2B営業組織は多いのではないでしょうか。
訪問営業だけの従来型営業スタイルでは、移動時間が多く、1日にアプローチできる件数が限られます。また、すべての見込み客に対面で対応するのは非効率で、優先順位の高い商談に集中できないという課題があります。
この記事では、インサイドセールス(内勤営業)とアウトサイドセールス(フィールドセールス)の違い、役割分担、効果的な連携方法を解説します。分業体制により、営業効率を高め、成約率を向上させる方法を理解しましょう。
この記事のポイント:
- インサイドセールスは非対面(電話・メール・Web会議)、アウトサイドセールスは対面訪問
- インサイドセールスはリードナーチャリングが役割、アウトサイドセールスはクロージングが役割
- インサイドセールスは1日5件以上、アウトサイドセールスは1日3〜5件の活動が一般的
- どちらか一方ではなく、ハイブリッド型(分業+連携)が理想
- 日本のインサイドセールス導入率は約3割(米国47%・欧州41%に比べ低い)
営業組織の課題と分業体制の必要性
(1) 従来の営業手法の限界(訪問効率の低さ)
B2B営業において、訪問営業(対面営業)は信頼関係構築に有効な手法です。しかし、すべての営業活動を訪問で行うと、以下の問題が発生します:
移動時間のロス:
- 1件の訪問に往復1〜2時間かかる場合が多い
- 1日に訪問できる件数は3〜5件が限界
- 移動時間が営業活動全体の30〜40%を占めるケースもある
優先順位の判断が難しい:
- すべてのリードに対面で対応するのは非効率
- 見込み度の低いリードにも時間を割いてしまう
- ホットリード(今すぐ客)への初回接触が遅れる
情報収集・ナーチャリングの時間不足:
- 訪問前の情報収集に時間をかけられない
- フォローアップが遅れ、リードが冷めてしまう
- 見込み客の関心が高まったタイミングを逃す
こうした課題を解決するため、営業プロセスを「内勤営業(インサイドセールス)」と「訪問営業(アウトサイドセールス)」に分業化する企業が増えています。
(2) THE MODEL型営業プロセスの浸透
近年、B2B企業の営業組織でTHE MODELという営業プロセスモデルが注目されています。THE MODELは、営業活動を以下の4つのステージに分業化するモデルです:
- マーケティング: リード獲得(広告・コンテンツ・イベント等)
- インサイドセールス: リードナーチャリング(電話・メール等で育成)
- フィールドセールス(アウトサイドセールス): 商談・クロージング(対面で提案・契約)
- カスタマーサクセス: 顧客の成功支援(導入支援・活用促進)
このモデルでは、各ステージの役割を明確に分けることで、専門性を高め、営業プロセス全体の効率と成果を最大化します。
特に、インサイドセールスとアウトサイドセールスの分業は、日本でも急速に広がっており、HubSpotの調査によると、日本のインサイドセールス導入率は約3割です(米国47%、欧州41%に比べると低いものの、拡大傾向にあります)。
(出典: HubSpot「法人営業とインサイドセールスに関するデータ集」2024年、翔泳社プレスリリース 2021年)
インサイドセールスとアウトサイドセールスの定義と違い
(1) インサイドセールス(内勤営業)とは
インサイドセールスは、電話・メール・Web会議などを使って非対面で行う営業活動です。主な役割は以下の通りです:
リードナーチャリング:
- マーケティングが獲得したリードに継続的にアプローチ
- 見込み客の課題・ニーズをヒアリング
- 製品・サービスの情報提供を行い、購買意欲を高める
商談化の判断:
- 見込み客のニーズが高まったタイミングを見極める
- アウトサイドセールスへ引き継ぐタイミングを判断
効率的なリーチ:
- 移動時間がないため、1日に5件以上のリードにアプローチ可能
- 遠方の見込み客にも効率的にアプローチできる
インサイドセールスは、見込み客の「温度感」を高める役割を担います。
(2) アウトサイドセールス(フィールドセールス)とは
アウトサイドセールスは、顧客先に直接訪問して対面で行う営業活動です。主な役割は以下の通りです:
商談・クロージング:
- インサイドセールスから引き継いだホットリードに対面で提案
- 製品・サービスのデモンストレーション
- 契約締結
信頼関係の構築:
- 対面でのコミュニケーションにより、深い信頼関係を構築
- 複雑な提案や高額商材の販売に有効
カスタマイズ提案:
- 顧客の具体的な課題に合わせた提案を行う
- 顧客の社内状況(意思決定者、予算、導入時期など)を把握
アウトサイドセールスは、見込み客を「受注」に導く役割を担います。
(3) 主な違い(接触方法・役割・1日の活動件数)
インサイドセールスとアウトサイドセールスの主な違いを表にまとめます:
| 項目 | インサイドセールス | アウトサイドセールス |
|---|---|---|
| 接触方法 | 電話・メール・Web会議(非対面) | 対面訪問 |
| 主な役割 | リードナーチャリング | 商談・クロージング |
| 1日の活動件数 | 5件以上 | 3〜5件 |
| 移動時間 | なし | 往復1〜2時間/件 |
| 対象リード | すべてのリード | ホットリード |
| 得意分野 | 効率的なリーチ、情報提供 | 信頼関係構築、提案 |
この違いを理解し、役割分担を明確にすることで、営業組織全体の効率が向上します。
(4) 日本と海外の導入率の違い(日本3割 vs 米国47%・欧州41%)
日本のインサイドセールス導入率は、海外に比べるとまだ低い水準です:
導入率の国際比較:
- 日本: 約30%
- 米国: 47%
- 欧州: 41%
(出典: HubSpot「法人営業とインサイドセールスに関するデータ集」2024年)
ただし、日本でも急速に拡大しており、SaaS企業を中心にインサイドセールス組織を構築する企業が増えています。今後、さらに普及が進むと予想されます。
それぞれの役割とメリット・デメリット
(1) インサイドセールスの役割とメリット・デメリット
役割:
- マーケティングが獲得したリードに継続的にアプローチ
- 見込み客の課題・ニーズをヒアリング
- 購買意欲を高めてアウトサイドセールスへ引き継ぎ
メリット:
営業効率の向上:
- 移動時間がないため、1日に多くのリードにアプローチ可能
- 遠方の見込み客にもコストをかけずにリーチできる
リードナーチャリングの強化:
- 定期的なフォローアップで見込み客の関心を維持
- 適切なタイミングで商談化できる
コスト削減:
- 訪問営業に比べて交通費・宿泊費がかからない
- 新人でも早期に戦力化しやすい
デメリット:
信頼関係構築の難しさ:
- 非対面のため、顧客との信頼関係が希薄になりやすい
- 適切なフォロー体制がないと、リードが冷めてしまう
対応できる商材の限界:
- 高額商材や複雑なカスタマイズが必要な商材には不向き
- 最終的には対面での提案が必要になるケースが多い
(2) アウトサイドセールスの役割とメリット・デメリット
役割:
- インサイドセールスから引き継いだホットリードに対面で提案
- 製品・サービスのデモンストレーション
- 契約締結
メリット:
信頼関係の構築:
- 対面でのコミュニケーションにより、深い信頼関係を構築できる
- 顧客の表情・反応を見ながら提案を調整できる
高額商材・複雑な提案に有効:
- カスタマイズ性が高い商材や、高額商材の販売に適している
- 顧客の社内状況(意思決定者、予算、導入時期など)を詳しく把握できる
デメリット:
効率の低さ:
- 移動時間が営業活動全体の30〜40%を占める
- 1日にアプローチできる件数が限られる
コストの高さ:
- 交通費・宿泊費がかかる
- 遠方の見込み客へのアプローチはコストが高い
(3) 商材・ターゲット・営業サイクルによる使い分け
インサイドセールスとアウトサイドセールスは、商材・ターゲット・営業サイクルによって使い分けが必要です:
インサイドセールスが有効なケース:
- 低価格・シンプルな商材(月額数万円以下のSaaS等)
- 導入までの検討期間が短い(1〜3ヶ月)
- 全国の中小企業がターゲット(遠方へのアプローチが必要)
アウトサイドセールスが有効なケース:
- 高価格・カスタマイズ性が高い商材(数百万円以上のシステム導入等)
- 導入までの検討期間が長い(6ヶ月以上)
- 大企業・特定の業界がターゲット(意思決定者が複数、稟議が必要)
(4) どちらか一方ではなくハイブリッド型が理想
実際には、どちらか一方ではなく、ハイブリッド型(分業+連携)が理想です。インサイドセールスでリードナーチャリングを行い、ニーズが高まったタイミングでアウトサイドセールスへ引き継ぐことで、営業効率と成約率の両方を高めることができます。
効果的な連携モデルと情報共有の仕組み
(1) 基本連携フロー(ナーチャリング→商談引き継ぎ→クロージング)
インサイドセールスとアウトサイドセールスの基本的な連携フローは以下の通りです:
ステップ1: リード獲得(マーケティング)
- Webサイト、広告、展示会などでリードを獲得
- リード情報をSFA/CRMに登録
ステップ2: リードナーチャリング(インサイドセールス)
- 電話・メールで初回コンタクト
- 見込み客の課題・ニーズをヒアリング
- 製品・サービスの情報提供
- 定期的なフォローアップで関心を維持
ステップ3: 商談化の判断(インサイドセールス)
- 見込み客が具体的な説明を聞きたい、または検討最終段階に来たタイミングを見極める
- アウトサイドセールスへ引き継ぎ
ステップ4: 商談・クロージング(アウトサイドセールス)
- 対面で製品・サービスのデモンストレーション
- 見積もり提示
- 契約締結
このフローにより、インサイドセールスは効率的にリードを育成し、アウトサイドセールスは受注確度の高い商談に集中できます。
(2) 引き継ぎ時の情報共有のポイント
連携の成否は、引き継ぎ時の情報共有にかかっています。以下の情報を共有することで、アウトサイドセールスのクロージング率が向上します:
共有すべき情報:
- 見込み客の課題・ニーズ
- 製品・サービスへの関心度(どの機能に興味があるか)
- 質問内容・懸念事項(例: 「初期費用について質問が多かった」)
- 意思決定者・予算・導入時期
- 競合状況(他社製品も検討しているか)
引き継ぎ時の具体例:
「〇〇社の△△様は、現在Excel管理で営業進捗を管理しているが、案件の抜け漏れが多く、営業マネージャーが課題を感じている。SFA導入を検討中で、予算は年間100万円程度。意思決定者は営業部長。導入時期は来期(4月)を希望。初期費用について懸念があるため、初期費用無料プランの提案が有効。」
このような具体的な情報共有により、アウトサイドセールスは初回訪問から的確な提案ができます。
(3) SFA/CRMを活用した情報共有
インサイドセールスとアウトサイドセールスの情報共有には、**SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)**の活用が不可欠です。
SFA/CRMで共有する情報:
- リードの基本情報(会社名、担当者名、連絡先)
- 対応履歴(いつ、誰が、どのような内容で接触したか)
- ヒアリング内容(課題、ニーズ、予算、導入時期)
- 次回アクション(いつ、誰が、何をするか)
SFA/CRM活用のメリット:
- リアルタイムで情報が更新される
- 担当者が変わっても、過去の対応履歴を確認できる
- 営業マネージャーが全体の進捗を把握できる
代表的なSFA/CRMツールには、Salesforce、HubSpot、Zoho CRM、kintoneなどがあります。
(4) 定期ミーティングによるコミュニケーション
SFA/CRMでの情報共有だけでなく、インサイドセールスとアウトサイドセールスの定期ミーティングも重要です。
ミーティングで話し合う内容:
- 引き継ぎ済みリードの進捗確認
- 引き継ぎタイミングの調整(どの段階で引き継ぐか)
- 顧客からのよくある質問・懸念事項の共有
- 成約事例・失注事例の振り返り
定期ミーティングにより、分業体制でのコミュニケーション断絶を防ぎ、顧客体験の一貫性を保つことができます。
分業体制の組織設計とKPI設定
(1) インサイドセールスのKPI(架電件数・商談獲得率)
インサイドセールスのKPIは、リードナーチャリングと商談化に焦点を当てます:
主要KPI:
- 架電件数: 1日・1週間あたりの電話対応件数
- メール送信件数: 1日・1週間あたりのメール送信件数
- 商談獲得数: アウトサイドセールスへ引き継いだ商談数
- 商談獲得率: リード数に対する商談化率(例: リード100件中10件商談化 = 10%)
これらのKPIを設定し、定期的にモニタリングすることで、インサイドセールスの活動量と成果を可視化できます。
(2) アウトサイドセールスのKPI(受注率・受注金額)
アウトサイドセールスのKPIは、商談化から受注までの成果に焦点を当てます:
主要KPI:
- 受注数: 月間・四半期の受注件数
- 受注率: 商談数に対する受注率(例: 商談10件中3件受注 = 30%)
- 受注金額: 月間・四半期の受注金額
- 平均受注単価: 受注金額 ÷ 受注件数
これらのKPIにより、アウトサイドセールスのクロージング力を評価できます。
(3) 分業化のリスクと対策(情報共有不足・顧客体験の一貫性欠如)
分業化には以下のリスクがあります:
情報共有不足:
- インサイドセールスとアウトサイドセールスの間で情報が正しく伝わらない
- リードの機会損失や成約率の低下につながる
対策:
- SFA/CRMで情報を一元管理
- 引き継ぎ時のチェックリストを作成
- 定期ミーティングで進捗確認
顧客体験の一貫性欠如:
- インサイドセールスとアウトサイドセールスで対応が異なる
- 顧客が混乱し、信頼が損なわれる
対策:
- トークスクリプト・提案資料の統一
- 両チーム間でのコミュニケーション強化
- 顧客視点でのプロセス設計
(4) 導入コストと効果測定
分業体制を導入する際、以下のコストが発生します:
ITツール導入コスト:
- SFA/CRMの導入費用(月額数万円〜数十万円)
- 電話・Web会議システムの導入費用
業務フロー見直しの工数:
- 役割分担の設計
- KPI設定
- トレーニング・オンボーディング
人件費:
- インサイドセールス担当者の採用・育成
効果測定では、以下の指標をモニタリングします:
効率性:
- 営業担当者1人あたりのリーチ件数
- 商談化率・受注率の変化
成果:
- 受注件数・受注金額の変化
- 営業サイクルの短縮
導入後3〜6ヶ月で効果を評価し、必要に応じて役割分担やKPIを調整してください。
まとめ:ハイブリッド型営業組織の構築
インサイドセールスとアウトサイドセールスは、それぞれ異なる役割とメリット・デメリットを持ちます。どちらか一方ではなく、ハイブリッド型(分業+連携)により、営業効率と成約率の両方を高めることが可能です。
この記事のまとめ:
- インサイドセールスは非対面でリードナーチャリング、アウトサイドセールスは対面で商談・クロージング
- インサイドセールスは1日5件以上、アウトサイドセールスは1日3〜5件の活動が一般的
- 日本のインサイドセールス導入率は約3割(米国47%、欧州41%に比べ低いが拡大中)
- 分業化にはSFA/CRMの導入と定期ミーティングによる情報共有が不可欠
- KPIを明確に設定し、定期的に効果測定を行う
次のアクション:
- 自社の営業プロセスを見直し、分業化の必要性を検討する
- SFA/CRMツールの導入を検討する(Salesforce、HubSpot、Zoho CRM等)
- インサイドセールスとアウトサイドセールスの役割分担を明確にする
- 小規模なパイロットプロジェクトで効果を検証してから本格導入する
分業体制の導入には、コストと工数がかかりますが、営業効率の向上と成約率の改善により、中長期的には投資対効果が高いと言われています。自社の商材・ターゲット・営業サイクルに合わせて、最適な営業組織を構築しましょう。
