マーケティングとインサイドセールス、どちらも営業活動だがどう違うのか...
B2B企業のマーケティング担当者や営業マネージャーの多くが、「マーケティングとインサイドセールスの役割分担が曖昧で、連携がうまくいかない」「部門間で情報共有ができず、リードが活用されていない」といった課題を抱えています。
マーケティングとインサイドセールスはどちらも見込み客へのアプローチを行いますが、目的・対象・手法が異なります。両部門の役割を明確にし、効果的に連携することで、リード獲得から商談化までのプロセスが円滑になり、営業成果が大幅に向上する可能性があります。
この記事では、インサイドセールスとマーケティングの違い、役割分担、連携のポイント、THE MODELフロー、導入事例、KPI設定の実務をご紹介します。
この記事のポイント:
- マーケティングは「リード獲得」、インサイドセールスは「リード育成・商談化」を担う
- 目的・対象・手法・KPIがそれぞれ異なる(市場全体 vs 見込み客、広告・SEO vs 電話・メール)
- THE MODEL型営業組織(マーケ→IS→FS→CS)で分業体制を構築
- 共通KPI設定・CRM/SFAツール活用・相互フィードバックが連携の鍵
- 成功事例では商談数2倍以上、受注率向上の成果
1. BtoB営業におけるマーケティングとインサイドセールスの重要性
(1) オンライン化・リモート商談の普及
コロナ禍を経て、BtoB営業におけるオンライン化・リモート商談の普及が加速しました。従来の対面営業だけでは顧客にリーチできなくなり、オンラインでのマーケティング活動とインサイドセールスによる遠隔での商談創出が重要になっています。
2025年現在、クラウドベースCRM・会話インテリジェンス・仮想アシスタント等のツールが発達し、インサイドセールスとマーケティングのコラボレーションが一層強化されています。リモート・オンライン商談ツールの普及により、インサイドセールスの重要性はさらに増加しています。
(2) 分業体制による生産性向上の必要性
BtoB企業では、営業担当者がリード獲得から商談・クロージングまですべてを担当する「ワンマン営業」では生産性に限界があります。マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの分業体制を構築することで、各部門が専門性を発揮し、全体の生産性が飛躍的に向上します。
インサイドセールスは移動不要で1日に多数の顧客に接触でき、生産性・効率性が飛躍的に向上する点が大きなメリットです。
2. インサイドセールスとマーケティングの基礎知識
(1) マーケティングとは(市場全体へのアプローチ、リード獲得)
マーケティングは、市場全体に広告・SEO・メルマガ等でアプローチし、見込み客を獲得する活動です。不特定多数の潜在顧客に対して情報を発信し、自社の製品・サービスに関心を持つ見込み客(リード)を集めることが主な目的です。
マーケティングの主な活動:
- Web広告(Google広告、SNS広告等)
- SEO対策(検索エンジンからの自然流入)
- コンテンツマーケティング(ブログ記事、ホワイトペーパー等)
- メールマーケティング(メルマガ配信、ナーチャリングメール)
- ウェビナー・展示会(リード獲得施策)
(2) インサイドセールスとは(内勤営業、リード育成・商談創出)
インサイドセールスは、内勤営業として電話・メール・オンライン商談ツールで顧客にアプローチし、リード育成・商談創出を担います。マーケティングが獲得したリードに個別に接触し、顧客の課題やニーズをヒアリングし、購買意欲を高め、商談化します。
インサイドセールスの主な活動:
- リード育成(リードナーチャリング): メール・電話で継続的にコミュニケーション
- 課題ヒアリング: 顧客の課題・ニーズを深掘り
- 商談設定: 受注確度の高いリードをフィールドセールスに引き渡し
- リードスコアリング: リードの行動・属性を数値化し、優先順位付け
(3) フィールドセールスとの関係(THE MODEL型営業組織)
インサイドセールスは、マーケティングとフィールドセールス(外勤営業)の間に位置します。THE MODEL型営業組織では、以下の分業体制が標準的です。
THE MODEL型営業組織:
- マーケティング: リード獲得
- インサイドセールス: リード育成・商談化
- フィールドセールス: 商談・クロージング(顧客先を訪問)
- カスタマーサクセス(CS): 既存顧客のサポート・アップセル
この分業により、各部門が専門性を発揮し、全体の営業プロセスが効率化されます。
(4) SDR(インバウンド)とBDR(アウトバウンド)の違い
インサイドセールスには、SDR(Sales Development Representative)とBDR(Business Development Representative)の2つのタイプがあります。
| 項目 | SDR(インバウンド) | BDR(アウトバウンド) |
|---|---|---|
| 対象リード | 問い合わせ・資料DL等の既存リード | 新規開拓対象の企業リスト |
| アプローチ | 既存リードに対応(受動的) | 新規リードを開拓(能動的) |
| 主な活動 | リード育成、商談設定 | 新規リスト作成、初回接触 |
| KPI | アポ数、商談化率 | コール数、接続率、アポ数 |
SDRとBDRはどちらもインサイドセールスの役割ですが、対象とするリードと活動内容が異なります。
3. インサイドセールスとマーケティングの違い
(1) 目的の違い(リード獲得 vs リード育成・商談化)
マーケティングとインサイドセールスの最大の違いは目的です。
| 項目 | マーケティング | インサイドセールス |
|---|---|---|
| 目的 | リード獲得(量) | リード育成・商談化(質) |
| ゴール | MQL(Marketing Qualified Lead)創出 | SQL(Sales Qualified Lead)創出、商談設定 |
マーケティングは「量」を重視し、できるだけ多くのリードを獲得します。インサイドセールスは「質」を重視し、見込み客を育成して商談可能な状態にします。
MQL(Marketing Qualified Lead): マーケティング部門が獲得した、一定の条件を満たす見込み客(例: 資料ダウンロード、ウェビナー参加等)
SQL(Sales Qualified Lead): インサイドセールスが育成し、商談可能と判断した見込み客(例: 課題ヒアリング完了、購買意欲が高い)
(2) 対象の違い(市場全体 vs 見込み客)
マーケティングとインサイドセールスでは、アプローチする対象が異なります。
マーケティング:
- 市場全体(不特定多数の潜在顧客)
- 自社の製品・サービスを知らない層にもリーチ
- マス向けの情報発信
インサイドセールス:
- 見込み客(マーケティングが獲得したリード)
- 自社の製品・サービスに一定の関心を示した層
- 個別対応、パーソナライズされたコミュニケーション
マーケティングが「認知拡大」、インサイドセールスが「関係構築」を担う構造です。
(3) アプローチ手法の違い(広告・SEO・メルマガ vs 電話・メール・オンライン商談)
アプローチ手法も異なります。
マーケティング:
- 広告(Google広告、SNS広告)
- SEO対策(ブログ記事、ホワイトペーパー)
- メルマガ配信(セグメント別配信)
- ウェビナー・展示会
インサイドセールス:
- 電話(架電、ヒアリング)
- メール(個別フォローアップ)
- オンライン商談(Zoom、Teams等)
- リードスコアリング(優先順位付け)
マーケティングは「1対多」のコミュニケーション、インサイドセールスは「1対1」のコミュニケーションが中心です。
(4) KPIの違い(リード数・獲得単価 vs アポ数・商談化率・受注率)
KPI(重要業績評価指標)も異なります。
| 項目 | マーケティング | インサイドセールス |
|---|---|---|
| 主要KPI | リード数、MQL数、リード獲得単価、Webサイト訪問数 | コール数、接続率、アポ数、商談化率、受注率、受注金額 |
| 重視する指標 | 「量」(できるだけ多くのリード獲得) | 「質」(商談化率・受注率の向上) |
マーケティングは獲得したリードの「数」を、インサイドセールスは商談化・受注に至った「割合」を重視します。
4. 効果的な連携のポイントとTHE MODELフロー
(1) THE MODELとは(マーケ→IS→FS→CSの分業体制)
THE MODEL(ザ・モデル)は、Salesforceが提唱する営業プロセスモデルで、マーケ→IS→FS→CSの分業体制を指します。
THE MODELの各部門の役割:
- マーケティング: リード獲得、MQL創出
- インサイドセールス: リード育成、SQL創出、商談設定
- フィールドセールス: 商談、クロージング、受注
- カスタマーサクセス: 既存顧客のサポート、アップセル・クロスセル
この分業により、営業プロセスが可視化され、各部門が専門性を発揮できます。THE MODEL型営業組織の理解が前提となり、営業プロセス可視化なしでは分業効果が出にくいです。
(2) 共通KPI設定(MQL定義、コール対象リード基準等)
効果的な連携には、共通KPI設定が不可欠です。各チームが同じ方向を向いて進むため、以下のKPIを部門間で合意します。
共通KPI設定の例:
- MQL定義: どのような条件を満たしたリードをMQLとするか(例: 資料DL + メール開封2回以上)
- コール対象リード基準: どのようなリードをインサイドセールスがコールするか(例: スコア50点以上)
- SQL転換率: MQLからSQLへの転換率(例: 20%)
- 商談化率: SQLから商談への転換率(例: 50%)
- 受注率: 商談から受注への転換率(例: 30%)
KPI設定を誤ると、各部門がバラバラの方向に進み、全体最適できません。慎重に設定し、定期的に見直すことが重要です。
(3) CRM・SFAツールによる情報共有体制
CRM・SFAツールで情報共有体制を整備し、営業活動を可視化することで属人化を防止します。
CRM・SFAツールの役割:
- リード情報の一元管理: マーケティングが獲得したリードをインサイドセールスが即座に確認
- 活動履歴の記録: 電話・メールの履歴を記録し、誰がいつ何をしたか可視化
- リードスコアリング: リードの行動・属性を数値化し、優先順位付け
- 商談進捗の共有: フィールドセールスの商談状況をマーケティング・インサイドセールスが把握
CRM・SFAツール導入は不可欠で、システム整備に初期費用・運用コストがかかります。ただし、導入により部門間の情報共有が円滑になり、長期的にはROIが向上します。
(4) 相互フィードバック(リードの質・コンテンツ改善)
マーケティング←→インサイドセールス間で相互フィードバックを行い、リードの質を継続改善します。
相互フィードバックの例:
- インサイドセールス→マーケティング: 「今月獲得したリードは課題が曖昧で商談化しづらい」→ マーケティングがコンテンツを改善
- マーケティング→インサイドセールス: 「ホワイトペーパーDL後のリードは購買意欲が高い」→ インサイドセールスが優先的にコール
- フィールドセールス→全体: 「〇〇業界のリードは受注率が高い」→ マーケティングが当該業界向けの広告を強化
相互フィードバックにより、各部門がPDCAを回し、全体の営業成果が向上します。
(5) 分業のメリット(生産性向上、属人化防止、商談品質向上、コスト削減)
分業体制のメリットは以下の通りです。
メリット1:生産性向上
- インサイドセールスは移動不要で1日に多数の顧客に接触可能(訪問営業の3〜5倍の接触数)
- マーケティングはリード獲得に専念、インサイドセールスは育成に専念できる
メリット2:属人化防止
- CRM・SFAツールで営業活動を可視化し、担当者の退職・異動でもノウハウが引き継がれる
- チーム全体で情報共有され、特定の担当者に依存しない体制
メリット3:商談品質向上
- 育成済みリードのみフィールドセールスに渡すため、商談の受注率が向上
- フィールドセールスは受注確度の高い商談に集中できる
メリット4:コスト削減
- 訪問回数が削減され、交通費・時間コストが削減
- 効率的なリソース配分により、全体の営業コストが最適化
ただし、中小企業では「分業」より「省略」が適切な場合もあります。リソース・リード数によって判断する必要があります。
5. 導入事例とKPI設定の実務
(1) 成功事例(Salesforce・Sansan・LIFULL・Panasonic Industry等)
インサイドセールス導入の成功事例をご紹介します。
Salesforce:
- THE MODELを提唱した企業として、自社でもマーケ→IS→FS→CSの分業体制を実践
- グローバルで高い成長率を実現
Sansan:
- 名刺管理サービスで、インサイドセールスを早期から導入
- リード育成を徹底し、商談化率を大幅に向上
LIFULL:
- 不動産情報サービスで、インサイドセールスを活用
- 顧客の課題をヒアリングし、最適なソリューションを提案
Panasonic Industry:
- BtoB製造業でインサイドセールスを導入
- 訪問営業と併用し、効率的なリソース配分を実現
(2) 成果データ(商談数2倍以上、受注率向上)
導入企業の成果データは以下の通りです。
成果データ:
- 商談数2倍以上: インサイドセールス導入前と比較して商談設定数が2倍以上に増加
- 受注率向上: 育成済みリードのみ商談化するため、受注率が10〜30%向上
- 生産性向上: 営業担当者1人あたりの生産性が1.5〜2倍に向上
ただし、これらの成果は企業規模・業種・リード数・運用体制により異なります。自社の状況に応じて、どの程度の効果が期待できるかを慎重に評価する必要があります。
(3) インサイドセールスの主要KPI(コール数、アポ数、商談化率、受注率、受注金額)
インサイドセールスの主要KPIは以下の通りです。
主要KPI:
- コール数: 1日あたりの架電数(例: 50件/日)
- 接続率: 架電に対して実際に会話できた割合(例: 30%)
- アポ数: 商談設定数(例: 5件/週)
- 商談化率: アポから商談への転換率(例: 70%)
- 受注率: 商談から受注への転換率(例: 30%)
- 受注金額: 1件あたりの受注金額、総受注金額
これらのKPIを定期的に測定し、改善施策を実施します。
(4) マーケティングとの連携KPI設定手順
マーケティングとインサイドセールスの連携KPIを設定する手順は以下の通りです。
KPI設定手順:
- 最終目標(KGI)の設定: 売上高、利益率等
- プロセスKPIの設定: リード数→MQL数→SQL数→商談数→受注数
- 部門間での合意形成: MQL定義、SQL定義、コール対象リード基準を決定
- 測定・改善: 定期的(月次・四半期ごと)にKPIを測定し、改善施策を実施
部門間で合意形成が不可欠で、設定を誤ると逆効果になる可能性があります。
(5) 2025年トレンド(AI活用、クラウドCRM、会話インテリジェンス)
2025年のトレンドは、AI活用とツールの進化です。
2025年トレンド:
- AI活用: 最適なコンタクトタイミング予測、パーソナライズアプローチ自動化、生産性向上
- クラウドベースCRM: リアルタイムでの情報共有、リモートワーク対応
- 会話インテリジェンス: 電話・オンライン商談の内容を自動分析、トーク改善に活用
- 仮想アシスタント: AIがリード対応を補助、効率化
これらのツールを活用することで、マーケティングとインサイドセールスのコラボレーションが一層強化されます。
6. まとめ:分業と連携で成果を最大化
マーケティングとインサイドセールスは、目的・対象・手法・KPIが異なります。マーケティングは「リード獲得(量)」を、インサイドセールスは「リード育成・商談化(質)」を担う分業体制が基本です。
THE MODEL型営業組織(マーケ→IS→FS→CS)を構築し、共通KPI設定・CRM/SFAツール活用・相互フィードバックを実施することで、部門間の連携が強化され、営業成果が大幅に向上します。成功事例では商談数2倍以上、受注率向上の成果が報告されています。
分業のメリットは、生産性向上・属人化防止・商談品質向上・コスト削減です。ただし、中小企業ではリソース・リード数によって「分業」より「省略」が適切な場合もあるため、自社の状況に応じて判断することが重要です。
次のアクション:
- 自社の営業プロセスを整理し、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの役割を明確化する
- MQL定義・SQL定義・コール対象リード基準を部門間で合意する
- CRM・SFAツールを導入し、情報共有体制を整備する
- インサイドセールスの主要KPI(コール数・アポ数・商談化率等)を設定し、定期的に測定する
- マーケティング←→インサイドセールス間で相互フィードバックを実施し、リードの質を継続改善する
- 成功事例を参考に、自社に合った分業体制を構築する
分業と連携を実現し、BtoB営業の生産性向上と成果最大化を目指しましょう。
