インサイドセールスとフィールドセールスの違いとは?役割分担とKPI設定を解説

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

インサイドセールスとフィールドセールスの違いとは:営業分業の重要性

「営業組織をもっと効率化したい」「商談数を増やしたいけれど、営業担当が足りない」──そんな課題を抱えるB2B企業の営業マネージャーは少なくありません。

従来の1人営業スタイル(初回接触から受注まで1人が担当)では、移動時間や事務作業に追われ、商談に集中できない状況が続いていました。そこで注目されているのが、「インサイドセールス」と「フィールドセールス」の分業体制です。

この記事では、インサイドセールスとフィールドセールスの違い・役割分担・連携方法を、具体的なKPI例・組織構成パターンとともに解説します。営業効率化を検討している営業企画・営業マネージャーの方は、ぜひ参考にしてください。

この記事のポイント:

  • インサイドセールスは非対面で見込み客を育成、フィールドセールスは対面で商談・受注を担当
  • KPIは架電件数・商談獲得率(IS) vs 受注率・受注金額(FS)で設定
  • 分業体制のメリットは営業効率化・専門性向上・コスト削減、デメリットは部門間コミュニケーション断絶リスク
  • 連携成功には「商談トスアップ基準の明確化」「SFAツール活用」「定期的な情報共有」が重要
  • 企業規模・商材により向き不向きがあり、小規模企業・有形商材では一気通貫型が適している場合も

(1) 従来の1人営業から分業体制へ

従来のB2B営業では、1人の営業担当が初回接触から受注・アフターフォローまでを一気通貫で担当するスタイルが主流でした。しかし、このスタイルには以下の課題がありました。

従来の1人営業の課題:

  • 顧客訪問の移動時間が長く、商談件数を増やせない
  • 事務作業・見積作成に時間を取られ、営業活動に集中できない
  • 個人のスキルに依存し、組織としての営業力が可視化されない
  • 育成期間が長く、新人が成果を出すまで時間がかかる

こうした課題を解決するため、2010年代以降、SaaS企業を中心に「インサイドセールス」と「フィールドセールス」の分業体制が広がりました。

(2) 2024-2025年の営業DXと分業化トレンド

2020年以降のリモートワーク普及により、オンライン商談ツール(Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsなど)の活用が進み、インサイドセールスの重要性が一層増しています。

2024-2025年のトレンド:

  • 営業DXの推進により、SFAやMAツールを活用した営業の可視化・効率化が進んでいる
  • インサイドセールスは「電話のみ」から「オンライン商談も担当」へと業務範囲が拡大
  • フィールドセールスは「訪問のみ」から「訪問 + オンライン商談のハイブリッド」へ変化

分業化は単なるコスト削減策ではなく、営業プロセス全体の最適化・専門性向上を目指す取り組みとして位置づけられています。

(出典: インサイドセールスとフィールドセールスの変化とは - genne、2024年)

それぞれの定義と役割

(1) インサイドセールスの定義と役割(見込み客育成・商談創出)

インサイドセールスとは、電話・メール・オンライン会議など非対面の手段で見込み客(リード)にアプローチし、関係性を構築しながら商談化する営業手法です。

主な業務内容:

  • マーケティング部門から受け取ったリードへの初回接触(電話・メール)
  • リードナーチャリング(見込み客の育成):定期的な情報提供・課題ヒアリング
  • 受注確度が高まったリードをフィールドセールスに引き継ぐ(商談トスアップ)
  • 見込み客の状況管理(SFAへのデータ入力・更新)

役割:

  • 見込み客の興味関心を高め、商談化する
  • 営業活動の「量」を確保(多くのリードに効率的にアプローチ)
  • 受注確度の低いリードを育成し、適切なタイミングでフィールドセールスに引き継ぐ

(参考: インサイドセールスとは?基礎知識や役割、成功事例など詳しく解説 - Salesforce、2024年)

(2) フィールドセールスの定義と役割(商談・クロージング・受注)

フィールドセールスとは、顧客を直接訪問(または訪問とオンライン商談のハイブリッド)して対面で商談・提案を行い、受注を獲得する営業手法です。

主な業務内容:

  • インサイドセールスから引き継いだ商談の深堀りヒアリング
  • 顧客の課題に合わせた提案・デモンストレーション
  • 見積作成・条件交渉・契約クロージング
  • 受注後のフォロー(カスタマーサクセスへの引き継ぎ)

役割:

  • 商談を受注につなげる(営業活動の「質」を担保)
  • 複雑な提案・高額商談のクロージング
  • 顧客との信頼関係構築(対面での深いコミュニケーション)

(参考: 【転職者必見】フィールドセールスの仕事内容とは?向いている人も解説! - STOCK、2024年)

(3) 営業プロセス全体での位置づけ(マーケティング→IS→FS→CS)

分業体制では、営業プロセス全体を以下のように分担するのが一般的です。

営業プロセスの流れ:

  1. マーケティング: リード獲得(Web広告・展示会・ウェビナー等)
  2. インサイドセールス: リード育成・商談化(電話・メール・オンライン会議)
  3. フィールドセールス: 商談・提案・受注(訪問 or オンライン商談)
  4. カスタマーサクセス: 導入支援・継続利用促進・アップセル

この流れにより、各部門が専門性を発揮し、営業効率と受注率の両立を目指します。

インサイドセールスとフィールドセールスの主な違い

(1) アプローチ方法(非対面 vs 対面)

インサイドセールス:

  • 非対面(電話・メール・オンライン会議)
  • 移動時間がないため、1日に多数のリードにアプローチ可能
  • 初回接触〜商談化までのスピードが速い

フィールドセールス:

  • 対面(顧客訪問) + オンライン会議のハイブリッド
  • 移動時間があるため、1日の商談件数は限られる
  • 対面で信頼関係を構築しやすい

(2) KPIの違い(架電件数・商談獲得率 vs 受注率・受注金額)

インサイドセールスの主なKPI:

  • 架電件数(1日あたり・1週間あたり)
  • メール送信数・開封率
  • 商談獲得数・商談獲得率(リードから商談への転換率)
  • トスアップ数(フィールドセールスへの引き継ぎ件数)

フィールドセールスの主なKPI:

  • 商談件数(受注確度の高い商談)
  • 受注率(商談から受注への転換率)
  • 受注金額・平均受注単価
  • 商談期間(商談開始から受注までの期間)

KPIを明確に分けることで、各部門の役割が明確化され、成果を適切に評価できます。

(参考: インサイドセールスとフィールドセールスの連携ポイント! それぞれの違いや分業メリットを徹底解説 - Salesforce、2024年)

(3) 業務内容の違い(リード育成 vs 商談クロージング)

インサイドセールス:

  • リード育成(定期的な情報提供・課題ヒアリング)
  • 受注確度の見極め(BANT情報の確認: Budget, Authority, Needs, Timeframe)
  • 商談化のタイミング判断

フィールドセールス:

  • 具体的な提案書作成
  • デモ・トライアル実施
  • 契約条件交渉・見積調整
  • クロージング(受注獲得)

(4) 必要なスキルセット

インサイドセールスに求められるスキル:

  • 電話・メールでのコミュニケーション力
  • リード情報の整理・データ入力の正確性
  • 多数のリードを効率的に管理する時間管理能力
  • 受注確度を見極める判断力

フィールドセールスに求められるスキル:

  • 対面でのプレゼンテーション力・提案力
  • 顧客の課題を深掘りするヒアリング力
  • 複雑な商談をクロージングする交渉力
  • 信頼関係を構築する人間力

分業体制のメリットとデメリット

(1) メリット(営業効率化・専門性向上・コスト削減・可視化)

営業効率化:

  • インサイドセールスが移動時間なしで多数のリードにアプローチ
  • フィールドセールスは受注確度の高い商談に集中できる
  • 結果として商談件数・受注件数の増加が期待できる

専門性向上:

  • 各部門が特定の業務に集中することで、スキルが向上
  • インサイドセールスはリード育成のプロ、フィールドセールスはクロージングのプロに

コスト削減:

  • 移動交通費・移動時間の削減
  • 人材育成期間の短縮(役割が明確なため、新人が早期に成果を出しやすい)

営業プロセスの可視化:

  • SFAツールでリード状況・商談進捗を一元管理
  • 組織全体の営業活動が可視化され、ボトルネックの特定が容易

(参考: 【2025版】インサイドセールスとは?基礎知識やメリット・特徴・役割を解説 - ウィルオブ・ワーク、2025年)

(2) デメリット(コミュニケーション断絶・顧客体験の分断・導入コスト)

部門間コミュニケーション断絶のリスク:

  • インサイドセールスとフィールドセールスの情報共有が不十分だと、顧客に同じ質問を繰り返すなど顧客体験を損なう可能性
  • 「トスアップしたリードが受注に至らない」といった不満が生じやすい

顧客体験の一貫性欠如:

  • 担当者が変わることで、顧客が「たらい回しにされた」と感じる可能性
  • インサイドセールスとフィールドセールスで温度感が異なると、顧客の期待値とのギャップが生じる

導入コスト:

  • 組織再構築(部門の新設・役割定義)
  • SFA・MAツールの導入・運用コスト
  • 社内教育・研修のコスト

(3) 企業規模・商材による向き不向き

分業体制が適している企業:

  • 大企業・中堅企業(従業員100名以上)
  • SaaS・無形サービスなど、オンライン完結しやすい商材
  • リード数が多い企業(月100件以上)
  • 営業プロセスが複雑・長期化しやすい商材

一気通貫型が適している企業:

  • 小規模企業(従業員50名以下)
  • 有形商材(実物を見せる必要がある)
  • 単価が低い・商談期間が短い商材
  • リード数が少ない企業(月50件未満)

分業体制のメリット・デメリットは企業規模や業種により異なるため、一律に推奨できるものではありません。自社の営業体制と商材特性を踏まえた判断が重要です。

連携を成功させるポイント(トスアップ・ツール・情報共有)

(1) 商談トスアップの基準設計(受注確度・検討フェーズ)

インサイドセールスからフィールドセールスへの引き継ぎタイミング(商談トスアップ)を明確に設計することが、連携成功の鍵です。

トスアップ基準の例:

  • BANT情報が明確化(Budget: 予算、Authority: 決裁者、Needs: ニーズ、Timeframe: 導入時期)
  • 具体的な検討段階に入った(「情報収集中」から「比較検討中」へ)
  • 受注確度スコアが一定値以上(例:70点以上)
  • オンライン商談を実施し、顧客の本気度を確認できた

トスアップ基準を設計する際の注意点:

  • 基準が曖昧だと、フィールドセールスが「受注確度の低いリードばかり回される」と不満を持つ
  • 基準が厳しすぎると、商談化の機会を逃す(温度感が冷める)
  • 定期的に基準を見直し、受注率・商談期間のデータをもとに最適化する

(2) SFAツールによる営業活動の可視化

分業体制では、SFA(営業支援システム)の活用が前提となります。

SFAの主な機能:

  • リード情報・商談情報の一元管理
  • 営業活動履歴の記録(架電・メール・訪問)
  • 商談進捗の可視化(パイプライン管理)
  • KPIダッシュボード(架電件数・商談獲得率・受注率など)

SFA活用のメリット:

  • インサイドセールスとフィールドセールスが同じ情報を共有できる
  • 商談トスアップ時に、顧客情報・検討状況が即座に引き継がれる
  • マネージャーが営業活動を可視化し、ボトルネックを早期発見できる

(参考: インサイドセールスとフィールドセールスの違いや分業化のコツを解説 - iTSCOM、2024年)

(3) 顧客情報・検討状況の詳細な共有

商談トスアップ時には、以下の情報を詳細に共有することが重要です。

共有すべき情報:

  • 顧客の基本情報(企業規模・業種・担当者名・役職)
  • これまでのコミュニケーション履歴(何回架電したか、どんな質問があったか)
  • 顧客の課題・ニーズ(何に困っているか、どんな解決を求めているか)
  • 検討状況(予算・導入時期・競合検討状況)
  • 顧客の性格・コミュニケーションスタイル(メール好き、電話好き等)

情報共有が不十分な場合のリスク:

  • フィールドセールスが「顧客の課題を理解していない状態」で商談に臨む
  • 顧客に同じ質問を繰り返し、「前の担当者に話したのに…」と不信感を与える
  • 商談期間が長期化し、受注率が低下する

(4) 定期的な連携会議とフィードバックループ

部門間の連携を円滑にするため、定期的な連携会議を実施することが推奨されます。

連携会議の内容例:

  • 週次・月次の商談トスアップ振り返り(受注率・商談期間の確認)
  • フィールドセールスからインサイドセールスへのフィードバック(「こういうリードは受注しやすい」「こういう情報があるとありがたい」)
  • トスアップ基準の見直し(受注率が低い場合は基準を厳しくする等)
  • 成功事例・失敗事例の共有

フィードバックループの重要性:

  • インサイドセールスは「どんなリードが受注しやすいか」を学習し、リード育成の質が向上
  • フィールドセールスは「インサイドセールスがどんな情報を収集しているか」を理解し、商談準備が効率化
  • 組織全体として営業プロセスが最適化される

まとめ:企業規模・商材別の最適な組織形態

インサイドセールスとフィールドセールスの分業体制は、営業効率化・専門性向上・コスト削減に有効な手法です。しかし、企業規模・商材・リード数により向き不向きがあり、一律に推奨できるものではありません。

次のアクション:

  • 自社の営業体制と課題を整理する(移動時間が長い、商談数を増やせない等)
  • 分業体制のメリット・デメリットを社内で議論する
  • トスアップ基準・KPI設計を明確化する
  • SFAツールの導入・運用体制を検討する
  • 小規模でテスト導入し、受注率・商談期間のデータをもとに最適化する

分業体制の成功には、「明確なトスアップ基準」「SFAツールによる情報共有」「定期的なフィードバックループ」が不可欠です。自社に合った組織形態を設計し、営業活動の効率化と受注率の向上を目指しましょう。

※この記事は2025年12月時点の情報です。営業組織の設計・ツール選定は各社の状況により異なりますので、詳細は専門家にご相談ください。

よくある質問

Q1インサイドセールスとフィールドセールスの役割の違いは何ですか?

A1インサイドセールスは非対面(電話・メール・オンライン会議)で見込み客を育成し商談を創出する役割を担います。一方、フィールドセールスは対面(訪問 or オンライン商談)で商談を進め、提案・クロージングを行い受注を獲得します。KPIも異なり、インサイドセールスは架電件数・商談獲得率、フィールドセールスは受注率・受注金額を重視します。

Q2どのタイミングでインサイドセールスからフィールドセールスに引き継ぐべきですか?

A2受注確度が高まったタイミング(BANT情報が明確化、具体的な検討段階に入った時点)で引き継ぐのが一般的です。企業ごとに「トスアップ基準」を明確に設計し、温度感が冷めないうちに引き継ぐことが重要です。基準が曖昧だと受注率低下、厳しすぎると機会損失につながります。

Q3分業体制のメリット・デメリットは何ですか?

A3メリットは営業効率化(移動時間削減)、専門性向上、コスト削減、営業プロセスの可視化です。デメリットは部門間コミュニケーション断絶リスク、顧客体験の一貫性欠如、導入コスト(組織再構築・ツール導入)です。SFAツールの活用と定期的な連携会議で課題を軽減できます。

Q4小規模企業でも分業体制を導入すべきですか?

A4一律には推奨できません。分業は大企業・SaaS・無形商材・リード数が多い企業に適しています。小規模企業(従業員50名以下)や有形商材・単価が低い商材・リード数が少ない企業では、一気通貫型(1人が初回接触から受注まで担当)の方が柔軟で効果的な場合があります。営業リソースと商材特性で判断してください。

Q5分業体制で連携を成功させるポイントは何ですか?

A5「明確な商談トスアップ基準の設計」「SFAツールによる営業活動の可視化」「顧客情報・検討状況の詳細な共有」「定期的な連携会議とフィードバックループ」の4点が重要です。特にトスアップ時に顧客の課題・検討状況を詳細に共有しないと、顧客体験を損ない受注率が低下します。

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Decisense編集部

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