営業組織の分業体制を検討しているが、インサイドセールスとフィールドセールスの役割分担が分からない...
B2B企業の営業マネージャーや経営者の中には、「インサイドセールスとフィールドセールスの違いがよく分からない」「どのように役割分担を決めればいいのか」「分業体制を導入したいが連携がうまくいくか不安」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、インサイドセールスとフィールドセールスの基本的な違いから、効果的な役割分担の設計方法、連携を成功させるポイント、よくある失敗パターンまで体系的に解説します。営業分業体制で成果を出すための具体的な進め方をご紹介します。
この記事のポイント:
- インサイドセールスは非対面でリード育成〜商談獲得、フィールドセールスは対面で商談〜クロージングを担当
- 分業のメリットは専門性向上、属人化防止、課題の特定しやすさ
- 役割分担はプロセス別(営業段階ごと)またはエリア別(地理的条件)で設計する
- 連携成功の鍵はSFA/CRM活用、連携KPI設定、引き継ぎ情報の粒度統一、定期的な相互フィードバック
- 失敗の主な原因は役割の曖昧さ、情報共有不足、KPIの設計ミス
1. インサイドセールスとフィールドセールスとは|基本的な違いと役割
まず、インサイドセールスとフィールドセールスの定義と基本的な違いを整理します。
(1) インサイドセールスの定義と役割(非対面・リード育成〜商談獲得)
インサイドセールスとは、電話・メール・Web会議など非対面で行う営業活動のことです。内勤営業、リモートセールスとも呼ばれます。
主な役割:
- 見込み顧客(リード)との初回接点
- リードナーチャリング(見込み顧客の育成)
- リードクオリフィケーション(見込み顧客の購買可能性の見極め)
- 商談獲得(フィールドセールスへの引き継ぎ)
インサイドセールスは、単なる「電話営業」ではなく、顧客の購買プロセスに寄り添い、適切なタイミングで商談化する戦略的な活動です(出典:Salesforce「インサイドセールスとフィールドセールスの連携ポイント」2024年)。
(2) フィールドセールスの定義と役割(対面・商談〜クロージング)
フィールドセールスとは、顧客先への訪問・対面で行う営業活動のことです。外勤営業、訪問営業とも呼ばれます。
主な役割:
- 商談の実施(提案・デモンストレーション)
- 顧客の課題の深掘り・ニーズの詳細把握
- クロージング(契約締結)
- 既存顧客へのアップセル・クロスセル
フィールドセールスは、対面での信頼関係構築や、複雑な提案が必要な商材の営業に強みを持ちます。
(3) KPIの違い|架電数・商談獲得率 vs 受注率・受注金額
インサイドセールスとフィールドセールスでは、KPI(重要業績評価指標)が異なります(出典:SALES ROBOTICS「インサイドセールスとフィールドセールスの違いと役割」2024年):
インサイドセールスのKPI:
- 架電数(1日あたりの電話件数)
- 着電率(電話が繋がった割合)
- 商談獲得率(商談化した割合)
- 商談数(フィールドセールスへ引き継いだ件数)
フィールドセールスのKPI:
- 商談数(実施した商談の件数)
- 受注率(商談から受注に至った割合)
- 受注金額(契約金額の合計)
- 平均受注単価
このように、インサイドセールスは「量」(どれだけ多くの見込み顧客にアプローチし、商談を生み出すか)、フィールドセールスは「質」(どれだけ高い確率で受注し、大きな金額を獲得するか)を重視する傾向があります。
(4) 市場動向|コロナ禍以降の導入加速
2020年のコロナ禍以降、「インサイドセールス」の検索数が急増し、BtoB企業での導入が加速しています。経済産業省の「DXレポート」でも、企業の営業デジタル化が重要なテーマとして位置づけられています(出典:経済産業省「DXレポート」2024年)。
スマートキャンプの「インサイドセールス業界レポート2024-2025」によれば、インサイドセールス市場は成長を続けており、デジタルツールの進化(オンライン商談ツール、AIによる営業支援など)も導入を後押ししています(出典:スマートキャンプ「インサイドセールス業界レポート2024-2025」2024年)。
2. 営業分業体制のメリットと導入が進む背景
営業組織を分業化することで、どのようなメリットが得られるのかを解説します。
(1) メリット1:専門性向上と営業効率化
分業体制では、各担当者が特定の営業プロセスに集中できるため、専門性が高まります。
具体的な効果:
- インサイドセールスは架電・メールフォローのスキルを磨ける
- フィールドセールスは提案力・クロージング力を強化できる
- 各プロセスでのベストプラクティスが蓄積される
- 営業プロセス全体の効率が向上する
一人の営業担当者がすべてのプロセスを担当する場合、リード発掘から契約まで時間がかかり、非効率になりがちです。分業により、各担当者が得意領域に集中できることで、全体のスピードが上がります。
(2) メリット2:属人化の防止と組織の安定
従来の営業スタイルでは、顧客情報や営業ノウハウが個々の営業担当者に属人化しがちでした。分業体制では、プロセスごとにノウハウが組織に蓄積されるため、属人化を防ぐことができます。
具体的な効果:
- 営業担当者の退職・異動時の影響を最小限に抑えられる
- 新人育成がしやすくなる(担当プロセスに特化した研修が可能)
- 組織全体の安定性が向上する
(3) メリット3:課題の特定と改善がしやすい
分業体制では、営業プロセスが細分化されているため、どの段階でボトルネックが発生しているかを特定しやすくなります。
具体的な効果:
- 「リード獲得は十分だが商談化率が低い」→ インサイドセールスのアプローチを改善
- 「商談数は多いが受注率が低い」→ フィールドセールスの提案力を強化
- データに基づいたPDCAサイクルを回せる
(4) 企業のDX推進と営業デジタル化の動向
経済産業省の「DXレポート」では、多くの企業が営業プロセスのデジタル化を進めていると報告されています。SFA/CRM、MAツール、Web会議ツールなどの普及により、非対面営業の環境が整ってきたことも、分業体制導入の追い風となっています(出典:経済産業省「DXレポート」2024年)。
3. 効果的な役割分担の設計方法|プロセス別・エリア別の考え方
営業分業体制の役割分担は、自社のサービスや状況に応じて柔軟に設計することが重要です。
(1) プロセス別分業(リード獲得→育成→商談→受注の段階ごと)
最も一般的な分業方法は、営業プロセスの段階ごとに役割を分ける方法です。
典型的なプロセス別分業:
- マーケティング部門: リード獲得(広告、セミナー、コンテンツマーケティング等)
- インサイドセールス(SDR): リード育成〜商談獲得(電話・メールでのフォロー)
- フィールドセールス: 商談〜クロージング(提案・契約締結)
- カスタマーサクセス: 既存顧客の活用支援・アップセル
この方法は、各担当者が専門性を高めやすく、プロセスごとの課題を特定しやすいというメリットがあります。
(2) エリア別分業(遠隔地はインサイド、近隣はフィールド)
もう一つの方法は、地理的条件に応じて役割を分ける方法です。
エリア別分業の例:
- 遠隔地(地方都市、海外など): インサイドセールスが担当(Web会議で商談・契約まで完結)
- 近隣地域(本社から訪問可能なエリア): フィールドセールスが担当(対面での提案)
この方法は、移動コストを削減しつつ、対面が必要な顧客には直接訪問できるというメリットがあります。
(3) 引き渡しタイミングの明確化(ホットリードの定義統一)
プロセス別分業を採用する場合、インサイドセールスからフィールドセールスへの引き渡しタイミングを明確にすることが重要です。
引き渡しタイミングの基準例:
- BANT情報(Budget/Authority/Needs/Timeframe)が確認できた時点
- リードスコアが一定以上に達した時点
- 顧客が具体的な提案を希望した時点
「ホットリード」の定義を社内で統一しておくことで、インサイドセールスとフィールドセールスの認識のズレを防ぐことができます(出典:iTSCOM for Business「インサイドセールスとフィールドセールスの分業化のコツ」2024年)。
(4) 企業規模・商材による設計の違い
役割分担の設計は、企業規模や商材の特性により異なります。
小規模企業(従業員30名未満):
- インサイドセールス専任を置かず、フィールドセールスがリード育成も兼任するケースが多い
中堅企業(従業員30〜300名):
- インサイドセールス1〜3名、フィールドセールス5〜10名程度の体制が一般的
- プロセス別分業を導入しやすい規模
大企業(従業員300名以上):
- インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの完全分業体制
- SDR(反響型)とBDR(新規開拓型)を分けることも
高額商材(数百万〜数千万円):
- 対面での信頼関係構築が重要なため、フィールドセールスの役割が大きい
低額商材(数万〜数十万円):
- インサイドセールスのみで契約まで完結するケースも増えている
4. 連携を成功させる5つのポイント
インサイドセールスとフィールドセールスの連携を成功させるための具体的なポイントを解説します。
(1) ポイント1:SFA/CRMで顧客情報・案件状況をリアルタイム共有
連携の基盤となるのが、SFA/CRM(営業支援・顧客情報管理ツール)の活用です。
SFA/CRMの主な機能:
- 顧客情報の一元管理(企業情報、担当者情報、過去のやり取り履歴)
- 案件管理(進捗状況、確度、金額、受注予定日など)
- 活動履歴の記録(架電、メール、商談内容など)
- レポート・ダッシュボード(KPIの可視化)
代表的なツールとして、Salesforce Sales Cloud、HubSpot Sales Hubなどがあります(出典:Salesforce公式「Sales Cloud」、HubSpot公式「Sales Hub」2024年)。
SFA/CRMにすべての情報を記録することで、インサイドセールスとフィールドセールスがリアルタイムで顧客情報を共有でき、スムーズな引き継ぎが可能になります。
(2) ポイント2:連携KPIの設定(インサイドセールスのKPIに受け渡し後の成約数も含める)
インサイドセールスのKPIを「商談数」だけにすると、質の低いアポイントを量産してしまうリスクがあります。
連携KPIの例:
- インサイドセールスのKPI:商談数 + フィールドセールスへの受け渡し後の成約数(または成約率)
- フィールドセールスのKPI:受注数 + インサイドセールスから引き継いだ案件の受注率
このように、相互の成果に影響を与えるKPIを設定することで、両部門が協力する動機が生まれます。
(3) ポイント3:引き継ぎ情報の粒度を統一(フォーマット化)
インサイドセールスからフィールドセールスへの引き継ぎ情報にバラツキがあると、フィールドセールスの商談準備に支障が出ます。
引き継ぎ情報のフォーマット例:
- 企業情報(企業名、業種、従業員数、売上規模)
- 担当者情報(氏名、役職、連絡先)
- 現在の課題・ニーズ
- BANT情報(Budget/Authority/Needs/Timeframe)
- 過去のやり取り履歴(主な会話内容、提供した資料)
- 次回アクションの提案
引き継ぎフォーマットを整備し、SFA/CRMに記録することで、情報の粒度を統一できます。
(4) ポイント4:定期的な相互フィードバックとMTG実施
インサイドセールスとフィールドセールス間で、定期的に相互フィードバックを行うことが重要です。
フィードバックの内容例:
- フィールドセールス → インサイドセールス:「引き継がれた案件の質はどうか」「もっと確認してほしい情報は何か」
- インサイドセールス → フィールドセールス:「商談後のフィードバックが欲しい」「どのようなリードを優先してほしいか」
週次または月次でミーティングを設定し、情報共有と改善策の検討を行うことで、連携の質が向上します。
(5) ポイント5:トスアップフローの6ステップ設計
CREATIVE HOPEが提唱する「トスアップフロー(引き継ぎフロー)の6ステップ」は、連携を体系的に設計するための参考になります(出典:CREATIVE HOPE「トスアップフローの設計方法を6ステップで解説」2024年):
- ホットリードの定義明確化
- 引き継ぎ基準の設定(BANT情報の確認度合いなど)
- 引き継ぎフォーマットの作成
- 引き継ぎタイミングの統一(週次でまとめて引き継ぐ、随時引き継ぐなど)
- フィードバックループの構築
- 定期的な見直しと改善
5. よくある失敗パターンと対策|分業がうまくいかない原因
営業分業体制でよくある失敗パターンと、その対策を解説します。
(1) 失敗パターン1:役割分担の曖昧さ(責任の所在不明確)
役割分担が曖昧だと、「誰がどこまで担当するのか」が不明確になり、リードの取りこぼしが発生します。
問題の例:
- インサイドセールスが「まだ商談化には早い」と判断し、フィールドセールスに引き継がない
- フィールドセールスが「まだ温度感が低い」と判断し、商談を後回しにする
- 結果的に、顧客が競合に流れてしまう
対策:
- ホットリードの定義を明確にし、引き渡し基準を数値化する(例:リードスコア80点以上)
- 「商談」の定義を統一する(例:Web会議で30分以上の提案を行うこと)
(2) 失敗パターン2:情報共有不足(引き継ぎ情報のバラツキ)
引き継ぎ情報の粒度がバラバラだと、フィールドセールスの商談準備に支障が出ます。
問題の例:
- ある案件は詳細な情報が記録されているが、別の案件は「アポ取得済み」としか書かれていない
- フィールドセールスが商談前に改めて情報収集する必要があり、二度手間になる
対策:
- 引き継ぎフォーマットを整備し、必須項目を明確にする
- SFA/CRMに記録する際のルールを統一する
(3) 失敗パターン3:KPIの設計ミス(架電数だけをKPIにすると質の低いアポが増える)
インサイドセールスのKPIを「架電数」だけにすると、とにかく電話をかけることが目的化し、質の低いアポイントが増える恐れがあります。
問題の例:
- インサイドセールスが「とりあえず商談化」を目指し、顧客のニーズを十分に把握しないまま引き継ぐ
- フィールドセールスが商談に行ったものの、顧客の温度感が低く、受注に至らない
- フィールドセールスの受注率が下がり、モチベーションも低下する
対策:
- インサイドセールスのKPIに「商談化率」「受け渡し後の成約率」も含める
- 質を重視したKPI設計にする
(4) 成功事例|導入効果と成果
BRIDGEやDIGINEXTがまとめた成功事例では、以下のような効果が報告されています(出典:BRIDGE「BtoB企業がインサイドセールスを導入するメリットと導入事例」、DIGINEXT「インサイドセールスの事例5選から学ぶ成功の秘訣【2024年版】」2024年):
成功事例の具体的な成果:
- 商談数が2倍に増加(インサイドセールスが効率的にリードをフォロー)
- 受注率が1.5倍に向上(質の高いリードがフィールドセールスに引き継がれた)
- 営業プロセスのリードタイムが30%短縮(迅速なフォローアップ)
成功要因:
- 役割分担とホットリードの定義を明確にした
- SFA/CRMで情報共有を徹底した
- 連携KPIを設定し、両部門が協力する仕組みを作った
6. まとめ|営業分業体制で成果を出すために
インサイドセールスとフィールドセールスの分業体制は、専門性向上、属人化防止、課題の特定しやすさといったメリットをもたらします。役割分担はプロセス別またはエリア別で設計し、自社の商材や企業規模に応じて柔軟に調整することが重要です。
成功のための重要ポイント:
- 役割分担とホットリードの定義を明確にし、引き渡し基準を数値化する
- SFA/CRMで顧客情報・案件状況をリアルタイム共有する
- 連携KPIを設定し、両部門が協力する仕組みを作る
- 引き継ぎ情報の粒度を統一し、フォーマット化する
- 定期的な相互フィードバックとミーティングで連携の質を向上させる
次のアクション:
- 自社の営業プロセスを可視化し、どの段階で分業するかを検討する
- ホットリードの定義と引き渡し基準を明確にする
- SFA/CRMツールの導入または活用強化を検討する
- 小規模な試験運用から始め、効果を検証しながら拡大する
営業分業体制への移行は、段階的に進めることが推奨されます。いきなり完全分業を目指すのではなく、まず一部の営業プロセスから試験的に分業を導入し、PDCAサイクルを回しながら最適化していきましょう。
※この記事は2024年11月時点の情報をもとに作成しています。営業組織の設計は企業の状況により最適解が異なるため、自社の実情に合わせて柔軟に調整してください。
