大量のリードをどう優先順位付けすればいいか分からない...
HubSpotを導入している企業のマーケティング・営業担当者にとって、リードの優先順位付けは重要な課題です。しかし、「リードが増えすぎて、どれから対応すればいいか分からない」「優先度の高いリードを見逃している」「営業リソースが無駄に使われている」といった悩みを抱えているケースは少なくありません。
実際、リードの質を見極めずに全件フォローすると、営業リソースが分散し、成約率が低下します。この課題を解決する手法が「リードスコアリング」です。2024年には、行動ベースの「エンゲージメントスコア」と属性ベースの「適合スコア」に分離する新機能がリリースされ、より精緻なリード評価が可能になっています。
この記事では、HubSpotリードスコアリングの基礎知識から設計方法、設定手順、運用改善のPDCAサイクルまで、実務担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。
この記事のポイント:
- リードスコアリングは見込み客の行動や属性を数値化し、購買可能性を評価するプロセス
- 2024年新機能でエンゲージメントスコア(行動)と適合スコア(属性)に分離
- BANT条件(予算、決裁権、ニーズ、導入時期)を基準にスコア設計
- Professional/Enterpriseプラン以上で利用可能、予測スコアリングはEnterprise限定
- 試行錯誤で成約データを見ながら閾値を調整することが重要
1. リード優先順位付けの課題とスコアリングの役割
(1) 営業リソースの最適配分の重要性
リード獲得が増えると、以下のような課題が発生します:
- 優先順位が不明確: どのリードから対応すべきか判断できない
- 営業リソースの分散: 成約可能性の低いリードにも同じ労力をかけてしまう
- 機会損失: 高スコアのリードへの対応が遅れ、商談機会を逃す
これらの課題により、営業チームの生産性が低下し、成約率の向上が困難になります。
(2) リードスコアリングによる効率化
リードスコアリングを導入すると、以下のメリットが得られます:
- 優先順位の明確化: スコアに基づいてリードを分類し、対応優先度を判定
- 営業リソースの最適配分: 高スコアのリードに集中的にアプローチ
- 成約率の向上: 購買可能性の高いリードを見逃さない
- マーケティングとの連携強化: スコアを基準にマーケティングチームと営業チームの引き継ぎを明確化
2. HubSpotリードスコアリングの基礎知識
(1) リードスコアリングとは
リードスコアリングは、見込み客の行動やプロファイル情報を数値化し、購買可能性を評価するプロセスです。行動(Webサイト訪問、コンテンツダウンロード、メール反応等)と属性(役職、業界、企業規模等)に基づいてスコアを算出します。
スコアが高いリードほど、購買意欲が高く、成約可能性が高いと判定されます。
(2) 2024年新機能(エンゲージメントスコアと適合スコア)
2024年、HubSpotは完全新機能「リードスコアリング」をリリースしました。これにより、従来の単一スコアから、以下の2種類に分離されました:
エンゲージメントスコア(行動ベース):
- Webサイト訪問、コンテンツダウンロード、メール開封・クリック等の行動を評価
- 見込み客の興味関心・アクティブ度を測定
適合スコア(属性ベース):
- 役職、業界、企業規模、地域等の属性を評価
- 自社のターゲット顧客との適合度を測定
2024年11月のアップデートで、「複合スコア」作成機能が追加され、両スコアを組み合わせた総合評価が可能になっています。
(3) 予測リードスコアリング(Enterprise限定)
予測リードスコアリングは、機械学習アルゴリズムで90日以内にコンタクトが成約する確率を判定する機能です。Enterprise版のMarketing HubとSales Hubで利用可能です。
主な特徴:
- AIが過去の成約データを学習し、成約確率を自動算出
- 十分な履歴データがあれば、精度の高い予測が可能
- 2024年新機能のAIスコアリングでは、四半期・半期ごとに自動でスコア生成が可能
(4) プラン別の利用可能機能
HubSpotのリードスコアリング機能は、プランにより利用可能範囲が異なります:
| プラン | スコアリング機能 | 複合スコア | 予測スコアリング |
|---|---|---|---|
| Starter/Free | 利用不可 | 利用不可 | 利用不可 |
| Professional | 利用可能(上限100点固定) | 利用可能 | 利用不可 |
| Enterprise | 利用可能(上限変更可能) | 利用可能 | 利用可能 |
3. スコアリングモデルの設計
(1) BANT条件とスコアリング基準
HubSpotは、BANT条件などの指標を使用することを推奨しています。BANT条件は、以下の4要素でリードを評価する手法です:
- Budget(予算): 導入予算がある
- Authority(決裁権): 決裁権を持っている
- Needs(ニーズ): 自社サービスへのニーズがある
- Timeframe(導入時期): 導入時期が明確
これらの要素を基準に、スコアリングモデルを設計します。
(2) 行動スコア(エンゲージメント)の設定
行動スコアは、見込み客の行動に基づいて加点・減点します。
加点例:
- Webサイト訪問: +5点
- 特定ページ(料金ページ等)訪問: +10点
- 資料ダウンロード: +10点
- メール開封: +3点
- メールクリック: +5点
- ウェビナー参加: +15点
減点例:
- 30日間活動なし: -5点
- メール配信停止: -10点
(3) 属性スコア(適合性)の設定
属性スコアは、見込み客の属性に基づいて加点・減点します。
加点例:
- 役職が部長以上: +10点
- 従業員数100名以上: +5点
- ターゲット業界(製造業等): +10点
- ターゲット地域(東京都等): +5点
減点例:
- 役職が学生: -20点
- 個人メールアドレス(Gmail等): -10点
(4) 複合スコアによる総合評価
2024年11月のアップデートで、エンゲージメントスコアと適合スコアを組み合わせた「複合スコア」が作成可能になりました。
複合スコアの設計例:
複合スコア = (エンゲージメントスコア × 0.6) + (適合スコア × 0.4)
行動と属性の重み付けを調整することで、自社の営業戦略に最適なスコアリングモデルを構築できます。
4. HubSpotスコアリングの設定方法
(1) 設定手順(設定アイコン→データ管理→プロパティー→HubSpotスコア編集)
HubSpotスコアリングの設定手順は以下の通りです:
- HubSpotにログイン: HubSpotアカウントにログイン
- 設定画面を開く: 画面右上の設定アイコンをクリック
- プロパティーに移動: 左メニューから「データ管理」→「プロパティー」を選択
- スコア検索: 検索ボックスで「スコア」を検索
- HubSpotスコアを編集: 「HubSpotスコア」プロパティーをクリックして編集
- 加点・減点ルールを設定: ルールを追加して保存
(2) 加点・減点ルールの設定
ルール設定では、以下の項目を指定します:
条件の設定:
- プロパティー(役職、業界、メールドメイン等)
- イベント(ページ訪問、フォーム送信、メール開封等)
- 条件(一致、含む、以上、以下等)
スコアの設定:
- 加点: +5点、+10点等
- 減点: -5点、-10点等
設定例:
条件: 役職 = 部長
スコア: +10点
条件: ページ訪問 = 料金ページ
スコア: +10点
条件: 最終活動日 > 30日前
スコア: -5点
(3) テスト用コンタクトでの動作確認
設定後は、テスト用コンタクトで動作確認を行います:
- テスト用コンタクトを作成: 架空のコンタクトを作成
- 属性を設定: 役職、業界等を設定
- 行動を模擬: ページ訪問、メール開封等をテスト
- スコアを確認: 期待通りにスコアが加算・減算されているか確認
問題がなければ、本番運用を開始します。
(4) スコア閾値の設定(ナーチャリング、MAフォロー、営業商談)
スコアに基づいてリードを分類し、対応方針を決定します。
分類例:
- 30点以下: ナーチャリング継続(定期メルマガ配信)
- 30〜60点: マーケティングチームフォロー(ウェビナー案内、資料提供等)
- 60点以上: 営業チーム商談対象(個別アプローチ、商談設定)
閾値は企業規模・業種により異なるため、成約データを見ながら調整します。
5. 運用改善とPDCAサイクル
(1) スコア分類と実際の成約率の分析
定期的にスコア分類別の成約率を分析します:
分析例:
- 60点以上のリードの成約率: 25%
- 30〜60点のリードの成約率: 8%
- 30点以下のリードの成約率: 2%
このデータを基に、閾値が適切か判断します。
(2) 閾値の調整と最適化
スコアリング基準に正解は一つではなく、試行錯誤でリード反応を見ながら調整が必要です。
調整例:
- 60点以上のリードが多すぎる → 閾値を70点に引き上げ
- 60点以上のリードの成約率が低い → 属性スコアの重み付けを見直し
- 特定の行動(料金ページ訪問等)の成約貢献度が高い → 加点を増やす
(3) AIスコアリングによる自動改善(2024年新機能)
2024年の新機能として、AIスコアリング導入により、四半期・半期ごとに自動でスコア生成が可能になりました。
主な機能:
- 過去の成約データを学習し、最適なスコアリングモデルを自動生成
- 定期的にモデルを更新し、精度を向上
- 手動調整の手間を削減
Enterprise版で利用可能です。
(4) 営業フィードバックの反映
営業チームからのフィードバックを定期的に収集し、スコアリングモデルに反映します。
フィードバック例:
- 「60点以上でも成約しないリードが多い」 → 属性スコアの見直し
- 「特定業界の成約率が高い」 → 業界スコアを追加
- 「ウェビナー参加者の成約率が高い」 → ウェビナー参加の加点を増やす
6. まとめ:効果的なスコアリング運用のポイント
HubSpotリードスコアリングは、見込み客の行動や属性を数値化し、購買可能性を評価するプロセスです。2024年の新機能により、エンゲージメントスコア(行動)と適合スコア(属性)に分離され、より精緻なリード評価が可能になっています。
BANT条件を基準にスコアリングモデルを設計し、試行錯誤で成約データを見ながら閾値を調整することが重要です。Professional/Enterpriseプラン以上で利用可能で、予測スコアリングはEnterprise限定です。
次のアクション:
- 現在のリード管理の課題を整理する
- BANT条件を基準にスコアリング基準を設計する
- テスト用コンタクトで動作確認を行う
- スコア閾値を設定し、営業チームと連携する
- 定期的に成約率を分析し、閾値を最適化する
- 営業フィードバックを収集し、モデルに反映する
- AIスコアリング機能(Enterprise)の導入を検討する
効果的なスコアリング運用により、営業リソースの最適配分と成約率向上を目指しましょう。
