HubSpot CRMの使い方を学ぶ意義と本記事の目的
「営業の案件管理をExcelでやっているけれど、誰がどの案件を担当しているか分からない」「商談の進捗が可視化できず、売上予測が立てられない」——こうした課題を抱えるB2B企業の営業担当者は少なくありません。
HubSpot CRMは、無料プランから使える顧客関係管理ツールで、コンタクト管理・商談管理・営業レポートなどの機能を備えています。Excelでの煩雑な管理から脱却し、営業活動を効率化できます。
この記事では、HubSpot CRMの基本的な使い方を、初期設定から営業活動への実践活用まで、ステップバイステップで解説します。
この記事のポイント:
- HubSpot CRMは無料プランで基本機能が利用可能(顧客管理・フォーム・Eメールトラッキング)
- 初期設定は30分〜1時間で完了(ユーザー追加・タイムゾーン・トラッキングコード)
- コンタクト・取引・パイプライン管理で営業プロセスを可視化
- Gmail・Outlook、Slack・Zoomなど1,500以上のアプリと連携可能
- 2024年の新機能でAI機能群「Breeze」が搭載され、さらに便利に
HubSpot CRMとは?基本機能と料金プラン
(1) HubSpot CRMの概要と5つのHub構成
HubSpot CRMは、HubSpot社が提供する顧客関係管理(CRM)プラットフォームで、マーケティング・営業・カスタマーサービスを統合管理できます。
HubSpotの5つのHub:
- CRM(無料): 顧客・商談管理の基盤。すべてのHubの土台となる
- Marketing Hub: メール配信、LP作成、リード獲得などのマーケティング機能
- Sales Hub: 商談管理、見積作成、営業自動化などの営業支援機能
- Service Hub: ヘルプデスク、チケット管理などのカスタマーサービス機能
- Content Hub: Webサイト・コンテンツ管理(旧CMS Hub、2024年4月リニューアル)
- Operations Hub: データ品質管理、外部連携などの統合管理機能
これらのHubを組み合わせることで、マーケティングから営業、カスタマーサポートまでの一連の顧客体験を一元管理できます。
(2) 無料プランでできること(顧客管理・フォーム・Eメールトラッキング)
HubSpot CRMは無料プランから利用可能で、以下の基本機能が使えます。
無料プランの主な機能:
- コンタクト管理: 顧客・見込み客情報を登録・管理(登録数無制限)
- 取引管理: 商談・案件の進捗を管理
- パイプライン管理: 商談プロセスを可視化
- フォーム作成: ドラッグ&ドロップで簡単作成、データは自動でCRMに登録
- Eメールトラッキング: メール開封・リンククリックを追跡
- レポート機能: 営業KPIの可視化
- Gmail・Outlook連携: メールクライアントと連携
- モバイルアプリ: スマートフォンからアクセス可能
無料プランでも十分に実用的な機能が揃っているため、まずは無料で試してみるのが推奨されます。
(3) 有料プランとの違い(2024年3月の料金改訂反映)
2024年3月にHubSpotの料金体系が変更され、シートベースの課金に移行しました。
無料プランと有料プランの主な違い:
| 項目 | 無料プラン | 有料プラン(Starter以上) |
|---|---|---|
| 基本機能 | CRM・フォーム・Eメールトラッキング | 無料機能 + 高度な機能 |
| ユーザー数 | 閲覧のみは無料、編集・作成は有料シート必要 | シート数に応じて課金 |
| 自動化機能 | 制限あり | ワークフロー自動化が充実 |
| レポート | 基本レポート | カスタムレポート・ダッシュボード |
| 連携 | 基本連携 | 高度な連携・API利用 |
| サポート | コミュニティ・ナレッジベース | チャット・電話サポート |
料金の目安(2024年11月時点):
- Sales Hub Starter: 月額2,160円〜(年払い、シート数により変動)
- Sales Hub Professional: 月額13,200円〜(年払い、シート数により変動)
- Sales Hub Enterprise: 月額20,400円〜(年払い、シート数により変動)
※最新の料金はHubSpot公式サイトでご確認ください。
(4) 2024年の新機能(AI機能群Breeze)
2024年のINBOUND(HubSpotの年次カンファレンス)で、200以上の新機能が発表されました。特に注目すべきは**AI機能群「Breeze」**の搭載です。
Breezeの3つの構成要素:
- Breeze Copilot: AIアシスタント。コンテンツ作成、データ分析、タスク自動化を支援
- Breeze Agents: 特定業務を自動化するAIエージェント(コンテンツ作成、見込み客育成、顧客サポートなど)
- Breeze Intelligence: 顧客データを強化・分析し、インサイトを提供
2024年の主な新機能:
- Content Hub(旧CMS Hub)のリニューアル(2024年4月): AIでコンテンツ作成・SEO対策が強化
- SNSモニタリング機能(2024年4月): Facebook、Instagram、LinkedInでメンション時にAIが返信原案作成
- Breeze AI連携: 営業メール作成、レポート自動生成などが可能に
初期設定のステップ(ユーザー追加・タイムゾーン・トラッキング)
(1) アカウント作成とユーザー追加
HubSpot CRMを利用するには、まずアカウントを作成します。
アカウント作成の手順:
- HubSpot公式サイトにアクセス
- 「無料で始める」をクリック
- メールアドレス・会社名・氏名を入力
- アカウント作成完了(数分で完了)
ユーザー追加の手順:
- 右上の設定アイコンをクリック
- 「ユーザーとチーム」を選択
- 「ユーザーを追加」をクリック
- メールアドレス・権限を設定して招待
(2) タイムゾーン・言語・通貨設定
アカウント作成後、基本設定を行います。
基本設定の手順:
- 設定 > アカウントの基本設定
- タイムゾーン: 「東京(日本)」を選択
- 言語: 「日本語」を選択
- 通貨: 「JPY(日本円)」を選択
- 保存
この設定により、レポートやタイムスタンプが日本時間で表示されるようになります。
(3) トラッキングコードの設置
Webサイトの訪問者を追跡するため、トラッキングコードを設置します。
トラッキングコード設置の手順:
- 設定 > トラッキングとアナリティクス > トラッキングコード
- 表示されたコードをコピー
- Webサイトの全ページの
</head>タグ直前に貼り付け - (または)WordPressプラグインやGTM(Google Tag Manager)経由で設置
トラッキングコードの役割:
- Webサイト訪問者の行動を追跡
- フォーム送信時にコンタクトを自動作成
- メール開封・リンククリックを追跡
(4) パイプライン(商談プロセス)の初期設定
パイプラインは、商談プロセスを可視化する仕組みです。自社の営業フローに合わせてカスタマイズします。
パイプライン設定の手順:
- 設定 > オブジェクト > 取引 > パイプライン
- デフォルトのパイプライン「Sales Pipeline」を編集
- ステージ名を自社の営業プロセスに合わせて変更
ステージ名の例:
- 初回接触
- 提案中
- 見積提示
- 契約交渉中
- 成約
- 失注
各ステージに「確度」を設定すると、売上予測がより正確になります。
(5) 所要時間の目安(30分〜1時間)
上記の初期設定は、設定ガイドに沿って進めれば30分〜1時間程度で完了します。初回は時間をかけて丁寧に設定することで、後の運用がスムーズになります。
主要機能の使い方(コンタクト・取引・パイプライン管理)
(1) コンタクト(顧客情報)の登録・管理
コンタクトは、HubSpotにおける顧客・見込み客の情報レコードです。
コンタクト登録の手順:
- 左メニューから「コンタクト」を選択
- 「コンタクトを作成」をクリック
- 必須項目(名前、メールアドレスなど)を入力
- その他の情報(会社名、役職、電話番号など)を追加
- 保存
コンタクト管理のポイント:
- フォーム送信やメール返信で自動的にコンタクトが作成される
- コンタクトレコードには過去のやり取り(メール、商談、タスク)がすべて記録される
- カスタムプロパティを追加して、自社に必要な情報を記録可能
(2) Excelからのデータインポート
既存のExcelデータをHubSpotにインポートできます。
データインポートの手順:
- 左メニューから「コンタクト」を選択
- 右上の「インポート」をクリック
- 「ファイルから開始」を選択
- Excelファイル(CSVまたはXLSX)をドラッグ&ドロップ
- 列のマッピング(Excelの列とHubSpotのプロパティを対応付け)
- インポート実行
インポート時の注意点:
- メールアドレスが必須項目(重複チェックのキーになる)
- 日付や数値の形式を確認(HubSpotの形式に合わせる)
- インポート前にバックアップを取っておく
(3) 取引(商談)の作成と進捗管理
取引は、商談・案件の情報レコードです。コンタクトと関連付けて管理します。
取引作成の手順:
- 左メニューから「取引」を選択
- 「取引を作成」をクリック
- 取引名、金額、ステージ、担当者を入力
- 関連するコンタクト・会社を選択
- 保存
取引ボードでの進捗管理:
- 取引ボード(カンバン形式)で商談の進捗を可視化
- ドラッグ&ドロップでステージを移動
- 各ステージの金額合計・案件数が一目で分かる
活用例:
- 週次営業会議で取引ボードを画面共有し、各案件の進捗を報告
- 成約見込みの高い案件を優先的にフォロー
- 長期滞留している案件を特定し、アクションを決定
(4) フォームの作成とCRM自動登録
HubSpotのフォーム機能を使うと、送信データが自動的にCRMに登録されます。
フォーム作成の手順:
- 左メニューから「マーケティング」>「フォーム」を選択
- 「フォームを作成」をクリック
- ドラッグ&ドロップで入力項目を配置
- サンクスメッセージまたはリダイレクト先を設定
- 埋め込みコードをコピーして、Webサイトに貼り付け
フォーム送信後の自動処理:
- 送信データが自動的にコンタクトとして登録される
- 担当者に通知メールが送信される
- ワークフローで自動フォローアップメールを送信(有料プラン)
(5) パイプラインのカスタマイズ方法
パイプラインは、商談の種類や事業部ごとに複数作成できます。
パイプラインのカスタマイズ例:
- 新規顧客向けパイプライン: 初回接触→提案→契約
- 既存顧客向けアップセルパイプライン: 提案→見積→契約
- 代理店向けパイプライン: 代理店選定→契約→稼働
自社の営業プロセスに合わせてカスタマイズすることで、より正確な進捗管理が可能になります。
営業活動への実践活用(レポート・連携・効率化)
(1) レポート機能でKPI可視化
HubSpot CRMでは、営業KPIを可視化するレポート機能が利用できます。
無料プランで利用可能な主なレポート:
- 取引レポート: ステージ別の案件数・金額
- 営業担当者別パフォーマンス: 担当者ごとの成約数・売上
- ファネル分析: リードから成約までの転換率
- 時系列分析: 月次・四半期での推移
レポート活用のポイント:
- ダッシュボードに重要なレポートを配置し、一目で状況把握
- 週次・月次でレポートをレビューし、課題を特定
- 目標達成に向けたアクションを決定
(2) Gmail・Outlook連携
HubSpotは、GmailやOutlookと連携できます。
連携のメリット:
- メールクライアントからHubSpotの情報にアクセス
- メール送信時に、相手のコンタクト情報や過去のやり取りを確認
- 送信したメールが自動的にHubSpotに記録される
- メール開封・リンククリックを追跡
連携設定の手順:
- HubSpotの設定 > 統合 > メール統合
- GmailまたはOutlookを選択
- 認証してアカウントを接続
- ブラウザ拡張機能をインストール(推奨)
(3) Slack・Zoom等1,500以上のアプリ連携
HubSpotは1,500以上のアプリと連携可能です。
主な連携アプリ:
- Slack: 取引の進捗や新規リードをSlackに通知
- Zoom: ミーティング予約とHubSpotを連携、録画を自動記録
- Zapier: HubSpotと他のツールを自動連携
- LinkedIn Sales Navigator: LinkedIn上での活動をHubSpotに記録
連携のメリット:
- 既存ツールを活かしたままHubSpotを導入できる
- データの二重入力を削減
- リアルタイムで情報共有できる
(4) 運用ルールの設計(データ記録ルール・更新担当者)
HubSpot CRMを活用するには、運用ルールを事前に設計することが重要です。
運用ルール設計のポイント:
- どのデータを記録するか: 必須項目、任意項目を定義
- 誰がいつ記録するか: 営業担当者が商談後24時間以内に更新など
- ステージ移行の基準: 各ステージに進む条件を明確化
- データ品質管理: 定期的にデータをレビューし、重複・欠落を修正
よくある失敗パターン:
- 「どの機能を使い、どの課題を解決するか」戦略を立てずに導入 → 活用が進まない
- データ記録ルールが曖昧 → データが属人化し、レポートが使えない
(5) HubSpot Academyでの学習
HubSpot Academyは、HubSpotが提供する無料の学習プラットフォームです。
HubSpot Academyで学べる内容:
- CRMの基本的な使い方
- 営業プロセスの最適化
- インバウンドマーケティングの基礎
- レポート・分析の活用法
推奨コース:
- 「HubSpotのCRMを設定してビジネス成長を促す」
- 「HubSpot Sales Hub ソフトウェア認定資格」
コースを修了すると認定資格が取得でき、実務に活かせる知識が身につきます。
まとめ:HubSpot CRMを使いこなすために
HubSpot CRMは、無料プランから使える強力な顧客管理ツールです。初期設定を丁寧に行い、自社の営業プロセスに合わせてカスタマイズすることで、営業活動を大幅に効率化できます。
この記事のまとめ:
- HubSpot CRMは無料プランで基本機能が充実(コンタクト・取引・パイプライン管理)
- 初期設定は30分〜1時間で完了(ユーザー追加・タイムゾーン・トラッキングコード・パイプライン)
- コンタクト・取引・パイプライン管理で営業プロセスを可視化
- Gmail・Outlook、Slack・Zoomなど1,500以上のアプリと連携可能
- 運用ルールを事前に設計し、HubSpot Academyで継続的に学習することが成功の鍵
次のアクション:
- HubSpotの無料アカウントを作成する
- 初期設定(ユーザー追加・タイムゾーン・パイプライン)を完了させる
- 既存の顧客データをExcelからインポートする
- 運用ルール(データ記録ルール・更新担当者)を決める
- HubSpot Academyで体系的に学習する
HubSpot CRMを使いこなして、営業活動の効率化と売上向上を実現しましょう。
