ホリゾンタルSaaSとは?バーティカルSaaSとの違い・事例・選定ポイントを解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/21

ホリゾンタルSaaSとは?SaaS市場における位置づけ

B2B SaaS市場は急速に拡大しており、2023年には約1.4兆円の規模に達し、2027年には約2.1兆円に達する見込みです(富士キメラ総研)。この成長市場の中で、SaaSは大きく2つの種類に分類されます。それが「ホリゾンタルSaaS」と「バーティカルSaaS」です。

ホリゾンタルSaaSは業種を問わず利用できる汎用的なSaaSで、会計、人事、グループウェア、電子契約など、どの企業でも必要とされる業務領域をカバーしています。一方、バーティカルSaaSは特定の業界(医療、建設、飲食など)に特化したSaaSです。

この記事では、ホリゾンタルSaaSの定義、バーティカルSaaSとの違い、代表的な事例、メリット・デメリット、そして選定ポイントを詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • ホリゾンタルSaaSは業種を問わず利用できる汎用的なSaaSサービス
  • バーティカルSaaSとの違いは「対象市場の広さ」と「機能の専門性」
  • 代表事例:freee、SmartHR、サイボウズ、Google Workspace、クラウドサインなど
  • メリット:市場規模が大きく、企業規模を問わず導入可能、初期導入ハードルが低い
  • デメリット:競合が多く差別化が難しい、特定業界の専門的ニーズに対応しきれない
  • 選定ポイント:自社の業務要件、既存ツールとの連携性、コストパフォーマンス、サポート体制

ホリゾンタルSaaSの定義と基本特性

(1) ホリゾンタルSaaSの定義

ホリゾンタルSaaS(Horizontal SaaS)とは、業種や業界を問わず、幅広い企業で利用できる汎用的なSaaSサービスのことです。「Horizontal(水平方向)」という名前の通り、業界の垣根を超えて水平に展開できる特性を持っています。

具体的には、会計、人事・労務、グループウェア、ストレージ、電子契約、営業支援(SFA)、カスタマーサクセス(CS)など、どの企業でも必要とされる業務領域を対象としています。

(2) 業種を問わない汎用性

ホリゾンタルSaaSの最大の特徴は、業種を問わず導入できる汎用性の高さです。製造業、小売業、IT企業、金融機関など、どの業界の企業でも同じツールを活用できます。

この汎用性により、営業開拓先が豊富で、市場規模が大きいというビジネス上のメリットがあります。特定の業界に依存しないため、景気変動や業界特有のリスクの影響を受けにくいという側面もあります。

(3) 主要な適用分野(グループウェア・会計・人事・電子契約)

ホリゾンタルSaaSが適用される主な分野は以下の通りです:

グループウェア・コラボレーション:

  • チーム内のコミュニケーション、スケジュール管理、ファイル共有
  • サイボウズ、Google Workspace、Microsoft 365など

会計・財務管理:

  • 帳簿管理、請求書発行、経費精算
  • freee、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計オンラインなど

人事・労務管理:

  • 勤怠管理、給与計算、社会保険手続き
  • SmartHR、ジョブカンなど

電子契約:

  • 契約書の電子署名、契約管理
  • クラウドサイン、DocuSignなど

営業支援(SFA)・顧客管理(CRM):

  • 営業活動の可視化、顧客データ管理
  • Salesforce、HubSpotなど

これらの業務はどの企業でも発生するため、ホリゾンタルSaaSの需要は安定しています。

バーティカルSaaSとの比較(違い・特徴)

(1) バーティカルSaaSとは(特定業界特化)

バーティカルSaaS(Vertical SaaS)は、特定の業界や業種に特化したSaaSサービスです。「Vertical(垂直方向)」という名前の通り、特定の業界を深く掘り下げてサービスを提供します。

例えば、医療業界向けの電子カルテシステム、建設業界向けの工事管理システム、飲食業界向けのPOSレジシステムなどが該当します。

(2) ホリゾンタルSaaS vs. バーティカルSaaS:対象市場の違い

ホリゾンタルSaaS:

  • 対象市場:全業種・全業界
  • 市場規模:大きい(営業開拓先が豊富)
  • 顧客層:中小企業から大企業まで幅広い

バーティカルSaaS:

  • 対象市場:特定業界のみ
  • 市場規模:限定的(ニッチ市場)
  • 顧客層:特定業界の企業

ホリゾンタルSaaSは対象市場が広い分、潜在的な顧客数が多く、スケールしやすいという特徴があります。一方、バーティカルSaaSは特定業界に絞ることで、業界特有のニーズに深く対応できます。

(3) ホリゾンタルSaaS vs. バーティカルSaaS:機能・専門性の違い

ホリゾンタルSaaS:

  • 機能:汎用的(どの業界でも使える)
  • 専門性:低い(業界特有の機能は少ない)
  • カスタマイズ性:標準機能が中心

バーティカルSaaS:

  • 機能:業界特化(業界特有の業務フローに対応)
  • 専門性:高い(業界の専門用語・規制に対応)
  • カスタマイズ性:業界ニーズに応じた機能が豊富

ホリゾンタルSaaSは汎用性が高い反面、特定業界の専門的なニーズには対応しきれない場合があります。例えば、汎用的な会計ソフトでは建設業特有の工事原価管理には不十分なケースがあります。

(4) ホリゾンタルSaaS vs. バーティカルSaaS:競争環境の違い

ホリゾンタルSaaS:

  • 競合:多い(参入障壁が低い)
  • 差別化:難しい(機能や価格で比較されやすい)
  • 市場の成熟度:高い(既存の大手プレイヤーが存在)

バーティカルSaaS:

  • 競合:少ない(業界知識が参入障壁)
  • 差別化:容易(業界特有の機能で差別化)
  • 市場の成熟度:低い(ブルーオーシャンのケースが多い)

ホリゾンタルSaaS市場は、機能や価格の比較がしやすく、参入も相対的に容易なため、同じ分野に複数の競合サービスが存在し、差別化が難しくなる傾向があります。特に後発のホリゾンタルSaaSは、既存の大手プレイヤーとの競争が激しいと言われています。

ホリゾンタルSaaSの代表的な事例

ホリゾンタルSaaSの代表的な事例を分野別に紹介します。これらは業種を問わず、幅広い企業で導入されているサービスです。

(1) グループウェア(サイボウズ、Google Workspace、Microsoft 365)

サイボウズ:

  • 日本国内で高いシェアを持つグループウェア
  • スケジュール管理、掲示板、ワークフロー機能
  • 中小企業から大企業まで幅広く導入

Google Workspace:

  • Gmail、Google ドライブ、Google カレンダーなどを統合
  • リアルタイムコラボレーション機能が強み
  • 世界中の企業で利用

Microsoft 365:

  • Word、Excel、PowerPointなどOffice製品をクラウドで提供
  • Teamsによるチームコラボレーション
  • 大企業での導入実績が豊富

これらのグループウェアは、業種を問わず、チーム内のコミュニケーションや業務効率化に活用されています。

(2) 会計・財務(freee、マネーフォワード、弥生会計オンライン)

freee:

  • クラウド会計ソフトの国内シェアトップクラス
  • 自動仕訳機能、銀行口座連携
  • 個人事業主から中小企業まで幅広く対応

マネーフォワード クラウド会計:

  • 会計、給与、経費精算などを統合したプラットフォーム
  • 金融機関との自動連携が強み
  • 中小企業・スタートアップに人気

弥生会計オンライン:

  • 老舗会計ソフトのクラウド版
  • 初心者でも使いやすいUI
  • 個人事業主に人気

これらの会計ソフトは、業種を問わず、どの企業でも必要な経理業務をサポートしています。

(3) 人事・労務(SmartHR、ジョブカン)

SmartHR:

  • 労務管理、入社手続き、年末調整をクラウド化
  • 社会保険・雇用保険の電子申請に対応
  • スタートアップから大企業まで幅広く導入

ジョブカン:

  • 勤怠管理、シフト管理、給与計算
  • 打刻方法が豊富(IC、GPS、生体認証など)
  • 中小企業での導入実績が豊富

これらのツールは、業種を問わず、人事・労務業務の効率化に貢献しています。

(4) 電子契約(クラウドサイン、DocuSign)

クラウドサイン:

  • 日本の電子署名法に対応した国内トップシェアの電子契約サービス
  • 契約書の送信から締結、管理まで一元化
  • 業種を問わず幅広く導入

DocuSign:

  • 世界最大手の電子署名サービス
  • グローバル展開している企業に人気
  • 高度なセキュリティ機能

電子契約は、契約業務の効率化とペーパーレス化を実現し、業種を問わず導入が進んでいます。

(5) ストレージ・ファイル共有(Dropbox、Box)

Dropbox:

  • クラウドストレージの代表的サービス
  • ファイル同期、共有機能が強み
  • 個人から法人まで幅広く利用

Box:

  • エンタープライズ向けクラウドストレージ
  • 高度なセキュリティとアクセス権限管理
  • 大企業での導入実績が豊富

これらのストレージサービスは、業種を問わず、ファイル管理と共有を効率化しています。

ホリゾンタルSaaSのメリット・デメリット

ホリゾンタルSaaSの導入を検討する際は、メリットとデメリットの両方を理解することが重要です。

(1) メリット:市場規模が大きく営業開拓先が豊富

ホリゾンタルSaaSは業種を問わずに利用できるため、潜在的な顧客数が非常に多いという特徴があります。営業開拓先が豊富で、市場規模が大きいため、事業のスケールがしやすいと言われています。

SaaS事業者の視点では、特定業界の景気変動に左右されにくく、安定的な成長が期待できます。

(2) メリット:企業規模を問わず導入可能

ホリゾンタルSaaSは、企業規模や業種を問わず導入できる汎用性の高さが強みです。個人事業主、スタートアップ、中小企業、大企業のいずれでも、同じツールを活用できます。

多くのホリゾンタルSaaSは、企業規模に応じた料金プランを用意しており、小規模から始めて、成長に応じてプランをアップグレードすることが可能です。

(3) メリット:フリーミアムモデルで初期導入ハードルが低い

ホリゾンタルSaaSの多くは、フリーミアムモデル(基本機能無料、高度な機能は有料)を採用しています。これにより、初期導入のハードルを下げ、まずは無料で試してもらい、後にアップグレードを促すことができます。

導入企業側も、無料トライアルや無料プランで実際に使い勝手を確認してから、有料プランへの移行を検討できるため、リスクを抑えた導入が可能です。

(4) デメリット:競合が多く差別化が難しい

ホリゾンタルSaaS市場は競争が激しく、同じ分野に複数の競合サービスが存在します。機能や価格の比較がしやすいため、差別化が難しいという課題があります。

特に後発のホリゾンタルSaaSは、既存の大手プレイヤー(freee、SmartHR、Salesforceなど)との競争が激しく、市場シェアの獲得が難しいと言われています。

差別化のためには、独自の機能、優れたUI/UX、充実したサポート体制、戦略的な価格設定などが求められます。

(5) デメリット:特定業界の専門的ニーズに対応しきれない

汎用性が高い反面、特定業界の専門的なニーズには対応しきれない場合があります。

例えば、汎用的な会計ソフトでは、建設業の工事原価管理、製造業の原価計算、医療業界のレセプト管理といった業界特有の機能には不十分なケースがあります。

このような場合は、ホリゾンタルSaaSをベースに、バーティカルSaaSを併用するか、業界特化のツールを選択する必要があります。

(6) デメリット:後発参入は既存大手との競争が激しい

ホリゾンタルSaaS市場は成熟しているため、後発で参入する場合、既存の大手プレイヤーとの競争が激しくなります。

既存プレイヤーは、豊富な導入実績、充実した機能、強力なブランド力を持っているため、後発サービスが市場シェアを獲得するのは容易ではありません。

後発参入を成功させるには、ニッチな市場セグメントへの特化、革新的な機能、優れたユーザー体験、戦略的なマーケティングなどが必要です。

まとめ:ホリゾンタルSaaS選定のポイント

ホリゾンタルSaaSを選定する際は、以下のポイントを確認することが重要です。

(1) 自社の業務要件に合った機能があるか

まず、自社の業務要件を明確にし、必要な機能が備わっているかを確認しましょう。

チェックポイント:

  • 基本機能は十分か(会計なら帳簿管理、請求書発行など)
  • 自社特有のニーズに対応できるか(業界特有の機能が必要な場合は要注意)
  • 将来的な拡張性はあるか(事業成長に応じて機能追加が可能か)

無料トライアルで実際に操作してみて、使い勝手を確認することが推奨されます。

(2) 既存ツールとの連携性

既存の業務システムやツールとの連携性も重要な選定ポイントです。

チェックポイント:

  • 銀行口座・クレジットカードとの連携(会計ソフトの場合)
  • SFA/CRM(営業支援・顧客管理)との連携
  • 給与計算ソフトとの連携(人事・労務ツールの場合)
  • API連携の有無(カスタマイズが必要な場合)

既存ツールとシームレスに連携できれば、業務効率が大幅に向上します。

(3) コストパフォーマンス(サブスクリプション料金)

ホリゾンタルSaaSの多くは、サブスクリプション型(月額・年額課金)のビジネスモデルです。コストパフォーマンスを確認しましょう。

チェックポイント:

  • 初期費用(多くのサービスは0円)
  • 月額料金(企業規模・ユーザー数に応じた料金体系)
  • 機能制限(無料プラン・有料プランの違い)
  • 長期契約割引の有無

※料金は変更される可能性があるため、公式サイトで最新情報を確認してください。

(4) サポート体制・セキュリティ

導入後のサポート体制とセキュリティも重要な選定ポイントです。

サポート体制:

  • 日本語サポートの有無(海外ツールは要確認)
  • オンボーディング支援(初期設定・運用立ち上げ支援)
  • コミュニティ・ユーザー会の有無
  • 問い合わせ対応時間(24時間365日対応か、平日のみか)

セキュリティ:

  • データの暗号化
  • アクセス権限管理
  • バックアップ体制
  • ISO27001、SOC2などのセキュリティ認証

特に、顧客情報や財務情報を扱うツールは、高いセキュリティ基準を満たしているか確認しましょう。

次のアクション:

  • 自社の業務要件と必要機能を整理する
  • 3〜5社の公式サイトで詳細を確認する
  • 無料トライアルで実際に操作性を試す
  • 導入実績のある企業の事例を参考にする

ホリゾンタルSaaSは、業種を問わず幅広い企業で活用されています。自社の業務要件に合ったツールを選定し、業務効率化とコスト削減を実現しましょう。

※この記事は2024年11月時点の情報です。最新の料金・機能は各社公式サイトをご確認ください。

よくある質問

Q1ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いは?

A1ホリゾンタルSaaSは業種を問わず利用できる汎用的なSaaS(会計、人事、グループウェアなど)です。一方、バーティカルSaaSは特定業界に特化したSaaSで、業界特有の業務フローや専門用語に対応しています。対象市場の広さと機能の専門性が主な違いです。

Q2ホリゾンタルSaaSの代表的な事例は?

A2グループウェア(サイボウズ、Google Workspace)、会計(freee、マネーフォワード)、人事(SmartHR、ジョブカン)、電子契約(クラウドサイン)、ストレージ(Dropbox、Box)などが代表的な事例です。これらは業種を問わず幅広く導入されています。

Q3ホリゾンタルSaaSのメリットは?

A3市場規模が大きく営業開拓先が豊富、企業規模を問わず導入可能、フリーミアムモデルで初期導入ハードルが低いといったメリットがあります。また、特定業界の景気変動に左右されにくく、安定的な成長が期待できます。

Q4ホリゾンタルSaaSのデメリットは?

A4競合が多く差別化が難しい、特定業界の専門的ニーズに対応しきれない、後発参入は既存大手との競争が激しいといったデメリットがあります。特に汎用性が高い反面、業界特有の機能が必要な場合は不十分なケースがあります。

Q5ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaS、どちらを選ぶべき?

A5汎用的な業務(会計、人事、グループウェア)ならホリゾンタルSaaSが適しています。特定業界の専門的な業務フロー(医療、建設、飲食など)が必要ならバーティカルSaaSが適しています。自社の業務要件と照らし合わせて選択してください。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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