フィールドセールスとインサイドセールス、どう連携させればいいか分からない...
B2Bデジタルプロダクト企業の営業企画担当者や営業マネージャーにとって、「フィールドセールスとインサイドセールスをどう連携させるか?」は重要な課題です。「役割分担はどうすればよいのか?」「必要な人数比率は?」「KPIは何を見ればよいのか?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、フィールドセールスの定義、インサイドセールスとの違いと連携方法、必要なスキル、KPI設定と組織設計、2024年のトレンドまでを徹底解説します。営業組織の分業体制構築を検討している方に役立つ実践的なガイドです。
この記事のポイント:
- フィールドセールスは顧客と対面で商談を進め、受注・成約につなげる訪問型営業
- インサイドセールスは非対面で商談獲得まで、フィールドセールスは対面で受注まで担当する分業が一般的
- KPIはインサイドセールス(架電件数・商談獲得率)とフィールドセールス(受注率・受注金額)で区別
- 必要なスキルは論理的思考力、コミュニケーション能力、信頼関係構築力、プレゼンテーション力
- 2024年現在、データに基づくフィールドセールス(店舗別来店者数・購買データ活用)がトレンド
1. フィールドセールスとは?営業組織における重要性
フィールドセールスとは、実際に顧客や見込み顧客と対面で商談を進め、受注・成約につなげる訪問型営業のことです(出典: THE MOLTS)。
フィールドセールスが営業組織で重要な理由:
対面での信頼関係構築:
- 顧客と直接顔を合わせることで、信頼関係を築きやすい(出典: マイナビエージェント)
- 商談の前後に雑談を交えることで、事業に関する貴重な情報を収集できる
複雑な商談のクロージング:
- 高単価・長期契約の商談では、対面でのコミュニケーションが必須
- 契約の最終段階での懸念事項を直接ヒアリングし、解決できる
デジタル時代でも失われない価値:
- デジタル化が進む中でも、対面でのコミュニケーションが持つ価値は失われていない
- ハイブリッド型の営業モデル(インサイドセールスとフィールドセールスの組み合わせ)が主流に
2. フィールドセールスの基礎知識(定義・役割・業務内容)
(1) フィールドセールスの定義
フィールドセールスの定義と特徴:
訪問型営業:
- 顧客先を実際に訪問し、対面で商談を実施
- インサイドセールスが育成したリードを成約に導く役割
受注・成約までを担当:
- インサイドセールスから引き継いだ商談を受注まで進める
- 契約締結、初期導入支援まで関与
(2) 主な役割と業務内容
フィールドセールスの主な業務内容は以下の通りです(出典: カオナビ):
顧客訪問とニーズ把握:
- 直接顧客先を訪問し、ニーズや課題を深くヒアリング
- 決裁者との面談、現場担当者からの詳細情報収集
提案・商談:
- 顧客ニーズに合わせた提案書作成
- プレゼンテーション、デモンストレーション
- 価格交渉、見積もり調整
クロージング・契約:
- 契約締結に向けた最終交渉
- 契約書の取り交わし
既存顧客のフォロー:
- 既存顧客への定期訪問
- アップセル・クロスセルの提案
- 顧客満足度の確認と課題解決
(3) 従来型営業との違い
従来型営業:
- リード獲得から受注まですべてを1人の営業担当者が実施
- 属人的で効率が悪い
The Model型のフィールドセールス:
- インサイドセールスがリード獲得・育成を担当
- フィールドセールスは受注・成約に集中
- 役割分担により、各担当者が専門性を高められる
3. インサイドセールスとの違いと連携
(1) インサイドセールスとの違い(業務範囲・KPI)
インサイドセールスとフィールドセールスの違いは以下の通りです(出典: Salesforce):
| 項目 | インサイドセールス | フィールドセールス |
|---|---|---|
| 営業スタイル | 非対面(電話・メール・Web会議) | 対面(顧客訪問) |
| 業務範囲 | リード育成、商談獲得まで | 商談から受注・成約まで |
| 主なKPI | 架電件数、商談獲得率、商談化率 | 受注率、受注金額、平均商談期間 |
| 1日の対応件数 | 多数(10-20件) | 少数(2-5件) |
| 強み | 効率的に多数にアプローチ | 深い信頼関係構築、複雑な商談対応 |
(2) 分業体制のメリット
インサイドセールスとフィールドセールスの分業体制のメリット:
営業プロセスの効率化:
- インサイドセールスが多数のリードを育成し、見込み度の高いリードのみフィールドセールスに引き継ぐ
- フィールドセールスは受注確度の高い商談に集中できる
専門性の向上:
- インサイドセールスはリード育成のスキルを磨く
- フィールドセールスはクロージングのスキルを磨く
コスト削減:
- 見込み度の低いリードへの訪問コストを削減
- 移動時間を減らし、商談時間を増やせる
(3) 効果的な連携のポイント
インサイドセールスとフィールドセールスの連携を成功させるポイント:
明確な引き継ぎ基準:
- どの段階でインサイドセールスからフィールドセールスに引き継ぐか明確化
- 例:「予算確認済み」「決裁者との面談調整済み」「導入時期が3ヶ月以内」など
情報共有の徹底:
- CRM・SFAツールで顧客情報を一元管理
- インサイドセールスが収集した情報(課題、ニーズ、懸念事項)をフィールドセールスに確実に伝達
定期的な振り返り:
- インサイドセールスとフィールドセールスで定期的に振り返りミーティングを実施
- 「どのようなリードが受注しやすいか?」「失注理由は何か?」を共有し、改善
4. フィールドセールスに必要なスキルと育成方法
(1) 必須スキル(コミュニケーション力・論理的思考力・信頼構築力)
フィールドセールスに必要なスキルは以下の通りです(出典: Zoho):
論理的思考力:
- 顧客の課題を整理し、最適な解決策を論理的に提案
- 「御社の課題は○○です。弊社製品で△△が実現でき、結果として□□のメリットがあります」と構造化して説明
コミュニケーション能力:
- 顧客との対話を通じて、真のニーズを引き出す
- 決裁者、現場担当者、技術担当者など、異なる立場の人と適切にコミュニケーション
信頼関係構築力:
- 長期的な信頼関係を築く能力
- 「この営業担当者なら安心できる」と思ってもらえる誠実さ
(2) プレゼンテーション力・提案力
プレゼンテーション力:
- 分かりやすく魅力的に伝える能力
- ストーリー性のある説明、ビジュアル資料の活用
- 決裁者向けと現場担当者向けで説明を変える柔軟性
提案力:
- 顧客ニーズに合わせた最適な提案
- 商品スペックの説明ではなく、「この機能で御社の課題がどう解決するか」を伝える
- 競合との差別化ポイントを明確に提示
(3) ITツールリテラシーと育成方法
ITツールリテラシー:
- CRM(顧客関係管理): 顧客情報の記録・管理
- SFA(営業支援システム): 案件管理、商談履歴、見積もり作成
- MA(マーケティングオートメーション): リードの行動履歴確認
これらのツールを使いこなし、営業活動を効率化する能力が求められます。
育成方法:
- ロールプレイングで商談シミュレーションを繰り返し練習
- トップセールス人材の商談に同行し、スキルを学ぶ
- CRM・SFAツールでの営業データ分析を習慣化し、改善につなげる
5. KPI設定と組織設計のポイント
(1) フィールドセールスのKPI指標(受注率・受注金額)
フィールドセールスのKPI指標は以下の通りです(出典: Salesforce):
主要KPI:
- 受注率: 商談数に対する受注件数の割合
- 受注金額: 月間・四半期・年間の受注金額
- 平均商談期間: 商談開始から受注までの平均日数
補助KPI:
- 商談数
- 提案書作成数
- クロージング率(最終提案から受注までの割合)
インサイドセールスとの違い:
- インサイドセールスは架電件数・商談獲得率など「数」のKPI
- フィールドセールスは受注率・受注金額など「成約」のKPI
(2) インサイドセールスとの人数比率
一般的な人数比率:
- インサイドセールス 3-5名 に対し フィールドセールス 1-2名程度
- 商材の特性、商談化率、リード数により最適な比率は異なる
算出方法:
- 売上目標から必要な受注件数を算出
- インサイドセールスの商談化率から必要なリード数を逆算
- フィールドセールス1人あたりの対応可能商談数から必要人数を算出
例:
- 売上目標1億円、平均契約単価100万円 → 年間100件の受注が必要
- フィールドセールスの受注率20% → 年間500件の商談が必要
- フィールドセールス1人あたり月間20商談 → 500件÷12ヶ月÷20件=約2名
- インサイドセールスの商談化率20% → 年間2,500件のリードが必要
- インサイドセールス1人あたり月間100リード対応 → 2,500件÷12ヶ月÷100件=約2名
(3) CRM・SFA・MAツールの活用
CRM(顧客関係管理):
- 顧客情報を一元管理
- 顧客の購買履歴、問い合わせ履歴、コミュニケーション履歴を記録
SFA(営業支援システム):
- 営業活動のプロセスや情報を一元管理
- 案件管理、商談履歴、見積もり作成、予実管理
MA(マーケティングオートメーション):
- マーケティング活動を自動化
- リードの行動履歴(Webサイト訪問、資料ダウンロード等)を追跡
ツール活用のメリット:
- 営業活動のデータ化・可視化
- インサイドセールスとフィールドセールスの情報共有が円滑に
- データに基づく営業戦略の改善
6. まとめ:2024年のフィールドセールストレンド
フィールドセールスは、顧客と対面で商談を進め、受注・成約につなげる訪問型営業です。
重要なポイント:
- インサイドセールスは非対面で商談獲得まで、フィールドセールスは対面で受注まで担当する分業が一般的
- KPIはインサイドセールス(架電件数・商談獲得率)とフィールドセールス(受注率・受注金額)で区別
- 必要なスキルは論理的思考力、コミュニケーション能力、信頼関係構築力、プレゼンテーション力
- 人数比率は一般的にインサイドセールス3-5名に対しフィールドセールス1-2名程度
- CRM・SFA・MAツールで営業活動をデータ化・可視化し、連携を強化
2024年のフィールドセールストレンド:
- データドリブンなアプローチ: TOPPANが2024年12月に店舗別来店者数・購買データを活用したフィールドセールスサービスを開始(出典: TOPPAN)
- ハイブリッド型営業モデル: デジタルセールスとフィールドセールスを組み合わせた効率的な営業活動
- 対面価値の再認識: デジタル化が進む中でも、対面での信頼関係構築と深い顧客理解の価値は失われていない
次のアクション:
- インサイドセールスとフィールドセールスの役割分担を明確化(引き継ぎ基準を設定)
- フィールドセールスのKPIを設定(受注率、受注金額、平均商談期間)
- 売上目標から逆算して必要人数を算出
- CRM・SFA・MAツールを導入し、営業活動をデータ化
- インサイドセールスとフィールドセールスの定期的な振り返りミーティングを実施
- トップセールス人材の商談スキルを組織全体で共有し、育成に活用
フィールドセールスとインサイドセールスの効果的な連携により、営業組織全体の生産性向上と受注率アップを目指しましょう。
※この記事は2025年11月時点の情報です。営業手法やツールの最新情報については、各ベンダーの公式サイトや専門メディアをご確認ください。
