組織の生産性や離職率に悩んでいる...どう改善すればいいのか
BtoB企業の人事・経営企画担当者の多くが、組織の生産性向上や従業員の定着率に課題を抱えています。「優秀な人材が定着しない」「従業員のモチベーションが低い」「組織全体のパフォーマンスを高めたい」といった悩みは尽きません。
この記事では、企業エンゲージメントの定義、従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントの違い、測定方法、具体的な向上施策7選、エンゲージメント経営の実践方法までを詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 日本の従業員エンゲージメントは6%で世界最低水準(ギャラップ2024年調査)
- エンゲージメントスコア1ポイント向上で営業利益率0.35%上昇
- 2023年以降、上場企業に対する人的資本情報の開示義務化により、エンゲージメントが重要指標に
- 従業員満足度とエンゲージメントの違い(満足度は現状への評価、エンゲージメントは貢献意欲)
- パルスサーベイとセンサスを活用した測定方法と7つの向上施策
1. 企業エンゲージメントとは?注目される背景
(1) 組織の生産性・定着率の課題
多くの企業が、組織の生産性向上と従業員の定着率に課題を抱えています。優秀な人材が他社に流出する、従業員のモチベーションが低く業務効率が悪い、組織全体のパフォーマンスが伸び悩んでいるといった問題は、企業の持続的成長を阻害する要因となります。
これらの課題を解決するための鍵となるのが「エンゲージメント」です。エンゲージメントが高い組織では、従業員が主体的に業務に取り組み、離職率が低く、生産性が高い傾向があります。
(2) 日本の従業員エンゲージメントは6%で世界最低水準
ギャラップ社の2024年版レポートによると、日本の従業員エンゲージメントは6%で、世界最低水準となっています。これは、世界平均(23%)や米国(33%)と比較しても極めて低い数値です。
(出典: Gallup「日本の雇用主が直面する人材確保の課題」)
この低い数値は、終身雇用の見直し、働き方改革の遅れ、コミュニケーション不足などが要因と考えられています。日本企業がグローバル競争で勝ち抜くためには、エンゲージメント向上が急務となっています。
(出典: AgileHR「コロナ後の従業員エンゲージメントを徹底解明 ~第2回全国調査からわかった従業員エンゲージメントが低い理由とコロナ後の変化~」)
(3) 人的資本情報の開示義務化とエンゲージメント
2023年3月以降、上場企業に対して人的資本情報の開示が義務化されました。これにより、従業員エンゲージメントは企業価値評価の重要指標の一つとなっています。
(出典: 矢野経済研究所「2024 従業員エンゲージメント市場」)
人的資本情報の開示項目には、従業員のエンゲージメント、多様性、スキル、研修投資などが含まれます。投資家は、これらの情報をもとに企業の持続的成長可能性を評価します。エンゲージメントが低い企業は、人材流出リスクが高く、長期的な成長が見込めないと判断される可能性があります。
この開示義務化により、従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド市場は急成長しており、2023年の市場規模は91億円(前年比135.8%)に達しています。
(出典: 矢野経済研究所「2024 従業員エンゲージメント市場」)
2. 企業エンゲージメントの基礎知識(定義・種類・重要性)
(1) エンゲージメントの定義と深いつながり
エンゲージメントとは、企業と従業員、または企業と顧客の間の「深いつながりを持った関係性」を指します。単なる雇用契約や売買関係を超えた、確固たる信頼関係を意味します。
(出典: リクルートマネジメントソリューションズ「エンゲージメントとは?ビジネスでの意味や高める方法を解説」)
ビジネスにおけるエンゲージメントは、主に以下の2つに分類されます。
- 従業員エンゲージメント: 企業と従業員の間の信頼関係
- 顧客エンゲージメント: 企業と顧客の間の信頼関係
この記事では、主に「従業員エンゲージメント」に焦点を当てて解説します。
(2) 従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントの違い
従業員エンゲージメント: 企業と従業員の間の確固たる信頼関係で、従業員が企業に対して貢献する意欲を示す指標です。従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員が主体的に業務に取り組み、組織の目標達成に貢献します。
顧客エンゲージメント: 企業と顧客の間の強固かつ継続的な信頼関係で、顧客が企業に対して愛着や親近感を持っている状態です。顧客エンゲージメントが高い企業では、顧客のリピート率が高く、口コミによる新規顧客獲得も期待できます。
両者は密接に関連しており、従業員エンゲージメントが高い企業では、顧客対応の質が向上し、結果として顧客エンゲージメントも高まる傾向があります。
(3) 従業員満足度とエンゲージメントの違い
従業員満足度とエンゲージメントは、しばしば混同されますが、以下のような違いがあります。
従業員満足度: 従業員が現状の労働環境・待遇・人間関係などに対してどの程度満足しているかを示す指標です。受け身的な評価であり、「不満がない」という状態を意味します。
エンゲージメント: 従業員が企業に対してどの程度貢献する意欲を持っているかを示す指標です。主体的な姿勢であり、「この企業のために頑張りたい」という状態を意味します。
重要なポイント: 従業員満足度が高くても、エンゲージメントが低い場合があります。例えば、待遇や労働環境には満足しているが、「会社の方針に共感できない」「成長の機会がない」と感じている従業員は、満足度は高いものの、貢献意欲は低い状態です。
逆に、エンゲージメントが高い従業員は、多少の困難があっても企業のために努力する傾向があります。
(4) エンゲージメントが重要な理由(営業利益率・離職率への影響)
エンゲージメントが重要な理由は、組織のパフォーマンスに直接的な影響を与えるためです。
営業利益率の向上: エンゲージメントスコアが1ポイント向上すると、営業利益率が0.35%上昇するという調査結果があります。従業員が主体的に業務に取り組むことで、生産性が向上し、結果として収益が増加します。
(出典: Unipos「エンゲージメント経営とは?導入するメリットや事例、実践方法を解説」)
離職率の低下: エンゲージメントが高い従業員は、企業への愛着が強く、他社への転職を検討しにくい傾向があります。優秀な人材の定着により、採用コストや教育コストを削減できます。
顧客満足度の向上: 従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員が積極的に顧客対応を行い、サービス品質が向上します。結果として、顧客満足度やリピート率が高まります。
3. エンゲージメントの測定方法とスコアの見方
(1) パルスサーベイとセンサスの使い分け
エンゲージメントを測定する方法として、パルスサーベイとセンサスの2つがあります。
パルスサーベイ: 短期間(週次・月次)で実施する簡易的な従業員調査です。5〜10問程度の質問で、従業員の現在の状態を定期的に把握します。
パルスサーベイのメリット:
- リアルタイムで従業員の状態を把握できる
- 質問数が少なく、従業員の負担が小さい
- 問題の早期発見が可能
センサス: 年次で実施する全社的な従業員調査です。50〜100問程度の質問で、従業員のエンゲージメントを詳細に分析します。
センサスのメリット:
- 網羅的なデータ収集が可能
- 年度ごとの変化を比較できる
- 部門別・職種別の詳細分析が可能
使い分け: パルスサーベイで日常的に従業員の状態を把握しつつ、センサスで年次の詳細分析を行うのが効果的です。
(出典: HRBrain「従業員エンゲージメント指標(指数)とは?測定方法や重要性、メリットを紹介」)
(2) エンゲージメントスコアの算出方法
エンゲージメントスコアは、以下のような質問への回答を点数化して算出します。
質問例:
- 「あなたは会社の目標達成に貢献したいと思いますか?」
- 「あなたは会社の方針・ビジョンに共感していますか?」
- 「あなたは今の仕事にやりがいを感じていますか?」
- 「あなたは同僚とのコミュニケーションに満足していますか?」
- 「あなたは成長の機会が提供されていると感じていますか?」
各質問に対して、5段階(1:まったくそう思わない 〜 5:非常にそう思う)で回答し、その平均点をエンゲージメントスコアとします。
スコアの例:
- スコア4.0以上:エンゲージメントが高い
- スコア3.0〜3.9:エンゲージメントが中程度
- スコア3.0未満:エンゲージメントが低い
(3) スコアの解釈と改善目標の設定
エンゲージメントスコアを測定したら、以下の観点で分析します。
全社平均との比較: 部門別・職種別にスコアを集計し、全社平均と比較します。スコアが低い部門は、特に改善が必要な領域です。
経年変化の確認: 前年のスコアと比較し、改善しているか悪化しているかを確認します。改善施策の効果を測定するためにも重要です。
改善目標の設定: スコアが低い項目を特定し、具体的な改善目標を設定します。例えば、「成長の機会」のスコアが低い場合、研修プログラムの拡充やキャリア支援制度の導入を検討します。
4. 従業員エンゲージメントを高める7つの施策
従業員エンゲージメントを高めるためには、「満足度」「成長度」「共感度」の3つの視点で施策を考えることが重要です。
(出典: Right Management「従業員エンゲージメントを向上させるには?"7つ"の効果的な施策を解説!」)
(1) 満足度を高める施策(柔軟な働き方・評価制度)
従業員の満足度を高める施策は以下の通りです。
柔軟な働き方の導入: フレックスタイム、リモートワーク、時短勤務などの柔軟な働き方を導入し、従業員のワークライフバランスを向上させます。
公平な評価制度: 成果主義や360度評価など、公平性の高い評価制度を導入します。評価基準を明確にし、従業員が納得できる評価を実施します。
福利厚生の充実: 健康保険、退職金制度、育児・介護支援など、従業員が安心して働ける環境を整備します。
(2) 成長度を高める施策(キャリア支援・研修)
従業員の成長機会を提供する施策は以下の通りです。
キャリア支援制度: 定期的なキャリア面談を実施し、従業員のキャリアプランを一緒に考えます。社内公募制度やジョブローテーションにより、キャリアの選択肢を広げます。
研修プログラムの充実: 専門スキル研修、リーダーシップ研修、外部セミナー参加支援など、従業員のスキルアップを支援します。
メンター制度: 先輩社員がメンターとして新入社員や若手社員をサポートし、成長を促進します。
(3) 共感度を高める施策(ビジョン共有・コミュニケーション)
企業のビジョンへの共感を高める施策は以下の通りです。
ビジョンの明確化と共有: 企業のビジョン・ミッション・バリューを明確にし、全従業員に共有します。経営陣が定期的にビジョンを説明し、従業員の理解と共感を促します。
コミュニケーションの活性化: 1on1ミーティング、全社会議、社内SNSなどを活用し、従業員と経営陣、従業員同士のコミュニケーションを活性化します。
従業員の意見を尊重: 従業員の意見や提案を積極的に聞き、経営に反映します。従業員が「自分の意見が尊重されている」と感じることで、企業への共感が高まります。
5. エンゲージメント経営の実践とメリット
(1) エンゲージメント経営とは何か
エンゲージメント経営とは、従業員のエンゲージメントを高めることを経営戦略の中心に据える経営手法です。従業員の満足度・成長度・共感度を向上させ、組織全体のパフォーマンスを最大化することを目指します。
(出典: Unipos「エンゲージメント経営とは?導入するメリットや事例、実践方法を解説」)
エンゲージメント経営では、単なる福利厚生の充実にとどまらず、企業のビジョン共有、成長機会の提供、公平な評価制度など、多面的なアプローチを行います。
(2) 導入によるメリット(営業利益率0.35%向上・離職率低下)
エンゲージメント経営を導入することで、以下のメリットが期待できます。
営業利益率の向上: エンゲージメントスコアが1ポイント向上すると、営業利益率が0.35%上昇します。従業員が主体的に業務に取り組むことで、生産性が向上し、収益が増加します。
(出典: Unipos「エンゲージメント経営とは?導入するメリットや事例、実践方法を解説」)
離職率の低下: エンゲージメントが高い従業員は、他社への転職を検討しにくい傾向があります。優秀な人材の定着により、採用コストや教育コストを削減できます。
顧客満足度の向上: 従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員が積極的に顧客対応を行い、サービス品質が向上します。結果として、顧客満足度やリピート率が高まります。
企業価値の向上: 人的資本情報の開示義務化により、エンゲージメントは企業価値評価の重要指標となっています。エンゲージメントが高い企業は、投資家から高く評価されます。
(3) 実践方法とKPI設定
エンゲージメント経営を実践するための手順は以下の通りです。
ステップ1:エンゲージメント測定 パルスサーベイやセンサスを実施し、現状のエンゲージメントスコアを把握します。
ステップ2:課題の特定 スコアが低い項目を特定し、改善すべき課題を明確にします。例えば、「成長の機会が少ない」「ビジョンへの共感が低い」などです。
ステップ3:施策の実施 課題に応じた施策を実施します。研修プログラムの充実、ビジョンの共有、柔軟な働き方の導入などです。
ステップ4:KPI設定と効果測定 施策の効果を測定するためのKPIを設定します。
KPI例:
- エンゲージメントスコアの向上(年間+0.5ポイント以上)
- 離職率の低下(前年比-5%以上)
- 従業員満足度の向上(調査結果で80%以上)
- 研修参加率の向上(全従業員の80%以上)
定期的にKPIを確認し、施策の効果を検証します。効果が薄い施策は見直し、新たな施策を導入します。
6. まとめ:エンゲージメント向上で組織パフォーマンスを高める
企業エンゲージメント、特に従業員エンゲージメントは、組織の生産性・定着率・収益性に直接的な影響を与える重要な指標です。
日本の従業員エンゲージメントは6%と世界最低水準であり、改善が急務です。人的資本情報の開示義務化により、エンゲージメントは企業価値評価の重要指標となっており、今後ますます注目が高まります。
エンゲージメントを高めるためには、「満足度」「成長度」「共感度」の3つの視点で施策を実施することが重要です。柔軟な働き方、キャリア支援、ビジョン共有など、多面的なアプローチを行いましょう。
エンゲージメント経営を実践することで、営業利益率の向上、離職率の低下、顧客満足度の向上など、多くのメリットが期待できます。
次のアクション:
- パルスサーベイやセンサスを実施し、現状のエンゲージメントスコアを測定する
- スコアが低い項目を特定し、改善すべき課題を明確にする
- 「満足度」「成長度」「共感度」の視点で具体的な施策を計画する
- エンゲージメント向上のためのKPIを設定し、定期的に効果を測定する
- 経営陣がエンゲージメント経営の重要性を認識し、全社的に取り組む
エンゲージメント向上は、短期的な施策では実現できません。中長期的な視点で、従業員と企業の深い信頼関係を構築していきましょう。
※この記事は2024年時点の情報です。エンゲージメント測定ツールや調査方法は企業により異なるため、導入時には各サービスの詳細を確認することを推奨します。
