Microsoft Dynamics 365 CRMとは?機能・価格・導入手順を解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/6

Microsoft Dynamics 365 CRMとは?中堅~大企業向け統合ソリューション

B2B企業で営業・マーケティング・カスタマーサービスの効率化を検討する際、「どのCRMを選ぶべきか」という問題に直面します。特にMicrosoft 365やOffice 365を既に利用している組織では、Microsoft Dynamics 365 CRMとの統合メリットが気になるのではないでしょうか。

この記事では、Microsoft Dynamics 365 CRMの機能、料金プラン、他CRMとの違い、導入時の注意点を解説します。

この記事のポイント:

  • Dynamics 365はCRM+ERP統合アプローチで、顧客管理と業務システムを一元化できる
  • Sales Professional(8,125円/月)、Enterprise(11,875円/月)、Premium(16,875円/月)の3プランがある
  • Microsoft 365・Outlook・Teams・Power Platformとシームレスに統合し、既存環境を活かせる
  • Salesforceと比較すると、市場シェアは小さい(7-8% vs 21%)が、Microsoftエコシステム内での統合性に優れる
  • オンプレミス版は2027年1月12日でサポート終了のため、クラウド移行が推奨される

1. Microsoft Dynamics 365 CRMとは?選ばれる理由

Microsoft Dynamics 365は、CRM(顧客関係管理)とERP(企業資源計画)を統合したビジネスアプリケーションスイートです。営業支援(Sales)、マーケティング(Marketing)、カスタマーサービス(Customer Service)の主要3機能を中心に、AI・IoT・自動化技術を活用した顧客エンゲージメント向上を実現します。

(1) Dynamics 365の定義とCRM・ERP統合アプローチ

Dynamics 365の最大の特徴は、CRMとERPを統合したアプローチです。従来のCRMは営業・マーケティング・カスタマーサービスに特化していましたが、Dynamics 365は会計・人事・サプライチェーン等のERPシステムとも連携し、顧客データを企業全体で一元管理できます。

CRM+ERP統合のメリット:

  • 営業データと会計データをリアルタイムで連携
  • 受注から請求・入金までの業務フローを自動化
  • 顧客生涯価値(LTV)を正確に把握し、経営判断に活用

例えば、営業担当者が商談を成約した際、Dynamics 365内で自動的に請求書発行・在庫確保・納期調整が行われ、バックオフィス業務の手間が削減されます。

(2) 2024年のAI機能強化(Copilot統合)

2024年リリースウェーブ2(2024年10月~2025年3月)では、AI機能とCopilot統合が大幅に強化されました。

Copilotの主要機能:

  • リード評価の自動化: 見込み客の関心度をAIが分析し、優先順位を提示
  • パイプライン分析: 営業パイプラインのボトルネックを検出し、対策を提案
  • パーソナライズされたメール作成: 顧客の過去の対話履歴からAIが最適な文面を生成

MicrosoftはGartner® Magic Quadrant™ for CRM Customer Engagement Center 2024でリーダーに選出されており、AI統合の先進性が評価されています。

2. Dynamics 365の主要CRM機能とMicrosoft製品連携

Dynamics 365のCRM機能は、Sales(営業支援)、Marketing(マーケティング)、Customer Service(カスタマーサービス)の3つに大別されます。

(1) 主要3機能(Sales・Marketing・Customer Service)

Dynamics 365 Sales(営業支援・SFA):

  • 商談管理・パイプライン可視化
  • 顧客とのやり取りをOutlookと同期し、営業活動を一元管理
  • AI支援によるリード評価・次のアクション提案

Dynamics 365 Marketing(マーケティングオートメーション・MA):

  • メールキャンペーン管理・リード育成
  • イベント管理・ウェビナー連携
  • カスタマージャーニーの可視化と最適化

Dynamics 365 Customer Service(カスタマーサービス):

  • 問い合わせ管理・チケット追跡
  • チャットボット・自動応答機能
  • ナレッジベース構築でサポート効率化

(2) Power Platformとの連携(Power BI・Power Apps・Power Automate)

Dynamics 365は、Microsoftが提供するPower Platformと緊密に統合されています。

Power BIでのデータ可視化:

  • 営業データ・マーケティングデータをダッシュボードで可視化
  • KPI(受注率・リード獲得数・顧客満足度等)をリアルタイムで監視
  • 導入事例では、Power BIで営業活動を可視化し、受注率が4倍になった企業もあります(Miura Brazil)

Power Appsでのノーコード機能拡張:

  • IT専門知識がなくても、独自の業務アプリを作成可能
  • 例:独自の営業日報アプリ、顧客訪問記録アプリ等

Power Automateでの業務自動化:

  • 定型業務(データ入力・通知送信等)を自動化
  • 例:商談成約時に自動でTeamsに通知、請求書発行ワークフロー等

(3) Office 365・Teams・Outlookとのシームレス統合

Microsoft 365やOffice 365を既に利用している組織では、Dynamics 365のシームレスな統合により導入メリットが大きくなります。

統合のメリット:

  • Outlookで送受信したメールが自動的にDynamics 365に記録される
  • Teamsで顧客情報をリアルタイムで共有し、チームでの商談対応が効率化
  • SharePointで契約書・提案資料を管理し、Dynamics 365から直接アクセス可能
  • OneDriveでファイル共有し、外出先からモバイルでアクセス

この統合性により、営業担当者は複数のシステムを行き来する手間が省け、生産性が向上します。

3. 料金プラン(Professional・Enterprise・Premium比較)

Dynamics 365の料金プランは、機能と規模に応じて3つに分かれています(2024年10月改定後の価格)。

(1) Sales Professional(8,125円/月)

対象企業規模: 小~中規模企業(従業員50~200人程度)

主要機能:

  • 基本的な営業支援(商談管理・パイプライン可視化)
  • OutlookとTeamsとの統合
  • モバイルアプリでの営業活動記録

適しているケース:

  • 初めてCRMを導入する企業
  • シンプルな営業プロセスで十分な企業

(2) Sales Enterprise(11,875円/月)

対象企業規模: 中堅~大企業(従業員200人以上)

主要機能:

  • Professionalの全機能
  • リードスコアリング(見込み客の関心度を数値化)
  • 高度なカスタマイズ・自動化機能
  • Power Appsでの機能拡張

適しているケース:

  • 営業プロセスが複雑で、カスタマイズが必要な企業
  • リード管理・育成を高度化したい企業

(3) Sales Premium(16,875円/月)

対象企業規模: 大企業(従業員500人以上)

主要機能:

  • Enterpriseの全機能
  • Copilot機能のフル活用(AI支援のリード評価・メール作成等)
  • 高度な分析・レポート機能
  • LinkedInとの統合(LinkedIn Sales Navigator連携)

適しているケース:

  • 最新のAI機能を活用したい大企業
  • グローバル展開しており、複雑な営業組織を持つ企業

(4) Attachライセンス(2つ目以降は2,998円/月)

Dynamics 365では、2つ目以降のサービス(例:SalesとCustomer Serviceの両方)を利用する場合、Attachライセンスで割安になります。

:

  • Sales Enterprise(11,875円/月)+ Customer Service Attach(2,998円/月)= 14,873円/月

これにより、複数のCRM機能を導入する際のコストを抑えられます。

(5) 契約形態による価格差(年契約年払い・月契約月払い)

Dynamics 365の料金は、契約期間と支払い方法によって3通りの形態があります。

契約形態:

  • 年契約年払い: 最も割安(上記の価格は年契約年払いの場合)
  • 年契約月払い: 年契約年払いよりやや割高
  • 月契約月払い: 年契約月払いより約20%割高

初期導入時は月契約月払いで試用し、本格導入後に年契約年払いに切り替えることで、コストを最適化する企業が多いです。

※料金は変更される可能性があります。最新情報は公式サイト(https://dynamics.microsoft.com/ja-jp/pricing/)をご確認ください。

4. 他CRMとの比較(Salesforce・HubSpotとの違い)

Dynamics 365を検討する際、他の主要CRM(Salesforce、HubSpot等)との違いを理解することが重要です。

(1) Dynamics 365 vs Salesforce(市場シェア・機能・カスタマイズ性)

市場シェア:

  • Salesforce: 21%(世界市場でトップシェア)
  • Dynamics 365: 7-8%

Salesforceは世界最大のCRMベンダーであり、サードパーティ製品やコミュニティの規模が圧倒的に大きいです。Dynamics 365はシェアでは劣るものの、Microsoftエコシステム内での統合性に優れています。

機能の違い:

  • Salesforce: CRMに特化し、カスタマイズ性に優れる。AppExchange(サードパーティアプリストア)で豊富な拡張機能を利用可能
  • Dynamics 365: CRM+ERP統合アプローチで、バックオフィス業務との連携が強み

カスタマイズ性:

  • Salesforce: 開発者コミュニティが大きく、カスタマイズ事例・ノウハウが豊富
  • Dynamics 365: Power Platformでのノーコード拡張が可能だが、高度なカスタマイズには専門知識が必要

(2) Microsoftエコシステムのメリット・デメリット

メリット:

  • Microsoft 365・Outlook・Teams・SharePointを既に利用している組織は、追加の操作教育が不要
  • シングルサインオン(SSO)でセキュリティ・利便性が向上
  • Power BIでのデータ可視化が標準で利用可能

デメリット:

  • Microsoft製品に依存するため、Google Workspace等の他プラットフォームとの統合は限定的
  • サードパーティ製品やコミュニティの規模がSalesforceより小さい

(3) CRM+ERP統合の強み

Dynamics 365のユニークな特徴は、CRM+ERP統合アプローチです。

統合のメリット:

  • 営業データと財務データをリアルタイムで連携し、顧客別の収益性を正確に把握
  • 受注から請求・入金までの業務フローを一元化し、バックオフィスの手間を削減
  • 在庫管理・サプライチェーンとも連携し、納期を正確に提示可能

適しているケース:

  • 製造業・卸売業など、在庫管理と営業活動の連携が重要な業種
  • 受注から納品までのリードタイムが長く、進捗管理が複雑な企業

一方で、営業・マーケティングのみに特化したい企業では、Salesforce・HubSpot等の選択肢も検討する価値があります。

5. 導入時の注意点(オンプレミス版サポート終了・移行計画)

Dynamics 365を導入する際、以下の注意点を押さえておく必要があります。

(1) オンプレミス版は2027年1月12日でサポート終了

Dynamics 365のオンプレミス版(Dynamics CRM 2016等)は、2027年1月12日でMainstreamサポートが終了します。サポート終了後はセキュリティパッチが提供されなくなるため、長期利用にはクラウド移行が必要です。

影響:

  • セキュリティリスクの増加
  • 最新機能(Copilot等のAI機能)が利用できない
  • Microsoft公式のサポート対応が受けられなくなる

(2) クラウド移行の推奨と移行計画の立て方

Microsoftはクラウド版(Dynamics 365 Online)への移行を推奨しており、移行支援プログラムも提供されています。

移行計画の立て方:

  1. 現在のシステム構成・カスタマイズ内容を棚卸し
  2. クラウド版で利用可能な機能を確認(一部のカスタマイズは移行できない場合がある)
  3. 移行パートナーを選定し、移行スケジュールを策定
  4. 段階的な移行(テスト環境→本番環境)で業務影響を最小化

移行期間は、システムの複雑さにより1~3ヶ月程度が一般的です。

(3) 2024年10月の価格改定に関する注意

2024年10月1日からDynamics 365の価格が改定されました。オンプレミス版もクラウド版と同率で値上げされており、今後も価格変更の可能性があります。

対策:

  • 公式サイトで最新の料金プランを確認する
  • 年契約年払いで契約し、価格変動リスクを低減する

(4) 導入パートナーの選定ポイント

Dynamics 365の導入には、専門知識を持つパートナーの支援が推奨されます。

パートナー選定のポイント:

  • 同業種・同規模企業での導入実績
  • Microsoftの認定パートナー(Gold Partner等)であるか
  • 導入後のサポート体制(オンボーディング支援・運用トレーニング)
  • カスタマイズ・機能拡張の対応範囲

日本国内では、日立ソリューションズ、JBS、ソフトバンク等が主要な導入パートナーとして知られています。日立ソリューションズは製造業を中心に70社のERP導入実績、100社以上のCRM導入実績があり(2025年6月時点)、Honda、りそな銀行、ノーリツ等の大手企業の導入事例があります。

6. まとめ:Dynamics 365が向いている企業・導入の判断基準

Microsoft Dynamics 365 CRMは、CRM+ERP統合アプローチとMicrosoft製品との緊密な統合が特徴のビジネスアプリケーションです。特にMicrosoft 365・Office 365を既に利用している中堅~大企業では、統合メリットが大きくなります。

Dynamics 365が向いている企業:

  • Microsoft 365・Office 365を既に利用しており、統合メリットを活かしたい企業
  • CRMとERPを一元管理し、バックオフィス業務との連携を強化したい企業
  • 製造業・金融・サービス業など、複雑な業務プロセスを持つ中堅~大企業
  • AI機能(Copilot)を活用し、営業活動を高度化したい企業

導入判断のポイント:

  • 既存のMicrosoft製品の利用状況(統合メリットの大きさ)
  • CRM単体かCRM+ERP統合か(業務範囲の明確化)
  • 予算(Sales Professional 8,125円/月~Premium 16,875円/月)
  • サポート体制(導入パートナーの選定)

次のアクション:

  • 公式サイトで最新の料金プラン・機能を確認する(https://dynamics.microsoft.com/ja-jp/)
  • 無料トライアルで実際の操作性を試す
  • 導入パートナーに相談し、同業種の導入事例を確認する
  • Salesforce・HubSpot等の他CRMとも比較し、自社に最適なツールを選定する

Dynamics 365は、Microsoftエコシステム内での統合性に優れた強力なCRMです。自社の業務プロセス・予算・既存システムとの相性を見極め、導入を検討しましょう。

よくある質問

Q1Dynamics 365とSalesforceの主な違いは何ですか?

A1Dynamics 365はCRM+ERP統合が強みで、Microsoft製品(Outlook・Teams・Power Platform)との連携に優れています。Salesforceは市場シェア21%(Dynamics 365は7-8%)で、カスタマイズ性とサードパーティ製品の豊富さが特徴です。Microsoftエコシステムを既に利用している企業はDynamics 365、CRM単体で高度なカスタマイズを求める企業はSalesforceが適しています。

Q2Dynamics 365の料金プランはいくらですか?

A2Sales Professionalは8,125円/月、Enterpriseは11,875円/月、Premiumは16,875円/月です(2024年10月改定後、年契約年払いの場合)。Attachライセンスを利用すると、2つ目以降のサービスは2,998円/月で追加できます。月契約月払いは年契約月払いより約20%割高になります。最新の料金は公式サイトで確認してください。

Q3どの業種・企業規模に適していますか?

A3製造業、金融、サービス業など幅広い業種に対応しており、中堅~大企業向けのCRMです。特にMicrosoft 365・Office 365を既に利用している組織は統合メリットが大きくなります。導入事例には、Honda(製造業)、りそな銀行(金融)、ノーリツ(製造業)などがあります。小規模企業(従業員50人未満)ではSales Professionalプランが選択肢となります。

Q4Microsoft製品との連携はどこまで可能ですか?

A4Outlook、Teams、SharePoint、OneDriveとシームレスに統合されています。Power BIでデータ可視化、Power Appsでノーコード機能拡張、Power Automateで業務自動化が可能です。Outlookで送受信したメールが自動的にDynamics 365に記録され、Teamsで顧客情報をリアルタイムで共有できるため、営業担当者の生産性が向上します。

Q5オンプレミス版とクラウド版の違いは?

A5オンプレミス版は2027年1月12日でMainstreamサポートが終了します。サポート終了後はセキュリティパッチが提供されなくなるため、クラウド版への移行が推奨されています。AI機能(Copilot)やリリースウェーブの最新機能はクラウド版で優先提供されるため、長期利用にはクラウド版が適しています。移行期間は1~3ヶ月程度が一般的です。

B

B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

「B2Bデジタルプロダクト実践ガイド」は、デシセンス株式会社が運営する情報メディアです。B2Bデジタルプロダクト企業のマーケティング・営業・カスタマーサクセス・開発・経営に関する実践的な情報を、SaaS、AIプロダクト、ITサービス企業の実務担当者に向けて分かりやすく解説しています。