CRMソフトウェアとは?種類と選定ポイントを解説

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

CRMソフトウェアとは

B2Bデジタルプロダクト企業の営業・マーケティング責任者にとって、顧客情報の管理と営業活動の効率化は重要な課題です。「顧客情報がExcelや名刺で散在していて管理が大変」「CRMソフトウェアの種類が多すぎて、何を選べば良いか分からない」といった悩みを抱えていませんか。

CRMソフトウェアは、顧客情報を一元管理し、営業・マーケティング・カスタマーサポートの効率化を実現するツールです。クラウド型・オンプレミス型など種類が豊富で、企業規模や予算に応じた選定が必要です。

この記事では、CRMソフトウェアの定義から種類別の特徴、主要機能、市場動向、主要ツールの比較、選定ポイントまで、実務で必要な知識を体系的に解説します。

この記事のポイント:

  • CRMソフトウェアは顧客関係管理を行うツールで、営業・マーケ・カスタマーサポートの効率化に貢献
  • クラウド型(初期投資不要、柔軟なアクセス)とオンプレミス型(高セキュリティ、カスタマイズ性)が主要な選択肢
  • 基本機能は顧客情報管理、商談管理、活動履歴管理、リード管理
  • 世界のCRM市場は2025年1,129億ドルから2032年2,627億ドルへ年率12.8%で成長予測
  • 日本市場は約70種類のSFA/CRM製品があり、Salesforce・HubSpot・Microsoft Dynamicsが主要ツール

(1) CRMソフトウェアの定義と目的

CRMソフトウェア(Customer Relationship Management Software)とは、顧客情報を一元管理し、営業・マーケティング・カスタマーサポートの効率化を図るツールです。

主な目的:

  • 顧客情報の集約と可視化
  • 営業活動の効率化(商談管理、訪問履歴、営業レポート)
  • マーケティング施策の最適化(リード管理、キャンペーン効果測定)
  • カスタマーサポートの品質向上(問い合わせ履歴、対応状況管理)

CRMソフトウェアにより、部門横断でデータを共有し、顧客満足度の向上と売上拡大を実現します。

(2) CRMとSFA・MAツールの違い

CRM・SFA・MAは混同されがちですが、以下の違いがあります:

CRM(Customer Relationship Management):

  • 顧客関係管理全般を担う
  • 営業・マーケ・カスタマーサポート全体をカバー
  • 例:Salesforce、Microsoft Dynamics 365

SFA(Sales Force Automation):

  • 営業活動支援に特化
  • 商談管理、訪問履歴、営業レポート
  • CRMの一部機能として組み込まれることが多い

MA(Marketing Automation):

  • マーケティング活動の自動化に特化
  • リード獲得・育成・スコアリング、メール配信
  • 例:HubSpot Marketing Hub、Marketo

多くの現代のCRMソフトウェアは、SFA・MA機能を統合しています。

(3) 顧客情報の一元管理のメリット

顧客情報の一元管理により、以下のメリットが得られます:

情報の散逸防止:

  • Excelや紙の名刺で管理していた情報をクラウドで統合
  • 営業担当者の異動・退職時も情報が引き継がれる

営業活動の可視化:

  • 商談の進捗状況、受注見込み、売上予測をダッシュボードで確認
  • マネージャーが営業チーム全体の状況を把握しやすい

データに基づく意思決定:

  • 過去のデータから成功パターンを分析
  • 効果的な営業戦略を立案

部門間連携の強化:

  • 営業が獲得した顧客情報をマーケティングが活用
  • カスタマーサポートの対応履歴を営業が確認

CRMソフトウェアの種類

(1) クラウド型CRMの特徴

クラウド型CRMは、インターネット経由で利用するソフトウェアです。

メリット:

  • 初期投資不要(サーバー購入・設置が不要)
  • 柔軟なアクセス(インターネット環境があればどこからでも利用可能)
  • 自動アップデート(常に最新機能を利用できる)
  • 月額課金で利用可能(従量課金モデル)

デメリット:

  • カスタマイズ性が制限される場合がある
  • データがクラウド上にあるためセキュリティ懸念(ただし、多くのベンダーは高水準のセキュリティ対策を実施)
  • 継続的な月額費用が発生

適した企業:

  • 中小企業〜大企業
  • リモートワーク・外出が多い営業組織
  • 初期投資を抑えたい企業

代表的なツール:

  • Salesforce
  • HubSpot
  • Zoho CRM
  • kintone

(2) オンプレミス型CRMの特徴

オンプレミス型CRMは、自社サーバーにソフトウェアをインストールして利用する形式です。

メリット:

  • 高度なカスタマイズが可能
  • データを自社内で管理(セキュリティ要件が厳しい企業に適している)
  • 長期的にはコストが抑えられる場合がある

デメリット:

  • 初期投資が高額(サーバー購入・設置・ライセンス費用)
  • 運用・保守に専門知識が必要
  • バージョンアップは手動で実施

適した企業:

  • 大企業
  • セキュリティ要件が厳しい企業(金融・医療等)
  • 独自のカスタマイズが必要な企業

代表的なツール:

  • Microsoft Dynamics 365(オンプレミス版)
  • SAP CRM

(3) パッケージ型とオープンソース

パッケージ型CRM:

  • 既製品として提供されるソフトウェア
  • カスタマイズ性は限定的だが、導入が容易
  • 例:Salesforce、HubSpot

オープンソースCRM:

  • ソースコードが公開されており、自由にカスタマイズ可能
  • ライセンス費用は無料だが、導入・保守に専門知識が必要
  • 例:SuiteCRM、SugarCRM

適した企業:

  • オープンソース:技術力が高く、独自のカスタマイズを行いたい企業
  • パッケージ型:標準機能で十分な企業

(4) 企業規模別の選び方

小規模企業(従業員50名以下):

  • クラウド型CRM
  • 無料プランまたは月額3,000円/ユーザー程度の低価格帯
  • 例:HubSpot CRM(無料版)、Zoho CRM

中堅企業(従業員50〜500名):

  • クラウド型CRM
  • 月額5,000〜10,000円/ユーザー程度
  • 例:Salesforce、Microsoft Dynamics 365、kintone

大企業(従業員500名以上):

  • クラウド型またはオンプレミス型(セキュリティ要件に応じて)
  • 月額10,000円以上/ユーザー、または大規模ライセンス契約
  • 例:Salesforce、Microsoft Dynamics 365、SAP CRM

CRMソフトウェアの主要機能

(1) 顧客情報管理

顧客の基本情報を一元管理する機能です。

管理できる情報:

  • 企業名、担当者名、連絡先(電話番号、メールアドレス)
  • 業種、企業規模、所在地
  • 取引履歴、契約内容

活用例:

  • 営業担当者が訪問前に顧客情報を確認
  • マーケティング担当者が業種別にセグメント化してキャンペーン実施

(2) 商談管理

営業案件の進捗状況を管理する機能です。

管理できる情報:

  • 商談名、受注見込み金額、進捗状況(提案・見積・契約等)
  • 受注予定日、担当者
  • 競合情報、提案内容

活用例:

  • マネージャーが営業チーム全体の商談状況を把握
  • 売上予測を立て、リソース配分を最適化

(3) 活動履歴管理

営業活動の記録を管理する機能です。

管理できる情報:

  • 訪問日時、訪問内容
  • 電話・メールの履歴
  • 次回アクション(フォローアップ予定)

活用例:

  • 営業担当者の異動・退職時に後任が活動履歴を確認
  • 過去の対応内容を踏まえた提案を実施

(4) リード管理とスコアリング

見込み顧客(リード)を管理し、優先度を付ける機能です。

管理できる情報:

  • リードの獲得元(展示会、Webサイト、広告等)
  • 興味度合い(資料ダウンロード、ウェビナー参加等)
  • スコアリング(関心度を数値化)

活用例:

  • スコアが高いリードに優先的に営業アプローチ
  • マーケティング施策の効果測定(どの施策が成約につながったか)

CRM市場の動向とシェア

(1) 世界のCRM市場規模と成長予測

世界のCRM市場は急速に成長しています。

市場規模予測(Fortune Business Insights調査):

  • 2025年:1,129.1億ドル
  • 2032年:2,627.4億ドル
  • 年平均成長率(CAGR):12.8%

成長要因:

  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展
  • クラウド型CRMの普及
  • AI・自動化技術の進化

(2) 日本のCRM市場規模と導入率

日本のCRM市場も拡大傾向にあります。

市場規模予測(Luvina調査):

  • 2025年:34.7億ドル
  • 2029年:46億ドル
  • 年平均成長率(CAGR):7.3%

導入率(GENIEE's library調査):

  • 日本の営業組織の約36%がCRMシステムを導入済み
  • DX化の進展により、今後も導入率は上昇すると予測

(3) 主要ベンダーの市場シェア

世界のCRM市場シェア(HubSpot調査):

  • Salesforce:19.5%(8年連続トップ)
  • Microsoft:5.2%
  • SAP:4.8%
  • Oracle:4.6%
  • Adobe:4.0%

Salesforceが圧倒的なシェアを誇りますが、Microsoft Dynamics 365やHubSpotなども成長しています。

(4) 2025年のCRMトレンド

2025年の主要トレンド(Luvina調査):

  1. AI・自動化によるタッチポイント強化:AIチャットボット、自動応答機能の活用
  2. CX(顧客体験)改善による競争優位性確立:顧客満足度向上を重視
  3. EC発展に伴う顧客データ統合:オンライン・オフラインの顧客データを一元管理

※市場規模や導入率は調査機関により異なります。最新データは各社の公式発表をご確認ください(2025年11月時点の情報です)。

主要なCRMソフトウェアの比較

(1) Salesforce:世界シェア19.5%のトップベンダー

特徴:

  • 世界シェアNo.1のクラウド型CRM
  • 豊富な機能とカスタマイズ性
  • AppExchangeで7,000以上のアプリと連携可能

料金:

  • Professional版:月額9,000円/ユーザー
  • Enterprise版:月額18,000円/ユーザー
  • Unlimited版:月額36,000円/ユーザー

適した企業:

  • 大企業、複雑な営業プロセス、高度なカスタマイズが必要な企業

(2) Microsoft Dynamics 365:Officeとの統合

特徴:

  • Microsoft製品(Office 365、Teams等)との統合
  • 日本語サポート充実
  • クラウド型・オンプレミス型の両方を提供

料金:

  • Sales Professional:月額10,000円/ユーザー
  • Sales Enterprise:月額15,000円/ユーザー

適した企業:

  • Microsoft製品を活用している企業、Officeとの連携を重視する企業

(3) HubSpot:無料プランから始められる

特徴:

  • 無料版が充実(基本的なCRM機能を無料で利用可能)
  • 直感的なUI、導入が容易
  • マーケティング機能が強い

料金:

  • 無料版あり
  • Starter:月額5,400円/ユーザー
  • Professional:月額54,000円/3ユーザー

適した企業:

  • 中小企業、スタートアップ、マーケティング重視の企業

(4) その他の主要ツール(Zoho、kintone等)

Zoho CRM:

  • 料金:月額1,680円〜/ユーザー
  • 低コスト、中小企業向けに最適化

kintone:

  • 料金:月額780円〜/ユーザー
  • 日本企業向け、カスタマイズ性が高い

※料金は2025年時点の目安です。最新情報は各社公式サイトでご確認ください。

まとめ:CRMソフトウェアの選び方

CRMソフトウェアは、顧客情報を一元管理し、営業・マーケティング・カスタマーサポートの効率化を実現するツールです。クラウド型(初期投資不要、柔軟なアクセス)とオンプレミス型(高セキュリティ、カスタマイズ性)があり、企業規模や予算に応じた選定が必要です。

世界のCRM市場は年率12.8%で成長し、日本でも約70種類のSFA/CRM製品が提供されています。Salesforce・HubSpot・Microsoft Dynamicsが主要ツールで、それぞれに特徴があります。

次のアクション:

  • 自社の課題・目的を明確にする(顧客情報の散在、営業活動の可視化等)
  • 必要な機能を絞り込む(顧客情報管理、商談管理、リード管理等)
  • 予算とユーザー数を明確にする(月額3,000円〜10,000円/ユーザー)
  • 複数のCRMツールの無料トライアルで使い勝手を検証する
  • 導入後の運用体制整備とトレーニングを計画する

自社に適したCRMソフトウェアを選定し、顧客満足度の向上と売上拡大を実現しましょう。

よくある質問

Q1CRMソフトウェアとは何ですか?

A1顧客情報を一元管理し、営業・マーケティング・カスタマーサポートの効率化に貢献するソフトウェアです。基本機能は顧客情報管理、商談管理、活動履歴管理、リード管理です。

Q2CRMとSFA、MAツールの違いは何ですか?

A2CRMは顧客関係管理全般、SFAは営業活動支援に特化、MAはマーケティング活動の自動化に特化しています。多くの現代のCRMソフトウェアは、SFA・MA機能を統合しています。

Q3CRMソフトウェアの料金体系はどうなっていますか?

A3月額3,000円/ユーザー程度の低価格帯から10,000円以上の高機能帯まで幅広いです。機能やユーザー数により変動するため、公式サイトで最新確認が推奨されます。

Q4中小企業でもCRMソフトウェアを導入すべきですか?

A4顧客情報がExcelや名刺で散在している、営業活動の見える化が必要な場合は導入メリットがあります。ただし、導入後の定着には運用体制整備やトレーニングが重要です。

Q5どのCRMソフトウェアが自社に適していますか?

A5自社の課題・目的を明確にし、必要な機能を絞り込むことが重要です。日本国内では約70種類のSFA/CRM製品があり、無料トライアルで使い勝手を検証すべきです。

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Decisense編集部

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