中小企業向けCRMの選び方|低コストで使えるツールを比較

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

中小企業にCRMが必要な理由

中小企業の営業・マーケティング責任者にとって、限られた予算とリソースの中で顧客情報を管理し、営業活動を効率化することは大きな課題です。「顧客情報がExcelや名刺で散在していて管理が大変」「CRMは大企業向けで、中小企業には不要なのでは?」といった疑問を抱えていませんか。

実際には、中小企業こそCRMを活用すべき理由があります。商工中金2023年調査によると、37%の中小企業がCRM/SFAを導入済み、11.7%が検討中です。無料版や低価格プランで始められるCRMも増え、導入ハードルは下がっています。

この記事では、中小企業にCRMが必要な理由から、選定基準、導入状況と費用相場、おすすめツール、導入の進め方まで、実務で必要な知識を体系的に解説します。

この記事のポイント:

  • 中小企業の37%がCRM導入済み、11.7%が検討中(商工中金2023年調査)
  • CRMにより顧客情報の属人化防止、定型業務の自動化、人手不足対策が可能
  • 平均月額4,200円、クラウド型は月額1,000〜3,000円/ユーザー程度で導入可能
  • HubSpot CRM(5ユーザーまで無料)、Zoho CRM(月額1,680円〜)などが選択肢
  • 導入目的を明確化し、無料トライアルで検証してスモールスタートが推奨

(1) 顧客情報の属人化防止

中小企業では、顧客情報が営業担当者個人のExcelや名刺で管理されるケースが多く、情報の属人化が発生しやすい状況です。

属人化の問題:

  • 営業担当者の異動・退職時に情報が引き継がれない
  • 顧客情報が散在し、全体像が把握できない
  • 対応履歴が共有されず、重複した営業活動が発生

CRMによる解決:

  • 顧客情報をクラウドで一元管理
  • 担当者が変わっても過去の対応履歴を確認可能
  • 部門横断で情報を共有し、連携強化

(2) 定型業務の自動化による人手不足対策

2024年東京商工会議所調査では、中小企業の63%が人手不足を経験しています。CRMは定型業務を自動化し、限られた人的リソースを最大限に活かすことができます。

自動化できる業務:

  • 営業レポートの自動生成(手動集計が不要に)
  • メール配信の自動化(リードへのフォローアップ)
  • タスクの自動割り当て(担当者への通知)
  • 商談の進捗管理(ダッシュボードで一目で把握)

効果:

  • 営業担当者が営業活動に集中できる
  • 定型業務の時間を削減(週5〜10時間程度)
  • マネージャーが営業チーム全体の状況を把握しやすい

(3) 限られた人的リソースの最大化

中小企業は大企業と比べて人的リソースが限られているため、効率的な営業活動が求められます。

CRMによる効率化:

  • 見込み客のスコアリング(優先度の高いリードに注力)
  • 過去のデータから成功パターンを分析
  • 商談の受注見込みを可視化し、リソース配分を最適化

中小企業向けCRMの選定基準

(1) 低価格・シンプルな機能

中小企業向けCRMは、大企業向けの高機能CRMと比べて低価格でシンプルな機能が求められます。

選定のポイント:

  • 無料版または月額1,000〜3,000円/ユーザー程度
  • 基本機能(顧客情報管理、商談管理、活動履歴管理)が揃っている
  • 過剰機能を避ける(使わない機能があっても意味がない)

注意点: 無料プランや低価格プランには機能制限やデータ容量制限(例:最大5GB)がある場合があり、事前に必要機能を確認すべきです。

(2) 使いやすさ・導入のしやすさ

中小企業では専任のIT担当者がいない場合が多く、使いやすさと導入のしやすさが重要です。

使いやすさのポイント:

  • 直感的なUI(営業担当者がすぐに使える)
  • 設定が簡単(専門知識不要)
  • モバイルアプリ対応(外出先からも利用可能)

導入のしやすさのポイント:

  • 無料トライアル期間がある(実際に試してから判断)
  • 導入支援・トレーニングが充実
  • Excelからのデータインポートが容易

(3) クラウド型 vs オンプレミス型

中小企業にはクラウド型CRMが推奨されます。

クラウド型CRMのメリット:

  • 初期費用が低い(サーバー購入・設置不要)
  • 月額課金で利用可能(従量課金モデル)
  • 自動アップデート(常に最新機能を利用できる)
  • どこからでもアクセス可能(リモートワーク対応)

オンプレミス型CRMのデメリット:

  • 初期費用が高額(数十万円〜)
  • サーバー設置費用と運用人員の人件費が必要
  • バージョンアップは手動で実施

費用比較:

  • クラウド型:月額2,000〜15,000円/ユーザー、初期費用なしが多い
  • オンプレミス型:初期費用数十万円、サーバー設置費用と運用人員の人件費が必要

(4) サポート体制と日本語対応

グローバル製品と国産製品では、UI/UXや日本語サポートの質が異なります。

サポート体制のチェックポイント:

  • 日本語での問い合わせ対応(電話・メール・チャット)
  • 導入支援・トレーニングの有無
  • オンラインマニュアル・FAQの充実度

国産CRMのメリット:

  • 日本企業の商習慣に合わせた機能
  • 日本語サポートが充実
  • 例:kintone、eセールスマネージャー

グローバルCRMのメリット:

  • 豊富な機能と実績
  • グローバル展開している企業に適している
  • 例:Salesforce、HubSpot、Zoho

中小企業のCRM導入状況と費用相場

(1) 中小企業のCRM導入率(37%導入済み、11.7%検討中)

中小企業のCRM導入は年々増加しています。

商工中金2023年調査:

  • 37%の中小企業がCRM/SFAを導入済み
  • 11.7%が検討中
  • 合計48.7%が導入済みまたは検討中

中小企業白書(経済産業省):

  • デジタル化の取り組み:2019年17.3% → 2022年33.8%に増加
  • DX化の進展により、CRM導入のニーズが高まっている

(2) クラウド型CRMの費用相場(月額4,200円平均)

平均費用(BOXIL Magazine調査):

  • 月額:約4,200円
  • 初期費用:平均25,000円
  • 年間費用:50,000円

月額料金の相場:

  • 低価格帯:月額1,000〜3,000円/ユーザー
  • 中価格帯:月額5,000〜10,000円/ユーザー
  • 高価格帯:月額10,000円以上/ユーザー

無料プラン:

  • HubSpot CRM:5ユーザーまで無料
  • Zoho CRM:無料プランあり(機能制限あり)

(3) 初期費用・年間費用の目安

クラウド型CRM:

  • 初期費用:なし〜25,000円(設定費用)
  • 月額費用:1,000〜10,000円/ユーザー × ユーザー数
  • 年間費用:12,000〜120,000円/ユーザー

例(10ユーザーの場合):

  • 低価格帯(月額3,000円/ユーザー):月額3万円、年間36万円
  • 中価格帯(月額5,000円/ユーザー):月額5万円、年間60万円

オンプレミス型CRM:

  • 初期費用:数十万円〜
  • サーバー設置費用:数十万円〜
  • 運用人員の人件費:年間数百万円〜

中小企業にはクラウド型が圧倒的に適しています。

(4) DX補助金などの支援制度

CRM導入コストを削減できる政府の支援制度があります。

DX補助金:

  • 中小企業のデジタル化を支援
  • CRM導入費用の一部を補助
  • 詳細は中小企業庁のWebサイトで確認

その他の支援制度:

  • IT導入補助金
  • ものづくり補助金(一部のケース)

※補助金の対象や申請条件は年度により異なります。最新情報は中小企業庁や商工会議所でご確認ください。

おすすめの中小企業向けCRM

(1) HubSpot CRM:5ユーザーまで無料

特徴:

  • 5ユーザーまで無料で利用可能
  • 営業・マーケティング・カスタマーサービスの機能を網羅
  • 直感的なUI、導入が容易

料金:

  • 無料版:5ユーザーまで
  • Starter:月額5,400円/ユーザー
  • Professional:月額54,000円/3ユーザー

適した企業:

  • 小規模企業(従業員10〜50名)
  • マーケティング機能も重視する企業
  • まず無料で試したい企業

(2) Zoho CRM:月額1,680円から利用可能

特徴:

  • 低コスト(月額1,680円〜/ユーザー)
  • 中小企業向けに最適化
  • 日本語サポートあり

料金:

  • Standard:月額1,680円/ユーザー
  • Professional:月額2,760円/ユーザー
  • Enterprise:月額4,800円/ユーザー

適した企業:

  • 中小企業(従業員20〜100名)
  • コストを抑えたい企業

(3) Salesforce Starter(Pro Suite):中小企業向けパッケージ

特徴:

  • 2024年6月に中小企業向け「Salesforce Pro Suite」を提供開始
  • Salesforceの機能を中小企業向けに最適化
  • 世界シェアNo.1の実績

料金:

  • Starter:月額3,000円/ユーザー(Salesforce Pro Suiteの一部)
  • Professional:月額9,000円/ユーザー

適した企業:

  • 中堅企業(従業員50〜300名)
  • Salesforceブランドを重視する企業

(4) その他の主要ツール(kintone、eセールスマネージャー等)

kintone:

  • 料金:月額780円〜/ユーザー
  • 日本企業向け、カスタマイズ性が高い
  • サイボウズ社が提供

eセールスマネージャー:

  • 料金:月額6,000円〜/ユーザー
  • 日本企業向け、営業支援に特化
  • ソフトブレーン社が提供

※料金は2024年時点の目安です。最新情報は各社公式サイトでご確認ください。

CRM導入の進め方と注意点

(1) 導入目的の明確化と社内周知

CRM導入で失敗しないためには、導入目的を明確にし、社内に周知することが重要です。

導入目的の例:

  • 顧客情報の一元管理
  • 営業活動の可視化
  • 定型業務の自動化
  • 属人化の防止

社内周知の方法:

  • キックオフミーティングで目的を共有
  • 営業担当者に導入のメリットを説明
  • 経営層のコミットメントを示す

(2) 無料トライアルで使い勝手を検証

導入前に無料トライアルで実際に試すことが推奨されます。

トライアル期間の活用:

  • 営業担当者に実際に使ってもらう
  • 必要な機能が揃っているか確認
  • 使いやすさ・操作性を検証

チェックポイント:

  • データのインポート・エクスポートが容易か
  • モバイルアプリの使い勝手
  • サポート体制の質

(3) スモールスタート(小規模チームから開始)

最初から全社導入ではなく、小規模チームから始めるスモールスタートが推奨されます。

スモールスタートの手順:

  1. 営業チームの一部(3〜5名)で試験導入
  2. 運用ルールを確立
  3. 成功事例を共有
  4. 全社展開

メリット:

  • リスクを最小化
  • 現場の声を反映した運用ルール作り
  • 段階的な予算投入

(4) 営業担当者による情報入力の徹底

CRMは情報が入力されて初めて効果を発揮します。

情報入力を徹底するポイント:

  • シンプルな運用ルール(複雑な入力項目を避ける)
  • 入力のメリットを示す(レポート作成が楽になる等)
  • マネージャーが率先して入力

定着化の工夫:

  • 週次ミーティングでCRMのデータを確認
  • 入力漏れがある担当者にはリマインド
  • 成功事例を共有して動機付け

まとめ:中小企業のCRM選び

中小企業の37%がCRM導入済み、11.7%が検討中です(商工中金2023年調査)。CRMにより顧客情報の属人化防止、定型業務の自動化、人手不足対策が可能になります。

平均月額4,200円、クラウド型は月額1,000〜3,000円/ユーザー程度で導入可能です。HubSpot CRM(5ユーザーまで無料)、Zoho CRM(月額1,680円〜)などが選択肢として挙げられます。

次のアクション:

  • 導入目的を明確化する(顧客情報の一元管理、営業活動の可視化等)
  • 無料トライアルで複数のCRMを試す(HubSpot、Zoho、Salesforce等)
  • スモールスタートで小規模チームから始める(3〜5名)
  • 営業担当者による情報入力を徹底する(シンプルな運用ルール)
  • DX補助金などの支援制度を活用して導入コストを削減する

自社に適したCRMを選定し、顧客満足度の向上と営業活動の効率化を実現しましょう。

よくある質問

Q1中小企業のCRM導入率はどれくらいですか?

A1商工中金2023年調査によると、37%の中小企業がCRM/SFAを導入済み、11.7%が検討中です。2019年17.3%から2022年33.8%へデジタル化取り組みが増加しています。

Q2CRM導入にかかる費用はどれくらいですか?

A2平均月額4,200円、初期費用平均25,000円、年間費用50,000円が相場です。クラウド型は月額1,000〜3,000円/ユーザー程度で、初期費用を抑えられます。

Q3中小企業はクラウド型とオンプレミス型のどちらを選ぶべきですか?

A3クラウド型が推奨されます。初期費用が低く、サーバー設置不要で導入が早いです。オンプレミス型は初期費用数十万円とサーバー設置費用・運用人員が必要になります。

Q4無料で使えるCRMはありますか?

A4HubSpot CRMは5ユーザーまで無料で、営業・マーケティング・カスタマーサービスの機能を網羅しています。ただし無料プランには機能制限やデータ容量制限がある場合があります。

Q5CRM導入で失敗しないためのポイントは何ですか?

A5導入目的を社内周知し、営業担当者による情報入力を徹底することです。無料トライアルで使い勝手を検証し、まずはシンプルなシステムから始めるスモールスタートが推奨されます。

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Decisense編集部

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