クラウドサービスとは?種類・メリット・選定ポイントを解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/16

クラウドサービスが企業で普及している背景

「クラウドサービス」という言葉を日常的に耳にするようになりました。GmailやMicrosoft 365、Salesforceなど、多くの企業がクラウドサービスを業務に活用しています。

総務省の調査によると、日本企業のクラウドサービス利用率は約68.7%(2021年調査、前年比4.0ポイント増)に達しています。また、87.1%の企業がクラウドサービスの導入効果を「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答しており、企業のクラウド活用は着実に進んでいます。

しかし、「クラウドサービスとは具体的に何なのか」「SaaS、PaaS、IaaSの違いがわからない」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。この記事では、クラウドサービスの基礎知識から種類の違い、メリット・デメリット、選定ポイントまで解説します。

この記事のポイント:

  • クラウドサービスは、コンピューティングリソースやソフトウェアをインターネット経由で利用するサービスの総称
  • IaaS・PaaS・SaaSの3種類があり、自由度と管理負担のバランスが異なる
  • メリットは初期投資軽減・拡張性・運用負荷軽減、デメリットはカスタマイズ性の制約やセキュリティリスク
  • オンプレミスとの比較、ハイブリッドクラウドの選択肢も検討すべき
  • 企業規模・セキュリティ要件・コストに応じた選定が重要

クラウドサービスの基礎知識(定義と仕組み)

(1) クラウドサービスとは何か

総務省の定義によると、クラウドサービス(クラウド・コンピューティング)とは、「従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由でサービスとして提供するもの」です。

クラウドサービスの特徴:

  • インターネットに接続すれば、どこからでも利用可能
  • サーバーやネットワーク機器を自社で用意する必要がない
  • 必要な分だけリソースを利用し、使った分だけ料金を支払う
  • サービス提供者がインフラの運用・保守を担当する

代表的なクラウドサービス:

  • Gmail(メールサービス)
  • Microsoft 365(オフィスソフト)
  • Salesforce(CRM/SFA)
  • AWS、Azure、Google Cloud(クラウドインフラ)

(2) オンプレミスとの違い

「オンプレミス」とは、自社でサーバーやネットワーク機器を保有し、システムを運用する形態です。クラウドサービスとの違いを比較します:

項目 クラウドサービス オンプレミス
初期投資 少ない(月額課金) 大きい(サーバー購入)
拡張性 柔軟(必要に応じて増減可能) 制限あり(ハードウェア依存)
運用負荷 軽い(事業者が管理) 重い(自社で管理)
カスタマイズ性 制限あり 高い
データ管理 事業者側で保管 自社で完全管理

(3) パブリッククラウドとプライベートクラウド

クラウドサービスは、利用形態によって以下のように分類されます:

パブリッククラウド:

  • 不特定多数の企業・ユーザーが共有して利用
  • AWS、Azure、Google Cloudなどが代表例
  • コスト効率が良く、拡張性が高い

プライベートクラウド:

  • 特定の企業・組織専用のクラウド環境
  • セキュリティ要件が厳しい業種で採用されることが多い
  • 初期投資は大きいが、管理の自由度が高い

ハイブリッドクラウド:

  • パブリッククラウドとプライベートクラウド(またはオンプレミス)を組み合わせて利用
  • 機密データはプライベート環境、一般業務はパブリック環境という使い分けが可能

クラウドサービスの種類(IaaS・PaaS・SaaS)

クラウドサービスは、提供される機能の範囲によってIaaS、PaaS、SaaSの3つに分類されます。

(1) IaaS(インフラ提供)の特徴と利用シーン

IaaS(Infrastructure as a Service)は、サーバー、ストレージ、ネットワークなどのインフラをクラウドで提供するサービスです。

特徴:

  • 自由度が最も高い
  • OS、ミドルウェア、アプリケーションは自社で構築・管理
  • インフラ部分のみ事業者が管理

代表的なサービス:

  • AWS EC2
  • Azure Virtual Machines
  • Google Compute Engine

利用シーン:

  • 独自のシステム環境を構築したい場合
  • 既存システムのクラウド移行
  • 開発・テスト環境の構築

(2) PaaS(開発環境提供)の特徴と利用シーン

PaaS(Platform as a Service)は、アプリケーション開発に必要なプラットフォーム(OS、ミドルウェア、開発環境)を提供するサービスです。

特徴:

  • インフラ+OS+ミドルウェアまで事業者が管理
  • アプリケーション開発に集中できる
  • IaaSより自由度は下がるが、管理負担も軽減

代表的なサービス:

  • AWS Elastic Beanstalk
  • Azure App Service
  • Google App Engine
  • Heroku

利用シーン:

  • Webアプリケーションの開発・運用
  • 開発スピードを重視したいプロジェクト
  • インフラ管理のリソースが限られている場合

(3) SaaS(アプリケーション提供)の特徴と利用シーン

SaaS(Software as a Service)は、完成されたソフトウェアをクラウド上で提供するサービスです。

特徴:

  • インフラからアプリケーションまで事業者が管理
  • 利用者はアプリケーションを使うだけ
  • 自由度は最も低いが、管理負担も最小

代表的なサービス:

  • Gmail(メール)
  • Microsoft 365(オフィスソフト)
  • Salesforce(CRM/SFA)
  • Slack(コミュニケーション)
  • freee、マネーフォワード(会計)

利用シーン:

  • 汎用的な業務アプリケーションの利用
  • すぐに導入して使い始めたい場合
  • IT人材が限られている企業

3つの違いの比較:

項目 IaaS PaaS SaaS
提供範囲 インフラのみ インフラ+開発環境 アプリケーションまで
自由度 高い 中程度 低い
管理負担 大きい 中程度 小さい
技術力要件 高い 中程度 低い

クラウドサービスのメリット・デメリット

(1) メリット(初期投資軽減・拡張性・運用負荷軽減)

初期投資の軽減:

  • サーバーやネットワーク機器を購入する必要がない
  • 月額課金のため、必要な分だけ費用が発生
  • 導入までの期間が短縮できる

拡張性の高さ:

  • ビジネスの成長に合わせてリソースを増減できる
  • 繁忙期だけリソースを増やすといった柔軟な対応が可能
  • 新しいサービスの追加が容易

運用負荷の軽減:

  • インフラの運用・保守はサービス提供者が担当
  • セキュリティアップデートやバックアップが自動化されている場合が多い
  • 自社のIT人材をより付加価値の高い業務に集中させられる

導入効果(総務省調査より):

  • 最も利用されているクラウドサービスは「ファイル保管・データ共有」(59.4%)
  • 次いで「電子メール」(50.3%)
  • 87.1%の企業が「効果があった」と回答

(2) デメリット(カスタマイズ性・セキュリティ・ベンダーロックイン)

カスタマイズ性の制約:

  • クラウド事業者が提供するサービスの範囲内での利用となる
  • 自社独自の要件を満たせない場合がある
  • 特にSaaSは柔軟性が低い

セキュリティリスク:

  • インターネット上のサービスはサイバー攻撃の標的になりやすい
  • データが自社外に保管されることへの懸念
  • 通信障害が発生するとサービスが利用できなくなる

ベンダーロックインのリスク:

  • 特定のクラウド事業者に依存すると、他のサービスへの移行が困難になる
  • 事業者がサービスを終了した場合の影響
  • 長期的なコスト増加の可能性

クラウドサービスの選定ポイント

(1) セキュリティ・コンプライアンス要件

自社が扱うデータの性質や業界の規制に応じて、セキュリティ要件を確認します:

確認すべき項目:

  • データの保管場所(国内/国外)
  • 暗号化の方式(通信時・保管時)
  • アクセス管理機能(多要素認証など)
  • セキュリティ認証の取得状況(ISO 27001、SOC 2など)
  • 業界固有の規制への対応(金融、医療、個人情報保護など)

大手ベンダーのセキュリティ: AWS、Azure、Google Cloudなどの大手クラウドベンダーは、高水準のセキュリティ対策を実施しています。ただし、クラウドサービスのセキュリティは「責任共有モデル」に基づいており、利用者側でもアクセス管理やデータ保護の対策が必要です。

(2) コストと拡張性のバランス

クラウドサービスの料金体系は複雑な場合があり、適切なプランを選定することが重要です:

コスト検討のポイント:

  • 初期費用と月額費用のバランス
  • 従量課金と定額課金の選択
  • 成長に伴うコスト増加の見積もり
  • 長期契約による割引の検討

拡張性の検討:

  • ビジネスの成長に合わせたスケールアップが可能か
  • 繁忙期・閑散期に応じたリソース調整ができるか
  • 他のクラウドサービスとの連携が可能か

まとめ:自社に適したクラウドサービスの選び方

クラウドサービスは、企業のIT活用を効率化する有効な選択肢です。ただし、すべてをクラウド化すればよいわけではなく、自社の要件に応じた選定が重要です。

選定の判断基準:

要件 推奨される選択肢
初期投資を抑えたい クラウドサービス(SaaS優先)
カスタマイズ性を重視 IaaSまたはオンプレミス
開発に集中したい PaaS
機密データを扱う プライベートクラウドまたはハイブリッド
柔軟な拡張性が必要 パブリッククラウド

次のアクション:

  • 自社が利用しているクラウドサービスを棚卸しする
  • クラウド化したい業務・システムの要件を整理する
  • セキュリティ・コンプライアンス要件を確認する
  • 複数のサービスを比較検討し、トライアルで検証する

クラウドサービスの導入は、単にコスト削減だけでなく、ビジネスの俊敏性を高め、競争力の向上につながります。自社の状況に合った選択を検討してみてください。

※この記事は2025年時点の情報です。各サービスの仕様・料金は変更される可能性があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。統計データは総務省「情報通信白書」等の公表値に基づいています。

よくある質問

Q1SaaS・PaaS・IaaSの違いは?

A1IaaSはインフラのみを提供し自由度が最も高いですが、OS以上は自社で管理が必要です。PaaSは開発環境まで提供され、アプリケーション開発に集中できます。SaaSは完成したアプリケーションを提供し、自由度は低いですが管理負担も最小です。

Q2クラウドサービスのセキュリティは大丈夫?

A2AWS、Azure、Google Cloudなどの大手ベンダーは、ISO 27001やSOC 2などの認証を取得し、高水準のセキュリティ対策を実施しています。ただし「責任共有モデル」に基づき、利用者側でもアクセス管理やデータ保護の対策が必要です。

Q3オンプレミスとクラウド、どちらを選ぶべき?

A3カスタマイズ性やデータの完全管理を重視するならオンプレミス、初期投資軽減や拡張性を重視するならクラウドが適しています。両方を組み合わせた「ハイブリッドクラウド」という選択肢もあり、機密データはオンプレミス、一般業務はクラウドという使い分けも可能です。

Q4クラウドサービスの導入率は?

A4総務省の調査によると、日本企業のクラウドサービス利用率は約68.7%(2021年調査)です。最も利用されているのは「ファイル保管・データ共有」(59.4%)、次いで「電子メール」(50.3%)となっています。

Q5ベンダーロックインとは?

A5特定のクラウド事業者のサービスに依存し、他のサービスへの移行が困難になる状態を指します。独自のAPIや機能を多用すると移行コストが高くなるため、選定時にはデータのポータビリティや標準的なインターフェースの有無を確認することが重要です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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