クラウドサービスとは?企業で注目される背景
「社内サーバーの運用コストが負担になっている…」「リモートワークに対応したシステムが必要…」こうした課題を抱えるB2B企業が増えています。
クラウドサービスとは、インターネット経由でデータやソフトウェアを提供するサービスです。従来の自社でサーバーを保有する「オンプレミス」と比べて、初期投資を抑え、柔軟にシステムを拡張できる点が特徴です。
この記事では、クラウドサービスの基礎知識・種類(IaaS/PaaS/SaaS)・メリット・選び方・セキュリティ対策を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- クラウドサービスは初期投資を抑えて柔軟にシステムを拡張できる
- IaaS・PaaS・SaaSの3種類があり、用途に応じて使い分ける
- メリットはコスト削減・スケーラビリティ、デメリットはインターネット依存・セキュリティリスク
- 自社に合ったクラウドを選ぶには業務要件の整理とSLA確認が重要
- セキュリティ対策として多要素認証・暗号化・定期バックアップが必須
(1) クラウドサービスの定義とオンプレミスとの違い
クラウドサービスとは、インターネット経由でサーバー・ストレージ・ソフトウェアなどのIT資源を提供するサービスです。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」では、「ネットワーク経由でデータやソフトウェアを提供するサービス」と定義されています。
オンプレミスとの主な違い:
| 項目 | クラウドサービス | オンプレミス |
|---|---|---|
| 初期投資 | 低い(サーバー購入不要) | 高い(サーバー・設備購入必要) |
| 運用負荷 | 低い(ベンダーが管理) | 高い(自社で管理) |
| 拡張性 | 柔軟(必要に応じて拡張) | 制限あり(サーバー増設必要) |
| カスタマイズ | 制限あり | 自由度が高い |
| インターネット依存 | あり | なし |
クラウドサービスは初期投資を抑えて迅速にシステムを立ち上げられる一方、オンプレミスは自社の要件に合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。
(2) クラウド市場の成長(2024年日本市場4兆円超、DX推進で普及加速)
総務省「令和7年版 情報通信白書」によると、2024年の日本のパブリッククラウドサービス市場は4兆1,423億円(前年比26.1%増)に拡大しています。世界市場も7,733億ドル(前年比22.4%増)まで増加しており、クラウドサービスの普及が急速に進んでいます。
市場シェア(2024年第2四半期時点):
- Amazon Web Services(AWS): 約32%
- Microsoft Azure: 約23%
- Google Cloud Platform(GCP): 約12%
今後もDX(デジタルトランスフォーメーション)推進やリモートワーク対応の需要により、クラウド市場は継続的に成長すると予測されています。
(3) 企業のクラウド活用が進む理由(リモートワーク対応・コスト削減)
企業がクラウドサービスを積極的に導入する背景には、以下の理由があります:
リモートワークへの対応:
- インターネット環境があればどこからでもアクセス可能
- 社内サーバーへのVPN接続が不要
- 従業員の働き方の多様化に対応
コスト削減:
- サーバー購入・設置・保守の費用が不要
- 利用した分だけ支払う従量課金制
- 社内のIT担当者の運用負荷を軽減
ビジネスのスピード向上:
- システム立ち上げが数分~数日で可能
- 新規事業の迅速な立ち上げ
- 繁忙期に合わせた柔軟なスケール調整
こうした利点から、中小企業から大企業まで幅広い規模の企業でクラウド活用が進んでいます。
クラウドサービスの基礎知識(IaaS・PaaS・SaaSの違い)
クラウドサービスは提供される機能の範囲によって、「IaaS」「PaaS」「SaaS」の3種類に分類されます。それぞれの特徴と使い分けを見ていきましょう。
(1) IaaS(Infrastructure as a Service): インフラ提供型
IaaSは、サーバー・ストレージ・ネットワークなどの基本的なインフラをサービスとして提供します。
特徴:
- ハードウェアの管理はベンダーが担当
- OS・ミドルウェア・アプリケーションは利用者が管理
- 自由度が高く、柔軟なカスタマイズが可能
代表的なサービス:
- Amazon EC2(AWS)
- Azure Virtual Machines(Microsoft)
- Google Compute Engine(GCP)
適した用途:
- 既存のオンプレミスシステムをクラウドに移行したい
- 独自のシステム構成を実現したい
- 開発環境やテスト環境を迅速に構築したい
(2) PaaS(Platform as a Service): 開発環境提供型
PaaSは、アプリケーション開発に必要なプラットフォーム(OS・ミドルウェア・開発ツール)をサービスとして提供します。
特徴:
- インフラ・OS・ミドルウェアの管理はベンダーが担当
- 開発者はアプリケーション開発に集中できる
- 開発効率が向上
代表的なサービス:
- AWS Elastic Beanstalk
- Azure App Service
- Google App Engine
- Heroku
適した用途:
- Webアプリケーションを迅速に開発したい
- インフラ管理の負荷を減らしたい
- 開発に集中したい
(3) SaaS(Software as a Service): アプリケーション提供型
SaaSは、エンドユーザー向けのアプリケーションをインターネット経由で提供します。
特徴:
- すべての管理をベンダーが担当
- ブラウザからすぐに利用可能
- 導入が簡単で迅速
代表的なサービス:
- Gmail、Outlook(メール)
- Microsoft 365、Google Workspace(オフィスツール)
- Salesforce(CRM)
- Slack、Microsoft Teams(コミュニケーション)
適した用途:
- すぐに使えるツールが欲しい
- システム管理の負荷をゼロにしたい
- 複数拠点・リモートワークで利用したい
(4) それぞれの使い分けと代表的サービス例
選定基準:
| 要件 | 推奨タイプ |
|---|---|
| 柔軟なカスタマイズが必要 | IaaS |
| アプリケーション開発に集中したい | PaaS |
| すぐに使えるツールが欲しい | SaaS |
| 運用負荷を最小限にしたい | SaaS |
| 独自のシステム構成が必要 | IaaS |
実際の企業では、用途に応じてこれら3種類を組み合わせて利用するケースが多いです。例えば、
- メールやオフィスツールはSaaS(Microsoft 365)
- 社内システムの開発はPaaS(Azure App Service)
- 特殊な要件のシステムはIaaS(Azure Virtual Machines)
という形で使い分けることが一般的です。
クラウドサービスのメリットとデメリット
クラウドサービスには多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。両方を理解した上で導入を検討することが重要です。
(1) メリット:初期投資削減・スケーラビリティ・柔軟な運用
初期投資の削減:
- サーバー・ネットワーク機器の購入が不要
- データセンターの設置・運用費用が不要
- 利用した分だけ支払う従量課金制
スケーラビリティ(拡張性):
- ビジネス成長に合わせてリソースを柔軟に拡張
- 繁忙期のアクセス増加に迅速に対応
- 不要になったリソースは簡単に削減
柔軟な運用:
- 世界中どこからでもアクセス可能
- 新規サービスの立ち上げが迅速(数分~数日)
- システム障害時の復旧が早い
運用負荷の軽減:
- サーバー保守・セキュリティパッチ適用はベンダーが担当
- 社内IT担当者の負荷を削減
- 最新技術を自動的に利用可能
(2) デメリット:インターネット依存・サービス提供者への依存・セキュリティリスク
インターネット依存:
- インターネット接続が必須
- 回線障害時にサービスが利用できない
- 通信速度がパフォーマンスに影響
サービス提供者への依存:
- ベンダーのサービス障害の影響を受ける
- サービス終了のリスク
- 料金体系の変更に対応する必要
セキュリティリスク:
- 情報漏洩・不正アクセスのリスク
- 設定ミスによるセキュリティホール
- データの物理的な保管場所が不明確な場合がある
継続的なコスト:
- 月額費用が継続的に発生
- 長期的にはオンプレミスよりコスト高になる場合もある
(3) オンプレミスとの比較(コスト・運用負荷・拡張性)
総合的な比較:
| 項目 | クラウドサービス | オンプレミス |
|---|---|---|
| 初期コスト | ★★★(低い) | ★(高い) |
| 運用コスト | ★★(継続費用あり) | ★★(保守費用あり) |
| 運用負荷 | ★★★(低い) | ★(高い) |
| 拡張性 | ★★★(柔軟) | ★(制限あり) |
| カスタマイズ性 | ★★(制限あり) | ★★★(自由) |
| セキュリティ | ★★(リスクあり) | ★★★(管理しやすい) |
| 導入スピード | ★★★(迅速) | ★(時間かかる) |
どちらを選ぶべきか:
- 初期投資を抑えたい、迅速な立ち上げが必要 → クラウド
- 高度なカスタマイズが必要、セキュリティ要件が厳格 → オンプレミス
- 段階的にクラウド移行する「ハイブリッドクラウド」も選択肢
自社に合ったクラウドサービスの選び方
クラウドサービスを選ぶ際は、自社の業務要件を整理し、適切なサービスを選定することが重要です。
(1) 業務要件の整理(現状フロー・システム依存関係の確認)
クラウド導入前に以下を整理しましょう:
現状の業務フロー:
- どの業務プロセスでシステムを利用しているか
- 各部門の利用頻度・アクセス方法
- リモートアクセスの必要性
システム依存関係:
- 既存システムとの連携要件
- データの移行方法・移行期間
- 他システムとのAPI連携の有無
セキュリティ要件:
- 扱うデータの機密レベル
- コンプライアンス要件(個人情報保護法、業界規制等)
- アクセス制御の必要性
これらを事前に整理することで、適切なクラウドサービスを選定できます。
(2) 企業規模・予算に応じたサービス選定
小規模企業(従業員50人未満):
- SaaSを中心に導入(Microsoft 365、Google Workspace等)
- 初期投資を最小限に抑える
- 運用負荷の低いサービスを優先
中堅企業(従業員50~500人):
- SaaS + PaaSの組み合わせ
- 基幹システムの一部をクラウド化
- 段階的に移行し、ハイブリッド構成も検討
大企業(従業員500人以上):
- IaaS + PaaS + SaaSの総合的な活用
- プライベートクラウドも検討
- セキュリティ・コンプライアンス要件を重視
予算は企業規模・システム規模により大きく変動します。月額数千円~数百万円まで幅広いため、複数ベンダーから見積もりを取ることが推奨されます。
(3) 主要クラウドベンダーの比較(AWS・Azure・Google Cloud等の特徴)
主要なクラウドベンダーの特徴を公平に比較します:
Amazon Web Services(AWS):
- 市場シェアNo.1(約32%)
- サービス数が豊富(200以上)
- スタートアップから大企業まで幅広い導入実績
- ドキュメント・コミュニティが充実
Microsoft Azure:
- 市場シェア第2位(約23%)
- Microsoft製品(Office 365、Windows Server等)との親和性が高い
- エンタープライズ企業に強い
- ハイブリッドクラウド構成に対応
Google Cloud Platform(GCP):
- 市場シェア第3位(約12%)
- AI/機械学習サービスに強み
- データ分析基盤(BigQuery)が高性能
- 料金体系がシンプル
その他のサービス:
- Oracle Cloud: Oracle Databaseとの親和性が高い
- Alibaba Cloud: アジア・中国市場に強い
どのサービスも基本機能は同等ですが、既存システムとの親和性・料金体系・サポート体制を比較して選定することが重要です。
(4) SLA(サービス品質保証)の確認ポイント
SLA(Service Level Agreement)は、サービス提供者が保証するサービス品質の基準です。
確認すべき項目:
稼働率:
- 一般的に99.9%~99.99%が保証される
- 99.9%: 年間約8.7時間のダウンタイム許容
- 99.99%: 年間約52分のダウンタイム許容
障害時の対応:
- 復旧目標時間(RTO: Recovery Time Objective)
- 復旧ポイント目標(RPO: Recovery Point Objective)
- サポート窓口の対応時間(24時間365日対応か)
補償内容:
- SLA未達時の返金・補償内容
- 補償の上限金額
データの保管場所:
- データセンターの場所(国内・海外)
- データ主権・法規制への対応
特にミッションクリティカルなシステムをクラウド化する場合は、SLAの内容を詳細に確認することが重要です。
クラウド導入時のセキュリティリスクと対策
クラウドサービスは便利ですが、適切なセキュリティ対策を講じないと情報漏洩などのリスクがあります。
(1) 8つの主要リスク(情報漏洩・不正アクセス・データ損失・設定ミス等)
NTT東日本の調査によると、クラウド環境では以下の8つのセキュリティリスクがあるとされています:
1. 情報漏洩:
- 機密データの外部流出
- アクセス権限の不適切な設定
2. 不正アクセス:
- ID・パスワードの漏洩
- 脆弱性を突いた侵入
3. データ損失:
- 誤操作によるデータ削除
- サービス障害時のデータ消失
4. 設定ミス:
- セキュリティ設定の不備
- 公開範囲の誤設定
5. サービス障害:
- ベンダー側のシステム障害
- 大規模障害時の影響
6. 内部不正:
- 従業員による情報持ち出し
- 退職者のアクセス権限残存
7. サイバー攻撃:
- DDoS攻撃
- ランサムウェア
8. 法規制・コンプライアンス:
- データ保管場所の法的制約
- 業界規制への非対応
(2) 具体的なセキュリティ対策(多要素認証・暗号化・アクセス制御)
これらのリスクに対する具体的な対策は以下の通りです:
多要素認証(MFA)の導入:
- パスワード + SMS認証、生体認証等
- 管理者アカウントは必須で導入
データの暗号化:
- 通信時の暗号化(TLS/SSL)
- 保存時の暗号化(保存データの暗号化)
アクセス制御の実装:
- 最小権限の原則(必要最低限の権限のみ付与)
- IPアドレス制限
- 定期的なアクセス権限の見直し
ログ監視:
- アクセスログの記録・監視
- 異常なアクセスの検知・通知
セキュリティポリシーの策定:
- パスワードポリシー(複雑性・定期変更)
- デバイス管理(許可されたデバイスのみアクセス)
- 従業員教育(セキュリティ意識の向上)
(3) データバックアップ戦略と定期的な実施
クラウドサービスは高い可用性を持ちますが、完全にデータ損失リスクがゼロではありません。
バックアップ戦略:
3-2-1ルール:
- データを3つ保持(本番 + バックアップ2つ)
- 2種類の異なる媒体に保存(クラウド + ローカル等)
- 1つは別の場所に保管(災害対策)
バックアップ頻度:
- ミッションクリティカルなデータ: 毎日
- 重要なデータ: 週1回
- その他のデータ: 月1回
復旧テスト:
- 定期的にバックアップからの復旧テストを実施
- 復旧手順のドキュメント化
- 復旧目標時間(RTO)の設定
(4) セキュリティ対策は継続的に最新化が必要
クラウドのセキュリティリスクは常に変化しています。
継続的な対策:
- セキュリティパッチの定期適用
- 脆弱性情報の収集・対応
- セキュリティ監査の定期実施
- 従業員への定期的なセキュリティ教育
- インシデント対応計画の策定・訓練
「一度対策すれば終わり」ではなく、継続的に見直し・改善することが重要です。
まとめ:企業規模・用途別クラウド選定のポイント
クラウドサービスは、初期投資を抑えて柔軟にシステムを拡張できる便利なサービスです。IaaS・PaaS・SaaSの3種類があり、自社の用途に応じて使い分けることが重要です。
この記事のまとめ:
- クラウドサービスは2024年日本市場4兆円超の成長市場
- IaaS(インフラ提供)、PaaS(開発環境提供)、SaaS(アプリケーション提供)の3種類
- メリットは初期投資削減・スケーラビリティ、デメリットはインターネット依存・セキュリティリスク
- 主要ベンダーはAWS(32%)、Azure(23%)、GCP(12%)
- セキュリティ対策として多要素認証・暗号化・定期バックアップが必須
次のアクション:
- 自社の業務要件とシステム依存関係を整理する
- 企業規模・予算に応じたクラウドサービスを選定する
- 複数ベンダーから見積もりを取り、SLAを比較する
- セキュリティ対策を策定し、段階的にクラウド移行を進める
自社に合ったクラウドサービスを選び、DX推進とビジネス成長を加速させましょう。
※クラウドサービスの内容や料金は変更される可能性があります。最新情報は各ベンダーの公式サイトでご確認ください。
