クラウドデータベースとは?注目される背景
データ基盤の構築・運用に課題を抱えているBtoB企業の開発責任者やインフラ担当者にとって、クラウドデータベースは有力な選択肢の一つです。「オンプレミス型とどう違うの?」「コストは本当に安いの?」「セキュリティは大丈夫?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、クラウドデータベースの基礎知識から選定基準、主要サービス比較まで、実践的な情報を解説します。
この記事のポイント:
- クラウドデータベースはIaaS型とDBaaS型の2種類があり、用途によって選択肢が異なる
- 初期費用削減・バックアップ自動化などのメリットがある一方、カスタマイズ性の制約もある
- AWS・Azure・Google Cloudの3大クラウドで84種類以上のデータベースサービスが提供されている
- データ種類・容量・アクセス頻度・セキュリティ要件・コストを総合評価して選定する
- 2025年の市場規模は224.3億ドル、2032年には622.5億ドルに成長予測(CAGR 15.7%)
(1) BtoB企業のデータ基盤構築の課題
BtoB企業のデータ基盤構築では、以下のような課題が指摘されています。
初期投資の負担:
- サーバ・ソフトウェアの初期費用が数百万円〜数千万円かかるケースがある
- 電気代・保守費・管理者の人件費などの運用コストも継続的に発生
管理負担:
- オンプレミス型では、サーバ設置・ソフトウェアインストール・バックアップ・障害対応などを自社で行う必要がある
- IT人材の不足により、専門的な管理が困難な企業も多い
柔軟性の欠如:
- データ量の急増時に、サーバ増設に時間とコストがかかる
- リモートワークや現場作業の効率化が進まない
これらの課題を解決する選択肢として、クラウドデータベースが注目されています。
(2) 2025年の崖とレガシーシステム刷新
日本企業では「2025年の崖」と呼ばれる課題が深刻化しています。これは、レガシーシステム(老朽化したシステム)が2025年以降に経済損失を引き起こすリスクを指します。
主な導入理由:
- レガシーシステムの刷新対応
- VUCA時代(変動性・不確実性が高い時代)の変化への対応
- デジタルデータ活用の拡大
- BCP(事業継続計画)対策
クラウドデータベースは、これらの課題に対応する手段として選ばれるケースが増えています。
(3) クラウドデータベース市場の成長
市場調査会社Coherent Market Insightsの予測によると、クラウドデータベース市場は以下のように成長する見込みです。
市場規模予測:
- 2025年: 224.3億ドル
- 2032年: 622.5億ドル
- 年平均成長率(CAGR): 15.7%
市場構成(2025年):
- リレーショナルデータベース: 58.6%のシェア
- パブリッククラウド展開: 56.2%を占める
※この予測は調査会社の見解であり、実際の成長率は市場環境により変動する可能性があります。
クラウドデータベースの基礎知識(種類・仕組み・メリット)
(1) クラウドデータベースの定義と仕組み
クラウドデータベースとは、インターネット経由でアクセス可能なデータベースサービスです。自社でサーバを設置・管理する必要がなく、クラウドベンダーが提供するインフラ上でデータベースを利用できます。
基本的な仕組み:
- クラウドベンダーがデータセンターでサーバを運用
- ユーザーはインターネット経由でアクセス
- 従量課金制が一般的(データ量・利用時間に応じた料金)
(2) IaaS型とDBaaS型の違い
クラウドデータベースは、提供形態によって2種類に分類されます。
IaaS型(Infrastructure as a Service):
- インフラ(サーバ・ストレージ・ネットワーク)をサービスとして提供
- ユーザーがデータベースソフトウェアをインストール・管理
- カスタマイズ性が高く、細かい設定が可能
DBaaS型(Database as a Service):
- データベースをサービスとして提供
- ベンダーが管理・運用を担当
- すぐに利用開始でき、管理負担が少ない
選択基準としては、カスタマイズ性を重視する場合はIaaS型、管理負担を減らしたい場合はDBaaS型が適しています。
(3) 6つのメリット(初期費用削減・バックアップ自動化など)
クラウドデータベースには、以下のようなメリットがあると言われています。
1. 初期費用の削減:
- サーバ・ソフトウェアの初期投資が不要
- 電気代・保守費・管理者の人件費も削減できるケースが多い
2. 従量課金制による予算管理:
- データ量や利用時間に応じた料金体系
- 使った分だけ支払うため、予算の見通しが立てやすい
3. インターネット経由のアクセス:
- リモートワークや現場作業の効率化が実現
- 場所を選ばずにデータベースにアクセス可能
4. バックアップの自動化:
- 複数のデータセンターで分散管理・保管
- 障害時の復旧が容易
5. スケーラビリティ:
- データ量の急増時に、迅速にリソースを追加できる
- サーバ増設の手間とコストが不要
6. すぐに利用開始:
- サーバ設置・ソフトウェアインストール不要
- すでに構築されたデータベースを利用できる
(4) 主なデータベースの種類(RDB・NoSQL・DWH)
クラウドデータベースで提供される主なデータベース種類は以下の通りです。
リレーショナルデータベース(RDB):
- テーブル形式でデータを管理
- SQL言語で操作
- トランザクション処理に強い
- 例: MySQL、PostgreSQL、SQL Server
NoSQLデータベース:
- リレーショナルデータベース以外の総称
- スケーラビリティに優れる
- 大量データの高速処理が得意
- 例: MongoDB、Cassandra、DynamoDB
データウェアハウス(DWH):
- 大量データの分析・集計に特化
- ビジネスインテリジェンス(BI)ツールとの連携が一般的
- 例: BigQuery、Redshift、Snowflake
用途によって最適なデータベース種類が異なるため、選定時は自社の要件を明確にすることが重要です。
オンプレミス型との比較(コスト・管理負担・柔軟性)
(1) 初期費用と運用コストの違い
クラウドデータベース:
- 初期費用: 0円〜(サーバ・ソフトウェアの購入不要)
- 運用コスト: 従量課金制(データ量・利用時間に応じる)
オンプレミス型:
- 初期費用: 数百万円〜数千万円(サーバ・ソフトウェア・設置工事)
- 運用コスト: 電気代・保守費・管理者人件費が継続的に発生
注意点: 用途によっては、クラウドデータベースの従量課金制がオンプレミス型より高くなる場合があります。データ量や利用時間を踏まえた総コスト比較が推奨されます。
(2) 管理負担とスケーラビリティ
管理負担:
- クラウド(DBaaS型): ベンダーが管理・運用を担当、自社の負担が少ない
- オンプレミス型: サーバ設置・バックアップ・障害対応などを自社で実施
スケーラビリティ:
- クラウド: データ量の急増時に迅速にリソース追加が可能
- オンプレミス型: サーバ増設に時間とコストがかかる
(3) カスタマイズ性とセキュリティ
カスタマイズ性:
- クラウド: 基本的にアドオン開発が行えず、カスタマイズ性が大きく劣る
- オンプレミス型: 細かい設定やカスタマイズが可能
セキュリティ:
- クラウド: 暗号化・IDS(侵入検知システム)・ログ監視が標準装備。ただしインターネット経由のため、侵害・侵入を前提とした警戒が必要
- オンプレミス型: 自社内ネットワークで管理、外部からのアクセスが制限される
(4) どちらを選ぶべきか?判断基準
クラウドデータベースが適している場合:
- 初期費用を抑えたい
- 管理負担を減らしたい
- データ量の変動が大きい
- リモートアクセスが必要
オンプレミス型が適している場合:
- カスタマイズ性を重視
- セキュリティ要件が厳格(外部ネットワーク接続を避けたい)
- 長期的な総コストを比較した結果、オンプレミスの方が安い
クラウドデータベースの選び方(選定基準と比較ポイント)
(1) データ種類による選定(構造化・非構造化・半構造化)
データ種類によって最適なデータベースが異なります。
構造化データ(表形式):
- リレーショナルデータベース(RDB)が適切
- 例: 顧客情報、販売データ、在庫データ
非構造化データ(画像・動画・音声):
- NoSQLデータベースやオブジェクトストレージが適切
- 例: 製品画像、マニュアルPDF、動画コンテンツ
半構造化データ(JSON・XML):
- ドキュメント型NoSQLデータベースが適切
- 例: APIレスポンス、ログデータ
(2) 容量・アクセス頻度による選定
容量:
- 小規模(〜100GB): 無料利用枠のあるサービスで試すのが推奨される
- 中規模(100GB〜1TB): コスト効率の良いサービスを比較
- 大規模(1TB〜): スケーラビリティとコストを総合評価
アクセス頻度:
- 高頻度(リアルタイム処理): トランザクション処理に強いRDBが適切
- 中頻度(定期的なバッチ処理): データウェアハウスが適切
- 低頻度(アーカイブ): 低コストのストレージサービスが適切
(3) セキュリティ要件と他システム連携
セキュリティ要件:
- 暗号化(データの暗号化、通信の暗号化)
- アクセス制御(IPアドレス制限、多要素認証)
- ログ監視(不正アクセス検知)
大手クラウドベンダー(AWS・Azure・Google Cloud)は、これらのセキュリティ対策を標準装備していますが、詳細は各社の公式サイトで確認してください。
他システム連携:
- SFA/CRM連携(営業支援システム・顧客管理システム)
- BIツール連携(データ分析・可視化)
- APIアクセス(外部システムとのデータ連携)
(4) コストと予算の考え方
クラウドデータベースの料金体系は、データ量・利用時間・リージョン(地域)により大きく異なります。
主な料金要素:
- ストレージ容量(GB/月)
- データ転送量(GB)
- コンピューティングリソース(CPU・メモリ)
- バックアップ容量
無料利用枠の活用: 多くのクラウドベンダーが無料利用枠を提供しています。まずは無料枠で試してから本格導入を検討するのが推奨されます。
※料金は変更される可能性があるため、最新情報は各社公式サイトで確認してください。
主要クラウドサービス比較(AWS・Azure・Google Cloud)
AWS・Azure・Google Cloudの3大クラウドでは、2022年5月時点で84種類のデータベースサービスが提供されています。ここでは、代表的なサービスを紹介します。
(1) AWS RDS・Aurora等の特徴と料金体系
AWS(Amazon Web Services):
主なサービス:
- Amazon RDS(リレーショナルデータベース): MySQL、PostgreSQL、SQL Server、Oracle等に対応
- Amazon Aurora: MySQL・PostgreSQL互換の高性能データベース
- Amazon DynamoDB: NoSQLデータベース
- Amazon Redshift: データウェアハウス
特徴:
- 世界最大のクラウドベンダー、豊富なサービスラインナップ
- マルチAZ(複数のデータセンター)でのバックアップ機能
- 詳細な料金計算ツール(AWS Pricing Calculator)を提供
料金体系の例(Amazon RDS):
- インスタンスタイプにより異なる(従量課金制)
- ストレージ容量、データ転送量、バックアップ容量が料金に影響
(2) Azure SQL Database・Cosmos DB等の特徴と料金体系
Microsoft Azure:
主なサービス:
- Azure SQL Database: SQL Server互換のリレーショナルデータベース
- Azure Cosmos DB: グローバル分散型NoSQLデータベース
- Azure Database for MySQL/PostgreSQL: オープンソースDB対応
- Azure Synapse Analytics: データウェアハウス
特徴:
- Microsoft製品(Office 365、Dynamics 365)との親和性が高い
- 無料利用枠(Azure SQL Database: 250GB/月)
- エンタープライズ向けのセキュリティ機能が充実
料金体系の例(Azure SQL Database):
- vCore(仮想コア)ベースまたはDTU(Database Transaction Unit)ベース
- リージョン(地域)により料金が異なる
(3) Google Cloud SQL・BigQuery等の特徴と料金体系
Google Cloud:
主なサービス:
- Google Cloud SQL: MySQL、PostgreSQL、SQL Server対応
- Google BigQuery: データウェアハウス、BI分析に強い
- Google Cloud Spanner: グローバル分散型リレーショナルデータベース
- Google Firestore: NoSQLデータベース
特徴:
- BigQueryは大量データの高速分析が得意
- 機械学習(AI)サービスとの連携が強い
- シンプルな料金体系
料金体系の例(Google Cloud SQL):
- インスタンスタイプ(CPU・メモリ)により異なる
- ストレージ容量、ネットワーク転送量が料金に影響
(4) 無料利用枠のあるサービス
主要クラウドベンダーは、無料利用枠を提供しています。
無料利用枠の例:
- Azure SQL Database: 250GB/月
- Oracle Autonomous Database: Always Free枠
- Google BigQuery: 1TB/月のクエリ処理
※無料利用枠の条件は変更される可能性があるため、最新情報は各社公式サイトで確認してください。
まとめ:用途別おすすめのクラウドデータベース
クラウドデータベースは、初期費用削減・管理負担軽減・スケーラビリティなどのメリットがある一方、カスタマイズ性の制約や従量課金制によるコスト増加のリスクもあります。
用途別の選び方:
トランザクション処理(顧客管理・販売データ):
- リレーショナルデータベース(RDB)が適切
- AWS RDS、Azure SQL Database、Google Cloud SQL等
大量データの分析・集計(BI分析):
- データウェアハウスが適切
- Amazon Redshift、Azure Synapse Analytics、Google BigQuery等
スケーラビリティ重視(アクセス急増に対応):
- NoSQLデータベースが適切
- Amazon DynamoDB、Azure Cosmos DB、Google Firestore等
次のアクション:
- 自社のデータ種類・容量・アクセス頻度を整理する
- AWS・Azure・Google Cloudの公式サイトで詳細を確認する
- 無料利用枠で実際に試してから導入を決定する
- 総コスト(初期費用+運用コスト)を比較する
自社に合ったクラウドデータベースを選定し、データ基盤の効率化を目指しましょう。
