CRM導入を検討しているけれど、クラウド型とオンプレミス型の違いが分からない…
B2B企業の営業・マーケティング責任者の多くが、CRM導入を検討する際に「クラウド型とオンプレミス型の違いが分からない」「クラウド型のメリット・デメリット・セキュリティ・コストを知りたい」という悩みを抱えています。どちらを選ぶかで、初期コスト・運用負荷・導入期間が大きく変わるため、慎重な判断が必要です。
この記事では、クラウド型CRMの基本概念、オンプレミス型との比較、導入メリット・デメリット、セキュリティ対策、主要ツール比較を解説し、企業規模・業務要件・セキュリティポリシーに応じた選定の考え方を提示します。
この記事のポイント:
- クラウドCRMは自社サーバー不要でインターネット経由で利用、初期費用が低く導入が早い
- オンプレミス型は自社サーバー設置、初期投資が大きいが柔軟なカスタマイズが可能
- クラウドCRM市場は2024年の553億ドルから2037年に2,326億ドルへ成長予測(CAGR 13.3%)
- 2025年現在、ITセキュリティ専門家の大多数がクラウドはオンプレミスより安全と評価
- 月額制(1ユーザーあたり3,000〜10,000円程度)で、利用規模に応じたコスト調整が可能
クラウド型CRMとは
(1) クラウドCRMの定義と仕組み
クラウド型CRMとは、**インターネット経由でサービスを利用する形態のCRM(顧客関係管理システム)**です。自社でサーバーを持たず、ベンダーが提供するシステムをクラウド上で利用します。
クラウドCRMの特徴:
- 自社サーバーが不要(インターネット環境があれば利用可能)
- 初期費用が低い(月額課金制が一般的)
- 導入期間が短い(数週間〜数ヶ月で利用開始可能)
- 自動アップデート(ベンダーが最新機能を提供)
- マルチデバイス対応(PC、スマートフォン、タブレットから利用可能)
(出典: ITトレンド「【2025年】クラウド型CRM(顧客管理)9選比較!人気ランキングも紹介」)
(2) SaaS型サービスの特徴
クラウドCRMはSaaS(Software as a Service)型サービスとして提供されます。SaaSとは、ソフトウェアをインターネット経由で利用する形態です。
SaaSの特徴:
- ソフトウェアのインストール不要
- アップデート・メンテナンスはベンダーが実施
- 月額・年額のサブスクリプション課金
- 利用ユーザー数に応じた柔軟な契約
利用の流れ:
- ベンダーの公式サイトでアカウント登録
- ブラウザまたは専用アプリからログイン
- すぐに利用開始(サーバー構築不要)
(3) クラウドCRM市場の動向
クラウドCRM市場は急成長しています:
市場規模の成長予測:
- 2024年: 553億ドル
- 2037年: 2,326億ドル(CAGR 13.3%で成長)
日本市場の主要プレイヤー:
- 富士通、NEC、Sansan、サイボウズ(kintone)、SCSK等
市場トレンド:
- オンプレミス型からクラウド型への移行が加速
- 中小企業でもクラウド技術により手頃な価格でCRMを利用可能に
- AI統合、モバイル対応、API連携などの高度な機能が標準化
(出典: SDKI「世界のクラウド CRM市場 : 世界の市場規模と需要、シェア、トップ傾向とメーカー」)
クラウド型とオンプレミス型の違い
(1) サーバー設置の有無
クラウド型とオンプレミス型の最も大きな違いは、サーバー設置の有無です。
クラウド型:
- 自社サーバー不要
- ベンダーがサーバーを管理
- インターネット環境があれば利用可能
オンプレミス型:
- 自社内にサーバーを設置
- 自社でサーバーを管理・運用
- 専門的な知識を持つIT人材が必要
(2) 初期コストと運用コストの比較
| 項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 低い(0円〜) | 高い(数百万円〜数千万円) |
| 月額費用 | あり(1ユーザー3,000〜10,000円程度) | なし(サーバー維持費・電気代のみ) |
| 保守費用 | ベンダーが負担(月額に含まれる) | 自社が負担(保守契約またはIT人材の人件費) |
| トータルコスト(5年) | 初期費用は低いが、月額費用が累積 | 初期投資は大きいが、長期的には割安になる場合も |
一般的な料金相場(クラウド型):
- 小規模企業(3〜10ユーザー): 月額1万円〜10万円
- 中堅企業(10〜100ユーザー): 月額10万円〜100万円
- 大企業(100ユーザー以上): 月額100万円〜
※最新の料金は各社公式サイトをご確認ください。
(出典: ITトレンド「【2025年】クラウド型CRM(顧客管理)9選比較!人気ランキングも紹介」)
(3) 導入期間の違い
クラウド型:
- 導入期間: 数週間〜数ヶ月
- アカウント登録後、すぐに利用開始可能
- データ移行・設定のみで運用開始
オンプレミス型:
- 導入期間: 数ヶ月〜1年以上
- サーバー調達・設置・ネットワーク構築・システム開発が必要
- 専門的な知識を持つIT人材が必要
(4) カスタマイズ性と柔軟性
クラウド型:
- カスタマイズに制限あり(ベンダーが提供する機能の範囲内)
- 基本機能で十分な企業に適している
- API連携で他システムとの連携は可能
オンプレミス型:
- 柔軟なカスタマイズが可能(自社の業務プロセスに合わせて開発)
- 既存の基幹システムとの高度な連携が可能
- 特殊な業務要件がある企業に適している
クラウドCRM導入のメリットとデメリット
(1) メリット:低コスト・スピード導入・自動アップデート
初期コストが低い:
- サーバー購入・設置が不要
- 月額課金制で、初期投資を抑えられる
- 無料プランも存在(Zoho CRMは3ユーザーまで永久無償)
スピード導入:
- アカウント登録後、すぐに利用開始可能
- 導入期間が短い(数週間〜数ヶ月)
- システム構築の専門知識が不要
自動アップデート:
- ベンダーが自動アップデートを提供
- 常に最新機能を利用できる
- アップデート作業の負担がゼロ
メンテナンス不要:
- サーバー保守、セキュリティパッチ適用などはベンダーが実施
- IT人材を配置する必要がない
(出典: Mazrica「【2025年最新版】おすすめのクラウド型CRM8選|導入のメリットや選び方を解説」)
(2) メリット:マルチデバイス対応・場所を問わないアクセス
マルチデバイス対応:
- PC、スマートフォン、タブレットから利用可能
- 営業先からスマートフォンでリアルタイムにデータ更新
- 外出先でも顧客情報を確認できる
場所を問わないアクセス:
- インターネット環境があればどこからでも利用可能
- リモートワーク・在宅勤務に対応
- 複数拠点での利用が容易
利用規模に応じたコスト調整:
- ユーザー数を増減できる(月単位での契約変更が可能)
- 繁忙期にユーザー数を増やし、閑散期に減らすことも可能
(3) デメリット:カスタマイズ制限・サブスク費用継続
カスタマイズに制限:
- ベンダーが提供する機能の範囲内でしかカスタマイズできない
- 特殊な業務要件がある場合、対応できないことも
- 高度なカスタマイズが必要な企業にはオンプレミス型が適している
サブスク費用が継続:
- 月額・年額費用が継続的に発生
- 長期利用の場合、トータルコストがオンプレミス型を上回ることも
- 5年以上の長期利用を想定する場合は、トータルコストを比較検討すべき
(4) デメリット:ベンダー依存・データ主権の懸念
ベンダー依存:
- システムのカスタマイズ・アップデート・セキュリティ対策がベンダー任せ
- ベンダーのサービス終了リスク(データエクスポート機能の確認が重要)
- ベンダーの価格改定に従わざるを得ない
データ主権の懸念:
- 顧客データがベンダーのサーバーに保管される
- データの保管場所(国内・海外)を確認すべき
- 金融・医療など高度なセキュリティが求められる業種では、オンプレミス型も検討すべき
クラウドCRMのセキュリティ対策
(1) データ暗号化と多要素認証
クラウドCRMのセキュリティ対策として、以下が重要です:
データ暗号化:
- 通信中のデータを暗号化(SSL/TLS)
- 保存データを暗号化(AES-256など)
- 第三者による盗聴・改ざんを防止
多要素認証(MFA):
- パスワード以外の認証要素(SMSコード、生体認証、セキュリティキーなど)を組み合わせる
- 不正アクセスを防止
- 主要なクラウドCRMは多要素認証に対応
アクセス制御:
- ユーザーごとにアクセス権限を設定
- 部署・役職に応じた権限管理
- 不要なデータへのアクセスを制限
(出典: Progress「クラウドCRMのセキュリティ:顧客情報の安全」)
(2) ISO 27001認証・プライバシーマーク
セキュリティ対策はベンダーに依存するため、第三者認証の確認が重要です:
ISO 27001(ISMS):
- 情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格
- 取得企業は一定の情報セキュリティ水準を満たしている
- 主要なクラウドCRMベンダーは取得済み
プライバシーマーク:
- 個人情報保護に関する第三者認証制度(日本)
- 取得企業は個人情報の適切な管理体制を整えている
確認すべきポイント:
- ベンダーの公式サイトでセキュリティ認証を確認
- セキュリティポリシー・SLA(サービスレベル契約)を確認
- データバックアップ・災害復旧(DR)体制を確認
(3) クラウドとオンプレミスの安全性比較
現在の評価:
2025年現在、ITセキュリティ専門家の大多数がクラウドはオンプレミスより安全と評価しています。
理由:
- クラウドベンダーは専門的なセキュリティ人材・最新の対策技術を保有
- 24時間365日の監視体制
- 自動的なセキュリティパッチ適用
- 多層防御(ファイアウォール、侵入検知システム、DDoS対策など)
オンプレミス型のリスク:
- 自社のIT人材のスキルに依存
- セキュリティパッチ適用の遅れ
- 予算・人材不足によるセキュリティ対策の不足
(出典: Progress「クラウドCRMのセキュリティ:顧客情報の安全」)
(4) セキュリティチェックリスト
クラウドCRM選定時のセキュリティチェックリスト:
- データ暗号化(通信中・保存データ)
- 多要素認証(MFA)対応
- ISO 27001認証取得
- プライバシーマーク取得(日本企業の場合)
- データバックアップ体制
- 災害復旧(DR)体制
- データの保管場所(国内・海外)
- SLA(サービスレベル契約)
- データエクスポート機能
主要なクラウドCRMの比較
(1) Salesforce:世界トップシェアの特徴
特徴:
- 世界最大手のCRMベンダー(世界シェア1位)
- オールインワン型(CRM・SFA・MA統合)
- 高度なカスタマイズが可能
- AI機能(Einstein GPT)統合
料金:
- Essentials: 月額3,000円/ユーザー〜
- Professional: 月額9,600円/ユーザー〜
- Enterprise: 月額19,800円/ユーザー〜
適性:
- 中〜大規模企業(従業員100人以上)
- 高度な分析・カスタマイズが必要な企業
※最新の料金は公式サイトをご確認ください。
(2) HubSpot:無料プランから始められるツール
特徴:
- オールインワン型(CRM・SFA・MA統合)
- 無料プランあり(基本機能のみ)
- 使いやすいインターフェース
- インバウンドマーケティング重視
料金:
- 無料プラン: 0円(基本機能のみ)
- Starter: 月額約2万円〜
- Professional: 月額約10万円〜
適性:
- 小〜中規模企業(従業員10〜500人)
- 初めてCRMを導入する企業
- インバウンドマーケティング(コンテンツマーケティング)を重視する企業
※最新の料金は公式サイトをご確認ください。
(3) Zoho CRM:3ユーザーまで永久無償
特徴:
- コストパフォーマンスに優れたCRM
- 3ユーザーまで永久無償の無料プラン
- 日本語サポートあり
- モバイルアプリ充実
料金:
- 無料プラン: 0円(3ユーザーまで永久無償)
- Standard: 月額1,680円/ユーザー
- Professional: 月額2,760円/ユーザー
適性:
- 小規模企業(従業員10〜100人)
- 初期投資を抑えたい企業
- 無料プランで試験導入したい企業
※最新の料金は公式サイトをご確認ください。
(出典: ITトレンド「【2025年】クラウド型CRM(顧客管理)9選比較!人気ランキングも紹介」)
(4) その他の主要ツール(kintone、eセールスマネージャー等)
kintone(サイボウズ):
- ノーコードでカスタマイズ可能
- 日本企業向けに使いやすい
- 料金: 月額約1,500円/ユーザー〜
eセールスマネージャー:
- 日本企業向けのSFA・CRM
- 営業プロセスに特化
- 料金: 要問い合わせ
Microsoft Dynamics 365:
- Microsoft 365(Teams、Outlookなど)との連携が強力
- 料金: 月額約1万円/ユーザー〜
複数のツールを比較検討し、無料トライアルで試すのが推奨されます。
まとめ:企業規模別の選び方
クラウドCRMは、自社サーバー不要でインターネット経由で利用でき、初期費用が低く導入が早いのが特徴です。オンプレミス型は自社サーバー設置で初期投資が大きいですが、柔軟なカスタマイズが可能です。2025年現在、ITセキュリティ専門家の大多数がクラウドはオンプレミスより安全と評価しています。
企業規模別の選び方:
小規模企業(従業員30人未満):
- 推奨: クラウド型(HubSpot無料プラン、Zoho CRM無料プラン)
- 理由: 初期投資を抑え、すぐに利用開始できる
- 注意: 無料プランは機能制限があるため、有料プランへの移行を検討
中堅企業(従業員30〜300人):
- 推奨: クラウド型(HubSpot Professional、Zoho CRM Professional、Salesforce Essentials)
- 理由: CRM・SFA・MA統合のオールインワン型が効率的
- 注意: 月額費用が累積するため、5年以上の長期利用ではトータルコストを比較
大企業(従業員300人以上):
- 推奨: クラウド型(Salesforce Enterprise、Microsoft Dynamics 365)またはオンプレミス型
- 理由: 高度なカスタマイズ、既存システム連携が必要
- 注意: 既存の基幹システムとの高度な連携が必要な場合はオンプレミス型も検討
業種別の注意点:
- 金融・医療: 高度なセキュリティが求められるため、オンプレミス型も検討
- IT・SaaS: クラウド型が主流(HubSpot、Salesforce)
- 製造業: 既存の基幹システム(ERP)との連携が重要なため、カスタマイズ性を重視
選定のポイント:
- 自社の課題解決に必要な機能を最優先で確認
- 無料トライアル期間を活用して使い勝手を検証
- 料金体系と利用規模を照らし合わせて選定
- セキュリティ対策(ISO 27001認証、プライバシーマーク)を確認
- データエクスポート機能を確認(ベンダーロックイン回避)
次のアクション:
- 自社の企業規模・業種・業務要件を整理する
- 3〜5社の公式サイトで詳細を確認する(最新の料金・機能)
- 無料トライアルで実際に操作性を試す
- セキュリティ認証(ISO 27001、プライバシーマーク)を確認する
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