ビジネスセグメントとは?分類方法・活用法・設計のポイントを解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/19

ビジネスセグメントとは?2つの意味と活用シーン

B2B SaaS企業がマーケティングや経営管理を進める中で、「どの顧客層に注力すべきか分からない」「市場をどう分類すればいいのか」といった課題を抱える担当者は少なくありません。

この記事では、ビジネスセグメントの意味と分類方法、活用法、設計のポイントを実務視点で解説します。

この記事のポイント:

  • ビジネスセグメントにはマーケティング(市場細分化)と会計(事業区分)の2つの意味がある
  • セグメント分けには4つの変数を活用:人口動態、地理的、心理的、行動
  • STP分析(セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング)で戦略を立案
  • 4Rの原則(優先順位・有効規模・到達可能性・測定可能性)を満たすセグメントを設定
  • 上場企業は事業セグメント情報の開示が義務(企業会計基準第17号)

(1) マーケティングにおけるセグメント(市場細分化)

マーケティングにおけるセグメントとは、市場や顧客を特定の基準で分類・細分化したグループのことです。

(出典: カオナビ人事用語集「セグメントとは? ビジネスでの意味や使い方、分け方を簡単に」)

セグメントの定義:

  • 市場や顧客を同質なグループに分類すること
  • セグメンテーション(市場細分化)によって作られる各グループ

活用シーン:

  • マーケティング戦略の立案(どの顧客層に注力するか)
  • 製品・サービスの開発(どのセグメントのニーズに応えるか)
  • 営業リソースの配分(どのセグメントに営業人員を割り当てるか)

(2) 会計における事業セグメント(財務情報の区分)

会計における事業セグメントとは、企業の経営活動を複数の事業領域に分け、財務情報を開示する単位のことです。

(出典: EY Japan「事業セグメント」)

事業セグメントの定義:

  • 企業の売上、損益、資産などを事業単位で細分化した財務情報
  • 有価証券報告書で開示され、投資家や株主が企業の事業別業績を把握するために使用

活用シーン:

  • 投資家への情報開示(どの事業が収益を生み出しているか)
  • 経営判断(どの事業に投資すべきか、撤退すべきか)
  • 事業ポートフォリオの管理(各事業の成長性・収益性を評価)

この記事では、主にマーケティングにおけるセグメントを中心に解説し、後半で会計における事業セグメントにも触れます。

マーケティングにおけるセグメンテーションの基礎知識

セグメンテーションは、マーケティング戦略の基礎となる重要な概念です。

(1) セグメンテーションの目的とメリット

セグメンテーションを行う目的は、効率的かつ効果的なマーケティング活動を実現することです。

(出典: SATORI「セグメンテーションとは?やり方と活用事例、ターゲティングとの違い」)

セグメンテーションの目的:

  • 顧客ニーズの多様化に対応する
  • 限られたリソースを効果的に配分する
  • 競合との差別化を図る

セグメンテーションのメリット:

  • マーケティング効率の向上: 顧客層ごとに最適な施策を実施でき、ROIが改善
  • 顧客満足度の向上: セグメントごとのニーズに合わせた製品・サービスを提供できる
  • 競争優位の確立: 特定セグメントに集中し、ニッチ市場でトップシェアを獲得

(2) セグメンテーションとターゲティング・ポジショニングの関係(STP分析)

セグメンテーションは、STP分析というマーケティング戦略フレームワークの一部です。

(出典: SATORI「セグメンテーションとは?やり方と活用事例、ターゲティングとの違い」)

STP分析の3ステップ:

  1. S(Segmentation:セグメンテーション):

    • 市場を複数のグループに分類
    • 例:業種別、企業規模別、地域別など
  2. T(Targeting:ターゲティング):

    • セグメントの中から注力すべきグループを選定
    • 例:IT企業の中小企業をターゲットに設定
  3. P(Positioning:ポジショニング):

    • ターゲット顧客に対して自社製品・サービスの位置づけを明確化
    • 例:「中小IT企業向けの使いやすいMA」として差別化

STP分析の順序: セグメンテーション(市場の細分化) → ターゲティング(標的市場の選定) → ポジショニング(位置づけの明確化)

(3) セグメンテーションの注意点

セグメンテーションを行う際、いくつか注意すべき点があります。

注意点1: 細分化しすぎない

  • セグメントを細かく分けすぎると、各セグメントの規模が小さくなり、効果的なマーケティングができなくなる
  • 適切な粒度で分類することが重要

注意点2: 定期的な見直し

  • 市場環境の変化に応じて、セグメントを定期的に見直す必要がある
  • 顧客ニーズの変化、競合の動向、自社の成長段階に応じて調整

注意点3: データに基づく分類

  • 感覚や仮説だけでなく、データに基づいてセグメントを設定
  • CRM・MAツールで顧客データを収集・分析

セグメント分けの4つの変数と分類方法

セグメント分けには、4つの変数を活用します。

(出典: 電通マクロミルインサイト「セグメンテーションとは?マーケティングにおける位置づけや、変数、分類法についてリサーチ会社が解説」)

(1) 人口動態変数(デモグラフィック)

人口動態変数は、年齢、性別、所得、職業などの客観的属性で分類する変数です。

主な分類基準:

  • 年齢(10代、20代、30代など)
  • 性別(男性、女性)
  • 所得(年収300万円未満、300〜500万円など)
  • 職業(会社員、公務員、自営業など)
  • 家族構成(単身、夫婦のみ、子育て世帯など)

B2Bの場合(ファーモグラフィック変数):

  • 業種(IT、製造、小売など)
  • 企業規模(従業員数、売上高)
  • 設立年数、上場・非上場

活用例:

  • BtoC: 30代子育て世帯向けの商品開発
  • BtoB: 従業員50〜300人のIT企業向けのMA提供

(2) 地理的変数(ジオグラフィック)

地理的変数は、国、地域、気候などの地理的要素で分類する変数です。

主な分類基準:

  • 国・地域(日本、アジア、欧米など)
  • 都道府県(東京都、大阪府など)
  • 都市規模(大都市、地方都市、農村部など)
  • 気候(寒冷地、温暖地など)

活用例:

  • BtoC: 寒冷地向けの暖房機器のプロモーション
  • BtoB: 首都圏の企業向けのセミナー開催

(3) 心理的変数(サイコグラフィック)

心理的変数は、ライフスタイル、価値観、パーソナリティなどの内面的特性で分類する変数です。

主な分類基準:

  • ライフスタイル(アクティブ、インドア派など)
  • 価値観(コスト重視、品質重視、環境配慮など)
  • パーソナリティ(保守的、革新的など)

活用例:

  • BtoC: 環境配慮を重視する消費者向けのエコ商品
  • BtoB: 新技術の早期導入を重視する企業向けのSaaS

(4) 行動変数(ビヘイビアル)

行動変数は、購買頻度、利用状況などの実際の行動で分類する変数です。

主な分類基準:

  • 購買頻度(ヘビーユーザー、ライトユーザー、非ユーザー)
  • 購買状況(初回購入、リピート購入、解約)
  • 利用状況(毎日利用、週1回利用、月1回利用)
  • チャネル(Webサイト、店舗、代理店経由など)

活用例:

  • BtoC: ヘビーユーザー向けのロイヤルティプログラム
  • BtoB: 利用頻度が低い顧客向けのオンボーディング強化

セグメント設計の実践手順(STP分析と4Rの原則)

セグメントを設計する際は、STP分析のフレームワークと4Rの原則を活用します。

(1) ステップ1:セグメンテーション(市場の細分化)

最初のステップは、市場を複数のセグメントに分類することです。

手順:

  1. 変数の選定: 4つの変数(人口動態、地理的、心理的、行動)から適切なものを選ぶ
  2. データ収集: CRM・MAツール、アンケート調査などでデータを収集
  3. セグメントの作成: データをもとに市場を複数のグループに分類

例(B2B SaaS企業):

  • 業種別: IT、製造、小売、サービス
  • 企業規模別: 従業員50人未満、50〜300人、300人以上
  • 利用状況別: 未導入、トライアル中、有料契約中

(2) ステップ2:ターゲティング(標的市場の選定)

次のステップは、複数のセグメントの中から注力すべきグループを選定することです。

選定基準:

  • 市場規模(セグメントの顧客数・売上ポテンシャル)
  • 成長性(今後の市場拡大の見込み)
  • 競合状況(競合の強さ、自社の競争優位性)
  • 自社の強み(自社の製品・サービスがフィットするか)

例:

  • ターゲット: 従業員50〜300人のIT企業
  • 理由: 市場規模が大きく、成長性が高い。自社のMAが中堅企業向けに最適化されている

(3) ステップ3:ポジショニング(位置づけの明確化)

最後のステップは、ターゲット顧客に対して自社製品・サービスの位置づけを明確にすることです。

ポジショニングの設定:

  • 競合との差別化ポイントを明確にする
  • 顧客にどう認識されたいかを定義する

例:

  • ポジショニング: 「中堅IT企業向けの使いやすく、導入コストが低いMA」
  • 差別化: シンプルなUI、日本語サポート、低価格

(4) 4Rの原則によるセグメントの評価

セグメントの有効性を評価するには、4Rの原則を用います。

(出典: カオナビ人事用語集「セグメントとは? ビジネスでの意味や使い方、分け方を簡単に」)

4Rの原則:

  1. Rank(優先順位):

    • 市場規模や成長性が十分にあるか
    • 自社にとって優先すべきセグメントか
  2. Realistic(有効な規模):

    • セグメントの規模が適切か(大きすぎず小さすぎず)
    • 利益を生み出せる十分な規模があるか
  3. Reach(到達可能性):

    • 自社のリソースで到達できるセグメントか
    • 営業、マーケティングで効果的にアプローチできるか
  4. Response(測定可能性):

    • セグメントの反応を測定・評価できるか
    • データで効果を検証できるか

評価例:

  • セグメント: 従業員50〜300人のIT企業
  • Rank: 市場規模大、成長性高、優先度高 ✓
  • Realistic: 約5,000社、十分な規模 ✓
  • Reach: Webマーケティング・インサイドセールスで到達可能 ✓
  • Response: MA導入率、トライアル申込数で測定可能 ✓

すべての基準を満たすセグメントが理想的です。

会計における事業セグメント情報の開示

会計の文脈では、事業セグメントは財務情報を開示する単位として重要です。

(1) 事業セグメント情報とは

事業セグメント情報とは、企業の売上、損益、資産などを事業単位で細分化した財務情報です。

(出典: マネーフォワード「セグメント情報とは?分かりやすく解説!」)

開示の目的:

  • 投資家や株主が企業の事業別業績を把握するため
  • どの事業が収益を生み出し、どの事業が赤字かを明確にする
  • 企業の成長戦略やリスクを評価する材料を提供

開示義務:

  • 上場企業は、企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」により、有価証券報告書でセグメント情報の開示が義務付けられている

(2) セグメント情報の開示方法とマネジメントアプローチ

セグメント情報の開示には、マネジメントアプローチが採用されています。

(出典: EY Japan「事業セグメント」)

マネジメントアプローチとは:

  • 経営者が経営管理に使用している区分と同じ区分でセグメント情報を開示する手法
  • 経営の透明性を高め、投資家が経営者と同じ視点で企業を評価できるようにする

開示内容:

  • 各セグメントの売上高
  • 各セグメントの営業利益(または損失)
  • 各セグメントの資産

具体例:

  • トヨタ自動車: 自動車事業、金融事業に区分
  • ソニー: ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション、イメージング&センシング・ソリューション、金融に区分

(3) セグメント情報の活用(投資判断・経営分析)

セグメント情報は、投資家や経営者が企業を評価する際に重要な情報源となります。

投資家の活用:

  • どの事業が成長しているか、収益性が高いかを分析
  • リスクの高い事業を特定し、投資判断の材料とする

経営者の活用:

  • 事業ポートフォリオの見直し(成長事業への投資、不採算事業の撤退)
  • 各事業の業績評価、事業部長の評価

まとめ:効果的なセグメント活用のポイント

ビジネスセグメントを理解し、適切に設計・活用することで、マーケティング効率の向上と経営管理の改善を実現できます。

この記事のまとめ:

  • ビジネスセグメントにはマーケティング(市場細分化)と会計(事業区分)の2つの意味がある
  • セグメント分けには4つの変数を活用:人口動態、地理的、心理的、行動
  • STP分析(セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング)で戦略を立案
  • 4Rの原則(優先順位・有効規模・到達可能性・測定可能性)を満たすセグメントを設定
  • 上場企業は事業セグメント情報の開示が義務(マネジメントアプローチ)

次のアクション:

  • 自社の顧客を4つの変数で分類し、セグメントを作成
  • STP分析でターゲットセグメントを選定し、ポジショニングを明確化
  • 4Rの原則でセグメントの有効性を評価
  • CRM・MAツールで顧客データを収集・分析し、セグメント別に施策を実施
  • 定期的にセグメントを見直し、市場環境の変化に対応

効果的なセグメント活用で、マーケティングROIの向上と持続的な成長を目指しましょう。

※この記事は2024年11月時点の情報です。セグメント分けの基準は業界や企業により異なるため、自社の状況に応じて設定してください。

よくある質問

Q1セグメンテーションとターゲティングの違いは何ですか?

A1セグメンテーションは市場を複数のグループに分類すること、ターゲティングはその中から注力すべきグループを選定することです。順序はセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングです。セグメンテーションで市場全体を細分化し、ターゲティングで特定セグメントに絞り込みます。

Q2セグメント分けに必要なデータは何ですか?

A2顧客の属性(年齢、業種、企業規模)、行動データ(購買履歴、Webサイト閲覧履歴)、アンケート結果(価値観、ニーズ)などが必要です。CRM・MAツールで収集・分析するのが一般的です。データに基づいたセグメント分けにより、精度の高いマーケティングが可能になります。

Q3小規模B2B企業でもセグメンテーションは必要ですか?

A3顧客数が50社以上、業種や規模にばらつきがある場合は効果が高いです。顧客数が少ない場合は個別対応の方が現実的です。まずは簡易的なセグメント(業種別、企業規模別)から始め、段階的に精緻化することが推奨されます。

Q44Rの原則とは何ですか?

A4セグメントの有効性を評価する4つの基準です。Rank(市場規模・優先順位)、Realistic(有効な規模)、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)の4つです。すべての基準を満たすセグメントが理想的で、マーケティング効率の向上が期待できます。

Q5事業セグメント情報の開示は義務ですか?

A5上場企業は企業会計基準第17号により、有価証券報告書でセグメント情報の開示が義務付けられています。マネジメントアプローチに基づき、経営者が使用する区分で開示します。これにより、投資家は企業の事業別業績を把握でき、投資判断の材料とすることができます。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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