BPMとCRM、どちらを導入すべき?それとも連携?
B2B企業の業務改善・IT担当者の多くが、「BPMとCRMの違いが分からない」「どちらを優先すべきか判断できない」という悩みを抱えています。業務効率化と顧客管理の両方を実現したいが、予算やリソースの制約から、どこから着手すべきか迷うケースは少なくありません。
この記事では、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)とCRM(顧客関係管理)の違いを明確にし、両者を連携させることで得られる効果、実現方法、選定ポイントまでを網羅的に解説します。
この記事のポイント:
- BPMは社内の業務プロセス全体を管理し、CRMは顧客データに特化して管理する
- BPMは全社横断的な業務効率化、CRMは営業・マーケティング領域での顧客管理が主な目的
- BPMとCRMを連携させることで、ワークフロー効率化、マーケティング効率向上、生産性改善が実現
- API連携または統合プラットフォーム(Creatio等)で両者を統合できる
- 企業規模や業務課題に応じて、BPM優先・CRM優先・同時導入を選択
1. BPMとCRMの基礎知識【それぞれの定義と役割】
BPMとCRMの違いを理解するため、まずはそれぞれの定義と役割を整理します。
(1) BPM(ビジネスプロセスマネジメント)とは
BPM(Business Process Management)は、企業の業務プロセス全体を設計・実行・監視・最適化するマネジメント手法とツールの総称です。
BPMの主な機能:
- 業務プロセスの可視化(現状の業務フローを図示)
- プロセスの自動化(承認フロー、データ連携等)
- パフォーマンス監視(KPI測定、ボトルネック検出)
- 継続的な改善(PDCAサイクルの実行)
BPMが適用される業務例:
- 契約書承認フロー
- 請求書処理プロセス
- 人事評価プロセス
- 在庫管理フロー
BPMは全社横断的な業務改善を目指すため、営業・経理・人事・製造など、複数の部門にまたがって活用されます。
(2) CRM(顧客関係管理)とは
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客との関係を管理し、リード獲得から受注後まで長期的に深めるマネジメント手法とシステムです。
CRMの主な機能:
- 顧客データの一元管理(基本情報、接触履歴、商談状況等)
- リード管理(見込み客の獲得・育成)
- 商談管理(案件進捗のトラッキング)
- 顧客分析(購買傾向、解約リスク等の分析)
- マーケティングオートメーション(メール配信、スコアリング等)
CRMが適用される業務例:
- 問い合わせ対応の履歴管理
- 営業案件の進捗管理
- メールマーケティングキャンペーン
- カスタマーサポート
CRMは主に営業・マーケティング・カスタマーサクセス部門で活用され、顧客との接点を最適化することに焦点を当てています。
(3) 両者が注目される背景と市場動向
BPMの注目背景:
- DX(デジタルトランスフォーメーション)推進により、業務プロセスの自動化需要が増加
- ノーコード/ローコードツールの普及により、非IT部門でもプロセス改善が可能に
- 2025年時点で、生成AI・予測AI・エージェントAIを組み込んだBPMが登場し、意思決定の自動化が進む
CRMの注目背景:
- B2B企業の営業活動がデジタル化し、リード管理の重要性が増加
- カスタマーエクスペリエンス(CX)向上が競争力の鍵となり、顧客データの一元管理が必須に
- SaaS型CRMの普及により、中小企業でも導入しやすくなった
両者は異なる目的を持ちながらも、企業の業務効率化と顧客価値向上の両輪として、同時に注目されています。
2. BPMとCRMの違い【管理対象・機能・適用範囲を比較】
BPMとCRMの違いを、管理対象・機能・適用範囲の3つの観点から比較します。
(1) 管理対象の違い(社内プロセス全体 vs 顧客データ)
BPMの管理対象:
- 社内の業務プロセス全体(営業・経理・人事・製造等)
- 部門間のデータフロー
- 承認フロー、意思決定プロセス
CRMの管理対象:
- 顧客データ(基本情報、接触履歴、購買履歴)
- リードから受注後までの顧客ライフサイクル
- 営業・マーケティング活動の記録
比較のポイント: BPMは「社内の業務をどう効率化するか」に焦点を当て、CRMは「顧客とどう関係を築くか」に焦点を当てています。両者は補完的な関係にあります。
(2) 主要機能の違い(プロセス自動化 vs 顧客管理)
BPMの主要機能:
- プロセスモデリング(業務フローの設計)
- ワークフロー自動化(承認・通知の自動化)
- プロセス分析(KPI測定、ボトルネック検出)
- 他システムとの連携(ERP、CRM、SFA等)
CRMの主要機能:
- 顧客データベース(一元管理)
- リード管理・育成
- 営業支援(商談管理、見積作成)
- マーケティングオートメーション(メール配信、スコアリング)
比較のポイント: BPMは業務の「流れ」を最適化し、CRMは顧客の「情報」を最適化します。BPMはCRM・ERP等の既存システムと連携して真価を発揮します。
(3) 適用範囲の違い(全社横断 vs 営業・マーケティング)
BPMの適用範囲:
- 全社横断的な業務プロセス(営業・経理・人事・製造・物流等)
- 部門間のデータ連携
- 経営層の意思決定プロセス
CRMの適用範囲:
- 営業部門(商談管理、見積作成)
- マーケティング部門(リード管理、キャンペーン実行)
- カスタマーサクセス部門(顧客サポート、解約防止)
比較のポイント: BPMは全社的な業務改善、CRMは顧客接点を持つ部門での活用が中心です。ただし、統合プラットフォームを使えば、両者の境界は曖昧になります。
(4) BPMとワークフローシステムの違い
補足として、BPMとワークフローシステムの違いも整理します。
ワークフローシステム:
- 特定の業務プロセス(承認フロー等)の自動化に特化
- 個別業務の効率化が目的
BPM:
- 業務全体の可視化・最適化・自動化を目指す包括的なアプローチ
- 複数のワークフローを統合し、プロセス全体を改善
BPMの方がより広範な業務改善を実現できますが、導入・運用コストも高くなる傾向があります。
3. BPMとCRMを連携させるメリット【業務効率化と顧客体験向上】
BPMとCRMを連携させることで、以下のようなメリットが得られます。
(1) ワークフロー効率化(プロセスの可視化と最適化)
具体的な効果:
- 顧客からの問い合わせを受けた際、CRMからBPMに自動的にワークフローが起動
- 営業部門→技術部門→経理部門と、部門をまたいだプロセスがシームレスに進行
- 承認フローが自動化され、リードタイム短縮
事例: 契約書承認プロセスにおいて、CRMで顧客情報を管理し、BPMで承認フローを自動化することで、承認期間を平均5日→2日に短縮した事例があります。
(2) マーケティング効率向上(リード管理の自動化)
具体的な効果:
- Webサイトから問い合わせがあった際、CRMにリードが自動登録され、BPMがフォローアップワークフローを起動
- リードスコアに応じて、営業への通知・メール配信・資料送付が自動化
- マーケティング施策の効果測定がBPMで一元管理される
事例: BPMとCRMを統合することで、リード獲得から初回商談までの期間を平均10日→3日に短縮し、商談化率が15%→25%に改善した事例があります。
(3) 生産性改善(データ連携による重複作業削減)
具体的な効果:
- 顧客データをCRMで管理し、BPMが他システム(ERP、会計システム等)と自動連携
- 営業担当者が複数のシステムにデータを手入力する必要がなくなる
- データの不整合やミスが減少
事例: BPMとCRMの連携により、営業担当者の事務作業時間が週10時間→5時間に半減し、商談に集中できるようになった事例があります。
(4) 顧客体験向上(一貫したサービス提供)
具体的な効果:
- 顧客接点(問い合わせ、商談、契約、サポート)が全てCRMに記録され、BPMが最適な対応プロセスを起動
- 営業・技術・サポートの各部門が顧客の全体像を把握し、一貫した対応が可能に
- 顧客満足度が向上し、継続率・リピート率が改善
事例: BPMとCRMの統合により、顧客対応の漏れ・遅延が減少し、NPS(顧客推奨度)が30→50に改善した事例があります。
4. BPMとCRM連携の実現方法【システム統合とデータフロー設計】
BPMとCRMを連携させる方法は、主に2つあります。
(1) API連携による統合
概要: 既存のBPMツールとCRMツールをAPI(Application Programming Interface)で接続し、データを相互に連携させる方法です。
メリット:
- 既存システムをそのまま活用できる
- ベンダーに依存せず、柔軟なカスタマイズが可能
デメリット:
- 開発コストがかかる(数十万〜数百万円)
- システム間のデータフォーマットの調整が必要
- 運用・保守の負担が増加
適したケース:
- 既に導入済みのBPM・CRMツールを継続利用したい
- IT部門にシステム統合のリソースがある
(2) 統合プラットフォーム(Creatio等)の活用
概要: BPMとCRMを統合した単一のプラットフォームを導入する方法です。代表的なツールにCreatio、Pega CRM、Microsoft Dynamics 365等があります。
メリット:
- BPMとCRMがネイティブに統合されており、データ連携がシームレス
- ノーコード/ローコードで設定・カスタマイズが可能
- 導入・運用コストが比較的低い
デメリット:
- 既存システムからの移行コストがかかる
- ベンダーロックインのリスクがある
適したケース:
- BPMとCRMを同時に導入したい
- 既存システムの刷新を検討している
- IT部門のリソースが限られている
(3) データフローの設計ポイント
BPMとCRMを連携させる際、以下のデータフロー設計が重要です。
設計ポイント:
- どのデータを連携するか明確化: 顧客基本情報、接触履歴、商談状況、契約情報等
- データの更新頻度を決定: リアルタイム連携 vs バッチ処理
- データの整合性を担保: マスタデータ管理(MDM)の導入検討
- セキュリティ・アクセス権限の設計: 部門ごとのデータアクセス制限
失敗しやすいポイント:
- 連携するデータが多すぎて、システムパフォーマンスが低下
- データの重複・不整合が発生し、信頼性が低下
- セキュリティ設計が不十分で、情報漏洩のリスク
※導入前にPoC(概念実証)を行い、データフローを検証することを推奨します。
(4) 導入時の注意点とコスト
導入コストの目安:
- API連携: 開発費用50万〜300万円、運用保守費用月額5万〜20万円
- 統合プラットフォーム: 初期費用50万〜200万円、月額利用料5万〜50万円(企業規模により変動)
導入時の注意点:
- プロセスの可視化・標準化が不十分だと、BPM導入の効果が出にくい
- 現場部門の巻き込みが不足すると、運用が定着しない
- 既存システムとの連携が複雑になり、予算・スケジュールが超過するリスク
※導入前に業務プロセスの棚卸しを行い、優先度の高いプロセスから段階的に導入することを推奨します。
5. BPMツール・CRMツールの選定ポイント【企業規模別ガイド】
BPMとCRMのツールを選定する際のポイントを、企業規模別に解説します。
(1) 中小企業向け:導入しやすいツール
選定ポイント:
- 初期費用・月額費用が低い(月額数万円以内)
- ノーコード/ローコードで設定が簡単
- サポート体制が充実(日本語対応)
BPMツールの例:
- kintone(サイボウズ):月額780円/ユーザー〜、ノーコードで業務アプリ作成
- Questetra BPM Suite:月額1,200円/ユーザー〜、日本語サポート充実
CRMツールの例:
- HubSpot CRM(無料版あり):基本機能は無料、有料版は月額5,000円〜
- Zoho CRM:月額1,680円/ユーザー〜、コストパフォーマンス高い
統合プラットフォームの例:
- Creatio:BPMとCRMを統合、月額3万円〜(企業規模により変動)
※中小企業は、まず無料版やトライアルで試して、効果を確認してから本格導入するのが推奨されます。
(2) 中堅〜大企業向け:スケーラビリティ重視
選定ポイント:
- 数百〜数千ユーザーに対応できるスケーラビリティ
- 既存システム(ERP、会計システム等)との連携機能
- カスタマイズ性が高い
- セキュリティ・コンプライアンス対応
BPMツールの例:
- Pega BPM:大規模企業向け、AI機能統合、月額数十万円〜
- IBM Business Automation Workflow:エンタープライズ向け、複雑なプロセス対応
CRMツールの例:
- Salesforce:世界的に広く利用されているCRM、月額数万円〜数十万円
- Microsoft Dynamics 365:Microsoft製品との統合が強み
統合プラットフォームの例:
- Pega CRM:BPMとCRMを統合、エンタープライズ向け
- Microsoft Dynamics 365:BPM機能(Power Automate)とCRMを統合
※大企業は、導入前にベンダーとのPoC(概念実証)を実施し、要件を満たすか検証することが重要です。
(3) BPMとCRMどちらを先に導入すべきか
業務課題により判断:
CRM優先のケース:
- 顧客データが散在しており、営業・マーケティングの効率が悪い
- リード管理が属人化しており、商談化率が低い
- 顧客満足度が低く、解約率が高い
BPM優先のケース:
- 業務プロセスが複雑で、承認フローに時間がかかる
- 部門間のデータ連携が手作業で、ミスが多発
- 業務の可視化ができておらず、ボトルネックが不明
同時導入のケース:
- 統合プラットフォーム(Creatio等)を選択し、両方を一度に導入
- 予算・リソースに余裕があり、全社的なDXを推進したい
※迷った場合は、まずCRMで顧客管理を整備し、次にBPMでプロセス最適化を図る段階的なアプローチが推奨されます。
(4) ノーコード/ローコードツールの選択肢
ノーコード/ローコードツールのメリット:
- プログラミング知識なしで設定・カスタマイズが可能
- 導入期間が短い(数週間〜数ヶ月)
- IT部門の負担が少ない
代表的なノーコード/ローコードツール:
- kintone(BPM・業務アプリ)
- HubSpot(CRM・マーケティングオートメーション)
- Creatio(BPM・CRM統合)
- Microsoft Power Platform(BPM・CRM・アプリ開発)
注意点:
- 複雑なカスタマイズには限界がある
- ベンダーのプラットフォームに依存する(ロックインリスク)
※ノーコード/ローコードツールは、まず小規模で試して、段階的に拡大するのが成功のポイントです。
6. まとめ:BPMとCRM連携を成功させる3つのポイント
BPMは社内の業務プロセス全体を管理し、CRMは顧客データに特化して管理します。両者は異なる役割を持ちながらも、連携させることで、ワークフロー効率化、マーケティング効率向上、生産性改善、顧客体験向上が実現できます。
BPMとCRM連携を成功させる3つのポイント:
1. 業務課題を明確にし、優先順位をつける
- 顧客管理が優先ならCRM、プロセス効率化が優先ならBPMから着手
- 統合プラットフォームで同時導入も選択肢
2. 小規模でスタートし、段階的に拡大する
- まず1つの部門・プロセスで導入し、効果を確認
- 成功パターンを他部門に展開し、全社的なDXを推進
3. データフローとプロセスの可視化を徹底する
- 導入前に業務プロセスの棚卸しを行い、標準化
- データの整合性を担保し、セキュリティ設計を徹底
次のアクション:
- 自社の業務課題を整理し、BPM優先かCRM優先かを判断する
- 3〜5社のツールベンダーから見積もりを取得し、機能・費用を比較する
- 無料トライアルまたはPoC(概念実証)で、実際の業務に適用できるか検証する
- 小規模(1部門・1プロセス)でスタートし、効果を測定しながら拡大する
※BPMとCRMの定義や機能は、ベンダーにより若干異なります。この記事は2025年12月時点の一般的な情報です。最新の機能・料金は各ベンダーの公式サイトをご確認ください。
