承認フローが遅くて、稟議が止まってしまう…
B2B SaaS企業の総務・経営企画・システム担当者の多くが、社内の承認プロセスに課題を抱えています。「紙の申請書が回覧されず、決裁が遅れる」「出張中の上司の承認待ちで業務が止まる」「承認状況が見えず、どこでストップしているのか分からない」といった悩みは尽きません。
承認ワークフローを適切に設計し、システム化することで、こうした課題を解決できます。この記事では、承認ワークフローの基礎知識から設計方法、ツール選定、導入ステップまで、実務的な観点で解説します。
この記事のポイント:
- 承認ワークフローには直列型・条件分岐型・並列型の3つの基本タイプがある
- 電子化により承認スピード向上、コスト削減、可視化、セキュリティ強化が実現できる
- クラウド型なら月額300-500円/ユーザー程度で小規模から始められる
- 主要ツールはX-point Cloud(5,000社以上)、AgileWorks(5,000社以上)、Collaboflow(2,000社以上)など
- 導入時はまず紙ベースの承認フローを可視化してから電子化する
1. 承認ワークフローとは?業務効率化と内部統制の重要性
(1) 承認ワークフローの定義
承認ワークフローとは、申請・承認・決裁の一連の手続きを定義したプロセスです。稟議、経費精算、契約書承認、休暇申請など、企業活動のあらゆる場面で使われます。
従来は紙の申請書を回覧する形式が一般的でしたが、近年では電子承認システム(ワークフローシステム)を導入し、オンラインで承認を行う企業が増えています。
(2) 承認ワークフローが必要な理由(業務効率化・内部統制)
承認ワークフローが重要な理由は、大きく2つあります。
業務効率化:
- 申請書の印刷・回覧にかかる時間とコストを削減
- 出張中でもスマートフォンから承認可能
- 承認状況をリアルタイムで確認できる
内部統制の強化:
- 承認ルートを明確化し、不正や誤りを防止
- 承認履歴が自動的に記録され、監査対応が容易
- 権限に応じた承認ルート設定により、コンプライアンスを担保
NTT東日本の調査によれば、承認ワークフローのシステム化により、承認スピードが平均で3-5倍向上したと報告されています。
2. 承認ワークフローの基本構造と3つのタイプ
(1) 直列型(順次承認型)
直列型は、申請者→承認者1→承認者2→決裁者と順番に承認する方式です。最もシンプルで分かりやすく、多くの企業で採用されています。
適用例:
- 経費精算: 申請者→直属上司→経理部→部門長
- 休暇申請: 申請者→直属上司→人事部
メリット: 承認プロセスが明確で、権限の階層が分かりやすい
デメリット: 承認者が多いと時間がかかる、一人でも不在だと止まる
(2) 条件分岐型
条件分岐型は、申請内容や金額により承認ルートが自動的に変わる方式です。効率的な承認プロセスを実現できます。
適用例:
- 稟議: 10万円未満→課長承認、10万円以上→部長承認、100万円以上→役員承認
- 契約書承認: 標準契約→法務部のみ、特殊条項あり→法務部+経営層
メリット: 金額や内容に応じた適切な承認レベルを自動設定できる
デメリット: 条件設定が複雑になると運用が難しい
(3) 並列型(合議型)
並列型は、複数の承認者が同時に承認する方式です。複数部門の合意が必要な案件に適しています。
適用例:
- 新規サービス企画: 営業部長+開発部長+マーケ部長が同時承認
- システム導入稟議: 情報システム部+総務部+経理部が同時承認
メリット: 複数部門の意見を並行して収集できる、時間短縮につながる
デメリット: 意見が対立した場合の調整プロセスが必要
(4) 承認ルート設計の実務ポイント
実際の承認ワークフロー設計では、これら3つのタイプを組み合わせます。
設計のポイント:
- 申請種別ごとに承認ルートを明確化(稟議、経費精算、契約書など)
- 金額・内容に応じた条件分岐を設定
- 承認者が不在の場合の代理承認ルールを決める
- 承認期限を設定し、リマインド機能を活用
ワークフロー総研の調査では、承認ルートが適切に設定されていない場合、内部統制が機能せず不正や誤りの温床となる可能性があると指摘されています。
3. 承認ワークフローシステム化のメリットとデメリット
(1) システム化の6つのメリット
デスクネッツの調査によれば、電子承認システムには以下の6つのメリットがあります。
1. コスト削減:
- 紙・印刷費・保管スペースの削減
- 配送・回覧の手間削減
2. 承認スピード向上:
- モバイル対応により、出張中でも承認可能
- リアルタイム通知で承認待ち時間を短縮
3. 可視化:
- 承認の進捗状況をリアルタイムで確認
- ボトルネックの特定と解消が容易
4. セキュリティ強化:
- 紙の紛失リスクがない
- アクセス権限設定により、閲覧・編集を制限
5. 文書管理の効率化:
- 電子データで一元管理、検索が容易
- 電子帳簿保存法に対応
6. 多様な働き方対応:
- テレワーク・リモートワークでも承認可能
- 時間・場所に縛られない働き方を実現
(2) システム化のデメリットと対策
ジンジャーの調査によれば、システム化には以下のデメリットも存在します。
デメリット1: 初期コスト
- システム導入費用、従業員のトレーニングコストが発生
- 対策: クラウド型なら初期費用が低く、月額300-500円/ユーザー程度で始められる
デメリット2: 運用定着の難しさ
- 紙ベースに慣れた従業員の抵抗感
- 対策: まず小規模な部門・申請種別で試験導入し、成功事例を作る
デメリット3: 移行期間の煩雑さ
- 紙ベースとの併用期間が発生し、かえって業務が煩雑になる場合がある
- 対策: 移行スケジュールを明確化し、短期間で完全移行を目指す
(3) 紙ベースとの比較
| 項目 | 紙ベース | 電子承認システム |
|---|---|---|
| 承認スピード | 遅い(数日〜数週間) | 速い(数時間〜1日) |
| コスト | 印刷費・保管費が継続的に発生 | 月額料金のみ |
| 可視化 | 承認状況が見えにくい | リアルタイムで確認可能 |
| セキュリティ | 紛失リスクあり | アクセス制御で安全 |
| テレワーク対応 | 困難 | 可能 |
※2025年11月時点の情報です。システムの料金・機能は変更の可能性があります。
4. ワークフローシステムの選定ポイントと主要ツール比較
(1) クラウド型とオンプレミス型の選択基準
ワークフローシステムには、クラウド型とオンプレミス型があります。
クラウド型:
- メリット: 初期費用が低い、月額300-500円/ユーザー程度、すぐに導入可能
- デメリット: カスタマイズ性が限定的、データが外部サーバーに保存される
- 適している企業: 中小〜中堅企業、初めてワークフローシステムを導入する企業
オンプレミス型:
- メリット: 高度なカスタマイズが可能、データを自社内で管理できる
- デメリット: 初期費用が高い(数百万円〜)、サーバー保守費用が継続的に発生
- 適している企業: 大企業、既存システムとの複雑な連携が必要な企業
アスピックの調査によれば、近年はクラウド型の導入が主流となっており、特に中小〜中堅企業ではクラウド型が9割以上を占めています。
(2) 企業規模別の選定ポイント
小規模企業(従業員50人未満):
- 月額数万円で始められるクラウド型が現実的
- 最低限の機能(申請・承認・検索)があれば十分
- 導入・運用が簡単なシステムを選ぶ
中堅企業(従業員50〜500人):
- 月額10〜30万円程度の予算が一般的
- 条件分岐、並列承認など高度な機能が必要
- 既存システム(会計、人事など)との連携を確認
大企業(従業員500人以上):
- 月額30万円以上の本格的なシステムが適切
- カスタマイズ性、セキュリティ、監査ログが重要
- オンプレミス型も選択肢に入る
(3) 主要ワークフローシステムの特徴と導入実績
営業ラボの調査によれば、主要ワークフローシステムの導入実績は以下の通りです。
X-point Cloud:
- 導入実績: 5,000社以上
- 特徴: 直感的なUI、豊富なテンプレート、中小〜中堅企業に強い
- 料金: 月額500円/ユーザー〜(2025年時点)
AgileWorks:
- 導入実績: 5,000社以上
- 特徴: 大企業向け、高度なカスタマイズ性、基幹システム連携に強い
- 料金: 要問い合わせ(企業規模により変動)
Collaboflow:
- 導入実績: 2,000社以上
- 特徴: ノーコードで承認フロー作成、クラウド型、中小企業に人気
- 料金: 月額500円/ユーザー〜(2025年時点)
サイボウズ Garoon:
- 導入実績: 7,000社以上
- 特徴: グループウェア機能と統合、ワークフロー以外の機能も充実
- 料金: 月額845円/ユーザー〜(2025年時点)
ServiceNow:
- 導入実績: グローバルで多数
- 特徴: ITSM(IT サービス管理)との統合、大企業向け
- 料金: 要問い合わせ(高価格帯)
※料金・機能は2025年11月時点の情報です。最新情報は各社公式サイトをご確認ください。
ITトレンドの調査では、ユーザー満足度やシェア率を基にした29システムのランキングも公表されており、自社の要件に応じて複数のツールを比較検討することが推奨されています。
5. 承認ワークフロー導入の実践ステップと注意点
(1) 導入前の準備(現状可視化・要件定義)
ステップ1: 現状の承認フローを可視化
- 各申請種別(稟議、経費精算、契約書など)ごとに、現在の承認ルートを図式化
- 誰が・いつ・何を承認しているかを明確化
- ボトルネックや課題を洗い出す
ステップ2: 要件定義
- 必要な機能をリストアップ(条件分岐、並列承認、モバイル対応など)
- 既存システム(会計、人事、ERPなど)との連携要件を確認
- 予算と導入スケジュールを決定
(2) システム選定と導入プロセス
ステップ3: システム比較・選定
- 3〜5社の公式サイトで詳細を確認
- 無料トライアルで実際に操作性を試す
- デモンストレーションを依頼し、自社の要件を満たすか確認
ステップ4: 導入・設定
- 承認ルートの設定(直列型、条件分岐型、並列型を組み合わせ)
- 電子フォームの作成(紙の申請書を電子化)
- 既存システムとのデータ連携設定
ステップ5: トレーニング・試験運用
- 従業員向けのトレーニング実施(申請方法、承認方法)
- 小規模な部門・申請種別で試験運用
- フィードバックを収集し、設定を調整
(3) 運用定着のポイント
ポイント1: 段階的な導入
- まず1つの申請種別(例: 経費精算)から始め、成功事例を作る
- 他の申請種別へ段階的に拡大
ポイント2: サポート体制の整備
- 社内にワークフローシステムの担当者を配置
- よくある質問(FAQ)を作成し、従業員に周知
ポイント3: 定期的な見直し
- 承認ルートが適切か定期的に見直す
- 新しい申請種別や組織変更に応じてルートを更新
ポイント4: モバイル活用の推進
- スマートフォン・タブレットからの承認を推奨
- 出張中でも迅速な決裁が可能になることをアピール
2024年以降、Power Automate などのRPAとの連携により、さらに高度な自動化が進んでいます。テレワーク普及に伴い、モバイル対応の承認ワークフローシステムの需要が急増している点も注目です。
6. まとめ:成功する承認ワークフロー運用のコツ
承認ワークフローの設計・導入では、まず現状の承認フローを可視化し、業務効率化と内部統制の両方を考慮することが重要です。クラウド型なら月額300-500円/ユーザー程度で始められるため、中小〜中堅企業でも導入ハードルは低くなっています。
次のアクション:
- 現在の承認フローを図式化し、課題を洗い出す
- 自社の予算と必要機能を整理する
- 3〜5社の公式サイトで詳細を確認する
- 無料トライアルで実際に操作性を試す
- 小規模な部門・申請種別で試験導入し、成功事例を作る
承認ワークフローのシステム化により、承認スピード向上、コスト削減、可視化、セキュリティ強化を実現し、業務効率化と内部統制の両立を目指しましょう。
