スタートアップのスケール戦略|成長しても崩れない仕組みの作り方

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2026/1/99分で読めます

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スタートアップ数は増えてもスケールアップが進まない日本の現状

スタートアップがスケールアップを実現するうえで最も重要なのは、売上や人員を増やす前に「成長しても崩れない仕組み」を設計することです。これがスケールアップを実現するための必要条件となります。

日本のスタートアップ数は2021年の約16,100社から2025年には25,000社へと約1.5倍に増加しました。一方で、ユニコーン企業(評価額が10億ドル=約1,500億円以上の未上場スタートアップ企業)の数は2021年の6社から現在8社へと微増にとどまっています。

このデータが示すのは、スタートアップの「裾野」は広がったものの、「高さ」(大型成長企業)は依然として増えていないという現実です。シリーズA〜Bの段階で売上は伸びているが、人を増やすほど組織が混乱し成長が鈍化している——そのような課題を抱える経営者・事業責任者の方も多いのではないでしょうか。

この記事で分かること

  • スケールアップの定義とスタートアップとの違い
  • スケールアップに必要な主要条件(PMF・資金・組織・オペレーション・システム)
  • 「人を増やせば成長できる」という誤解と失敗パターン
  • 自社のスケールアップ準備度を診断するチェックリスト
  • 仕組みの設計から始めるスケールアップ戦略の考え方

スケールアップとは何か|スタートアップとの違い

スケールアップ企業とは、PMFを達成しビジネスモデルが確立された状態で、規模拡大に経営資源を集中する成長フェーズの企業を指します。スタートアップが「PMFを探索するフェーズ」であるのに対し、スケールアップは「PMF達成後に成長を加速させるフェーズ」という位置づけです。

ただし、日本においてスケールアップ企業の公的な定義や統計は存在しません。VC・調査機関によって定義が異なるため、「○社がスケールアップ企業」と断言することは難しいのが実情です。一般的にはシリーズA〜B以降で成長軌道に乗った企業を指すことが多いです。

政府もスケールアップの重要性を認識しており、2022年に策定したスタートアップ育成5か年計画では、スタートアップ企業数10万社、ユニコーン企業数100社、年間投資額10兆円を目標として掲げています。政策の重点も「裾野の拡大」から「高さの創出」へとシフトしつつあり、スケールアップ支援が今後の重要施策となっています。

PMFを達成した後のフェーズがスケールアップ

PMF(プロダクト・マーケット・フィット) とは、製品やサービスが市場のニーズに適合し、持続的に売れる状態が確認されることを指します。スケールアップはこのPMFを達成した後のフェーズです。

よくある失敗パターンとして、PMFの定義が曖昧なまま売上目標だけが先行するケースがあります。「売上は伸びているが、顧客獲得コストが高すぎる」「解約率が高く、獲得した顧客が定着しない」といった状態では、PMFを達成したとは言えません。PMFの確認なしにスケールを試みても、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。

スケールアップに必要な条件|PMF・資金・組織・オペレーション・システム

スケールアップを実現するには、PMF・資金・組織・オペレーション・システムの主要条件を整える必要があります。どれか一つが欠けても、持続的な成長は困難です。

PMFについては前述の通り、製品が市場に受け入れられていることの確認が前提となります。SaaS企業であればNRR(Net Revenue Retention)——既存顧客からの売上維持率で、アップセル・ダウングレード・解約を含めた純収益維持率——が一つの指標となります。業界慣行としてNRRが100%を超えていれば健全とされますが、これは公的統計ではなく、自社の事業特性に合わせた基準設定が必要です。

組織・オペレーション・システムについては、採用より先にプロセスの標準化とシステム基盤の整備が求められます。営業・マーケティング・カスタマーサクセスの各プロセスを属人的なノウハウに頼らず、誰が担当しても一定の品質を担保できる仕組みを構築することが重要です。

資金調達環境の現状と選別の厳格化

2025年上半期の日本スタートアップ資金調達総額は3,399億円(デット除く、前年比+4%)でした。資金調達環境は堅調に推移しているように見えますが、レイターステージに進むほど選別は厳しくなる傾向があります。

「シリーズAまで調達できれば安心」という考え方は誤りです。シリーズBの壁と呼ばれるように、レイターステージの資金調達では、PMFの確実性、成長の再現性、組織の成熟度がより厳しく問われます。資金調達計画と併せて、仕組み化を進めることが重要です。

なお、資金調達額の統計は情報源(INITIAL、STARTUP DBなど)により集計範囲やデット含有の有無が異なるため、複数の数値を比較する際は注意が必要です。

スケールアップ失敗の典型パターン|人を増やせば成長できるという誤解

「まず人を増やせばスケールできる」という考え方は誤りです。 多くのスタートアップがこの誤解に陥りますが、仕組みなき拡大は組織の混乱と成長鈍化を招きます。

売上が伸びているから採用を加速する——一見合理的に思えるこのアプローチが失敗するのは、人を増やすこと自体が目的化し、「何を・どのように」やるかの標準化が後回しになるからです。結果として、以下のような問題が発生します。

  • 新メンバーが成果を出すまでに時間がかかる(オンボーディングの属人化)
  • 既存メンバーが教育・フォローに時間を取られ、本来の業務が滞る
  • 部門間の連携ルールが曖昧で、重複作業や認識齟齬が頻発する
  • KPIや進捗の可視化ができず、問題の発見が遅れる

組織の混乱と成長鈍化を招く原因

仕組みなき拡大がなぜ失敗するのか。根本的な原因は、「属人的なノウハウ」に依存した状態で人員を増やすことにあります。

従業員20名程度であれば、創業メンバーや初期入社組の暗黙知で回せる部分が多いかもしれません。しかし、50名、100名と規模が拡大すると、暗黙知だけでは限界が来ます。採用・組織設計よりも先に、プロセスの標準化——営業の型、マーケティングの運用ルール、顧客対応のフロー——を整備することが、スケールアップの土台となります。

スケールアップ準備度チェックリスト|自社の現状を診断する

自社がスケールアップできる状態にあるかどうかを判断するために、以下のチェックリストで現状を診断してください。すべての項目を満たす必要はありませんが、多くの項目が未達成の場合は、採用や事業拡大の前に仕組みの整備を優先すべきです。

【チェックリスト】スケールアップ準備度チェックリスト

  • PMFを達成したと言える根拠(リピート率、紹介経由の獲得など)がある
  • 主要な顧客セグメントと獲得チャネルが明確になっている
  • 顧客獲得コスト(CAC)とLTVのバランスが取れている
  • 解約率・チャーン率が自社で許容できる水準にある
  • 次の資金調達までのランウェイと必要資金が明確である
  • 営業プロセスが標準化され、誰が担当しても一定の成果が出せる
  • マーケティングの運用ルール・KPIが定義されている
  • カスタマーサクセス・サポートのフローが整備されている
  • SFA/CRM/MAなどのシステム基盤が導入されている
  • 各部門のKPIがダッシュボードで可視化されている
  • 新メンバーのオンボーディングプログラムが整備されている
  • 部門間の連携ルール(引き継ぎ基準、情報共有方法)が明確である
  • 経営レベルでレベニュー戦略を設計できる責任者がいる
  • 1つのチャネルに依存しすぎない顧客獲得の分散ができている
  • リモート前提の組織運営に対応できる体制がある

PMF・事業モデルの確認項目

PMFに関しては、定性的な「顧客に喜ばれている」という実感だけでなく、定量的な指標で確認することが重要です。SaaS企業であればNRR、解約率、リファラル経由の顧客獲得比率などが目安となります。

ただし、これらの数値基準(NRR 100%以上、月次チャーン率1%以下など)は業界慣行であり、公的統計ではありません。自社の事業特性、ターゲット市場、商材の性質に合わせた基準設定が必要です。

組織・オペレーション・システムの確認項目

組織・オペレーション・システムについては、「採用すれば解決する」と考えがちですが、順序が逆です。まずプロセスを標準化し、システム基盤を整備した上で、その仕組みを回す人員を採用するという順序が正しいアプローチです。

特に、コホート別のLTV・CAC、チャネル別の営業生産性を定量で可視化できる状態は、資金調達においても必須条件になりつつあります。「数字で語れる状態」を作ることが、スケールアップの土台となります。

まとめ|スケールアップは仕組みの設計から始まる

日本のスタートアップ数は2021年の約16,100社から2025年には25,000社へと約1.5倍に増加しました。しかし、ユニコーン企業数は6社から8社への微増にとどまっています。この現実が示すのは、スタートアップの「裾野」は広がったものの、「高さ」へと成長する企業はまだ少ないということです。

スケールアップを実現する企業とそうでない企業を分けるのは、「成長しても崩れない仕組み」を設計できているかどうかです。売上や人員を増やす前に、PMFの確認、プロセスの標準化、システム基盤の整備を行うこと——これがスケールアップの必要条件となります。

「まず人を増やせばスケールできる」という考えは誤りです。仕組みなき拡大は、組織の混乱と成長鈍化を招きます。

次のアクションとして、まずは本記事のチェックリストで自社の準備度を確認してください。多くの項目が未達成であれば、採用や事業拡大の前に仕組みの整備を優先することをおすすめします。スケールアップは、仕組みの設計から始まります。

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よくある質問

Q1スタートアップとスケールアップ企業の違いは何ですか?

A1スタートアップはPMF(プロダクト・マーケット・フィット)を探索するフェーズ、スケールアップ企業はPMFを達成しビジネスモデルが確立された状態で規模拡大に集中するフェーズです。日本では公的な定義・統計は存在しませんが、一般的にシリーズA〜B以降で成長軌道に乗った企業を指すことが多いです。

Q2スケールアップにはどのくらいの資金調達が必要ですか?

A2企業規模や事業モデルにより異なります。2025年上半期の日本スタートアップ資金調達総額は3,399億円(前年比+4%)でした。シリーズB以降は選別が厳しくなる傾向があり、資金調達計画と併せて仕組み化を進めることが重要です。

Q3日本のユニコーン企業はどのくらい増えていますか?

A3日本のユニコーン企業数は2021年の6社から現在8社へと微増にとどまっています。スタートアップ数は約1.5倍に増加していますが、大型成長企業の輩出は依然として課題とされています。

Q4PMFを達成しているかどうかはどう判断すればよいですか?

A4SaaS企業であればNRR(純収益維持率)が100%以上であること、解約率が低水準であること、リファラル経由の顧客獲得があることなどが目安とされます。ただしこれらは業界慣行であり、自社の事業特性に合わせた基準設定が必要です。

Q5人を増やす前にやるべきことは何ですか?

A5営業・マーケティング・CSのプロセス標準化、SFA/MA/CRMなどのシステム基盤整備、KPI設計と可視化の仕組み構築が先決です。仕組みがない状態で人員を増やすと、属人化と組織混乱を招くリスクがあります。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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