シリーズA調達後にスケールできない企業の共通課題
シリーズA調達後のスケール成功は、戦略レポートだけでなくMA/SFA設定から専用ツール開発まで「動くもの」を実装・納品することで初めて実現します。
この記事で分かること
- シリーズAの定義と投資ラウンドの全体像、PMF達成の重要性
- シリーズA資金調達の相場と調達成功の基準(ARR・バリュエーション)
- シリーズA後のスケール実行の具体的方法(マーケティング・営業・組織の3軸)
- スケール実行ロードマップ(3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月のマイルストーン)
- 避けるべき失敗パターンと実装重視の重要性
シリーズAとは、シードラウンド後の最初の本格的なエクイティ投資ラウンドで、PMF達成後の事業スケール(売上拡大・ユーザー成長)に向けた資金を調達するステージです。
シリーズA調達後に戦略コンサルに依頼し、立派な戦略レポートを受け取っても、実装は内部や別の業者に任せてしまうと、結果的に戦略と実装が乖離し、スケールが進まず資金を消耗する失敗パターンに陥る企業は少なくありません。
よくある誤解として、「戦略レポートだけでスケール実行できる」というものがあります。実際には、戦略と実装の乖離が成果を阻害する典型パターンで、MA/SFA設定など「動くもの」の実装が不可欠です。
こうした課題を解決するには、戦略レポートだけでなくMA/SFA設定から専用ツール開発まで「動くもの」を実装・納品することが重要です。本記事では、シリーズA後のスケール実行チェックリスト(マーケティング・営業・組織の3軸)とスケール実行ロードマップ(3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月のマイルストーン)を提供し、読者が調達後の具体的なアクションを即座に計画できるようにします。
シリーズAとは何か|投資ラウンドの全体像とPMFの重要性
シリーズAは、シードラウンド後の最初の本格的なエクイティ投資ラウンドで、PMF達成後の事業スケールに向けた資金を調達するステージです。設立〜シードからシリーズAへの転換率は約20-30%で、PMF未達だとほぼ通過できないため、PMF達成が必須条件となります。
PMF(Product-Market Fit) とは、プロダクトが市場に受け入れられ、顧客の課題を解決できている状態で、シリーズA資金調達の必須条件です。転換率とは、あるステージから次のステージへ進める企業の割合で、シード→シリーズAは約20-30%とされています。
よくある誤解として、「シリーズAは誰でも調達できる」というものがあります。実際には転換率20-30%で、PMF未達だとほぼ通過できません。
シリーズAの定義と投資ラウンドの位置づけ
シリーズAは、シードラウンド後の最初の本格的なエクイティ投資ラウンドです。投資ラウンドは、シード→シリーズA→シリーズBという流れで進みます。
シードラウンドでは、プロダクト開発や初期顧客獲得のための資金を調達します。シリーズAでは、PMF達成後の事業スケール(売上拡大・ユーザー成長)に向けた資金を調達し、マーケティング・営業体制の構築や組織拡大を行います。シリーズBでは、さらなる事業拡大や新規事業開発のための資金を調達します。
設立〜シードからシリーズAへの転換率は約20-30%で、シリーズAへの到達が簡単ではないことが分かります。
PMF達成がシリーズA調達の前提条件
PMF達成は、シリーズA調達の必須条件です。PMF達成の証明として、LTV>CAC達成、解約率5%未満、NPS50以上などの定量指標が必要とされています。
LTV(Life Time Value) とは、顧客生涯価値で、PMF証明ではLTV>CAC(顧客獲得コスト)の達成が前提条件です。CAC(Customer Acquisition Cost) とは、顧客獲得コストで、BtoB特化ではCAC回収期間6-12ヶ月以内が投資家相場とされています。
プレシリーズAからPMF検証で1-2年要する平均期間(才流調査の14社事例より)となっています。短期的な資金繰りと長期的なPMF追求を両立させる必要があります。
よくある誤解として、「PMF達成すればすぐシリーズA調達できる」というものがあります。実際にはPMF達成後も投資家説得に数ヶ月〜1年要するケースが多く、時間的余裕を持った計画が重要です。
シリーズA資金調達の相場と調達成功の基準
シリーズA資金調達の相場は、日本市場で5-20億円(中央値7-10億円前後)、バリュエーション50-200億円程度が一般的です。BtoB企業の場合、ARR1億円以上の実績がシリーズA進出の目安とされています。
日本のシリーズA平均資金調達額は約1.3〜3.3百万ドル(200〜500百万円)で、米国のシリーズA平均5〜15百万ドルと比較して大幅に低い水準です。日本市場は米国比1/10規模で資金調達格差が大きく、グローバル数値との混同を避け、日本市場特化の情報で判断することが重要です。
ARR(Annual Recurring Revenue) とは、年間経常収益で、SaaSビジネスの重要指標です。BtoB企業のシリーズA進出には1億円以上が目安とされています。バリュエーション(Post-money評価) とは、資金調達後の企業価値評価で、日本のシリーズAでは50-200億円程度が一般的です。
2025年上半期の日本スタートアップ市場全体の資金調達総額は3,399億円(デット除く、前年同期比4%増)で、ほぼ横ばいの水準を維持しています。また、2024年の1社あたり平均資金調達額は3.1億円(中央値7,760万円)、スタートアップ数25,000社、総額7,793億円でした。
日本市場のシリーズA相場調達額は5-20億円(中央値7-10億円前後)、バリュエーションは50-200億円程度が一般的です。BtoB企業の場合、SaaSやエンタープライズ向けソリューションでARR(年間経常収益)1億円以上の実績がシリーズA進出の目安とされています。
日本BtoB SaaSの場合、ARR 1-3億円で5-15億円調達、Post-money評価100億円前後が標準、成長率150%以上が必須とされています。シリーズA調達前にARR 1億円以上の実績を作ることが推奨されます。BtoB SaaSでは成長率150%以上が投資家評価の鍵となります。
よくある誤解として、「米国の相場が日本でも適用できる」「資金調達額が多いほど成功」というものがあります。日本のシリーズA平均は米国の1/3〜1/5程度で、グローバル数値をそのまま適用すると資金計画が狂います。また、2024年の中央値7,760万円と平均3.1億円の乖離が示すように、大型調達は少数派で、自社に必要な額を見極めることが重要です。
調達額・バリュエーション・ARR目安などは業種・企業規模・事業モデルによって大きく変動するため、「一般的な目安」として捉え、個別ケースでは専門家に相談することが推奨されます。
シリーズA後のスケール実行の具体的方法|マーケティング・営業・組織の3軸
シリーズA後のスケール実行は、マーケティング・営業・組織の3軸で進めることが推奨されます。投資家の選別姿勢が続いており、実績を示す企業に資金が集まる傾向が強まっているため、スケール実行の成果を明確に示すことが重要です。
マーケティング軸では、リード獲得施策の強化、MA/SFA導入・設定、コンテンツマーケティングを進めます。営業軸では、インサイドセールス体制構築、営業プロセス標準化、CRM活用を行います。組織軸では、採用強化、業務BPR、KPI設定と測定体制を確立します。
CAC回収期間を6-12ヶ月以内に抑え、営業効率化ツール(CRM等)導入でARR証明データを整備することが推奨されます。
【チェックリスト】シリーズA後のスケール実行チェックリスト
- マーケティング|リード獲得施策の強化(コンテンツマーケティング、リスティング広告、ウェビナー等)を実施したか
- マーケティング|MA/SFAツールを導入・設定し、リードスコアリング・ナーチャリングを開始したか
- マーケティング|ターゲットセグメントを絞り込み、顧客ヒアリングを徹底しているか
- マーケティング|MA/SFA設定でフィールド設計・ワークフロー設定を完了したか
- マーケティング|コンテンツマーケティング戦略を策定し、定期的にコンテンツを配信しているか
- 営業|インサイドセールス体制を構築し、リード対応・商談化プロセスを確立したか
- 営業|営業プロセスを標準化し、BANT条件の活用・商談フロー設計を完了したか
- 営業|CRMツールを活用し、営業データを一元管理しているか
- 営業|CAC回収期間を6-12ヶ月以内に抑える計画を立てたか
- 営業|営業効率化ツール(CRM等)を導入し、ARR証明データを整備したか
- 組織|エンジニア、営業、マーケティング人材の採用計画を立てたか
- 組織|業務プロセスを見直し、効率化・自動化を進めたか
- 組織|KPI(ARR、解約率、CAC、LTV等)を設定し、定期測定体制を確立したか
- 組織|PMF達成の証明として、LTV>CAC達成、解約率5%未満、NPS50以上などの定量指標を準備したか
- 組織|人的サポートを追加し、顧客対応体制を強化したか
マーケティング体制の構築とMA/SFA活用
マーケティング体制の構築では、リード獲得施策の強化、MA/SFA導入・設定、コンテンツマーケティングが重要です。
リード獲得施策では、コンテンツマーケティング、リスティング広告、ウェビナー等を活用します。MA/SFA導入・設定では、リードスコアリング、ナーチャリング、営業連携を実装します。MA/SFA設定の具体的な実装方法として、フィールド設計、ワークフロー設定を行い、マーケティングから営業へのスムーズなデータ連携を実現します。
ターゲットセグメント絞り込みと人的サポート追加がPMF達成の典型パターンとされています。成功事例を参考に顧客ヒアリングを徹底し、ターゲット顧客の課題を深く理解することが推奨されます。
営業体制の構築とプロセス標準化
営業体制の構築では、インサイドセールス体制構築、営業プロセス標準化、CRM活用が重要です。
インサイドセールス体制では、リード対応、商談化プロセス、KPI設定を行います。営業プロセス標準化では、BANT条件の活用、商談フロー設計、CRM活用を進めます。CAC回収期間を6-12ヶ月以内に抑えることが投資家評価の重要な指標となります。
CRMツールを活用し、営業データを一元管理することで、営業効率を向上させ、ARR証明データを整備できます。
組織拡大と業務BPR
組織拡大と業務BPRでは、採用強化、業務プロセスの見直し、KPI設定が重要です。
採用強化では、エンジニア、営業、マーケティング人材の採用を進めます。業務BPRでは、業務プロセスの見直し、効率化、自動化を行い、組織のスケーラビリティを確保します。KPI設定と測定体制では、ARR、解約率、CAC、LTV等のKPIを設定し、定期的に測定することで、スケール実行の進捗を可視化します。
スケール実行ロードマップと避けるべき失敗パターン
シリーズA後のスケール実行は、3ヶ月(体制構築)、6ヶ月(施策実行)、12ヶ月(成果測定)のマイルストーンで進めることが推奨されます。避けるべき失敗パターンとして、戦略と実装の乖離、リソース配分の誤り、KPI未設定等が挙げられます。
戦略レポートだけで満足し、実装が進まないことは、最も避けるべき失敗パターンです。戦略と実装の乖離が成果を阻害するため、MA/SFA設定など「動くもの」の実装を優先することが重要です。
【比較表】シリーズA後のスケール実行ロードマップ
期間,マーケティング軸,営業軸,組織軸,マイルストーン
3ヶ月,MA/SFAツール選定・導入,インサイドセールス採用,採用計画策定・開始,体制構築完了
6ヶ月,リード獲得施策開始(コンテンツ・広告),営業プロセス標準化完了,業務BPR実施,施策実行完了
12ヶ月,リードナーチャリング最適化,CAC回収期間6-12ヶ月達成,KPI測定体制確立,成果測定・次期計画
3ヶ月(体制構築)では、MA/SFAツール選定・導入、インサイドセールス採用、採用計画策定・開始を行います。6ヶ月(施策実行)では、リード獲得施策開始(コンテンツ・広告)、営業プロセス標準化完了、業務BPR実施を進めます。12ヶ月(成果測定)では、リードナーチャリング最適化、CAC回収期間6-12ヶ月達成、KPI測定体制確立を実現します。
避けるべき失敗パターンとして、以下が挙げられます。
- 戦略と実装の乖離: 戦略レポートだけで満足し、実装が進まない
- リソース配分の誤り: マーケティング・営業・組織のバランスを欠いた投資
- KPI未設定: 成果測定の基準が曖昧で、スケール進捗を可視化できない
- 採用の遅れ: 体制構築が遅れ、施策実行が後手に回る
戦略レポートだけでなく、MA/SFA設定から専用ツール開発まで「動くもの」を実装・納品することで、これらの失敗パターンを回避できます。
まとめ|シリーズA後のスケール成功のポイント
シリーズA調達後のスケール成功は、戦略レポートだけでなくMA/SFA設定から専用ツール開発まで「動くもの」を実装・納品することで初めて実現します。
本記事の要点を整理すると、以下の通りです。
- PMF達成が必須: シリーズA調達の前提条件として、LTV>CAC達成、解約率5%未満、NPS50以上などの定量指標でPMFを証明する
- 日本市場の相場理解: シリーズA相場は5-20億円、ARR1億円以上が目安。米国の1/3〜1/5程度で、日本市場特化の情報で判断する
- 3軸でスケール実行: マーケティング(リード獲得・MA/SFA活用)、営業(インサイドセールス・プロセス標準化)、組織(採用・業務BPR・KPI設定)の3軸で進める
- ロードマップで進捗管理: 3ヶ月(体制構築)、6ヶ月(施策実行)、12ヶ月(成果測定)のマイルストーンで進捗を可視化する
シリーズA後のスケール実行チェックリストとスケール実行ロードマップを活用して、調達後の具体的なアクションを即座に計画してください。
戦略レポートだけでなく、MA/SFA設定から専用ツール開発まで「動くもの」を実装・納品することで、戦略と実装の乖離を防ぎ、スケール実行の成果を最大化できます。
