人材業界の営業職を選ぶ前に知っておくべきこと
最も重要なのは、人材業界の営業は「人」という無形商材を扱うため、ヒアリング力と信頼関係構築力が成果を分ける仕事であり、これらのスキルを持つ人にとってはやりがいのあるキャリアです。
2024年度の人材関連ビジネス主要3業界(派遣・紹介・再就職支援)の市場規模は9兆7,962億円で、前年度比+3.4%の成長を続けています(矢野経済研究所調査、売上高ベースの推計値)。2025年度には10兆955億円と予測され、10兆円を超える見込みです。このように成長を続ける業界で、営業職は事業の最前線を担う重要な存在です。
しかし、人材業界の営業に関しては「きつい」「やめとけ」といったネガティブな情報も目にすることがあります。こうした情報だけで判断してしまうのは適切ではありません。実際には向き不向きがあり、自分の適性を正しく理解すれば活躍できる可能性が高い職種です。
この記事で分かること
- 人材業界の基本構造と派遣・紹介・求人広告の違い
- RA・CA・両面型の仕事内容比較と特徴
- 人材営業に向いている人の適性チェックリスト
- 人材営業のやりがいとキャリアパス
- 転職を検討する際の判断基準
人材業界とは|派遣・紹介・求人広告の違い
人材業界は大きく分けて、人材派遣、人材紹介、求人広告の3つの事業形態で構成されています。それぞれビジネスモデルと収益構造が異なるため、営業職の仕事内容も大きく変わります。
2024年度の人材派遣市場は9兆3,220億円(前年度比+3.0%)で、3業界の約95%を占めています。一方、ホワイトカラー人材紹介市場は4,490億円ながら、前年度比+12.0%と最も高い成長率を示しています(矢野経済研究所調査)。
日本国内の人材業界企業数は2025年7月10日時点で20,690社にのぼり、東京都7,148社、大阪府2,170社、愛知県1,237社と三大都市圏に集中しています(Akala DB)。これだけの企業数があることは、市場の競争が激しいことを示しています。
成功報酬型(コンティンジェンシー) とは、人材紹介の報酬体系を指します。入社成立時に年収×フィー率(一般的に30〜35%程度)を支払う仕組みで、職種や企業によりフィー率は異なります。
人材派遣と人材紹介のビジネスモデルの違い
人材派遣と人材紹介は、同じ「人材ビジネス」でありながら収益構造が根本的に異なります。この違いを理解することが、営業職の仕事内容を把握する第一歩です。
人材派遣は、派遣スタッフを企業に派遣し、その対価として派遣料金を受け取るモデルです。派遣料金からスタッフへの給与を差し引いたマージンが収益となります。継続的に収益が発生するストック型のビジネスと言えます。
一方、人材紹介は採用が成立した時点で成功報酬を受け取るモデルです。1件あたりの報酬額は大きいものの、成約するまで収益が発生しないフロー型のビジネスです。同じ人材ビジネスでも、営業に求められる活動内容や成果指標は大きく異なります。
人材営業の種類と仕事内容|RA・CA・両面型の違い
人材紹介会社の営業職は、主にRA(リクルーティングアドバイザー)、CA(キャリアアドバイザー)、両面型(360度コンサルタント)の3つの形態に分かれています。それぞれ担当範囲と求められるスキルが異なります。
RA(リクルーティングアドバイザー) とは、人材紹介会社で企業側(法人営業)を担当する職種です。求人獲得・要件定義・採用コンサルティングを行います。
CA(キャリアアドバイザー) とは、人材紹介会社で求職者側を担当する職種です。キャリア面談・求人紹介・選考フォローを行います。
両面型(360度コンサルタント) とは、企業と求職者の双方を1人のコンサルタントが担当する形態です。マッチング精度が高くなりやすい一方、個人のスキル依存度が高くなります。
【比較表】人材営業の種類(RA/CA/両面型)比較表
| 項目 | RA(リクルーティングアドバイザー) | CA(キャリアアドバイザー) | 両面型(360度コンサルタント) |
|---|---|---|---|
| 担当範囲 | 企業側(法人営業) | 求職者側 | 企業と求職者の両方 |
| 主な業務 | 求人獲得、要件定義、採用コンサル | キャリア面談、求人紹介、選考フォロー | 両者を1人で担当 |
| 求められるスキル | 法人営業力、提案力、業界知識 | 傾聴力、キャリア支援力、共感力 | 総合的なスキルが必要 |
| 向いている人 | 法人営業経験者、提案営業が得意な人 | カウンセリング志向の人、人の話を聞くのが好きな人 | マルチタスクが得意な人、深い関係構築を好む人 |
| メリット | 企業との関係構築に集中できる | 求職者支援にやりがいを感じやすい | 一気通貫で関われる、マッチング精度が高い |
| デメリット | 求職者との接点が少ない | 企業側の事情を把握しにくい | 業務量が多い、育成負荷が高い |
RA(リクルーティングアドバイザー)の仕事内容
RAは企業側を担当する法人営業です。主な業務は、新規企業の開拓、求人要件のヒアリング、採用成功に向けた提案活動です。
具体的には、企業の採用担当者や経営者との商談を通じて、どのような人材を求めているのかを深掘りします。単に「営業経験者が欲しい」という要望を聞くだけでなく、なぜその人材が必要なのか、どのような課題を解決したいのかまで踏み込んでヒアリングすることが重要です。
求人を獲得した後は、CAと連携して候補者を紹介し、面接調整から内定承諾までフォローします。企業との信頼関係を構築し、継続的に求人をいただける関係を作ることが成果につながります。
CA(キャリアアドバイザー)の仕事内容
CAは求職者側を担当するポジションです。主な業務は、キャリア面談、求人紹介、選考のフォロー、入社後のフォローアップです。
求職者との面談では、これまでの経験や強み、転職理由、希望条件などを丁寧にヒアリングします。表面的な希望だけでなく、「なぜ転職したいのか」「何を実現したいのか」という本質的なニーズを引き出すことが重要です。
ヒアリング内容をもとに、RAが獲得した求人の中から最適なものを紹介します。書類選考や面接対策のサポート、条件交渉の代行なども行います。入社後の定着まで見据えたマッチングが求められます。
人材営業に向いている人の特徴と適性チェック
人材営業に向いているかどうかは、特定のスキルや志向性で判断できます。**「人材業界の営業はきつい・やめとけ」という情報だけを見て判断してしまうという考え方は誤りです。**実際には向き不向きがあり、自分の適性を正しく理解すれば活躍できる可能性が高い職種です。
以下のチェックリストで、自分の適性を確認してみてください。
【チェックリスト】人材営業に向いている人の適性チェックリスト
- 人の話を聞くことが好き・得意である
- 相手の立場に立って考えることができる
- 初対面の人とも信頼関係を築くのが得意
- 数値目標に向かって努力することにやりがいを感じる
- 人の成長やキャリアに関心がある
- 粘り強く物事に取り組める
- 複数の案件を同時並行で進めることに抵抗がない
- 断られても切り替えて次に進める
- 企業や業界に関する情報収集が苦にならない
- 人と人をつなげることに喜びを感じる
- 成果報酬型の評価体系に魅力を感じる
- 自分の介在価値を実感したい
上記の項目で半数以上当てはまる場合、人材営業に向いている可能性があります。特に「ヒアリング力」と「信頼関係構築力」に自信がある方は、この仕事で成果を出しやすいと言われています。
人材営業で成果を出す人の共通点
人材営業で継続的に成果を出す人には、共通する特徴があります。それは、短期的な成約だけでなく、中長期的な関係構築を重視している点です。
採用に成功している企業では入社3年後定着率が80〜85%程度とされており、候補者・社員との継続的コミュニケーション施策を重視していることが報告されています(厚生労働省事例集)。これは人材営業においても同様で、入社後の定着まで見据えた提案ができる人が信頼を獲得しています。
成果を出す人は、目の前の成約数だけでなく、紹介した人材の定着率やリピート率といった中長期指標も意識しています。「紹介して終わり」ではなく、その後のフォローまで含めて仕事と捉えることが重要です。
人材営業のやりがいとキャリアパス
人材営業のやりがいは、人の人生の転機に関わり、企業と求職者の双方から感謝される点にあります。無形商材だからこそ、自分の介在価値を実感しやすい仕事です。
有効求人倍率とは、ハローワークの有効求人数を有効求職者数で割った指標です。1倍を超えると、求人数が求職者数より多い状態を意味します。
2025年1月の派遣社員数は159万人(前年同月比+9万人)、有効求人倍率は1.26倍と高水準を維持しています(日本人材派遣協会)。また、2025年10月の転職市場求人倍率は全体で1.91倍、年収700万円以上のハイキャリア層では2.56倍とさらに高い水準です(パソナ総合研究所)。転職市場が活況な状況は、人材営業にとって追い風と言えます。
ただし、年収については注意が必要です。人材営業は成果報酬型の評価体系を採用している企業が多く、インセンティブによって年収が大きく変動します。基本給だけでなく、成果に応じた報酬を含めて判断することが重要です。
キャリアパスとしては、RA・CAからマネージャーへの昇進、両面型への移行、事業会社の人事・採用コンサルへの転職など、多様な選択肢があります。人材業界で培った経験を活かして独立するケースもあります。
まとめ|人材業界の営業職を選ぶ判断基準
本記事では、人材業界の営業職について、業界構造、職種の違い、向いている人の特徴、やりがいとキャリアパスを解説しました。
ポイントのまとめ
- 人材関連3業界の市場規模は9兆7,962億円(2024年度)、2025年度は10兆円超えの見込み
- 人材営業はRA(企業側)、CA(求職者側)、両面型の3つに分かれる
- 「きつい・やめとけ」という情報だけで判断せず、自分の適性を正しく理解することが重要
- ヒアリング力と信頼関係構築力がある人に向いている職種
- 転職市場は活況で、有効求人倍率1.26倍、ハイキャリア層は2.56倍
人材業界の営業は「人」という無形商材を扱うため、ヒアリング力と信頼関係構築力が成果を分ける仕事です。これらのスキルを持つ人にとっては、やりがいのあるキャリアになり得ます。
本記事の適性チェックリストで自分の向き不向きを確認し、比較表でどの職種が自分に合っているかを検討してみてください。向いていると感じた方は、ぜひ人材業界の営業職への挑戦を検討してみてはいかがでしょうか。
