Salesforce設定を「とりあえず」で済ませると何が起きるか
正しい初期設定を行い、将来のデータ活用に備えた基盤を作りたい——そのために必要なのは、Salesforceの設定は将来のデータ活用と運用効率を左右する重要な基盤づくりであり、設定時点で活用ゴールを意識した設計が成功の鍵となるという認識です。
SalesforceはグローバルCRM市場で10年以上連続シェア1位を維持しています(IDC市場調査レポート)。世界中の企業が導入しているからこそ、設定の質が運用成果を大きく左右します。
この記事で分かること
- Salesforce設定画面の基本構造と押さえるべき用語
- 初期設定で設定すべき必須項目・推奨項目
- プロファイル・権限セット・ロールの違いと使い分け
- 将来のMA連携・データ活用を見据えた設定のポイント
- 設定漏れを防ぐチェックリストと権限設計の比較表
しかし、設定を「とりあえず動くように」済ませてしまうと、後から権限の見直しやデータ整理に膨大な時間を取られるパターンに陥りがちです。これはよくある失敗パターンであり、導入初期の設定設計がその後の運用効率を決定づけます。本記事では、活用を見据えた初期設定の考え方を解説します。
Salesforce設定画面の基本と押さえるべき用語
設定を正しく行うには、まず設定画面の構造と基本用語を理解することが重要です。
設定画面へのアクセスとナビゲーション
Salesforceの設定画面へは、画面右上の歯車アイコンをクリックし、「設定」を選択することでアクセスできます。設定画面に入ったら、左側の「クイック検索」ボックスを活用してください。「プロファイル」「権限セット」「ユーザー」など、設定したい機能名を入力すると、該当する設定ページに素早く移動できます。
初心者の方がつまずきやすいのは、設定項目が多岐にわたり、どこから手をつけてよいかわからない点です。クイック検索を使いこなすことで、必要な設定に迷わずたどり着けます。
プロファイル・権限セット・ロールの違い
Salesforceの権限管理で混同しやすいのが、プロファイル・権限セット・ロールの3つです。それぞれの役割は異なります。
プロファイルとは、ユーザーに必ず1つ割り当てる基本権限セットです。ログイン可否やオブジェクトの基本操作権限(参照・作成・編集・削除)を定義します。プロファイルは1ユーザにつき1つのみ割り当て可能です。
権限セットとは、ユーザーに追加で付与する権限の束です。1ユーザに0個〜複数個付与可能で、プロファイルだけではカバーできない権限を柔軟に追加できます。
ロールとは、レコードの見える範囲を決める階層構造です。上位ロールは下位ロールのレコードを参照できます。組織の階層構造(部長→課長→担当など)を反映させることで、適切なデータアクセス範囲を設定できます。
初期設定で押さえるべき必須項目と推奨項目
Salesforce導入時には、運用開始前に設定すべき項目があります。Salesforce導入時の初期設定として9つの項目(組織情報、営業時間、会計年度等)が推奨されています。特に運用開始後の変更が困難な項目は、初期設定の段階で慎重に検討することが重要です。
【チェックリスト】Salesforce初期設定チェックリスト
- 組織情報(会社名・住所・電話番号)の入力
- デフォルトの言語・ロケール・タイムゾーンの設定
- 会計年度の開始月の設定(変更が困難なため最優先で確認)
- 営業時間の設定
- パスワードポリシーの設定(最小8文字以上推奨)
- パスワード有効期限の設定(90日推奨)
- ログイン失敗時のロックアウト回数(10回推奨)
- ログインIPアドレス制限の検討
- セッションタイムアウト時間の設定
- 基本プロファイルの作成(3〜5種類程度)
- ロール階層の設計と作成
- 管理者ユーザーの作成
- テストユーザーの作成(本番前の検証用)
- 必要なオブジェクトのタブ表示設定
- 項目レベルセキュリティの初期設定
組織情報と会計年度の設定
会計年度の設定は、運用開始後の変更が困難なため、初期設定で最も注意が必要な項目の一つです。「とりあえず」で1月始まりに設定してしまい、実際は4月始まりだった場合、レポートやダッシュボードの年度集計がすべてずれてしまいます。
組織情報として、会社名・住所・電話番号なども最初に設定しておきましょう。これらはメールテンプレートや帳票に自動挿入されることがあるため、正確な情報を入力することが重要です。
セキュリティ設定(パスワードポリシー・ログイン制御)
パスワードポリシーの推奨値として、最小8文字以上、有効期限90日、ロックアウト10回が一般的な目安です。ただし、これらは自社のセキュリティポリシーに合わせて調整してください。
セキュリティ関連の設定には、パスワードポリシー以外にも、ログインIPアドレスの制限やセッションタイムアウト時間の設定があります。リモートワークが普及している現在では、社外からのアクセスを想定した設計が必要になることもあります。
権限設計の基本的な考え方
権限設計では、プロファイルと権限セットの使い分けが重要です。BtoB組織ではプロファイル数を3〜5種類程度に抑え、権限セットで微調整する構成が多いとされています(ただし、これは公的統計ではなく実務ノウハウからの傾向です)。
また、Spring '26以降、権限管理の中心がプロファイルから権限セットに移行する方向でSalesforceがアナウンスしています。ただし、具体的なスケジュールや詳細は変更される可能性があるため、最新情報を確認することを推奨します。
【比較表】プロファイル・権限セット・ロール比較表
| 項目 | プロファイル | 権限セット | ロール |
|---|---|---|---|
| 割り当て数 | 1ユーザにつき1つのみ | 1ユーザに0個〜複数可 | 1ユーザにつき1つ |
| 主な役割 | 基本権限の定義 | 追加権限の付与 | レコードの共有範囲 |
| 制御対象 | オブジェクト権限、タブ表示等 | オブジェクト権限、項目権限等 | レコードアクセス |
| 設計の考え方 | 最小限の共通権限 | 役割に応じた追加権限 | 組織階層を反映 |
| 運用の柔軟性 | 変更時の影響が大きい | 柔軟に追加・削除可能 | 階層変更は慎重に |
| 推奨数(目安) | 3〜5種類程度 | 必要に応じて作成 | 組織構造に合わせる |
プロファイルを最小限に抑える理由
職種ごとにプロファイルを細かく分けすぎると、管理が煩雑になります。たとえば「営業部門・東京」「営業部門・大阪」「営業部門・名古屋」と地域ごとにプロファイルを作成すると、組織変更のたびにすべてのプロファイルを更新する必要が生じます。
BtoB組織ではプロファイル数を3〜5種類程度に抑え、権限セットで微調整する構成が実務では多くみられます。たとえば「営業」「マーケティング」「管理者」といった大枠のプロファイルを作成し、「レポート出力権限」「一括インポート権限」といった権限セットを必要なユーザーにのみ付与する設計です。
権限セットグループの活用
権限セットグループとは、複数の権限セットをまとめた単位です。役割ごとに設計すると運用しやすくなります。
たとえば「インサイドセールス」というロールには「リード参照権限」「取引先責任者編集権限」「活動履歴登録権限」といった複数の権限セットが必要です。これらを権限セットグループとしてまとめておくことで、新しいインサイドセールス担当者が入社した際に、グループを割り当てるだけで必要な権限がすべて付与されます。
Spring '26以降、権限管理の中心がプロファイルから権限セットに移行する方向がアナウンスされているため、今から権限セットを中心とした設計に慣れておくことは有効です。
将来の活用を見据えた設定のポイント
Salesforceの設定は、現時点での要件だけでなく、将来のMA連携やデータ活用を見据えて行うことが重要です。
オブジェクトとは、情報を整理して保存するためのデータコンテナです。取引先、商談、リードなどが標準オブジェクトとして用意されています。どのオブジェクトにどのようなデータを格納するかを初期設計で決めておくことで、後からのデータ移行や整理の手間を軽減できます。
MA/SFA連携時の設定ポイント
Marketing CloudやAccount Engagement(旧Pardot)などのMAツールと連携する場合、Salesforce側でも適切な設定が必要です。
項目レベルセキュリティとは、項目単位で参照・編集権限を制御する機能です。権限セットごとに設定可能で、たとえばマーケティング担当者には「リードスコア」項目を参照させ、「商談金額」項目は非表示にするといった制御ができます。
MA連携を行う場合、マーケティング担当者が「どのオブジェクト・項目を見る必要があるか」を整理し、管理者と設定をすり合わせることが実務的です。タブ表示設定でリードや取引先責任者のタブを表示し、項目レベルセキュリティで必要な項目へのアクセスを許可する流れになります。
まとめ:設定は「活用のスタートライン」
本記事では、Salesforceの初期設定と権限設計の基本を解説しました。
設定で押さえるべきポイントを振り返ります。
- 設定画面へは歯車アイコン→設定でアクセス。クイック検索を活用する
- プロファイルは1ユーザに1つの基本権限、権限セットは追加で複数付与可能、ロールはレコードの共有範囲
- 会計年度は運用開始後の変更が困難なため最優先で確認
- プロファイルは3〜5種類程度に抑え、権限セットで柔軟に調整する設計が実務では多い
- 将来のMA連携を見据え、項目レベルセキュリティの設計も初期段階で検討
設定完了はゴールではなく、活用のスタートラインです。上記のチェックリストと比較表を活用し、自社の設定を確認してみてください。
Salesforceの設定は将来のデータ活用と運用効率を左右する重要な基盤づくりであり、設定時点で活用ゴールを意識した設計が成功の鍵です。「とりあえず動くように」ではなく、活用を見据えた設計で、Salesforceの価値を最大限に引き出してください。
