Salesforce運用代行が形骸化する理由
Salesforceを導入したものの「設定変更を依頼する人手が足りない」「レポート作成を外注したい」と考え、運用代行サービスを検討する企業は少なくありません。しかし、Salesforce運用代行を選ぶ際は、設定代行だけでなく、業務プロセス構築と運用定着支援まで提供する会社を選ぶことが成功の鍵です。
よくある失敗パターンとして、「設定変更やレポート作成を外注できればよい」と考えがちですが、業務プロセスの見直しと運用定着支援がなければツールが形骸化します。例えば、営業担当者が入力ルールを理解せずにデータを登録し、レポートの精度が低下するケースや、マーケティング部門と営業部門でデータ連携が不十分で、リードが営業に引き渡されずに放置されるケースがあります。設定変更やレポート作成を外注しても、業務プロセスが整備されていなければ、結局ツールが活用されず、投資対効果が出ません。
この記事で分かること
- Salesforce運用代行の基本概念と依頼できる業務内容
- 運用代行の費用相場とプラン別のサポート範囲
- 設定代行と業務プロセス構築支援の違い
- 運用代行会社を選ぶ際の具体的なチェックリストと比較表
- 内製化との比較と、どちらを選ぶべきかの判断基準
本記事では、Salesforce運用代行の費用相場とサービス内容を解説しつつ、業務プロセス構築と運用定着支援まで提供する会社を選ぶべき理由を実践的に示します。
Salesforce運用代行とは
Salesforce運用代行とは、Salesforce導入後の継続運用を外部の専門ベンダーに委託するサービスです。設定変更、レポート作成、ユーザーサポートなどを実施します。
Salesforce導入後、日常的な設定変更(カスタムフィールドの追加、ワークフローの修正等)や定期レポートの作成が必要になりますが、社内に専門知識を持つ人材がいない場合、これらの業務を外部に委託することで、運用を継続できます。
Salesforceコンサルティングサービスとは、Salesforceの実装・統合・サポートを提供する専門サービスです。設定変更、レポート作成、ユーザーサポートが主な業務ですが、上位プランでは業務プロセス分析から改善提案、運用定着支援まで一気通貫で提供する会社もあります。
運用代行で依頼できる主な業務
運用代行で依頼できる具体的な業務内容は以下の通りです。
- 設定変更: 営業プロセスに合わせたカスタムフィールド追加、ページレイアウト変更、入力規則設定等
- レポート作成: 商談レポート、売上予測レポート、活動履歴レポート等の定期作成と自動化
- ダッシュボード作成: 営業管理者向けKPIダッシュボード、マーケティング成果可視化ダッシュボード等
- ワークフロー・フロー設定: 商談ステージ変更時の自動通知、承認プロセス設定、リードアサインルール等
- データクレンジング: 重複レコードの統合、不要データの削除、データ品質チェック
- ユーザーサポート: 操作方法の問い合わせ対応、トラブルシューティング、定期トレーニング実施
- カスタマイズ: Apexコード開発、Visualforce/Lightningコンポーネント開発等の高度なカスタマイズ
これらの業務を外部に委託することで、社内リソースを本業に集中させることができます。
設定代行と業務プロセス構築支援の違い
運用代行会社には大きく2つのタイプがあります。
設定代行レベルの会社は、クライアントの指示通りに設定変更やレポート作成を実施します。例えば「この項目を追加してほしい」「このレポートを毎週自動送信してほしい」といった具体的な指示を受けて、技術的に実装します。社内に明確な要件定義ができる担当者がいる場合は、このレベルで十分なケースもあります。
業務プロセス構築支援レベルの会社は、クライアントの業務フロー分析から始め、改善提案、Salesforce設定、運用定着支援まで一気通貫で提供します。例えば、営業部門とマーケティング部門のリード引き渡しプロセスを分析し、「MQL(Marketing Qualified Lead)基準を明確化し、自動アサインルールを設定する」といった業務改善提案を行い、Salesforce上で実装し、社内トレーニングまで実施します。
後者のタイプは、単なる設定代行にとどまらず、業務プロセス全体を見直して最適化する支援を提供するため、Salesforceの投資対効果を最大化できます。本記事のthesisである「業務プロセス構築と運用定着支援まで提供する会社を選ぶ」ことが成功の鍵となる理由は、ここにあります。
Salesforce運用代行のメリット・デメリット
運用代行のメリットとデメリット、内製化との比較を整理します。
メリットは以下の通りです。
- 専門知識不要: 社内にSalesforceの専門知識を持つ人材がいなくても、外部の専門家に任せられる
- 迅速な対応: 設定変更やレポート作成を迅速に実施でき、業務スピードが向上する
- 最新機能活用: Salesforceの最新機能やベストプラクティスを熟知した専門家が対応するため、最新機能を活用できる
- リソース削減: 社内の業務負荷を軽減し、本業に集中できる
デメリットは以下の通りです。
- 月額コスト: 継続的に運用代行費用が発生する(詳細は後述)
- 社内ノウハウが蓄積されにくい: 外部に依存すると、社内にSalesforceの運用ノウハウが蓄積されにくい
- 依存リスク: 運用代行会社に依存し、契約終了時に自社で運用継続できないリスクがある
社内SE(アプリケーション)の求人倍率は前年比305.9%と急増する見込みで(JAC Recruitmentの2026年転職市場分析)、業務システム内製化の進展により需要が増加しています。ただし、この数値は2025年調査ベースの2026年予測値であり、転職市場データのため求人ベースの推計値で、公的統計ではない点に留意が必要です。社内SEの採用が困難な状況では、運用代行の活用が現実的な選択肢となります。
また、カスタマーサクセス求人倍率も前年比212.5%(2026年予測)と高まっており、SaaS(Salesforce含む)の定着支援需要が増加しています。運用代行会社の中には、カスタマーサクセス的な定着支援を提供する会社もあり、社内リソース不足を補う選択肢として注目されています。
内製化との比較
運用代行と内製化のどちらを選ぶべきかは、企業規模や予算、社内リソースの状況によって異なります。
内製化とは、社内SEによるSalesforceのカスタマイズ・運用です。長期的なコスト低減が見込めるが、人材確保が課題となります。
内製化のメリットは、長期的なコスト低減、社内ノウハウの蓄積、柔軟な対応(社内事情を理解した迅速な対応)です。
内製化のデメリットは、人材確保が困難(前述の通り社内SE求人倍率が305.9%と急増する見込み)、育成コスト、専門知識習得に時間がかかる点です。
Salesforce運用関連のフリーランスエンジニアの月額単価相場は平均81万円、中央値80万円(フリーランススタート掲載案件、2024年時点)です。社内SEを採用する場合、この水準の人件費が目安となります。ただし、正社員として採用する場合は、社会保険料や福利厚生費も考慮する必要があります。
小規模企業(従業員50名以下)は運用代行で迅速にROIを実現し、中堅企業以上(従業員100名以上)は内製化投資を検討することが一般的です。ただし、前述の通り社内SE採用が困難な状況では、中堅企業でも運用代行を継続する選択肢も検討すべきです。
Salesforce運用代行の費用相場とプラン別価格帯
Salesforce運用代行の日本市場における費用相場は、月額10万円〜120万円程度が一般的で、基本プランが10〜30万円、標準プランが30〜60万円、プレミアムプランが60〜120万円です(2024年時点)。
この相場は、企業規模や業務量により大きく変動します。例えば、従業員50名程度の企業で、設定変更とレポート作成のみを依頼する場合は月額10〜30万円程度、従業員300名程度の企業で、業務プロセス構築支援と運用定着支援まで依頼する場合は月額60〜120万円程度となることが多いです。
また、2025年にSalesforceが価格改定を実施した影響で、運用代行サービスの価格も影響を受けている可能性があります。最新の価格は、個別見積もりで確認することを推奨します。
プラン別のサポート範囲と向いている企業
プラン別のサポート範囲と、どの企業に向いているかを説明します。
基本プラン(月額10〜30万円) は、設定変更・レポート作成中心のプランです。クライアントの指示通りに設定変更やレポート作成を実施します。ユーザーサポートは限定的(メールのみ等)で、業務プロセス構築支援は含まれません。小規模企業(従業員50名以下)や、設定代行のみが必要な企業に向いています。
標準プラン(月額30〜60万円) は、基本プランに加えて、ユーザーサポート(電話・チャット対応)、ダッシュボード作成、ワークフロー設定等が含まれます。定期的なレビュー会議(月次等)を実施し、運用状況を確認する会社もあります。中規模企業(従業員50〜200名)や、運用サポートも必要な企業に向いています。
プレミアムプラン(月額60〜120万円) は、標準プランに加えて、業務プロセス構築支援(業務フロー分析、改善提案)、運用定着支援(社内トレーニング、定期レビュー)、カスタマイズ開発(Apex、Visualforce等)が含まれます。専任のコンサルタントがアサインされ、業務改善まで一気通貫で支援します。中堅企業(従業員200名以上)や、業務改善まで依頼したい企業に向いています。
プレミアムプランは、本記事のthesisである「業務プロセス構築と運用定着支援まで提供する会社を選ぶ」ことを実現するプランです。設定代行だけで終わらず、業務全体を最適化する支援を受けられるため、Salesforceの投資対効果を最大化できます。
Salesforce運用代行会社の選び方
業務プロセス構築と運用定着支援まで提供する会社を選ぶための、具体的なチェックリストと比較表を提供します。
日本中堅中小企業のSalesforce+Data 360導入事例(2022年)では、問い合わせ対応10%減、教育時間40時間短縮、売上・利益率105%増、営業時間130%増を実現しました。ただし、この事例はPR記事中心で客観性がやや低く、業務改革や営業強化など他要因も含まれる可能性がある点に注意が必要です。それでも、適切な運用代行会社を選び、業務プロセス構築支援を受けることで、大きな成果が期待できることは確かです。
【チェックリスト】Salesforce運用代行会社選定チェックリスト
- 同業種・同規模企業での導入実績がある
- 導入事例や成功事例を公開している(具体的な成果数値を含む)
- Salesforce認定アドミニストレーター資格を保有している担当者がいる
- Salesforce認定コンサルタント資格を保有している担当者がいる
- 問い合わせ対応時間が明確(営業時間内、24時間対応等)
- 専任担当者がアサインされる(複数案件を兼務しない)
- 定期レビュー会議(月次または週次)を実施する
- 業務フロー分析を実施し、改善提案を行う能力がある
- 運用定着支援(社内トレーニング、マニュアル作成等)を提供する
- Salesforce設定だけでなく、業務プロセス全体を見直す視点がある
- データクレンジング・データ品質管理のノウハウがある
- ワークフロー・フロー設定の最適化提案ができる
- カスタマイズ開発(Apex、Visualforce等)に対応できる
- 他システム(MA、会計ソフト等)との連携実績がある
- 契約期間・解約条件が明確(最低契約期間、解約通知期間等)
- 料金体系が明確(月額固定、従量課金、追加料金の有無等)
- セキュリティ・情報管理体制が整っている(ISO27001等の認証取得)
- トライアル期間またはスモールスタートプランがある
- 担当者のレスポンス速度が速い(初回問い合わせ時の印象)
- 契約前に業務フロー分析の提案をしてくれる(設定代行だけで終わらない姿勢)
【比較表】運用代行サービス比較表
| プラン | 月額費用 | 設定変更 | レポート作成 | ユーザーサポート | 業務フロー分析 | 改善提案 | 運用定着支援 | カスタマイズ開発 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 基本プラン | 10〜30万円 | ○ | ○ | △(メールのみ) | × | × | × | × | 従業員50名以下、設定代行のみ必要 |
| 標準プラン | 30〜60万円 | ○ | ○ | ○(電話・チャット) | △(簡易分析) | △(簡易提案) | △(マニュアル提供) | × | 従業員50〜200名、運用サポートも必要 |
| プレミアムプラン | 60〜120万円 | ○ | ○ | ○(専任担当) | ○ | ○ | ○(トレーニング実施) | ○ | 従業員200名以上、業務改善まで依頼 |
業者選定で重視すべきポイント
業者選定で重視すべき具体的なポイントを説明します。
実績は、同業種・同規模企業での導入実績があるかを確認します。例えば、IT・SaaS業界の従業員200名企業であれば、同規模のIT企業での実績がある会社を選ぶと、業務特性を理解した提案を受けられます。導入事例を公開している会社は、成果を客観的に示せる自信がある証拠です。
認定資格は、Salesforce認定アドミニストレーター、認定コンサルタント等の保有状況を確認します。これらの資格は、Salesforceの基本機能から高度なカスタマイズまで幅広い知識を持つ証明です。担当者が認定資格を保有していれば、技術的な信頼性が高いと判断できます。
サポート体制は、問い合わせ対応時間(営業時間内、24時間対応等)、専任担当者の有無、定期レビューの実施を確認します。専任担当者がアサインされる会社は、継続的に自社の業務を理解してくれるため、長期的な改善提案を受けられます。定期レビュー会議を実施する会社は、運用状況を可視化し、PDCAを回す体制があります。
業務プロセス構築支援の有無は、本記事のthesisを支える最重要ポイントです。業務フロー分析、改善提案、運用定着支援まで一気通貫で提供できるかを確認します。契約前に「業務フローを分析して改善提案をしてくれるか」を質問し、具体的な提案をしてくれる会社を選ぶべきです。設定代行だけで終わる会社は、業務プロセスの見直しまで踏み込まないため、長期的な投資対効果が出にくいと言われています。
まとめ:業務プロセス構築と運用定着支援まで提供する会社を選ぶ
Salesforce運用代行を選ぶ際は、設定代行だけでなく、業務プロセス構築と運用定着支援まで提供する会社を選ぶことが成功の鍵です。
本記事で解説した主要なポイントを整理します。
- 費用相場: 月額10万円〜120万円程度が一般的で、基本プラン10〜30万円、標準プラン30〜60万円、プレミアムプラン60〜120万円(2024年時点)
- プラン別サポート範囲: 基本プランは設定代行のみ、標準プランはユーザーサポート追加、プレミアムプランは業務プロセス構築支援と運用定着支援を含む
- 業者選定のチェックリスト: 実績、認定資格、サポート体制、業務プロセス構築支援の有無を重視する
- 業務プロセス構築支援の重要性: 設定代行だけでは業務が形骸化するため、業務フロー分析、改善提案、運用定着支援まで一気通貫で提供する会社を選ぶ
よくある誤解として、「設定変更やレポート作成を外注できればよい」と考えがちですが、業務プロセスの見直しと運用定着支援がなければツールが形骸化します。Salesforceの投資対効果を最大化するためには、業務全体を最適化する視点を持った運用代行会社を選ぶことが不可欠です。
次のアクションとして、以下のステップを推奨します。
- チェックリストを活用した業者選定: 本記事のチェックリストを元に、複数の運用代行会社を比較検討する
- 複数社の比較検討: 最低3社から見積もりと提案を受け、サポート範囲と費用を比較する
- トライアル期間の活用: トライアル期間またはスモールスタートプランがある会社を選び、実際の対応品質を確認する
- 業務プロセス構築支援の提案を求める: 契約前に「自社の業務フローを分析して改善提案をしてくれるか」を確認し、具体的な提案をしてくれる会社を選ぶ
運用代行を選べば確実に成功するわけではありませんが、適切な業者を選び、業務プロセス構築と運用定着支援を受けることで、Salesforceの投資対効果を最大化できる可能性が高まります。
