営業KPI設計の現状と課題
営業KPI設計の成功は、設定だけでなく、MA/SFA統合による測定体制とPDCA運用プロセスの構築で実現する——本記事ではこの結論を詳しく解説します。
BtoB中小企業で新規開拓KPI未設定が39.0%(2025年、Mail Marketing Lab調査)、新規開拓重視7割も達成4割(2025年ユーソナー「BtoB営業実態調査」、中堅・中小企業)という実態があります。多くの企業がKPIを設定していない、または設定しても達成できていない状況です。
よくある失敗パターンとして、KPIを設定しただけで満足し、MA/SFAツールでの測定体制やPDCA運用プロセスの構築を後回しにして、結果的にKPIが形骸化し実際の改善活動につながらないケースがあります。例えば、Excelで手動集計している企業では、データ更新が遅れてリアルタイムな意思決定ができず、レビュー会議も形骸化します。マーケティング-営業間でKPIがバラバラで部門間連携がうまくいかない企業も少なくありません。
この記事で分かること
- KPI・KGI・KSFの基本的な違いと関係性
- 営業プロセス別(マーケティング・IS・FS・CS)の主要KPI指標と業界平均値
- KPI設計の基本ステップ(KGI設定→KSF特定→KPI決定→KPIツリー作成)
- MA/SFA統合による測定体制の実装方法とPDCA運用プロセスの構築
- KPI設計から測定体制構築までのチェックリストと営業プロセス別KPI設計比較表
本記事では、KPI設計の基本から、MA/SFAツールを活用した測定体制構築、PDCA運用プロセスの確立まで、実践的なガイドを提供します。
KPI・KGI・KSFの基本知識
KPI設計の土台となる基本的な概念を整理します。
KGI(Key Goal Indicator) とは、重要目標達成指標です。企業や部門の最終的な成果目標を表します(例:年間売上高10億円)。KGIは最終的に達成したい成果を具体的な数値で示します。
KPI(Key Performance Indicator) とは、重要業績評価指標です。KGI達成に向けた中間的なプロセス指標です(例:月間MQL獲得数)。KPIはKGI達成のために、どのプロセスを管理すべきかを示す指標です。
KSF(Key Success Factor) とは、重要成功要因です。KGI達成の鍵となる要因を3〜5つに絞り込んだものです。KSFは「何が成功の鍵か」を定性的に特定し、KPIはKSFを定量的に測定可能な指標に落とし込みます。
具体例で理解しましょう。KGI「年間売上10億円」を達成するために、KSF「新規顧客獲得」を特定します。そして、KSF「新規顧客獲得」を測定するKPIとして「月間MQL獲得数」を設定します。このように、KGI→KSF→KPIという階層で設計します。
また、営業・マーケティングでは以下の用語も頻出します。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門が獲得した見込み顧客(リード)です。マーケティング施策で興味を示した見込み客を指します。
SQL(Sales Qualified Lead) とは、営業部門が商談対象と判断した見込み顧客です。営業がヒアリングし、商談価値があると判断したリードを指します。
NPS(Net Promoter Score) とは、顧客ロイヤルティを測る指標です。顧客満足度を数値化し、「この製品・サービスを友人に勧めるか」を10点満点で評価します。
NRR(Net Revenue Retention) とは、売上維持率です。既存顧客からの売上継続・拡大を測る指標で、解約率やアップセル・クロスセル成功率を反映します。
営業プロセス別の主要KPI指標
営業プロセス別に主要KPI指標を整理し、業界平均値や相場感を示します。
BtoBマーケティング施策の重視KPI第1位は新規リード獲得数(32.1%)、第2位受注率(11.1%)、同率3位Web訪問者数・コンバージョン率(各7.9%)です(2025年、MarkeZine調査)。営業プロセス別に見ると、マーケティングでは新規リード獲得がコントロール可能なKPIとして最も重視されています。
商談化率は過去実績と業界平均から20%程度が目安とされています(月間リード獲得数170件で月間商談数34件を逆算、2024年記事)。受注率は20-25%程度が目安です(成約率20%、受注率25%で商談数を算出、2024年記事)。ただし、これらの数値は業界平均の目安であり、企業規模・業種により大きく変動するため、自社実績での検証が必要です。
以下、営業プロセス別の主要KPI指標を比較表で整理します。
【比較表】営業プロセス別KPI設計比較表
| プロセス | 主要KPI | 目安数値 | 測定方法 | コントロール可能性 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| マーケティング | 新規リード獲得数 | 企業規模・業種で変動 | MAツールで自動集計 | 高(広告費・コンテンツ投下で調整) | 重視KPI第1位(32.1%)。質より量になりがち |
| マーケティング | Web訪問者数 | 企業規模・業種で変動 | Google Analyticsで集計 | 中(SEO・広告で調整) | 同率3位(7.9%)。CVRと組み合わせて評価 |
| マーケティング | コンバージョン率 | 企業規模・業種で変動 | MAツールで自動集計 | 中(LP改善・フォーム最適化) | 同率3位(7.9%)。Web訪問者数と組み合わせて評価 |
| インサイドセールス | 商談化率 | 目安20%(業界平均) | SFAツールで自動集計 | 中(リードスコアリング精度、ヒアリング品質) | 企業規模・業種で大きく変動。自社実績で検証必須 |
| インサイドセールス | SQL転換数 | 企業規模・業種で変動 | SFAツールで自動集計 | 中(MQL品質、ヒアリング品質) | MQL品質に依存。マーケとの連携が重要 |
| フィールドセールス | 受注率 | 目安20-25%(業界平均) | SFAツールで自動集計 | 中(提案品質、価格交渉力) | 企業規模・業種で大きく変動。自社実績で検証必須 |
| フィールドセールス | 平均受注単価 | 企業規模・業種で変動 | SFAツールで自動集計 | 中(商品構成、顧客セグメント) | 受注数と掛け合わせて売上を逆算 |
| カスタマーサクセス | NPS | 企業規模・業種で変動 | アンケートツールで集計 | 低(顧客満足度全般に依存) | 顧客ロイヤルティの先行指標。中長期で改善 |
| カスタマーサクセス | NRR | 企業規模・業種で変動 | 売上データから算出 | 中(アップセル・クロスセル施策) | 既存顧客売上継続・拡大の指標。最新トレンドで重視 |
| カスタマーサクセス | 解約率 | 企業規模・業種で変動 | 顧客データから算出 | 中(CS品質、製品価値) | 低いほど良い。解約理由分析が重要 |
マーケティングプロセスのKPI
マーケティングプロセスでは、新規リード獲得数が最も重視されています。BtoBマーケティング施策の重視KPI第1位は新規リード獲得数(32.1%)です(2025年、MarkeZine調査)。新規リード獲得がマーケティングでコントロール可能なKPIとして重視される理由は、広告費やコンテンツ投下量で調整しやすいためです。
Web訪問者数とコンバージョン率も同率3位(各7.9%)で重視されています。Web訪問者数はSEOや広告で調整でき、コンバージョン率はLP改善やフォーム最適化で向上させることができます。これらを組み合わせてリード獲得数を最大化します。
インサイドセールス・フィールドセールスのKPI
インサイドセールスでは商談化率が主要KPIです。商談化率は過去実績と業界平均から20%程度が目安とされています(2024年記事)。ただし、これは業界平均の目安であり、企業規模・業種により大きく変動するため、自社実績で検証が必要です。
フィールドセールスでは受注率が主要KPIです。受注率は20-25%程度が目安です(2024年記事)。これも業界平均の目安であり、自社実績で検証が必要です。平均受注単価と受注数を掛け合わせて、売上を逆算します。
カスタマーサクセスのKPI
カスタマーサクセスでは、NPS、NRR、解約率が主要KPIです。NPSは顧客ロイヤルティの先行指標で、中長期で改善を図ります。NRRは既存顧客からの売上継続・拡大を測る指標で、最新トレンドとして重視されています。解約率は低いほど良く、解約理由分析が重要です。
最新トレンドとして、ABX(Account-Based Experience)でNRR・CLVへのシフトが見られます。従来のMQL/SQL重視から、既存顧客の売上維持・拡大を重視する動きが強まっています。
KPI設計の基本ステップ
KPI設計は、KGI設定→KSF特定→KPI決定→KPIツリー作成という4ステップで進めます。
ステップ1:KGI設定
最終目標を具体的な数値で定義します。KGIは企業や部門の最終的な成果目標を表します(例:年間売上高10億円、年間受注数100件)。定量的で測定可能な目標にすることが重要です。
ステップ2:KSF特定
KGI達成の鍵となる要因を3〜5つに絞り込みます。KSFはKGI達成の鍵となる要因を定性的に特定します(例:新規顧客獲得、既存顧客維持、顧客単価向上)。KGIを分解して特定します。
ステップ3:KPI決定とKPIツリー作成
KSFを測定可能な指標に落とし込みます。KPIはKGI達成に向けた中間的なプロセス指標です(例:月間MQL獲得数)。SMART原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)でKPI設定することを推奨します。
KPIツリーで階層化して可視化します。上位:KGI、中位:KSF、下位:運用KPIという階層構造で整理します。トップダウン(KGI逆算)とボトムアップ(実績ベース)の両アプローチで目標値を設定します。
例えば、KGI「年間売上10億円」を達成するために、KSF「新規顧客獲得」を特定し、KPI「月間MQL獲得数」を設定します。月間MQL獲得数の目標値は、年間売上10億円を逆算して算出します(例:平均受注単価100万円、受注率20%、商談化率20%から逆算して月間MQL獲得数を算出)。
MA/SFA統合による測定体制とPDCA運用プロセスの構築
KPI設定後の測定体制構築とPDCA運用プロセスの重要性を強調します。
よくある失敗パターンとして、KPIを設定しただけで満足し、MA/SFAツールでの測定体制やPDCA運用プロセスの構築を後回しにして、結果的にKPIが形骸化し実際の改善活動につながらないケースがあります。BtoB中小企業で新規開拓KPI未設定が39.0%(2025年、Mail Marketing Lab調査)、グローバルB2B営業84%がノルマ未達(2025年。ただしグローバル統計で、日本市場と異なる可能性があります)という実態があり、KPI設定と測定体制構築が課題となっています。
MA/SFAツールでKPIを自動測定・リアルタイム可視化し、手動集計の工数を削減することが重要です。週次・月次・四半期のレビュー体制を構築し、PDCAサイクルで継続的改善を実現します。マーケティング-営業間でKPI共有を強化し、データ連携による可視化を進めます。
以下、KPI設計から測定体制構築までのチェックリストを提供します。
【チェックリスト】KPI設計から測定体制構築までのチェックリスト
- KGI(最終目標)を具体的な数値で定義している
- KSF(成功要因)を3〜5つに絞り込んでいる
- KSFを測定可能なKPIに落とし込んでいる
- SMART原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)でKPI設定している
- KPIツリーで階層化して可視化している(上位:KGI、中位:KSF、下位:運用KPI)
- トップダウン(KGI逆算)とボトムアップ(実績ベース)の両アプローチで目標値を設定している
- 営業プロセス別(マーケティング・IS・FS・CS)にKPIを設計している
- マーケティング-営業間でKPIを共有し、部門間連携を強化している
- MAツールでリードスコアリング、自動メール配信を設定している
- SFAツールで商談管理、受注管理を自動化している
- MA/SFAツールを統合し、データ連携を実現している
- ダッシュボードでKPIをリアルタイム可視化している
- 手動集計から自動測定へ移行している
- 週次レビュー体制を構築している(短期的なボトルネック特定)
- 月次レビュー体制を構築している(施策効果検証)
- 四半期レビュー体制を構築している(戦略見直し)
- 営業/マーケ合同ミーティングでデータ共有とフィードバックループを構築している
- KPI達成状況のモニタリングと改善アクションの実施プロセスを明確化している
- KPI未達時のエスカレーションルールを設定している
- KPI形骸化を防ぐため、定期的なKPI見直しプロセスを設定している
MA/SFAツールを活用したKPI測定体制の実装
MA/SFAツールでの自動集計、リアルタイム可視化、ダッシュボード設計の具体的方法を説明します。
MAツールでは、リードスコアリング(興味度合いを数値化)、自動メール配信(特定条件で自動送信)、ダッシュボード構築(KPIをリアルタイム可視化)などの設定を行います。SFAツールでは、商談管理、受注管理を自動化し、営業プロセスのKPIを自動集計します。
MA/SFAツールを統合することで、マーケティング→営業へのリード引き渡しを自動化し、データ連携を実現します。例えば、MAツールで獲得したMQLをSFAツールに自動転送し、インサイドセールスがヒアリングしてSQLに転換、フィールドセールスが商談・受注という一連のプロセスを可視化します。
手動集計から自動測定へ移行するメリットは、データ更新が即時に行われ、リアルタイムな意思決定が可能になる点です。Excelでの手動集計では、データ更新が遅れてレビュー会議が形骸化しますが、MA/SFAツールで自動測定すれば、常に最新のKPI状況を把握できます。
特定ツールの推奨は避けますが、一般的なMA/SFAツールには、HubSpot、Salesforce、Marketo、Pardot等があります。これらのツールは、リードスコアリング、自動メール配信、ダッシュボード構築などの機能を標準で提供しており、KPI測定体制の実装に活用できます。
KPI運用のPDCAサイクル構築
週次・月次・四半期のレビュー体制と改善プロセスの具体的方法を説明します。
週次レビューでは、短期的なボトルネック特定を目的とします。例えば、リード獲得数が目標に達していない場合、広告費を追加投下するか、コンテンツ公開頻度を上げるなど、即座に改善アクションを実施します。
月次レビューでは、施策効果検証を目的とします。例えば、先月実施したキャンペーンがCV数を増やしたかを検証し、次月の施策に反映します。営業/マーケ合同ミーティングでデータを共有し、フィードバックループを構築します。
四半期レビューでは、戦略見直しを目的とします。例えば、商談化率が目標に達していない場合、リードスコアリング基準を見直すか、MQL定義を変更するなど、中長期的な改善を検討します。
KPI達成状況のモニタリングと改善アクションの実施プロセスを明確化することが重要です。KPI未達時のエスカレーションルール(例:2週連続未達で部門長報告、1ヶ月連続未達で戦略見直し)を設定し、迅速な対応を可能にします。
KPI設定時の失敗パターンと対策
KPI設定時のよくある失敗パターンを示し、対策を提示します。
BtoB中小企業で新規開拓KPI未設定が39.0%(2025年、Mail Marketing Lab調査)、新規開拓重視7割も達成4割(2025年ユーソナー「BtoB営業実態調査」、中堅・中小企業)という実態があります。
失敗パターンは以下の通りです。
- KPI未設定:目標が曖昧で、成果が測定できない
- 測定体制不足:手動集計に工数がかかり、データ更新が遅れる
- 部門間KPIバラバラ:マーケティング-営業間でKPIが共有されず、連携がうまくいかない
- 形骸化:KPIを設定したが、レビュー会議が形骸化し、改善活動につながらない
対策は以下の通りです。
- SMART原則適用:Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限明確)でKPI設定
- MA/SFA活用:自動測定・リアルタイム可視化で手動集計の工数を削減
- KPI共有:マーケティング-営業間でKPIを共有し、部門間連携を強化
- 定期レビュー体制:週次・月次・四半期のレビュー体制を構築し、PDCAサイクルで継続的改善
これらの対策を実施することで、KPI形骸化を防ぎ、実際の改善活動につながるKPI設計を実現できます。
まとめ:営業KPI設計成功の鍵
営業KPI設計の成功は、設定だけでなく、MA/SFA統合による測定体制とPDCA運用プロセスの構築で実現します。
本記事で解説した主要なポイントを整理します。
- KPI・KGI・KSF: KGIは最終目標、KPIはプロセス指標、KSFは成功要因という関係性を理解する
- 営業プロセス別KPI: マーケティング(新規リード獲得数)、インサイドセールス(商談化率)、フィールドセールス(受注率)、カスタマーサクセス(NPS、NRR)を設計
- 設計ステップ: KGI設定→KSF特定→KPI決定→KPIツリー作成の4ステップで進める
- 測定体制とPDCA運用: MA/SFAツールで自動測定・リアルタイム可視化し、週次・月次・四半期のレビュー体制を構築
次のアクションとして、以下のステップを推奨します。
- チェックリストで準備状況確認: 本記事のチェックリストを元に、自社のKPI設計と測定体制構築の準備状況を確認する
- MA/SFA設定着手: リードスコアリング、自動メール配信、ダッシュボード構築などの設定を開始する
- 週次レビュー開始: 短期的なボトルネック特定のため、週次レビュー体制を構築する
- 営業/マーケ合同ミーティング: 部門間でKPIを共有し、データ連携による可視化を進める
KPI設計から測定体制構築、PDCA運用までの一気通貫が成功の鍵です。KPIを設定しただけで満足せず、MA/SFAツールで自動測定・リアルタイム可視化し、週次・月次・四半期のレビュー体制を構築することで、継続的な改善活動を実現してください。
