「データは溜まるが活用できない」状態を脱するための成果可視化
先に答えを言うと、成果を可視化するには、測定すべき指標を選定し、ツールで自動収集・ダッシュボード化した上で、定期的なレビューサイクルを回すことで意思決定に活用できます。
BtoB企業において、MA/SFAを導入したにもかかわらず「成果が見えない」「投資判断の根拠を示せない」という課題を抱えるマーケティング責任者・営業部長は少なくありません。BtoB企業経営者87社を対象とした2025年の調査では、今後の強化施策として「データ分析の強化」が24.7%で上位に挙げられており、成果の可視化ニーズは高まっています。
しかし、ツールを導入しただけでデータが溜まり、活用できていない企業も多いのが実態です。可視化しただけで満足し、改善アクションにつながらないケースが散見されます。
この記事で分かること
- 成果可視化に必要な指標・KPIの基本と選び方
- フェーズ別に見るべきKPIと優先順位の付け方
- 可視化ツール導入時に陥りがちな失敗パターンと回避策
- 可視化したデータを意思決定・改善に活用するレビューサイクルの設計方法
- 今日から使える指標選定チェックリスト
成果可視化に必要な指標・KPIの基本
成果可視化を始める前に、まずKGI・KPI・CPAなど基本的な指標の定義と関係性を理解することが重要です。BtoBマーケター330名を対象とした2025年の調査では、BtoB広告運用で最も重視するKPIはCVR(コンバージョン率)が28.7%で1位となっています。
KGI(重要目標達成指標) とは、事業の最終目標を数値化した指標です。売上額・受注件数など最終的なゴールを表します。
KPI(重要業績評価指標) とは、KGI達成のための中間指標です。商談化率・リード数など、進捗を測るための数値を指します。
CPA(顧客獲得単価) とは、1件のリードや顧客を獲得するためにかかったコストです。Cost Per Acquisitionの略で、マーケティング施策の効率を測る指標として広く使われています。
商談化率とは、獲得したリードのうち、商談に至った割合です。リードの質を測る指標として重視されます。
BtoBマーケティングにおける成果可視化では、これらの指標を組み合わせてファネル構造(認知→リード→商談→受注)で管理することが一般的です。
KGIとKPIの関係:ファネル逆算の考え方
ファネル逆算とは、売上目標から必要な受注数→商談数→リード数を逆算し、各段階のKPIを設定する手法です。
具体的には、年間売上目標から以下の順序で逆算します。
- 年間売上目標 ÷ 平均受注単価 = 必要受注件数
- 必要受注件数 ÷ 受注率 = 必要商談数
- 必要商談数 ÷ 商談化率 = 必要リード数
このように逆算することで、各フェーズで達成すべきKPIが明確になり、どの段階に課題があるかを可視化しやすくなります。
可視化すべき指標の選び方|フェーズ別の優先順位
可視化すべき指標は、フェーズごとに優先順位をつけて選定することが重要です。すべての指標を追おうとすると運用が破綻するため、各フェーズで週次で見るKPIは1〜3個に絞ることをおすすめします。
参考値として、BtoBマーケ担当者326名を対象とした2025年の調査では、目標CPA(リード獲得単価)は5,000〜10,000円未満が21.8%で最多、10,000〜15,000円未満が15.3%と続きます。また、BtoBマーケター330名を対象とした同年の調査では、広告経由リードの商談化率はボリュームゾーンが11〜20%で、15%を目標値とするのが妥当とされています。ただし、これらの数値は業種・単価帯・ターゲットにより大きく異なるため、あくまで参考値として自社の過去実績と比較しながら設定してください。
【チェックリスト】成果可視化の指標選定チェックリスト
- KGI(最終目標:売上・受注件数など)が明確に定義されている
- KGIから逆算した各フェーズのKPIが設定されている
- 週次で確認するKPIを1〜3個に絞っている
- 認知フェーズの指標(インプレッション・クリック数・サイト訪問数)を定義している
- リード獲得フェーズの指標(リード数・CPA・CVR)を定義している
- 商談フェーズの指標(商談化率・商談数)を定義している
- 受注フェーズの指標(受注率・受注件数・平均受注単価)を定義している
- 各指標の目標値を設定している
- 目標値の根拠(過去実績・業界水準)を明確にしている
- 指標の計測方法・データソースを特定している
- 指標の更新頻度(日次・週次・月次)を決めている
- 指標の確認担当者を決めている
- 異常値が出た場合のアクションを定義している
- 指標のレビュー会議の開催頻度を決めている
認知・リード獲得フェーズの指標
認知・リード獲得フェーズでは、マーケティング施策の投資対効果を測る指標を中心に可視化します。
BtoB企業経営者87社を対象とした2025年の調査(調査対象は限定的)によると、リード獲得施策はSNSが33.3%、展示会17.2%、広告16.1%(前年29.0%から10ポイント減)の順となっています。
認知・リード獲得フェーズで見るべき主な指標は以下の通りです。
- インプレッション・リーチ数: 施策の認知拡大効果
- クリック数・CTR(クリック率): 訴求内容の訴求力
- CVR(コンバージョン率): LP・フォームの転換効率
- リード数: 獲得した見込み客の量
- CPA(リード獲得単価): 1リードあたりのコスト効率
商談・受注フェーズの指標
商談・受注フェーズでは、リードの質と営業プロセスの効率を測る指標を可視化します。
前述の調査では、広告経由リードの商談化率はボリュームゾーンが11〜20%とされています。商談化率が5%未満の場合は、ターゲティングやLP訴求の見直しが必要なサインと考えられます。
商談・受注フェーズで見るべき主な指標は以下の通りです。
- 商談化率: リードから商談への転換率
- 商談数: パイプラインにある商談の量
- 受注率: 商談から受注への転換率
- 平均受注単価: 1件あたりの受注金額
- リードタイム: 初回接点から受注までの期間
成果可視化の具体的なステップとツール活用
成果可視化を実現するには、KPI設定→データ収集→ダッシュボード化→レビューの順でステップを踏むことが重要です。
よくある失敗パターンとして、KPIを設定せずにツールを導入し、データは溜まるが活用できない状態があります。これは明確に避けるべきパターンです。ツールを導入する前に、何を測定し、どう意思決定に活用するかを明確にしておくことが成功の鍵となります。
BIツールを用いたデータ可視化により、労務管理に費やす時間を年間600時間削減した事例も報告されています。ただし、これは単一企業の事例であり、すべての企業で同様の効果が得られるわけではありません。
【比較表】可視化フェーズ別のKPI・ツール対応表
| フェーズ | 主なKPI | 可視化方法 | ツール例(カテゴリ) |
|---|---|---|---|
| 認知 | インプレッション、リーチ数 | 広告管理画面のレポート | 広告プラットフォーム |
| リード獲得 | リード数、CPA、CVR | MAツールのダッシュボード | MAツール |
| 商談 | 商談化率、商談数 | SFA/CRMのパイプライン画面 | SFA/CRMツール |
| 受注 | 受注率、平均受注単価 | SFA/CRMの受注レポート | SFA/CRMツール |
| 全体 | KGI進捗、各フェーズKPI | 統合ダッシュボード | BIツール |
ダッシュボード設計のポイント
ダッシュボード設計では、「誰が」「何を見て」「どう判断するか」を先に決めることが重要です。
設計時のポイントは以下の通りです。
- 目的の明確化: 経営報告用、日次モニタリング用など目的別に設計する
- 指標の絞り込み: 1画面に表示する指標は5〜7個程度に絞る
- 更新頻度の設定: リアルタイム、日次、週次など用途に応じて設定する
- 比較軸の設定: 前月比、前年比、目標比など比較軸を明確にする
- アラート設定: 異常値を検知した場合の通知設定を行う
可視化を活用した改善サイクルの回し方
可視化の最終目的は、データを見て終わりではなく、改善アクションにつなげることです。可視化しただけで満足してしまうケースが多いですが、これでは成果につながりません。
ある企業では、Web行動データを可視化した企業リストへのアポイント率が、営業作成リストと比較して3倍に向上したという事例が報告されています。ただし、これも単一企業の事例であり、効果は企業の状況により異なります。
改善サイクルを回すためには、以下の流れを定着させることが重要です。
- データ確認: 週次でKPIダッシュボードを確認する
- 課題特定: 目標と実績の乖離がある箇所を特定する
- 原因分析: なぜ乖離が生じているかを分析する
- 改善仮説立案: 改善施策の仮説を立てる
- 実行: 改善施策を実行する
- 効果検証: 次週のKPIで効果を検証する
定例レビュー会議の設計
可視化データを活用するには、定例のレビュー会議を設計することが効果的です。
レビュー会議設計のポイントは以下の通りです。
- 頻度: 週次(進捗確認)+ 月次(振り返り・方針確認)
- 参加者: マーケティング担当・インサイドセールス・営業責任者
- アジェンダ: KPI進捗確認 → 課題共有 → 改善アクション決定
- 時間: 30分〜1時間程度に収める
- 準備: 事前にダッシュボードを更新し、数値を確認しておく
「どのKPIを誰が見て、どう判断するか」を事前に決めておくことで、会議が意思決定の場として機能します。
まとめ|成果可視化は指標選定・ツール化・レビューサイクルの三位一体
成果可視化を成功させるには、以下の3点を押さえることが重要です。
- 指標選定: KGIから逆算してKPIを設定し、各フェーズで見るべき指標を1〜3個に絞る
- ツール化: 適切なツールでデータを自動収集し、ダッシュボードで一覧化する
- レビューサイクル: 週次・月次で定例レビューを行い、改善アクションにつなげる
本記事で紹介したチェックリストを活用し、まずは優先度の高い指標から可視化を始めてみてください。すべてを一度に整備する必要はありません。重要なのは、可視化したデータを見て改善アクションを起こし、そのサイクルを継続することです。
成果を可視化するには、測定すべき指標を選定し、ツールで自動収集・ダッシュボード化した上で、定期的なレビューサイクルを回すことで意思決定に活用できます。
