Pardot導入で「使いこなせない」状態に陥る企業の共通点
Pardot導入の全体像を把握し、自社で導入すべきか、何を準備すべきか判断するために必要なのは、機能理解よりも先に「何を実現したいか」の要件定義と社内体制の整備です。
Marketing Cloud Account Engagementとは、旧Pardotの正式名称であり、Salesforce社が提供するBtoB特化型マーケティングオートメーションツールです。日本国内のMA市場規模は2020年に約543億円、2021年に約600億円、2026年予測で約865億円と推定されています(矢野経済研究所調査、民間調査による推計値のため調査会社ごとに数値が異なる可能性があります)。このように拡大するMA市場の中で、Account Engagementは国内MAツールシェアで上位クラスに位置しています(調査によりシェア13.4%〜22.5%と幅があります)。
しかし、多くの企業がMA導入後に「使いこなせない」状態に陥っています。**よくある失敗パターンとして、Pardotの機能や料金プランの比較ばかりに時間をかけ、導入目的や社内の運用体制を曖昧なまま導入を進めてしまうケースがあります。この考え方は誤りです。**機能が充実しているMAツールを導入しても、「何を実現したいか」が明確でなければ、効果を実感することは難しいでしょう。
この記事で分かること
- Pardot(Account Engagement)の基本機能とSalesforce連携のメリット
- 導入前に決めておくべき要件定義と社内体制のポイント
- 費用・期間の目安と、自社実装・支援会社活用の比較
- 導入後に活用が進まない原因と、スコアリング活用による成功事例
- 自社の準備状況を確認できる導入前チェックリスト
Pardot(Account Engagement)とは|基本機能とSalesforce連携のメリット
Account Engagement(旧Pardot)は、BtoB企業向けのマーケティングオートメーションツールであり、Salesforce Sales Cloudとのシームレスな連携が最大の特徴です。
リードナーチャリングとは、見込み顧客を育成し、購買意欲が高まったタイミングで営業に引き渡す一連のプロセスを指します。Account Engagementは、このリードナーチャリングを効率化するための機能を豊富に備えています。メール配信、ランディングページ作成、フォーム作成、自動化(Engagement Studio)、レポーティングなど、BtoBマーケティングに必要な機能が統合されています。
主要機能:スコアリング・グレーディング・トラッキング
Account Engagementの主要機能として、スコアリング、グレーディング、トラッキングの3つがあります。
スコアリングとは、リードの属性情報と行動に応じて見込み度を数値化し、営業への引き渡し判断に活用する機能です。メール開封、リンククリック、Webページ閲覧、フォーム送信などのアクションにポイントを付与し、リードの興味・関心度を可視化します。
グレーディングとは、リードの属性(役職・企業規模など)を基準に、自社のターゲットとの適合度を評価する機能です。スコアリングが「行動」を評価するのに対し、グレーディングは「属性」を評価します。A〜Fのグレードでターゲット適合度を判定します。
トラッキングとは、Webサイト訪問者の行動(閲覧ページ、滞在時間、遷移経路など)を追跡し興味・関心度を把握する機能です。トラッキングコードをWebサイトに設置することで、匿名訪問者の行動も追跡できます。
Salesforceとの連携で得られる具体的なメリット
Account EngagementとSalesforce Sales Cloudを連携することで、以下のメリットが得られます。
まず、マーケティングと営業のデータが一元化されます。Account Engagementで取得したリードの行動データがSalesforceの商談・活動履歴と紐づくため、営業担当者はリードがどのコンテンツに興味を持っているかを把握した上でアプローチできます。
次に、リード引き渡しの自動化が可能になります。スコアリングとグレーディングの条件を設定し、一定の基準を満たしたリードを自動的に営業に通知・割り当てできます。これにより、ホットリードを逃さず、タイムリーなフォローが実現します。
さらに、ROI測定が容易になります。マーケティング施策(キャンペーン)と売上を紐づけて分析できるため、どの施策が商談・受注に貢献しているかを可視化できます。
なお、Salesforceを導入していない場合でもAccount Engagementは技術的に利用可能ですが、上記の連携メリットを享受するにはSalesforce Sales Cloudの導入が前提となります。Salesforce未導入の場合は、他のMAツールも含めて比較検討することをおすすめします。
Pardot導入前に決めておくべきこと|要件定義と社内体制
導入前の準備が、導入後の成果を大きく左右します。MA導入から効果が表れ始めるまで一般的に3〜6ヶ月かかるとされており、長期視点での準備と運用が必要です。
以下のチェックリストを活用して、自社の準備状況を確認してください。
【チェックリスト】Pardot導入前の準備チェックリスト
- 導入目的が明確に言語化されている(リード獲得増、商談化率向上、ナーチャリング効率化など)
- KPI(MQL数、商談化率、受注率など)が設定されている
- ターゲット顧客のペルソナが定義されている
- カスタマージャーニー(認知→興味→比較検討→購入)が整理されている
- 運用責任者がアサインされている
- 運用担当者(実務者)がアサインされている
- 営業部門との連携体制(MQL引き渡しルール等)が決まっている
- 配信するコンテンツ(メール、ホワイトペーパー、事例等)の準備計画がある
- Webサイトにフォームやトラッキングコードを設置する技術リソースがある
- 既存のリードデータ(名刺情報、過去問い合わせ等)の移行計画がある
- Salesforce Sales Cloudが導入済み、または導入計画がある
- 予算(ライセンス費用+初期設定費用+運用工数)が確保されている
- 経営層・関係部門の承認が得られている
- 導入後の効果測定方法が決まっている
- 3〜6ヶ月後の成果目標が設定されている
導入目的の明確化とKPI設計
導入目的が曖昧なまま進めると、導入後に「何をもって成功とするか」が判断できません。よくある導入目的としては、リード獲得数の増加、商談化率の向上、ナーチャリング効率化、営業生産性の向上などがあります。
KPIの例としては、MQL(Marketing Qualified Lead)数、MQLから商談への転換率、商談から受注への転換率、メール開封率・クリック率、Webサイトへの流入数などが挙げられます。導入前にベースラインとなる現状数値を把握し、目標値を設定しておくことが重要です。
社内体制の整備:運用担当者とコンテンツ準備
MAツールを導入すれば自動的に成果が出るわけではありません。運用を継続するための人的リソースと、配信するコンテンツの準備が不可欠です。
運用体制としては、最低でも運用責任者(戦略・方針決定)と運用担当者(実務)の2名体制が望ましいです。兼務の場合でも、週あたりの運用工数を確保しておく必要があります。
コンテンツ準備としては、ナーチャリング用のメールシナリオ、ホワイトペーパーや事例資料、セミナー・ウェビナー企画などを導入前に計画しておくことをおすすめします。
Pardot導入の費用と期間|自社実装と支援会社活用の比較
Account Engagementの導入にかかる費用と期間、そして自社実装と支援会社活用のメリット・デメリットを比較します。
費用の内訳:ライセンス費用と初期設定費用
Account Engagementの価格帯は月額150,000円〜(税別)とされています。ただし、版(Edition)、オプション、ユーザー数により大きく変動するため、詳細は公式への問い合わせを推奨します。
参考として、MAツール全体の相場は初期費用が無料〜30万円程度、月額費用が5万円〜15万円程度とされており、Account Engagementは中〜上位の価格帯に位置します。
初期費用としては、ライセンス費用のほかに、初期設定費用(Salesforce連携、トラッキング設定、フォーム作成等)がかかる場合があります。支援会社に依頼する場合は、導入支援費用として別途数十万円〜数百万円がかかるケースもあります。
【比較表】導入形態比較表(自社実装 vs 支援会社活用)
| 項目 | 自社実装 | 支援会社活用 |
|---|---|---|
| 初期費用 | ライセンス費用のみ | ライセンス費用+導入支援費用 |
| 導入期間 | 長くなる傾向(リソース・経験に依存) | 短縮できる可能性あり |
| ノウハウ蓄積 | 社内に蓄積される | 支援会社に依存しやすい |
| 柔軟性 | 自社ペースで進められる | スケジュール調整が必要 |
| リスク | 設定ミス・活用不全のリスクあり | プロの知見でリスク軽減 |
| 推奨ケース | MA運用経験者が社内にいる場合 | 初めてのMA導入・リソース不足の場合 |
初期設定だけ支援会社に依頼し、運用は自社で行うハイブリッド型も選択肢の一つです。自社の状況に応じて検討してください。
導入期間の目安と効果が出るまでの期間
導入期間は、自社実装か支援会社活用か、既存データの移行量、カスタマイズの範囲などにより異なります。一般的には、初期設定から運用開始まで1〜3ヶ月程度を見込むケースが多いです。
重要なのは、MA導入から効果が表れ始めるまで一般的に3〜6ヶ月かかるとされている点です(これはMAツール全般の目安であり、Account Engagement固有のデータではありません)。短期的な成果を期待しすぎず、中長期的な視点で運用を継続することが成功の鍵です。
Pardot導入後に活用が進まない原因と対策
導入後に「使いこなせない」状態に陥る企業には共通のパターンがあります。原因を理解し、対策を講じることで活用不全を防げます。
活用が進まない典型的なパターン
活用不全に陥る典型的なパターンとして、以下が挙げられます。
運用設計の不足: 導入前に「誰が」「何を」「いつ」運用するかが決まっておらず、導入後に放置される。
コンテンツ準備の不足: ナーチャリング用のメールやコンテンツがないため、MAツールを動かせない。
営業との連携不備: MQLの定義や引き渡しルールが決まっておらず、マーケティングと営業が分断されたまま。
KPI・効果測定の欠如: 何をもって成功とするかが不明確で、改善サイクルが回らない。
これらはいずれも、導入前の準備不足に起因するものです。チェックリストを活用して事前に対策しておくことが重要です。
スコアリング活用で商談化率を向上させた事例
スコアリングを活用して成果を上げた事例を紹介します。
あるSaaS企業がPardotスコアリングを導入し、一定点数達成リードのみを営業にパスする運用に変更した結果、商談化率が15%から38%に上昇、営業の受注件数も前年比140%に達した事例があります。
この事例から分かるのは、スコアリングによって「今すぐ客」を見極め、営業リソースを集中させることの効果です。ただし、これは個別事例であり、すべての企業で同等の成果が得られるわけではありません。商材、市場、営業体制などによって成果は異なります。
成功のポイントは、スコアリング基準を営業と合意し、定期的に見直すことです。マーケティング部門だけで基準を決めるのではなく、営業部門と協議して「どのような行動・属性のリードが商談化しやすいか」を定義することが重要です。
まとめ|Pardot導入成功の鍵は要件定義と社内体制の整備
本記事では、Pardot(Account Engagement)導入を検討している方に向けて、導入前の準備から活用までのポイントを解説しました。
重要なポイントを振り返ります。まず、Account EngagementはSalesforceとのシームレス連携が最大の強みであり、Salesforce導入済み企業との親和性が高いツールです。スコアリング、グレーディング、トラッキングなどの機能でリードナーチャリングを効率化できます。
導入にあたっては、機能や料金プランの比較だけでなく、導入目的の明確化、KPI設計、社内体制の整備が成功の前提条件となります。MA導入から効果が表れるまで3〜6ヶ月かかることを踏まえ、中長期的な視点で取り組むことが重要です。
改めて本記事の結論を述べます。Pardot導入を成功させるには、機能理解よりも先に「何を実現したいか」の要件定義と社内体制の整備が重要です。チェックリストを活用して自社の準備状況を確認し、不足している項目があれば導入前に対策してください。準備が整っていない状態での導入は、「使いこなせない」状態を招く原因となります。
自社での導入準備に不安がある場合は、導入支援の専門家に相談することも選択肢の一つです。
