なぜマーケティング組織変革が求められるのか
ずばり、マーケティング組織変革は、戦略設計だけでなくMA/SFA設定と業務BPRを含む実装支援まで見据えた計画で成功します。
AI/デジタルシフトの加速と顧客体験の多様化により、マーケティングは「販促担当」から経営戦略の中枢機能へと移行しています。2025年以降、データ分析とAI活用によってマーケティングが売上・利益を直接左右する存在となり、経営陣はマーケティング組織の強化を最優先課題として認識し始めています。
しかし、多くの企業がマーケティング組織変革に取り組んでいるにもかかわらず、実際に成果を出せているケースは限られています。日本企業の50%が人事変革を推進中ですが、成果があると回答したのは14%のみという調査結果があります(2025年7月Workday Japan調査、HR特化データのためマーケティング組織への直接適用には注意が必要)。この数値は人事変革に関するものですが、マーケティング組織変革でも同様の課題が存在すると考えられます。
この記事で分かること
- マーケティング組織変革が失敗する根本原因と、戦略設計だけでは不十分な理由
- 部門間連携とサイロ化の解消方法、共通KPI設定の具体例
- KGI/KPIツリーの構築方法と経営層への成果説明手法
- 組織構造パターン(集中型・分散型・ハイブリッド型)の選択基準と実装支援の重要性
- 戦略設計と実装支援の両面で組織変革を成功させる実践ガイド
マーケティング組織変革の「成功率14%」の実態と原因
マーケティング組織変革が失敗する根本原因は、戦略設計と現場実行の分断にあります。
日本企業の50%が人事変革を推進中ですが、成果があると回答したのは14%のみという実態があります(2025年7月Workday Japan調査、HR特化データ)。この数値は人事変革に関するものですが、マーケティング組織でも同様の構造的課題が存在します。実際、マーケティング組織では「戦略と現場実行の分断」が39.3%に達しており(2025年Ferret One調査)、戦略レポートを作成しても現場の業務フローやツール設定が伴わず、結果として成果が出ないという失敗パターンが頻発しています。
よくある誤解は、組織図の変更とKPI設定で組織変革が完了すると考えることです。実際には、現場の業務フローとツール設定が伴わなければ機能しません。多くの企業が組織図を書き直し、KPIダッシュボードを作成して「変革完了」と宣言しますが、現場の営業やマーケティング担当者は従来の業務フローのまま動いており、MA/SFAツールも導入されているが活用されていないという状況に陥ります。
戦略レポート提出で終わるコンサルの限界
戦略コンサルティングに依頼すると、詳細な現状分析と戦略レポートが提出されますが、実装段階で大きな壁に直面します。
実装段階での主な障壁は以下の通りです:
- リソース不足: 戦略を実行に移すための人員が社内に不足している
- スキル不足: MA/SFAツールの設定や業務プロセス再設計(BPR)の専門知識がない
- ツール設定の複雑さ: MAツールのシナリオ設計やスコアリング設定、SFAとの連携設定に高度な技術が必要
- 業務BPRの必要性: 既存の業務フローを変更するには、現場の抵抗を乗り越え、新しいプロセスを浸透させる継続的な支援が必要
多くのコンサルティングプロジェクトは戦略レポート提出で終了し、その後の実装は自社で行う必要があります。しかし、戦略を理解していても実装できるリソースやスキルがなければ、結局は「立派な戦略レポート」が棚に並ぶだけで終わってしまいます。
組織図変更とKPI設定だけでは現場が機能しない理由
組織図を変更し、KPIを設定しても、現場の業務フローが変わらなければ組織変革は成功しません。
失敗パターンの具体例:
- 組織図の変更: マーケティング部門を新設し、デマンドジェネレーションチームとコンテンツチームに分割
- KPIの設定: リード獲得数、MQL数、商談化率などのKPIをダッシュボードで可視化
- 現場の実態: 営業とマーケティングは依然として別々に動き、MAツールは導入されているが活用されず、リードの受け渡しルールも曖昧なまま
この失敗パターンでは、「組織図の変更」と「KPI設定」という表面的な変更は完了していますが、現場の業務フローやツール活用が伴っていないため、実際には何も変わっていません。マーケティングチームはリード獲得に注力するものの、営業チームへの引き渡しプロセスが整備されておらず、せっかく獲得したリードが放置されるという事態が発生します。
部門間連携とサイロ化の解消
部門間連携の強化は、マーケティング組織変革の成功に不可欠です。サイロ化とは、部門間で情報共有や連携が不足し、各部門が孤立して機能する状態を指します。
中規模〜大規模マーケティング組織(4名以上)では「チーム間の情報共有・施策連携不足」が43.8%に達しており(2025年Ferret One調査)、また製造業500人規模調査では営業74%、マーケティング64.6%が「両部門連携に課題」と回答しています(2024年頃SalesZine調査、製造業特化データのため他業種への一般化は慎重に行う必要があります)。
この課題を解決するには、共通KPI設定と定期情報共有の実施が効果的です。営業とマーケティングの共通KPI設定企業はわずか26.3%(2024年頃SalesZine調査)ですが、設定することで部門間の乖離を解消し商談化率を向上できます。また、BtoB企業60%以上がマーケティング・営業の定期情報共有を実施しており、CRM(Customer Relationship Management) という顧客関係管理システムを活用して顧客接点を最適化しています(2024-2025年推定)。
営業・マーケティングの共通KPI設定
共通KPI設定は、営業とマーケティングの目標を一致させ、部門間の対立を解消する最も効果的な方法です。
営業とマーケティングの共通KPI設定企業はわずか26.3%(2024年頃SalesZine調査)という現状ですが、共通KPIを設定することで以下のメリットが得られます:
- 目標の一致: 両部門が同じゴール(受注数、売上など)に向かって動く
- 責任の明確化: マーケティングはMQL(Marketing Qualified Lead)の質と量、営業はSQL(Sales Qualified Lead)からの商談化と受注に責任を持つ
- 相互理解の促進: マーケティングは営業の商談プロセスを理解し、営業はマーケティングのリード育成プロセスを理解する
共通KPIの設計例:
- 受注数・売上: 最終的なゴールとして両部門で共有
- MQL数: マーケティング部門が責任を持つ指標
- MQL→SQL転換率: 営業部門が引き渡されたリードの質を評価する指標
- SQL→商談化率: 営業部門が責任を持つ指標
- 商談→受注率: 営業部門の最終的な成果指標
これらのKPIを週次または月次でレビューし、ボトルネックを特定して改善策を講じることで、部門間の連携が強化されます。
定期情報共有とCRM活用による連携強化
BtoB企業60%以上がマーケティング・営業の定期情報共有を実施しており、CRM活用で顧客接点を最適化しています(2024-2025年推定)。
定期情報共有の具体的方法:
- 週次ミーティング: リード獲得状況、MQL数、商談化状況を共有し、次週のアクションを決定
- 月次レビュー: KPIの達成状況をレビューし、改善施策を協議
- CRMでの情報一元管理: リードの行動履歴、商談状況、受注・失注理由をCRMに記録し、両部門がリアルタイムで確認できる状態にする
CRMを活用することで、営業は「このリードはどのコンテンツをダウンロードしたか」「セミナーに参加したか」などの情報を把握でき、マーケティングは「引き渡したリードが商談化したか」「どのリードソースが成約率が高いか」を把握できます。この相互の可視化により、部門間の信頼関係が構築され、連携が強化されます。
成果指標(KGI/KPI)の設定と管理
KGI/KPIの設計は、マーケティング組織変革の成果を測定し、経営層に説明するための基盤です。KGI(Key Goal Indicator) とは、最終成果目標を指し、BtoB マーケティングではROI、LTV、売上貢献額などが該当します。KPI(Key Performance Indicator) とは、プロセス指標を指し、認知・リード獲得・商談化のプロセスを分解して追跡する指標です。
営業とマーケティングの共通KPI設定企業はわずか26.3%(2024年頃SalesZine調査)という現状を踏まえ、共通KPIを設定することの重要性を再度強調します。KGI/KPIを適切に設計し、定期的にレビューすることで、マーケティング組織の成果を可視化し、継続的な改善が可能になります。
【チェックリスト】マーケティング組織変革の実装チェックリスト
- 現状分析の完了(組織構造、業務フロー、ツール活用状況の把握)
- 経営層への変革目的と期待成果の説明
- ターゲット顧客とペルソナの定義
- カスタマージャーニーの設計
- KGI(最終成果目標)の設定(売上貢献額、ROI、LTVなど)
- KPIツリーの構築(KGIから逆算したプロセス指標の設計)
- 営業・マーケティングの共通KPI設定
- 組織構造パターンの選択(集中型・分散型・ハイブリッド型)
- 役割分担の明確化(デマンドジェネレーション、コンテンツ制作、インサイドセールスなど)
- MAツールの選定・導入(または既存ツールの設定見直し)
- SFAツールの選定・導入(または既存ツールの設定見直し)
- MA/SFAの連携設定(リードステータスの自動同期、スコアリング連携など)
- リードステータスの定義(新規リード、育成中、ホットリード、商談化など)
- リードスコアリング設計(行動スコア・属性スコアの配点設定)
- リード受け渡しルールの策定(MQL基準、SQL基準、引き渡しタイミング)
- ステップメールシナリオの設計・実装
- コンテンツ制作体制の構築(担当者、制作スケジュール、承認フロー)
- CRMでの情報一元管理設定(リード行動履歴、商談状況の記録ルール)
- 定期情報共有会の設定(週次ミーティング、月次レビューの実施)
- 業務BPRの実施(現場の業務フローを新しいプロセスに変更)
- 現場担当者への研修・トレーニング(ツール操作、新プロセスの浸透)
- 効果測定の仕組み構築(KPIダッシュボード、レポーティングルール)
- 月次レビューの実施(KPI達成状況の確認、改善施策の協議)
- スコアリング基準の見直し(商談化率・成約率に基づく調整)
- 外部パートナー連携の検討(リソース不足を補完する支援体制)
BtoB企業におけるKGI/KPIツリーの構築
KGIからKPIへのツリー構造を設計することで、施策と成果の因果関係を可視化できます。
KGI/KPIツリーの設計例:
- KGI: 年間売上貢献額 5,000万円
- KPI1: 受注数 50件
- KPI1-1: 商談数 100件
- KPI1-1-1: SQL数 200件
- KPI1-1-1-1: MQL数 400件
- KPI1-1-1-1-1: リード獲得数 2,000件
- KPI1-1-1-1: MQL数 400件
- KPI1-1-1: SQL数 200件
- KPI1-1: 商談数 100件
- KPI1: 受注数 50件
このツリー構造により、「リード獲得数2,000件を達成すれば、最終的に5,000万円の売上貢献が見込める」という因果関係が明確になります。また、各KPIの達成状況をモニタリングすることで、ボトルネックを早期に発見し、改善施策を講じることができます。
経営層への成果説明とROMI測定
マーケティング投資対効果を経営層に説明する際は、ROMI(Return on Marketing Investment) を使用します。ROMIとは、マーケティング投資対効果を測定する指標で、BtoB相場はマーケティング1円あたり3-5円収益と言われています。
ROMIの計算例:
- マーケティング投資額: 500万円(広告費、コンテンツ制作費、ツール費用など)
- マーケティング経由の売上貢献額: 2,000万円
- ROMI = (2,000万円 - 500万円) ÷ 500万円 × 100 = 300%
この数値を経営層に提示することで、マーケティング投資の効果を定量的に示すことができます。また、KGIからKPIへのツリー構造を併せて説明することで、「どの施策がどの成果に貢献したか」という因果関係を明確にし、経営層の理解と継続的な投資を得ることができます。
組織構造パターンと実装支援
組織構造の設計は、企業規模・事業特性・リソースに応じて適切なパターンを選択することが重要です。
BtoBマーケティング組織の改善優先度トップ3は、外部パートナー連携(38.0%)、役割分担構築(37.6%)、営業/他部門連携(37.2%)となっており(2025年調査)、リソース不足を補完するために外部パートナー連携が最優先課題として認識されています。これは、戦略設計だけでなく実装段階での支援が求められていることを示しています。
組織構造パターンの選択基準(集中型・分散型・ハイブリッド型)
組織構造には主に3つのパターンがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
【比較表】組織構造パターン別の適用条件比較表
| パターン | 定義 | メリット | デメリット | 適用条件 | 適用企業例 |
|---|---|---|---|---|---|
| 集中型 | マーケティング機能を1つの部門に集約 | 一元管理で意思決定が速い、リソースの効率的配分、ノウハウの共有が容易 | 事業部ごとの個別ニーズへの対応が遅れる、現場との距離が遠くなる | 単一事業・単一プロダクト、従業員50-300名の成長企業(シリーズA〜B段階) | 単一SaaS製品を提供するスタートアップ |
| 分散型 | 各事業部にマーケティング担当を配置 | 事業部ごとの最適化が可能、現場との距離が近い、意思決定が速い | ノウハウの共有が困難、リソースの重複が発生、全社戦略との乖離リスク | 複数事業部を持つ大企業、事業部ごとに顧客セグメントが大きく異なる | 製造業で複数の製品ラインを持つ企業 |
| ハイブリッド型 | 中央にマーケティング本部を置き、各事業部にもマーケティング担当を配置 | 全社戦略と事業部最適化の両立、ノウハウ共有とローカル対応のバランス | 調整コストが高い、役割分担が曖昧になりやすい | 複数事業部を持ち、全社戦略と事業部最適化の両方が必要な企業 | 複数のSaaS製品を提供し、全社ブランド戦略も重視する企業 |
選択基準:
- 従業員50-300名の成長企業(シリーズA〜B段階): 集中型からスタートし、事業拡大に応じてハイブリッド型に移行する段階的アプローチが現実的
- 複数事業部を持つ企業: ハイブリッド型または分散型を選択し、全社戦略と事業部最適化のバランスを取る
- 単一事業・単一プロダクト: 集中型が最も効率的
MA/SFA設定と業務BPRを含む実装支援の重要性
組織構造を決定した後、実装段階での支援が成功の鍵となります。
BtoBマーケティング組織の改善優先度トップ3で、外部パートナー連携(38.0%)が最も高い理由は、実装段階でのリソース不足とスキル不足を補完する必要があるためです。戦略レポート提出で終わらず、以下の実装支援まで含めることで、組織変革が成功します:
実装支援の具体的内容:
- MA/SFAツールの設定: リードステータス定義、スコアリング設計、シナリオ設定、MA/SFA連携設定を実際に行う
- 業務BPRの実施: 現場の業務フローを新しいプロセスに変更し、現場担当者への研修・トレーニングを実施
- リード受け渡しルールの策定: MQL基準、SQL基準、引き渡しタイミング、通知方法を明確にし、現場で運用できる状態にする
- 効果測定とPDCA: KPIダッシュボードを構築し、月次レビューで改善施策を継続的に実施
外部パートナー連携を活用することで、自社にないスキルやリソースを補完し、戦略設計から実装までを一気通貫で進めることができます。これにより、「戦略レポートを作成したが実装できない」という失敗パターンを回避できます。
戦略設計と実装支援の両面で組織変革を成功させる
マーケティング組織変革は、戦略設計だけでなくMA/SFA設定と業務BPRを含む実装支援まで見据えた計画で成功します。
本記事で解説した要点をまとめます:
- 成功率14%の実態: 日本企業の50%が変革を推進中ですが、成果があると回答したのは14%のみ(HR特化データ)。マーケティング組織でも「戦略と現場実行の分断」が39.3%に達しており、組織図の変更とKPI設定だけでは現場が機能しないという失敗パターンが頻発しています。
- 部門間連携の強化: 営業とマーケティングの共通KPI設定企業はわずか26.3%ですが、設定することで部門間の乖離を解消し商談化率を向上できます。BtoB企業60%以上が定期情報共有を実施しており、CRM活用で顧客接点を最適化しています。
- KGI/KPI設計: KGIからKPIへのツリー構造を設計し、施策と成果の因果関係を可視化します。経営層にはROMI(マーケティング1円あたり3-5円収益)を使って成果を説明します。
- 組織構造パターン: 集中型・分散型・ハイブリッド型の3つがあり、企業規模・事業特性・リソースに応じて選択します。成長企業(シリーズA〜B段階)では集中型からスタートする段階的アプローチが現実的です。
- 実装支援の重要性: BtoBマーケティング組織の改善優先度トップ3は、外部パートナー連携(38.0%)、役割分担構築(37.6%)、営業/他部門連携(37.2%)です。戦略レポート提出で終わらず、MA/SFA設定と業務BPRを含む実装支援まで見据えた計画が成功の鍵です。
次のアクション:
まずは、本記事で提供した【チェックリスト】を使って、自社のマーケティング組織変革の進捗状況を診断してください。特に、「戦略設計」と「実装支援」のどちらが不足しているかを明確にし、必要に応じて外部パートナー連携を検討してください。組織構造パターンの選択、KGI/KPI設計、部門間連携の強化を段階的に進めることで、マーケティング組織が成果を出せる体制を構築できます。
