リードが温まらない企業が直面する現状
リードが温まらないとは何か。リードが温まらない原因の9割は、育成プロセス・データ設計・部門連携のいずれかに問題があり、MA/SFAの設定とオペレーションを見直すことで解決できるのです。
リードナーチャリングとは、獲得したリード(見込み顧客)を段階的に育成し、商談化・受注につなげるプロセスです。しかし、営業部門からリードの温度感の低さを指摘される企業が40.6%に達しており(BtoBマーケティングKPI実態調査2024-2025)、リード育成が機能していない企業が多い実態があります。
さらに、93.2%の企業がリード獲得コストの上昇を実感している(2025年12月実施BtoBマーケティング責任者のナーチャリング実態調査)中で、従来の「多くを集めて売る」モデルから質重視への転換が求められています。リードは獲得できているが育成プロセスが機能せず商談化率が低い、という課題を解決しなければ、コスト増加と成果不足の悪循環に陥ります。
この記事で分かること
- リードが温まらない5つの原因(プロセス・データ・連携・コンテンツ・タイミング)と診断方法
- MA/SFA導入済み企業が陥る活用不全パターンと30項目の診断チェックリスト
- リードスコアリングとセグメント設計の具体的な実装手法(CSV骨格付き設計シート)
- インサイドセールスとマーケティングの連携強化とKPI設計方法
- リード育成プロセス改善のロードマップと段階的アプローチ
リードが温まらない典型的な原因
リードが温まらない典型的な原因は、①育成プロセスの設計不全、②データ品質とターゲティングの問題、③部門間連携とコミュニケーションの欠如、④コンテンツの質の低さ、⑤タイミングの不適切さの5つです。
リード育成が上手くいかない根本原因として、施策がターゲットに刺さっていないが38.5%で最多となっています(BtoBリード育成実態調査2025)。これは、リード獲得施策ばかりに注力し、獲得後の育成プロセス・スコアリング設計・部門間の引き継ぎルールを整備せずにリードを放置してしまう失敗パターンです。リード数を増やすだけでは商談化率は上がらず、質(温度感)と育成プロセスの最適化が必要なのです。
育成プロセスの設計不全
育成プロセスの設計不全とは、リードナーチャリングの戦略や配信計画が立案できず、KPIによるPDCAが回せていない状態を指します。
約55%のBtoB企業が商談創出できる育成戦略や配信計画が立案できない、KPIによるPDCAが回せていないという課題を抱えています。リードを獲得しても、その後どのようなステップで育成するか、どのタイミングでどのようなコンテンツを提供するかが設計されていなければ、リードは放置され、温度感が下がっていきます。
育成プロセス設計の不全は、マーケティングオートメーション(MA)ツールを導入しても設定が不十分で、シナリオやワークフローが構築されていない状態でよく見られます。
データ品質とターゲティングの問題
データ品質とターゲティングの問題とは、リードのデータが不完全または不正確で、施策がターゲットに刺さらない状態を指します。
施策がターゲットに刺さっていないが38.5%で最多の原因となっており、リードの質の観点で理想通りの獲得ができていない企業が48.6%(2024年比7.6ポイント増)に達しています(BtoBリード育成実態調査2025)。また、コンテンツの質が低いという課題が28.8%(2024年比11.7ポイント増)で顕著に悪化しています。
リードのデータが不完全(業種・役職・企業規模などの属性情報が欠落)だと、適切なセグメント分けができず、すべてのリードに同じコンテンツを送ることになります。これでは、ターゲットに刺さる施策を展開できず、リードの温度感は上がりません。
部門間連携とコミュニケーションの欠如
部門間連携とコミュニケーションの欠如とは、マーケティングと営業の間で情報共有やフィードバックが不足している状態を指します。
マーケターの61%がすべてのリードを営業に直接送信していますが、実際に資格のあるリードはわずか27%に過ぎません(営業とマーケティング連携統計2025)。また、チーム間の効果的なコミュニケーションの欠如が38%、マーケティングコンテンツに対する営業の入力不足が27%という調査結果があります(同調査、ただし海外データを含む可能性があるため日本市場との差異に注意)。
マーケティング部門が獲得したリードをすべて営業に渡しても、営業が「質が低い」と判断して対応しなければ、リードは温まりません。部門間で「どのようなリードを営業に渡すか」という基準(リードスコアリング)が合意されていないと、連携が機能しないのです。
MA/SFA導入済み企業が陥る活用不全パターン
MA/SFA導入済み企業が陥る活用不全パターンは、①設定ミス、②データ不備、③運用ルール欠如の3つです。
MAとは、Marketing Automationの略で、マーケティング活動を自動化・効率化するツールです。SFAとは、Sales Force Automationの略で、営業活動を支援・自動化するツールです。しかし、SFA導入企業の約60%が期待した効果が得られていないという調査結果があります(ITR 2023年調査)。また、MAツール導入率は全企業1.5%(9,444社)、上場企業14.6%(3,850社中562社)と低い現状があります(Nexal 2023年5月調査、国内626,003社対象、ただし実装検知ベースのため1-2%の誤差可能性)。
ツールを導入しただけでは効果が出ず、設定・データ整備・運用ルールの3点セットが不可欠なのです。以下のチェックリストで、自社の状況を診断してください。
【チェックリスト】リードナーチャリング診断チェックリスト(原因特定30項目)
育成プロセス設計(10項目)
- リードナーチャリングの目的とゴールが明確に定義されている
- リードの購買ジャーニー(認知→興味→比較検討→決定)をマッピングしている
- 各ステージで提供するコンテンツ(資料・メール・ウェビナー等)を計画している
- MAツールでナーチャリングシナリオ(ワークフロー)を設定している
- 配信頻度とタイミングが適切に設計されている
- リードの反応(開封・クリック・資料DL等)に基づいた分岐シナリオがある
- 育成KPI(開封率・クリック率・商談化率等)を設定している
- KPIを定期的にモニタリングし、PDCAサイクルを回している
- 育成期間(何日間でナーチャリングするか)が設計されている
- 育成プロセスのドキュメント(手順書)が整備されている
データ品質とターゲティング(10項目)
- リードの属性情報(業種・役職・企業規模等)が十分に収集されている
- リードのデータ品質チェック(重複・欠損・誤入力等)を定期的に実施している
- リードをセグメント分け(業種別・役職別・購買ステージ別等)している
- 各セグメントに適したコンテンツを用意している
- ターゲットペルソナが明確に定義されている
- ペルソナごとの課題とニーズを把握している
- コンテンツの質を定期的に見直し、改善している
- リードの行動データ(ページ閲覧・資料DL・メール開封等)を収集している
- 行動データに基づいてリードの関心度を判断している
- データクレンジング(データ整理・統合)を定期的に実施している
部門間連携と運用ルール(10項目)
- マーケティングと営業で「商談化できるリード」の定義を合意している
- リードスコアリング基準を設定し、部門間で共有している
- ホットリード(高スコア)を営業に自動通知する仕組みがある
- 営業がリードに対応した結果(商談化・失注理由等)をマーケにフィードバックしている
- 週次または月次で部門間のミーティングを開催している
- MA/SFAのデータが連携されており、リード情報が一元管理されている
- リード対応の運用ルール(対応期限・担当者等)が明確化されている
- リードに対する初回アプローチのタイミングとチャネル(電話・メール等)が決まっている
- 営業がSFAにデータ入力するルールとインセンティブが設定されている
- マーケティングと営業の共通KPI(商談化率・受注化率等)が設定されている
リードスコアリングとセグメント設計の実践手法
リードスコアリングとセグメント設計の実践手法は、リードの行動や属性に基づいて点数を付け、購買意欲や確度を定量化する手法です。
リードスコアリングとは、リードの行動や属性に基づいて点数を付け、購買意欲や確度を定量化する手法です。ホットリードとは、購買意欲が高く、商談化の可能性が高いと判断されたリードを指します。
リードスコアリング設計では、行動スコア(開封率・クリック率・滞在時間)と属性スコアを組み合わせ、全社共通のホットリード基準を設定することが推奨されます。以下の設計シートを活用して、自社のスコアリング基準を構築してください。
【管理シート】リードスコアリング設計シート(行動・属性スコア+セグメント定義)
スコア種別,項目,条件,配点,備考
行動スコア,メール開封,メールを開封した,5,基本的な関心の表れ
行動スコア,メールクリック,メール内のリンクをクリックした,10,具体的な興味あり
行動スコア,資料ダウンロード,ホワイトペーパーや事例資料をDLした,20,課題認識が明確
行動スコア,価格ページ閲覧,料金・プランページを閲覧した,25,購買検討段階
行動スコア,問い合わせフォーム入力開始,フォームに入力を開始(未送信も含む),15,商談化の可能性
行動スコア,ウェビナー参加,オンラインセミナーに参加した,20,能動的な情報収集
行動スコア,サイト再訪問(週2回以上),1週間に2回以上サイトを訪問,10,継続的な関心
属性スコア,役職:経営者・役員,肩書にCEO・CTO・取締役等が含まれる,30,決裁権あり
属性スコア,役職:部長クラス,肩書に部長・マネージャー等が含まれる,20,影響力あり
属性スコア,役職:担当者クラス,肩書に担当・スタッフ等が含まれる,10,情報収集段階
属性スコア,企業規模:従業員500名以上,大企業,25,予算規模大
属性スコア,企業規模:従業員100-499名,中堅企業,20,ターゲット中核
属性スコア,企業規模:従業員50-99名,中小企業,15,ターゲット周辺
属性スコア,業種:IT・ソフトウェア,自社サービスと親和性高,20,ターゲット業種
属性スコア,業種:製造業,自社サービスと親和性中,10,ターゲット周辺
セグメント定義,ホットリード,行動スコア+属性スコア合計80点以上,商談化優先,即座に営業へ引き渡し
セグメント定義,ウォームリード,行動スコア+属性スコア合計50-79点,育成継続,定期的なナーチャリング
セグメント定義,コールドリード,行動スコア+属性スコア合計49点以下,長期育成,月1回程度の情報提供
計算列の定義:
- 合計スコア = 行動スコアの合計 + 属性スコアの合計
- セグメント = 合計スコアに基づいて「ホットリード」「ウォームリード」「コールドリード」に分類
行動スコアと属性スコアの設計
行動スコアと属性スコアの設計では、リードの行動(開封・クリック・資料DL等)と属性(役職・企業規模・業種等)をそれぞれ点数化します。
(例)行動スコアと属性スコアの配点例
行動スコア:
- メール開封:5点
- 価格ページ閲覧:25点
- 資料ダウンロード:20点
属性スコア:
- 役職が経営者・役員:30点
- 企業規模が500名以上:25点
- 業種がIT・ソフトウェア:20点
※実際の配点は自社の過去の受注データを分析し、受注に至ったリードの共通行動・属性パターンを基に設定することを推奨します。
セグメント定義とシナリオ設計
セグメント定義とシナリオ設計では、リードを合計スコアに基づいて「ホットリード」「ウォームリード」「コールドリード」に分類し、それぞれに適したナーチャリングシナリオを設計します。
ホットリード(合計80点以上): 購買意欲が高く、商談化の可能性が高いリードです。即座に営業に引き渡し、24-48時間以内にアプローチすることが推奨されます。
ウォームリード(合計50-79点): 一定の興味はあるが、まだ商談化には至らないリードです。週1-2回のメール配信や月1回のウェビナー案内など、定期的なナーチャリングを継続します。
コールドリード(合計49点以下): 関心が薄いまたは情報収集段階のリードです。月1回程度の情報提供にとどめ、過度なアプローチは避けます。
インサイドセールスとマーケティングの連携強化とKPI設計
インサイドセールスとマーケティングの連携強化とKPI設計では、部門間で共通のKPIを設定し、データ連携と運用ルールを整備することで、リード育成の効率を高めます。
マーケターの61%がすべてのリードを営業に直接送信していますが、実際に資格のあるリードはわずか27%に過ぎません(営業とマーケティング連携統計2025、ただし海外データを含む可能性があるため日本市場との差異に注意)。また、チーム間の効果的なコミュニケーションの欠如が38%、マーケティングコンテンツに対する営業の入力不足が27%という課題があります(同調査)。
約55%のBtoB企業が商談創出できる育成戦略や配信計画が立案できない、KPIによるPDCAが回せていないという課題を抱えています。これらの課題を解決するには、部門横断KPIの設定とデータ連携が不可欠です。
部門横断KPIの設定と共有
部門横断KPIの設定と共有では、マーケティングと営業で共通のKPI(商談化率・受注化率等)を設定し、定期的にレビューします。
KPI設計はKGI(売上・コンバージョン数)から逆算し、MAでのリードスコア・商談化率・受注化率を部門横断で共有することが推奨されます。具体的には、以下のようなKPIを設定します。
- リード獲得数: マーケティングが獲得するリードの数
- MQL(Marketing Qualified Lead)数: マーケティングが育成し、営業に引き渡すリード数
- 商談化率: MQLから商談に進んだ割合
- 受注化率: 商談から受注に至った割合
- LTV(顧客生涯価値): 受注した顧客の生涯価値
これらのKPIを週次または月次でレビューし、どのステップがボトルネックになっているかを特定します。約55%の企業がKPIによるPDCAが回せていない課題を抱えているため、レビュー会議の定例化が重要です。
データ連携と運用ルールの整備
データ連携と運用ルールの整備では、MA/SFAのデータを自動連携し、リード情報を一元管理する仕組みを構築します。
SFA導入企業の約60%が期待した効果が得られていない(ITR 2023年調査)という現状を踏まえると、ツール導入だけでなく運用改善が不可欠です。ETLツールでデータ連携を実現し、国産ツール(視覚UI改善、日本の営業フロー対応)を優先することが推奨されます。
運用ルールとして、週次入力義務とインセンティブを設定し、提案履歴・失注理由を一元管理して誰でも参照可能にすることが重要です。営業がSFAにデータを入力しなければ、マーケティングはリードの状況を把握できず、適切な育成施策を打てません。
リード育成プロセス改善のロードマップ
リード育成プロセス改善のロードマップは、診断チェックリスト→スコアリング設計→連携強化の3ステップで段階的に進めます。
リードが温まらない原因の9割は、育成プロセス・データ設計・部門連携のいずれかに問題があり、MA/SFAの設定とオペレーションを見直すことで解決できます。リード数を増やすだけでは商談化率は上がらず、質(温度感)と育成プロセスの最適化が必要なのです。
ステップ1:診断チェックリストで現状把握 まず、本記事のリードナーチャリング診断チェックリスト(30項目)を活用して、自社の育成プロセス・データ品質・部門連携の状況を診断します。チェックが入らない項目が多いほど、改善の余地があります。
ステップ2:リードスコアリング設計シートで基準策定 次に、リードスコアリング設計シート(CSV骨格)を基に、自社の行動スコア・属性スコアの配点を設計します。過去の受注データを分析し、受注に至ったリードの共通パターンを特定して配点を決めることが推奨されます。
ステップ3:部門横断KPIと運用ルールで連携強化 最後に、マーケティングと営業で共通のKPI(商談化率・受注化率等)を設定し、週次レビュー会議を定例化します。MA/SFAのデータ連携を実現し、運用ルールを整備することで、リード育成の効率が向上します。
93.2%の企業がリード獲得コストの上昇を実感している中で、従来の「多くを集めて売る」モデルから質重視へ転換が必要です。リード育成プロセス・スコアリング設計・部門連携を改善することで、商談化率を向上させ、コスト効率を改善できるのです。
