インサイドセールス採用が成果につながらない理由
先に答えを言うと、インサイドセールス採用を成功させるには、単に人を増やすのではなく、IS組織の役割設計・採用基準・育成プログラムを一体で整備することで、採用後の立ち上がりを早め、成果につながる体制を構築できます。
SaaS企業を対象とした調査では、2025年の営業職採用においてインサイドセールスが32.4%で最多の採用対象職種となっています。このようにIS人材の需要は高まっていますが、採用しただけでは期待した成果につながらないケースも少なくありません。
この記事で分かること
- インサイドセールス採用市場の動向と採用計画の立て方
- IS人材に求められるスキルと採用基準の設計方法
- 未経験者採用と経験者採用の使い分け
- 採用後の育成体制と組織立ち上げのポイント
「とりあえず営業経験者を採用すればIS組織は立ち上がる」という考えで採用を進めると、IS特有のスキル(仮説構築・データ活用・MA/SFA操作等)が不足し、採用しても成果が出ないケースが多いです。また、採用後の役割定義や育成プログラムが不明確だと、短期離職につながりやすくなります。
インサイドセールス採用の市場動向と採用計画
IS採用市場は拡大傾向にあり、多くの企業が組織拡大に向けた採用を計画しています。SaaS業界を中心にIS人材の需要が高まっており、計画的な採用活動が求められる状況です。
インサイドセールス(IS) とは、電話・メール・オンライン商談などを活用し、非対面で顧客接点を持ちながら商談機会を創出する営業職種です。
SaaS企業を中心に高まるIS採用需要
SaaS業界でISが最も採用ニーズの高い職種となっています。SaaS企業を対象とした調査では、2025年の営業職採用においてインサイドセールスが32.4%で最多の採用対象職種となっています。
この背景には、SaaSビジネスにおけるサブスクリプションモデルの普及があります。継続的な顧客獲得が必要なビジネスモデルでは、効率的にリードを商談化するIS組織の重要性が高まっているのです。
ただし、このデータはSaaS業界を中心とした調査結果であり、製造業やその他業界では採用動向が異なる可能性があります。
IS組織の採用規模と計画の立て方
多くの企業が段階的なIS組織の拡大を計画しています。2025年に採用活動を検討する企業のうち、23.2%が6〜10人、23.0%が11〜30人のインサイドセールス人材採用を予定しています。
採用規模を決める際は、以下の観点を考慮することが重要です。
- 自社の事業計画と売上目標からの逆算
- 現在のリード獲得数と商談化率
- マーケティング施策の拡大計画
- フィールドセールス組織とのバランス
急激な拡大よりも、組織基盤を固めながら段階的に採用規模を拡大するアプローチが成功につながりやすいとされています。
IS人材の採用基準と適性の見極め方
IS人材の採用では、営業経験だけでなくIS特有のスキルと適性を見極めることが重要です。「営業経験者であればIS業務もできる」という考えは誤りであり、IS業務には仮説構築力・データ活用スキル・ツール操作スキルといった特有の能力が求められます。
IS業務に必要なスキルと適性
IS業務で成果を出すためには、以下のスキルが必要です。
仮説構築力: 限られた情報から顧客の課題を推測し、適切なアプローチを設計する能力です。非対面でのコミュニケーションでは、相手の反応から課題を深掘りする力が求められます。
データ活用スキル: MA/SFAに蓄積されたデータを分析し、優先すべきリードや効果的なアプローチタイミングを判断する能力です。
ツール操作スキル: MA(Marketing Automation)やSFA(Sales Force Automation)の操作に習熟し、活動履歴を適切に記録・活用できる能力です。
コミュニケーション能力: 非対面で信頼関係を構築し、相手のニーズを引き出す傾聴力と提案力です。
約9割のSaaS企業が業界未経験者の中途採用を強化しており、インサイドセールスとマーケティングは「成長機会の提供頻度が多い」「育成や教育体制が整っている」という理由で未経験者向けの推奨ポジションとされています。
SDR・BDRの役割に応じた採用基準設計
IS組織を構築する際は、SDRとBDRの役割の違いを理解した上で採用基準を設計することが重要です。
SDR(Sales Development Representative) とは、インバウンドリードに対応し、商談機会を創出するインサイドセールスの役割です。マーケティング施策で獲得したリードに対してアプローチし、商談化を目指します。
BDR(Business Development Representative) とは、アウトバウンドでターゲット企業にアプローチし、新規開拓を行うインサイドセールスの役割です。自らターゲットを選定し、新規接点を創出します。
【比較表】IS採用基準・評価項目一覧
| 評価項目 | SDR向け重視度 | BDR向け重視度 | 評価ポイント |
|---|---|---|---|
| コミュニケーション能力 | ◎ | ◎ | 非対面での傾聴力・提案力 |
| 仮説構築力 | ○ | ◎ | 限られた情報からの課題推測 |
| 粘り強さ・メンタル耐性 | ○ | ◎ | アウトバウンドでの断られ耐性 |
| データ活用スキル | ◎ | ○ | MA/SFAデータの分析・活用 |
| ツール操作への適応力 | ◎ | ○ | MA/SFA操作の習熟 |
| 業界・製品理解への意欲 | ○ | ◎ | 自社製品と業界知識の習得 |
| チームワーク | ◎ | ○ | マーケ・FSとの連携 |
| 数値目標へのコミット | ○ | ◎ | KPI達成への意識 |
インサイドセールスの採用チャネルと採用手法
IS採用で活用される採用チャネルは、求人メディア・リファラル採用・エージェントの組み合わせが一般的です。各チャネルの特性を理解し、自社の状況に合わせて使い分けることが重要です。
リファラル採用とは、社員の紹介によって候補者を採用する手法です。コストが低く、定着率が高い傾向があります。社員が自社のIS業務を理解した上で推薦するため、ミスマッチが起きにくいというメリットがあります。
求人メディアは幅広い母集団形成に有効ですが、IS経験者の採用競争は激しくなっています。エージェントを活用する場合は、IS採用に実績のある担当者を選ぶことで、適切な候補者の紹介を受けやすくなります。
未経験者採用と経験者採用の使い分け
未経験者採用と経験者採用には、それぞれメリット・デメリットがあります。自社の育成体制や組織フェーズに応じて使い分けることが重要です。
約9割のSaaS企業が業界未経験者の中途採用を強化しています。インサイドセールスは育成や教育体制が整っていれば成長しやすいポジションとされており、未経験者採用は有力な選択肢となっています。
未経験者採用のメリット
- 自社の型を一から教えられる
- 採用コストが比較的抑えられる
- 柔軟な思考で業務に取り組める
未経験者採用の注意点
- 育成に一定期間が必要
- 育成体制が整っていないと成果が出にくい
- 早期離職リスクへの対策が必要
経験者採用のメリット
- 即戦力として期待できる
- 育成コストが抑えられる
- 他社のナレッジを持ち込める
経験者採用の注意点
- 採用競争が激しく、コストが高い
- 前職のやり方に固執する可能性
- 自社の文化・プロセスへの適応が必要
育成体制が整っている企業では未経験者採用が有効な選択肢となります。一方、IS組織の立ち上げ期でロールモデルが必要な場合は、経験者を核として採用する戦略も検討に値します。
採用後の育成体制と組織立ち上げの設計
IS採用を成功させるには、採用活動と並行して育成体制と組織設計を整備することが重要です。採用後の立ち上がりを早め、早期離職を防ぐためには、オンボーディングプログラムと明確な役割定義が不可欠です。
【チェックリスト】IS採用準備チェックリスト
- IS組織のミッション・役割が明文化されている
- SDR/BDRの役割分担が決まっている
- IS組織のKPIが設定されている
- マーケティング部門との連携ルールがある
- フィールドセールスへの引き渡し基準が明確
- MA/SFAの導入・設定が完了している
- リードの定義・スコアリング基準が設定されている
- トークスクリプト・メールテンプレートが用意されている
- オンボーディングプログラムが設計されている
- 研修カリキュラムが整備されている
- OJT担当者(メンター)がアサインされている
- 商材・業界の勉強資料が整備されている
- 日次・週次の活動報告フォーマットがある
- 1on1ミーティングの仕組みが設計されている
- 評価基準・昇格基準が明確になっている
- キャリアパスが提示できる状態にある
- 採用基準・評価シートが作成されている
- 面接官のトレーニングが完了している
- 採用スケジュールが策定されている
- 受け入れ体制(座席・PC・アカウント)の準備がある
IS組織の役割設計とKPI設定
IS組織を立ち上げる際は、まず組織のミッションとKPIを明確にすることが重要です。KPIが曖昧なまま採用を進めると、採用した人材の評価基準が不明確になり、モチベーション低下や早期離職につながるリスクがあります。
IS組織のKPIは、活動量指標と成果指標の両面から設計します。
活動量指標の例
- 架電数・メール送信数
- 有効コンタクト数
- アポイント設定数
成果指標の例
- 商談化率
- 有効商談数
- パイプライン貢献額
活動量だけを追いかけると質が下がり、成果指標だけを見ると活動が停滞するリスクがあります。両面のバランスを取りながら、組織フェーズに応じて重点を調整していくことが重要です。
オンボーディングと育成プログラムの構築
採用後の早期離職を防ぐためには、計画的なオンボーディングプログラムの設計が不可欠です。入社後の不安を解消し、早期に成果を出せる環境を整えることで、定着率の向上が期待できます。
オンボーディングプログラムには、以下の要素を含めることが推奨されます。
入社初週
- 会社・事業・組織の理解
- 商材・業界知識のインプット
- MA/SFAの操作研修
入社1ヶ月目
- ロールプレイングによる実践研修
- メンター同席でのOJT
- 少数リードへの架電・メール送信
入社2-3ヶ月目
- 独り立ちに向けた段階的な業務拡大
- 定期的なフィードバック面談
- KPI達成に向けたコーチング
育成や教育体制が整っている企業ではIS採用が成功しやすいとされています。採用活動と並行して育成プログラムを整備することで、採用後の立ち上がりを早めることができます。
まとめ|IS採用成功の鍵は役割設計と育成体制にある
インサイドセールス採用の市場動向、採用基準の設計、採用チャネルの活用法、そして採用後の育成体制について解説しました。
IS採用では「営業経験者を採用すれば組織は立ち上がる」という考えは通用しません。IS業務には仮説構築力・データ活用スキル・ツール操作スキルといった特有の能力が求められ、これらを見極める採用基準と、採用後に育成する体制の整備が必要です。
改めて強調すると、インサイドセールス採用を成功させるには、単に人を増やすのではなく、IS組織の役割設計・採用基準・育成プログラムを一体で整備することで、採用後の立ち上がりを早め、成果につながる体制を構築できます。
具体的なアクションとしては、まずIS組織の役割設計とKPI設定から着手し、それに基づいた採用基準を策定することをおすすめします。採用活動と並行して育成プログラムの整備を進めることで、採用した人材が早期に成果を出せる環境が整います。
