共通KPI設計とは|なぜ部門間KPI統一とMA/SFA実装が必要なのか
最も重要なのは、共通KPI設計の成功は、KPI設計だけでなく、MA/SFA連携設定でKPI自動集計・可視化を実装し、パッケージMAツールの限界を見極めてカスタム開発を組み合わせることで実現するという点です。
KPI(Key Performance Indicator) とは、目標達成度を測定する重要業績評価指標です。マーケティング・営業・ISの各部門で設定され、KGI達成のために管理されます。KGI(Key Goal Indicator) とは、企業の最終目標を示す重要目標達成指標で、年間売上高や利益率など事業全体のゴールを数値化したものです。
2025年カスタマーサクセス市場調査では、KPIを設定している企業は94.7%、特に定めていない・KPI未設定は5.3%という結果が出ています。つまり、ほとんどの企業がKPI設定自体は行っているのです。しかし、KPIを設定しているだけでは不十分で、部門間でKPIが統一されておらず、全体最適ができていない企業が多いのが現状です。
マーケティング部門、営業部門、インサイドセールス部門がそれぞれ独自のKPIで動いている場合、リード育成から商談化、成約までのプロセスが分断され、どこに問題があるのか特定できません。さらに、MA/SFAツールを導入していても、部門ごとにバラバラのデータ管理をしており、手動でExcel集計している企業が多いのが実態です。
この記事で分かること
- 部門別KPIがバラバラだと何が起こるか(全体最適できない、データ連携が進まない等)
- 共通KPI設計の4ステップ(KGI設定→KSF特定→KPI決定→KPIツリー作成)とSMART原則
- 富士フイルムのRevOps事例とABMスコアリング基準の具体例
- MA/SFA連携でのKPI自動集計・ダッシュボード可視化の実装方法
- マーケ・営業・IS共通KPI設計テンプレートとMA/SFA連携設定チェックリスト
部門別KPIがバラバラの問題点|なぜ共通KPI設計が難しいのか
各部門が独自のKPIで動くと、全体最適ができず、リード育成から商談化までのプロセスが見えなくなります。よくある誤解として、「部門ごとに適切なKPIを設計すれば成果が出る」という考え方がありますが、これは失敗パターンです。部門ごとに最適化されたKPIは、各部門の局所最適を生み出すだけで、全社的な売上・利益の最大化には繋がりません。
マーケティング、営業、インサイドセールスの各部門が、それぞれ異なるKPIで評価されている場合、部門間の連携が弱くなり、リード育成→商談化→成約というプロセスが分断されてしまいます。さらに、MA/SFAツールを導入していても、KPI自動集計・可視化が不十分で、手動でExcel集計している企業が多いのが実態です。
マーケ・営業・ISで異なるKPI|全体最適ができない
マーケティング部門はリード獲得数やWebサイト流入数、営業部門は受注率や商談化率、インサイドセールス部門は架電数やアポイント率といった独自のKPIで動いている場合、以下のような問題が発生します。
マーケティング部門が大量のリードを獲得しても、その質が低ければ営業部門の商談化率は上がりません。一方で、営業部門が受注率だけを追求すると、質の高いリードだけを選別し、育成段階のリードを放置してしまいます。インサイドセールス部門が架電数を追求すると、リードの温度感に関係なく機械的にアプローチし、かえって離脱を招く可能性があります。
これらの部門が連携せず、それぞれのKPIだけを追求すると、リード獲得から成約までのプロセス全体が最適化されず、結果的に売上・利益が伸び悩みます。
KPI測定が手動・Excel地獄|MA/SFA活用不足
MA/SFAツールを導入していても、部門ごとにバラバラのデータ管理をしており、KPI自動集計ができていない企業が多いのが現状です。各部門がExcelで手動集計を行っている場合、データの鮮度が低く、リアルタイムな意思決定ができません。
手動集計では、データの集計ミスや入力ミスが発生しやすく、正確なKPI測定ができないリスクがあります。さらに、集計作業に時間がかかるため、改善施策の立案・実行が遅れ、機会損失につながります。
MA/SFA連携により、リード情報、商談情報、受注情報を一元管理し、共通KPI(リード数、商談化率、受注率)をリアルタイムで可視化するダッシュボードを構築することで、この問題を解決できます。
共通KPI設計のフレームワーク|KGIから逆算する4ステップ
共通KPI設計は、KGI設定、KSF特定、KPI決定、KPIツリー作成の4ステップで実施します。共通KPI設計は4ステップで実施されます: (1)KGI設定(年間売上10億円等)、(2)KSF特定(3-5つに絞込)、(3)KPI決定(月間MQL獲得数等)、(4)KPIツリー作成という流れです。
KPI設計では、SMART原則を満たすことが重要です。SMART原則とは、KPI設定の5原則で、Specific(明確性)、Measurable(計量性)、Achievable(達成可能性)、Relevant(関連性)、Time-bound(時間明確性)の5要素を満たす必要があります。これにより、測定可能で達成可能なKPIを設定できます。
KPIツリーとは、KGIを起点にKSF・KPIを階層構造で整理したフレームワークです。全体目標と部門KPIの関係性を可視化し、改善優先順位を明確にすることができます。
【テンプレート】マーケ・営業・IS共通KPI設計テンプレート
以下のテンプレートをコピーして、自社の状況に合わせて記入してください。
【KGI(最終目標)】
- 年間売上: 10億円
- 営業利益率: 15%
- 期間: 2026年度
【KSF(重要成功要因)】
1. 新規顧客獲得(売上の60%を占める)
2. 既存顧客維持(解約率5%以下)
3. 顧客単価向上(アップセル・クロスセル)
【KPI(部門横断指標)】
KSF1: 新規顧客獲得
- 月間MQL獲得数: 200件(マーケ)
- 商談化率: 30%(IS)
- 成約率: 20%(営業)
KSF2: 既存顧客維持
- 継続率: 95%(カスタマーサクセス)
- NPS(顧客推奨度): 40以上(全部門)
KSF3: 顧客単価向上
- アップセル率: 15%(営業・CS)
- クロスセル率: 10%(営業・CS)
【KPIツリー】
KGI: 年間売上10億円
└─ KSF1: 新規顧客獲得
├─ KPI: 月間MQL獲得数200件
├─ KPI: 商談化率30%
└─ KPI: 成約率20%
└─ KSF2: 既存顧客維持
├─ KPI: 継続率95%
└─ KPI: NPS 40以上
└─ KSF3: 顧客単価向上
├─ KPI: アップセル率15%
└─ KPI: クロスセル率10%
ステップ1: KGI設定|全社の最終目標を数値化する
KGI(Key Goal Indicator) とは、企業の最終目標を示す重要目標達成指標です。年間売上高や利益率など事業全体のゴールを数値化したものです。
KGI設定では、全部門が共通で目指すゴールを明確にします。例えば、「年間売上10億円」「営業利益率15%」「顧客数1,000社」などの具体的な数値目標を設定します。このKGIは、経営層と現場が共通言語で議論できる指標となります。
KGIは企業の最終的な成果を示すため、全部門がこの目標を理解し、自部門の活動がどのようにKGI達成に貢献するかを認識することが重要です。
ステップ2: KSF特定|成功要因を3-5つに絞る
KSF(Key Success Factor) とは、KGI達成のための重要成功要因です。新規顧客獲得、既存顧客維持など3-5つに絞り込みます。
KSF特定では、KGI達成のために最も重要な要因を3-5つに絞り込みます。例えば、「新規顧客獲得」「既存顧客維持」「顧客単価向上」などです。KSFを多く設定しすぎると焦点がぼやけるため、3-5つに絞ることが重要です。
KSFは、部門横断で影響を与える要因を選ぶことがポイントです。例えば、「新規顧客獲得」はマーケティング、インサイドセールス、営業の全部門が関与します。このように、複数部門が協力してKSFを達成する体制を構築します。
ステップ3: KPI決定|部門横断でKPIを設定する
KSFごとにKPIを設定します。例えば、KSF「新規顧客獲得」に対しては、「月間MQL獲得数」「商談化率」「成約率」といった部門横断KPIを設定します。
マーケティング部門は月間MQL獲得数、インサイドセールス部門は商談化率、営業部門は成約率といった形で、各部門が共通のゴールに向けて役割を分担します。これにより、部門間の連携が強化され、リード獲得から成約までのプロセス全体が最適化されます。
KPI設定では、SMART原則(Specific: 明確性、Measurable: 計量性、Achievable: 達成可能性、Relevant: 関連性、Time-bound: 時間明確性)を満たすことが重要です。これにより、測定可能で達成可能なKPIを設定できます。
ステップ4: KPIツリー作成|全体目標と部門KPIの関係を可視化
KPIツリーとは、KGIを起点にKSF・KPIを階層構造で整理したフレームワークです。全体目標と部門KPIの関係性を可視化することで、全部門が全体目標とのつながりを理解できます。
KPIツリーを作成することで、改善優先順位が明確になります。例えば、KGI「年間売上10億円」を達成するために、KSF「新規顧客獲得」のKPI「商談化率30%」が現在20%しかない場合、この改善が最優先となることが可視化されます。
KPIツリーは、経営層と現場が共通言語で議論するためのツールとしても活用できます。全体目標と部門KPIのつながりを可視化することで、各部門の活動が全社の目標達成にどのように貢献しているかを理解できます。
共通KPI設計の成功事例|RevOpsとABMスコアリングの実践
共通KPI設計の成功事例として、富士フイルムホールディングスのRevOps導入事例と、ABMスコアリング基準の実践例を紹介します。
RevOps(Revenue Operations) とは、マーケティング・営業・カスタマーサクセスを統合し、共通KPIとプロセス標準化で売上最大化を図る組織戦略です。RevOps導入が加速しており、マーケティング・営業・カスタマーサクセスを統合し、共通KPI(リード質・受注率・LTV)で全社最適化を図る企業が増加しています(2025-2026年トレンド)。
富士フイルムのRevOps導入事例|複数事業部のマーケ基盤統一
富士フイルムホールディングスはRevOpsで複数事業部マーケティング基盤を統一し、共通KPI(リード質・受注率)設定により顧客情報サイロ化を解消、全社アプローチを実現しました。
この事例では、複数事業部がそれぞれ独自のマーケティング基盤を持っていたため、顧客情報が事業部ごとにサイロ化し、全社での顧客アプローチができていませんでした。RevOps導入により、マーケティング基盤を統一し、共通KPI(リード質・受注率)を設定したことで、顧客情報サイロ化を解消し、全社でのアプローチが可能になりました。
ただし、この事例は企業ブログ由来のため第三者検証はされておらず、具体的なROI数値も非公開です。自社で適用する際は、独自に効果測定を行うことが重要です。
ABMスコアリング基準の実践例
ABM(Account-Based Marketing)スコアリングでは、アカウントレベルKPI(エンゲージメントスコア、パイプライン貢献額、契約更新率)を設定し、ターゲット企業に集中投資する手法が主流化しています。
ABMスコアリング基準の例として、企業規模30点、業界適合性25点でターゲット選定し、エンゲージメントスコア・パイプライン貢献額・契約更新率をアカウントレベルで測定する方法があります。
例えば、企業規模が大きいほど高得点(30点満点)、自社の商材と親和性の高い業界ほど高得点(25点満点)といった形でスコアリングを行います。そして、エンゲージメントスコア(Webサイト訪問、資料ダウンロード等の行動量)、パイプライン貢献額(商談化した際の見込み売上)、契約更新率(既存顧客の場合)をアカウントレベルで測定します。
ただし、このABMスコアリング基準は2026年予測記事の例示であり業界標準ではありません。自社の商材・ターゲットに応じた独自のスコアリング基準を設定することが重要です。
MA/SFA連携でのKPI自動集計・可視化実装方法
MA/SFA連携設定により、KPI自動集計・ダッシュボード可視化を実現できます。MA/SFA/CRMツールでデータ一元管理し、共通KPI(リード数、商談化率、受注率)をリアルタイム可視化するダッシュボードを構築することで、手動Excel集計から脱却し、リアルタイムな意思決定が可能になります。
SLA(Service Level Agreement) とは、部門間のサービス品質基準を定めた合意です。RevOpsでリード引継ぎ基準や対応時間を明確化するために使用されます。
【チェックリスト】MA/SFA連携KPI自動集計設定チェックリスト
- MA/SFA/CRMの3ツールが選定済み
- データ連携方式の決定(API連携 or ネイティブ統合)
- リード情報のデータ項目定義と標準化
- 商談情報のデータ項目定義と標準化
- 受注情報のデータ項目定義と標準化
- MA→SFAのリード引継ぎルール設定(MQL基準)
- SFA→営業のリード引継ぎルール設定(SQL基準)
- SLA設定(リード受領後の対応時間基準)
- 共通KPIの定義(リード数、商談化率、受注率等)
- ダッシュボード設計(表示項目、更新頻度)
- ダッシュボード構築(MA/SFA/CRMいずれかのツールで実装)
- データ連携テスト(MA→SFA→CRMの連携確認)
- KPI自動集計テスト(ダッシュボードの数値確認)
- 部門横断会議でのダッシュボード共有ルール策定
- 定期レビュー体制の構築(週次 or 月次)
- KPI未達時のアラート設定
- データ品質チェック体制の構築
- 運用マニュアルの作成
- 担当者向けトレーニングの実施
- 運用開始後のPDCAサイクル設定
データ連携設定|MA/SFA/CRMでデータ一元管理
MA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援)、CRM(顧客管理)のデータ連携設定により、リード情報、商談情報、受注情報を一元管理する体制を構築します。
データ連携方式には、API連携とネイティブ統合の2種類があります。API連携は、各ツールのAPIを使って定期的にデータを同期する方式で、異なるベンダーのツール間でも連携が可能です。ネイティブ統合は、同一ベンダーのツール間での連携で、リアルタイムなデータ同期が可能です。
データ連携設定では、リード情報、商談情報、受注情報のデータ項目を標準化し、各ツール間で一貫したデータ管理を行うことが重要です。例えば、「リード獲得日」「商談化日」「成約日」といった日付情報を統一フォーマットで管理することで、正確なKPI測定が可能になります。
ダッシュボード構築|共通KPIをリアルタイム可視化
リアルタイムダッシュボードで共通KPI(リード数、商談化率、受注率等)を可視化することで、全部門が同じダッシュボードを見て状況を把握できます。
ダッシュボードでは、KGI(年間売上)、KSF(新規顧客獲得等)、KPI(月間MQL獲得数、商談化率、成約率)を階層構造で表示し、全体目標と部門KPIのつながりを可視化します。これにより、経営層は全体の進捗を把握でき、現場は自部門のKPIが全体目標にどのように貢献しているかを理解できます。
ダッシュボードの更新頻度は、リアルタイム更新が理想ですが、ツールの性能やデータ量によっては1時間ごと、1日ごとの更新でも十分な場合があります。自社の状況に合わせて最適な更新頻度を設定することが重要です。
SLA設定|部門間のリード引継ぎ基準を明確化
SLA(Service Level Agreement) とは、部門間のサービス品質基準を定めた合意です。マーケから営業へのリード引継ぎ基準(MQL→SQL)を明確化し、対応時間のSLA設定(リード受領後24時間以内に架電等)を行います。
SLA設定により、部門間連携が強化されます。例えば、「マーケティング部門がMQL(マーケティング適格リード)と判定したリードは、24時間以内にインサイドセールス部門が架電する」というSLAを設定することで、リードへの対応スピードが向上し、商談化率の改善が期待できます。
SLA設定では、部門間で合意形成を行うことが重要です。一方的にSLAを設定するのではなく、各部門の現状の業務負荷やリソースを考慮した上で、達成可能なSLAを設定することが成功の鍵となります。
まとめ|共通KPI設計はMA/SFA実装まで完了させることで成果が出る
共通KPI設計の成功は、KPI設計だけでなく、MA/SFA連携設定でKPI自動集計・可視化を実装し、パッケージMAツールの限界を見極めてカスタム開発を組み合わせることで実現します。
部門ごとに適切なKPIを設計すれば成果が出ると考え、MA/SFA実装設定や部門間のKPI統一を後回しにすると、結局KPI測定が手動のままで、部門間連携が進まない失敗パターンに陥ります。この失敗パターンを避けるためには、KPI設計と並行してMA/SFA実装を進めることが不可欠です。
具体的には、まずKGIから逆算してKPI設計を行い(4ステップ: KGI設定→KSF特定→KPI決定→KPIツリー作成)、次にMA/SFA連携設定でKPI自動集計・ダッシュボード可視化を実装します。そして、部門横断会議でダッシュボードを共有し、定期的なレビューとPDCAサイクルを回すことで、運用定着を図ります。
読者の次のアクションとしては、まず自社のKGI(年間売上等)を明確にし、KSFを3-5つに絞り込み、部門横断KPIを設定してください。その上で、MA/SFA連携設定チェックリストを活用して、データ連携設定、ダッシュボード構築、SLA設定を順次進めていきましょう。過度な期待を煽るつもりはありませんが、KPI設計から実装まで一気通貫で完了させることで、部門間連携が強化され、全体最適が実現できます。
