ATSを「採用マーケティング基盤」として活用すべき理由
多くの方が悩むATSを活用した採用マーケティング。結論は、ATSは単なる応募者管理ツールではなく、採用マーケティングの基盤として活用することで、データに基づいた採用改善と安定した母集団形成が実現できるということです。
ATS(Applicant Tracking System) とは、採用管理システムのことで、求人案件管理から応募者情報一元管理、選考プロセス管理、内定者管理までを統合的に行うシステムです。採用マーケティング(採用MA) とは、採用活動にマーケティング手法を適用し、見込み候補者の発掘・育成・応募誘導を行う戦略的採用活動を指します。
日本の有効求人倍率は1.26倍(2025年3月、前月比+0.02ポイント)で売り手市場が継続しています(厚生労働省)。この状況下で、求人広告に依存した採用活動では、採用単価の高止まりや応募数の不安定さが課題となっています。
日本のATS市場規模は350億円へ急拡大しており、ATS導入率は36.6%に達しています(2025年時点、民間調査)。この数値からも、多くの企業が採用効率化にATSを活用し始めていることがわかります。
この記事で分かること
- ATSと採用マーケティングの基礎知識
- 従来の採用活動とATS×採用マーケティングの違い
- ATSを採用マーケティング基盤として活用する具体的な方法
- ATS×採用マーケティング導入の実践ステップ
ATSと採用マーケティングの基礎知識
ATSと採用マーケティングは、それぞれ独立した概念ですが、組み合わせることで採用活動の効率と効果を大きく向上させることができます。
採用ファネルとは、応募獲得→選考→内定の採用プロセスを指し、マーケティングのファネル概念を採用に適用したものです。採用マーケティングでは、このファネルを意識してデータに基づいた改善を行います。
ATSの主要機能と役割
ATSの主要機能は、求人管理・応募者管理・選考プロセス管理の3つに大別されます。
具体的には、以下の機能を備えているケースが一般的です。
- 求人案件の一元管理: 複数部署での求人募集や複数の求人媒体への掲載を一元管理
- 応募者情報管理: 履歴書・職務経歴書、スキル、選考履歴などの一括管理
- 選考状況の可視化: 選考フローの進捗状況や各段階での通過率を把握
- 内定者管理: 内定後の手続きまで一連のプロセスを管理
ATSは約400以上の求人媒体と連携可能なシステムも存在しており、複数媒体への一括掲載や応募者情報の自動取り込みにより、採用業務の効率化が図れます。
採用マーケティングとは何か
採用マーケティングは、従来の「求人広告を出して応募を待つ」受動的なアプローチから、「見込み候補者を発掘・育成し、応募を促す」能動的なアプローチへの転換を意味します。
具体的には、以下のような活動が含まれます。
- 採用オウンドメディアの運営
- SNSを活用した企業ブランディング
- タレントプールの構築と継続的なコミュニケーション
- 採用データの分析と施策改善
採用マーケティングの考え方を取り入れることで、求人広告費に依存しない安定した母集団形成が可能になります。
従来の採用活動とATS×採用マーケティングの違い
従来の求人広告依存型採用と、ATS×採用マーケティング活用型では、採用活動の考え方と実行方法が大きく異なります。
よくある失敗パターンとして、ATSを「応募が来た後の管理ツール」としてのみ使い、採用マーケティング視点での集客施策・効果測定を行わないケースがあります。この考え方では、求人広告費に依存した非効率な採用活動から抜け出すことができません。
【比較表】従来の採用活動とATS×採用マーケティングの違い比較表
| 観点 | 従来の採用活動 | ATS×採用マーケティング |
|---|---|---|
| 集客方法 | 求人広告への依存 | 複数チャネルの組み合わせ |
| 候補者管理 | Excel・メールでの分散管理 | ATSによる一元管理 |
| 効果測定 | 応募数・採用数のみ | ファネル全体のコンバージョン分析 |
| 母集団形成 | 都度の広告出稿 | タレントプールの継続活用 |
| 改善サイクル | 感覚的な判断 | データに基づくPDCA |
| コスト構造 | 変動費(広告費)中心 | 固定費(ツール)+最適化された変動費 |
| スケーラビリティ | 採用数に比例してコスト増 | 仕組み化による効率化が可能 |
求人広告依存型採用の課題
求人広告に依存した採用活動では、以下のような課題が生じやすいです。
- 採用単価の高止まり: 媒体費用が年々上昇し、採用コストが増加
- 応募数の不安定さ: 広告出稿時期に依存し、計画的な採用が困難
- 候補者情報の蓄積不足: 不採用となった候補者情報が活用されない
- 効果測定の困難さ: どの媒体・施策が効果的か判断しにくい
売り手市場が継続する中、求人広告だけに頼った採用活動では競争力を維持することが難しくなっています。
ATS活用で実現するデータドリブン採用
ATSを採用マーケティングの基盤として活用することで、データに基づいた採用改善が可能になります。
タレントプールとは、過去応募者や潜在候補者の情報を蓄積し、将来の採用活動に活用するデータベースです。ATSにタレントプール機能があれば、一度接点を持った候補者に継続的にアプローチできます。
具体的には、以下のようなデータ活用が可能です。
- 媒体別・職種別の応募率と採用コストの可視化
- 選考ステップごとの通過率分析
- 候補者の流入経路と採用結果の相関分析
- タレントプールからの再アプローチ効果測定
ATSを採用マーケティング基盤として活用する方法
ATSを採用マーケティングの基盤として活用するには、求人媒体連携、データ活用、効果測定の3つの観点で設計することが重要です。
RPO(採用プロセスアウトソーシング) とは、採用業務を外部委託するサービスです。ATSと組み合わせて活用されることが多く、ツールと専門人材の掛け合わせニーズが高まっています。
求人媒体連携による集客の効率化
ATSと求人媒体の連携により、複数媒体への求人掲載と応募者管理を効率化できます。
ATSは約400以上の求人媒体と連携可能なシステムも存在しており、以下のような効率化が実現できます。
- 複数媒体への一括掲載による工数削減
- 応募者情報の自動取り込みによる入力作業の軽減
- 媒体別の応募数・採用率の自動集計
2025年7月にリリースされたATS連動サービスの例として、HITO-Linkエージェント(パーソルイノベーション)は8万件の求人データベースを提供し、人材紹介会社の開拓負担軽減に寄与しています。このように、ATS連動による効率化の選択肢は増えています。
採用データの活用と効果測定
ATSに蓄積されたデータを活用し、採用活動の効果を測定・改善することが、データドリブン採用の核心です。
具体的なKPI例として、以下の指標が挙げられます。
- 候補者獲得単価(CPA): 1応募あたりにかかったコスト
- 選考通過率: 各ステップでの通過率
- 採用コンバージョン率: 応募から採用までの転換率
- 媒体別ROI: 各媒体への投資対効果
ATSのダッシュボード機能を活用すれば、これらの指標をリアルタイムで把握し、施策の改善につなげることができます。
ATS×採用マーケティング導入の実践ステップ
ATS×採用マーケティングを導入する際は、段階的なステップで進めることが推奨されます。以下のチェックリストを活用して、導入準備を進めてください。
【チェックリスト】ATS×採用マーケティング導入チェックリスト
- 現状の採用課題を整理している
- 採用目標(人数・職種・時期)を明確にしている
- 現在利用している求人媒体を棚卸ししている
- ATSに求める機能要件を定義している
- 予算(初期費用・月額費用)を確保している
- 導入・運用の担当者をアサインしている
- 既存の応募者データの移行方針を決めている
- 連携したい求人媒体を特定している
- 効果測定のKPIを設定している
- 運用ルール(入力ルール・権限設定)を策定している
- 面接官・関係者への周知計画を立てている
- タレントプール活用の方針を検討している
- RPO活用の要否を判断している
- 導入後のレビュー時期を設定している
導入検討時のコスト目安
ATSの導入コストは、機能や規模によって幅があります。
BtoB企業向けATSの月額料金相場は5万円〜12万円程度(2025年時点の公開プランベース)とされています。ただし、実運用コストはカスタム開発費や連携費により変動するため、この数値は目安として捉え、実際の導入時は複数サービスの見積もりを取得することを推奨します。
小規模企業向けには、より低価格のプランを提供しているサービスも存在するため、自社の採用規模に合ったプラン選択が重要です。
運用体制の構築とRPO活用
ATSを導入しても、運用体制が整っていなければ効果を発揮できません。
運用体制構築のポイントは以下の通りです。
- 担当者の明確化: ATS運用の主担当者を決め、データ入力・分析の責任を持たせる
- 運用ルールの策定: 応募者ステータスの更新ルール、面接評価の入力基準などを標準化
- 定期的なレビュー: 週次・月次でデータを確認し、改善施策を検討する
リソースが限られる場合は、RPOの活用も選択肢となります。ツールと専門人材の組み合わせにより、効果的な採用活動を実現している企業も増えています。
まとめ:ATSを採用マーケティング基盤に変える
本記事では、ATSを採用マーケティングの基盤として活用する方法を解説しました。
重要なポイントを整理します。
- 売り手市場(有効求人倍率1.26倍)が継続し、求人広告依存の採用活動では限界がある
- ATS市場規模は350億円へ急拡大、導入率は36.6%と関心が高まっている
- ATSを「応募後の管理ツール」としてのみ使うのではなく、採用マーケティング基盤として活用することが重要
- データに基づいた効果測定と改善サイクルを回すことで、採用効率を向上できる
- 導入時はチェックリストを活用し、運用体制の構築まで計画的に進める
ATSは単なる応募者管理ツールではなく、採用マーケティングの基盤として活用することで、データに基づいた採用改善と安定した母集団形成が実現できます。本記事のチェックリストを活用して、自社の採用活動の見直しを始めてみてください。
