広告ROIを正しく計算できていないBtoB企業の実態
多くの人が見落としがちですが、広告ROIを正しく計算するには、Webコンバージョン(資料請求等)だけでなく、MA/SFA連携により商談・受注までのオフラインコンバージョンを含めて計測することで、データに基づいた広告投資判断が可能になります。
ROI(Return on Investment) とは、投資利益率のことで、投下したコストに対して得られた利益の比率を示す指標です。広告ROIは広告投資に対する利益率を測定し、広告効果を評価するために使用されます。
BtoB企業330社を対象とした調査によると、年間Web広告予算は「500万円以上」が主流ですが、「配分基準を設けていない企業」の51.2%が「ROIを測定していない」状態にあることが報告されています。さらに、広告経由リードの商談化率をそもそも測定していない企業は60.5%と非常に高い割合を占めています。
つまり、多くのBtoB企業が広告費を投下しながら、その投資対効果を正確に把握できていない状況にあるのです。
この記事で分かること
- 広告ROIの定義と計算式、ROASやCPAとの違い
- BtoB企業向けの広告ROI計算方法(商談・受注を含めた計算式)
- ROI・ROAS・CPAの使い分けと比較
- MA/SFA連携による広告ROI計測の自動化方法
- 広告投資判断に必要な中間指標の計測方法
広告ROIとは|ROASやCPAとの違いを整理する
広告ROIは、広告投資に対する利益の割合を示す指標であり、ROASやCPAとは評価軸が異なります。これらの違いを正しく理解することが、適切な広告効果測定の第一歩です。
BtoB企業311社を対象とした調査(2024年12月実施)では、2025年度Web広告で最も重視する指標として費用対効果(ROAS)が57.0%、CV数/CVRが41.0%、CTRが39.0%という結果が報告されています。ROASを重視する企業が過半数を占める一方で、利益ベースのROIを正確に計測できている企業はさらに限られているのが現状です。
ROAS(Return On Advertising Spend) とは、広告費用対効果のことで、広告経由の売上を広告費で割った指標です。売上ベースで評価するため、原価や営業コストを考慮しません。
CPA(Cost Per Acquisition) とは、顧客獲得単価のことで、1件のリード(または商談・受注)を獲得するためにかかった広告費用を示します。
BtoBビジネスでは、リード獲得から商談、受注までのプロセスが長く、営業コストも発生するため、売上ベースのROASだけでなく、利益ベースのROIを計測することが重要です。
ROIとROASの計算式と使い分け
ROIとROASは、それぞれ以下の計算式で算出します。
ROI(投資利益率)の計算式:
ROI(%)=(利益 − 投資額)÷ 投資額 × 100
ROAS(広告費用対効果)の計算式:
ROAS(%)= 広告経由売上 ÷ 広告費 × 100
ROIは利益ベース、ROASは売上ベースで評価するため、同じ広告施策でも結果が大きく異なります。たとえば、広告費100万円で売上500万円を達成した場合、ROASは500%となりますが、粗利率が30%であれば利益は150万円となり、ROIは50%にとどまります。
BtoBビジネスでは原価や営業コストがかかるため、ROASだけで広告効果を判断すると、実際には赤字の施策を黒字と誤認するリスクがあります。広告投資の継続・拡大を判断する際は、利益ベースのROIを基準にすることが重要です。
BtoB向け広告ROI計算式|商談・受注を含めた計算方法
BtoB企業の広告ROI計算では、Webコンバージョン(資料請求・問い合わせ)だけでなく、その先の商談化率・受注率・平均受注単価を含めて利益を算出する必要があります。
BtoBマーケ担当者326名を対象とした調査では、目標CPA(リード獲得単価)は「5,000〜10,000円未満」が21.8%で最多、実際のCPAも「5,000〜10,000円未満」が21.2%で最多という結果が報告されています。また、広告経由リードの商談化率の目安は「11〜20%」がボリュームゾーンである一方、「5%未満」が18.6%、「5〜10%」が16.3%と低水準の企業も多いことがわかっています。
これらの数値は業種・商材・運用体制によって大きく変動するため、あくまで目安として捉え、自社の実績に基づいてROIを計算することが重要です。
【計算式】広告ROI計算式(BtoB向け)
計算式:
広告ROI(%)=(広告経由の利益 − 広告費)÷ 広告費 × 100
広告経由の利益 = 獲得リード数 × 商談化率 × 受注率 × 平均受注単価 × 粗利率
変数の説明:
- 獲得リード数: 広告経由で獲得した問い合わせ・資料請求の件数
- 商談化率: 獲得リードのうち営業商談に進んだ割合(目安: 11〜20%がボリュームゾーン)
- 受注率: 商談のうち受注に至った割合
- 平均受注単価: 1件あたりの平均受注金額
- 粗利率: 売上から原価を差し引いた粗利益の割合
- 広告費: 広告にかかった総費用(媒体費、運用費等)
(例)月額広告費50万円で運用した場合
- 獲得リード数: 50件(CPA 10,000円)
- 商談化率: 15%(商談数: 7.5件)
- 受注率: 30%(受注数: 2.25件)
- 平均受注単価: 100万円
- 粗利率: 40%
- 広告経由の利益: 2.25件 × 100万円 × 40% = 90万円
- 広告ROI: (90万円 − 50万円)÷ 50万円 × 100 = 80% ※実際の成果は業種・単価・運用体制により大きく変動します
広告ROI計算に必要な中間指標
広告ROIを正確に計算するには、CPC(クリック単価)からCPA(リード獲得単価)、商談CPA、受注CPAまでの階層構造を把握し、各段階の指標を計測する必要があります。
商談化率とは、獲得したリードのうち、営業商談に進んだ割合を示す指標です。BtoB広告のROI計算において必須の中間指標となります。
LTV(Life Time Value) とは、顧客生涯価値のことで、1顧客から得られる累計利益を示します。SaaS等のサブスクリプションモデルでは、初回受注だけでなくLTVを含めてROIを評価することが重要です。
BtoB向けGoogle広告のクリック単価(日本市場)は2019年から37%上昇し、2025年時点の平均CPCは403円と報告されています。CPCの上昇に伴い、CPAも高騰傾向にあるため、商談化率や受注率の改善によるROI向上がより重要になっています。
各指標の計測には、広告のUTMパラメータとMA/SFAのデータを連携させ、リードソース別に追跡できる体制を構築することが必要です。
ROI・ROAS・CPAの比較と使い分け
ROI・ROAS・CPAは、それぞれ異なる観点から広告効果を評価する指標です。BtoB企業では、これらを組み合わせて総合的に判断することが重要です。
2025年度のWeb広告運用における課題として、「費用対効果の向上」が47.2%で最多、「質の高いリード獲得」が46.2%、「リード獲得単価の低下」が30.5%という結果が報告されています。費用対効果を重視する企業が多い一方で、ROI・ROAS・CPAの違いを正しく理解し、使い分けられている企業は限られているのが現状です。
【比較表】ROI・ROAS・CPA指標比較表
| 指標 | 計算式 | 評価軸 | 長所 | 短所 | BtoBでの適用場面 |
|---|---|---|---|---|---|
| ROI | (利益−投資額)÷投資額×100 | 利益ベース | 原価・コストを考慮した正確な投資効果を評価 | 利益の算出に複数のデータが必要 | 広告投資の継続・拡大判断 |
| ROAS | 売上÷広告費×100 | 売上ベース | 計算が簡単、短期的な効果測定に向く | 原価・営業コストを考慮しない | 広告媒体間の比較、短期効果測定 |
| CPA | 広告費÷獲得数 | コストベース | リード獲得効率を直感的に把握 | 獲得後の質(商談化率等)を反映しない | リード獲得施策の効率比較 |
よくある失敗パターンは、広告ROIをWebコンバージョン(資料請求・問い合わせ)までで計算し、その先の商談・受注への貢献を把握しないまま広告投資判断をしてしまうことです。この考え方は誤りであり、BtoBでは商談・受注までを含めたROI計算が重要です。
CPAを下げることがROI改善の最善策と考える企業も多いですが、商談化率・受注率・受注単価の向上の方がROIへのインパクトが大きいケースがあります。CPAの最適化と並行して、リードの質やナーチャリング施策の改善にも取り組むことが効果的です。
MA/SFA連携による広告ROI計測の自動化
広告ROIを継続的に計測・改善するには、MA/SFA連携により広告パラメータから商談・受注までのデータを一気通貫で追跡できる体制を構築することが有効です。
前述のとおり、広告経由リードの商談化率をそもそも測定していない企業は60.5%と非常に高い割合を占めています。この状態では、広告投資が商談・受注にどれだけ貢献しているかを把握できず、データに基づいた投資判断ができません。Webコンバージョン止まりの計測では、正しいROI判断ができないのです。
MA/SFA連携を構築すれば、リードソース別・キャンペーン別の商談化率・受注率を自動で集計でき、広告ROIの計測を効率化できます。配分基準を設けてチャネル別にROIを追う体制があるだけで、未測定企業の多数派から抜け出すことができます。
広告→リード→商談のデータ連携フロー
広告から商談・受注までのデータを一気通貫で追跡するには、以下の流れでMA/SFA連携を構築します。
UTMパラメータの設計: 広告URLにUTMパラメータ(source、medium、campaign等)を設定し、流入元を識別できるようにする
MAへのリード取り込み: フォーム送信時にUTMパラメータをMAに取り込み、リードソースとキャンペーン情報を紐付ける
リードスコアリング: MAでリードの属性・行動をスコアリングし、商談見込みの高いリードを判定する
SFAへの引き渡し: スコアが一定基準を超えたリードをSFAに連携し、営業がフォローできる状態にする
商談・受注の記録: SFAで商談の進捗、受注金額を記録し、リードソースとの紐付けを維持する
ROIの逆算: SFAの商談・受注データからリードソース別の売上・利益を集計し、広告費と対比してROIを算出する
この連携を構築することで、「どの広告施策が商談・受注に貢献しているか」を可視化でき、広告予算の最適配分が可能になります。
まとめ|広告ROI計算を商談・受注まで拡張する
本記事では、BtoB企業向けの広告ROI計算方法と、MA/SFA連携による計測自動化について解説しました。
重要なポイントを振り返ります。
- ROI・ROAS・CPAの違い: ROIは利益ベース、ROASは売上ベース、CPAはコストベースで評価。BtoBでは利益ベースのROI計算が重要
- BtoB向けROI計算式: 獲得リード数 × 商談化率 × 受注率 × 平均受注単価 × 粗利率で広告経由の利益を算出
- 中間指標の計測: CPA、商談化率、受注率などの中間指標を計測し、ボトルネックを特定することがROI改善の鍵
- MA/SFA連携: UTMパラメータからSFAまでデータを連携し、商談・受注への貢献を可視化する
広告ROIを正しく計算するには、Webコンバージョン(資料請求等)だけでなく、MA/SFA連携により商談・受注までのオフラインコンバージョンを含めて計測することが重要です。これにより、データに基づいた広告投資判断が可能になります。
まずは現状の計測範囲を確認し、商談・受注までのデータ連携が構築できているかを点検してみてください。配分基準を設けてROIを計測する体制を整えることが、広告投資の最適化への第一歩です。
