ECプラットフォームの刷新を検討しているけれど、選択肢が多すぎて分からない...
B2BまたはEC事業の担当者にとって、ECプラットフォームの選定は重要な意思決定です。「グローバル展開を見据えたい」「AIを活用したパーソナライゼーションを実現したい」と考えても、「Salesforce Commerce Cloudは何が違うのか」「自社に合っているのか」と悩む担当者は少なくありません。
この記事では、Salesforce Commerce Cloudの概要、主要機能、B2C/B2Bの違い、Salesforce他製品との連携メリット、導入事例と検討ポイントまで、実践的な情報を解説します。
この記事のポイント:
- Salesforce Commerce Cloudは、クラウド型SaaS ECプラットフォームで、AI(Einstein)を標準搭載
- B2C・B2B両対応で、2024年には統合プラットフォーム(ユニファイドコマース)を発表
- グローバル展開(多言語・複数通貨対応)、ヘッドレスコマースに強み
- Salesforce他製品(Service Cloud・Marketing Cloud等)との連携で顧客データを一元化
- 料金はGMVの2%/ユーザー/月で、エンタープライズ向け(中~大手企業、高単価商材に適している)
1. Salesforce Commerce Cloudとは(概要と位置づけ)
(1) クラウド型SaaS ECプラットフォームの定義
Salesforce Commerce Cloudは、Salesforceが提供するクラウド型SaaS ECプラットフォームです。
主な特徴:
- SaaS(Software as a Service): サーバー管理不要で、クラウド経由で利用できる
- AI(Einstein)標準搭載: プロダクトレコメンデーション、プレディクティブソート、検索パーソナライズを自動化
- B2C・B2B両対応: 一般消費者向けECと企業間取引の両方に対応
- グローバル対応: 世界84カ国で7,300以上のECサイトが稼働(2024年時点)
稼働実績:
- 99.99%の稼働率で20億人以上の買い物客の取引を支える
- 日本でも約1年半で40サイトが導入(ユニクロ、資生堂、ワコール等)
(2) 旧名称(Demandware)からの経緯
Salesforce Commerce Cloudは、もともと「Demandware」という名称のECプラットフォームでした。
経緯:
- 2016年にSalesforceがDemandwareを買収
- 「Salesforce Commerce Cloud」にリブランディング
- Salesforceの他製品(CRM、Service Cloud、Marketing Cloud等)との統合が進む
(3) 2024年の次世代Commerce Cloud発表(ユニファイドコマース)
2024年9月、Salesforceは次世代Commerce Cloudを発表しました。
ユニファイドコマースとは:
- B2C、DTC(Direct to Consumer)、B2Bコマース、注文管理、決済を統合したプラットフォーム
- チャネル(Web、アプリ、実店舗等)をまたいで一貫したコマース体験を提供
新機能(2024年):
- Agentforceエージェント: AIエージェントによる自動化支援
- Merchant(マーチャント支援): ストアフロント管理を自動化
- Buyer(購入者支援): 購入プロセスを最適化
- Personal Shopper(パーソナルショッパー): パーソナライズされたショッピング体験を提供
- In-store Inventory Planning: リアルタイム在庫データと予測で実店舗在庫をWebサイトに表示
2. Commerce Cloudの主要機能とAI活用
(1) Einstein AIによるパーソナライゼーション(レコメンデーション・検索最適化)
Commerce CloudはAI(Einstein)を標準搭載しており、パーソナライズされたコマース体験を自動化します。
Einsteinの主要機能:
- プロダクトレコメンデーション: 顧客の閲覧履歴・購買履歴に基づき、最適な商品を自動提案
- プレディクティブソート: 顧客ごとに商品表示順を最適化し、コンバージョン率を向上
- 検索パーソナライズ: 検索結果を顧客の関心に合わせてカスタマイズ
メリット:
- コンバージョン率の向上
- 顧客体験の向上(顧客が欲しい商品を素早く見つけられる)
- 運用コスト削減(手動でのレコメンデーション設定が不要)
(2) グローバル展開機能(多言語・複数通貨対応)
Commerce Cloudは、グローバル展開を前提とした機能を備えています。
グローバル対応:
- 多言語対応: サイトを複数言語で展開可能
- 複数通貨対応: 各国の通貨で価格表示・決済可能
- 新ブランドサイトへの横展開: テンプレートを活用して、新サイトを効率的に立ち上げ
メリット:
- グローバルサイトや新ブランドサイトへの横展開を効率化
- 海外市場への進出をスムーズに実現
導入事例:
- 富士フイルム: スマートフォン向けECサイト構築後、マレーシア・シンガポールへ海外展開
(3) ヘッドレスコマースとAPIの柔軟性
Commerce Cloudは、ヘッドレスコマースに対応しています。
ヘッドレスコマースとは:
- フロントエンド(顧客が見る画面)とバックエンド(システム)を分離
- APIで接続し、柔軟なコマース体験を創出
メリット:
- 独自のフロントエンドを構築可能
- モバイルアプリ、IoTデバイス等、多様なチャネルでECを展開できる
- テンプレートや構成可能ストアフロントを活用して、開発期間を短縮
(4) 2024年追加のAgentforceエージェント(Merchant・Buyer・Personal Shopper)
2024年に導入されたAgentforceエージェントは、AIによる自動化を強化します。
Agentforceエージェントの種類:
- Merchant(マーチャント支援): ストアフロントの管理を自動化し、運用工数を削減
- Buyer(購入者支援): 購入プロセスを最適化し、カート放棄率を低減
- Personal Shopper(パーソナルショッパー): パーソナライズされたショッピング体験を提供
※2024年9月発表の新機能は段階的なリリースの可能性があり、利用可能時期は公式サイトで確認してください。
3. B2C CommerceとB2B Commerceの違い
(1) B2C Commerce:一般消費者向けEC機能
B2C Commerceは、一般消費者向けECサイトに必要な機能を提供します。
主な機能:
- 商品カタログ管理、検索、レコメンデーション
- カート、チェックアウトフロー、決済
- プロモーション、クーポン、ポイント管理
- 会員管理、マイページ
特徴:
- 保存済のカートやチェックアウトフローの最適化など、世界中で実績のあるベストプラクティスを活用
- コンバージョン率向上を重視
(2) B2B Commerce:企業間取引向け機能(複雑な価格設定・承認フロー等)
B2B Commerceは、企業間取引に特化した機能を提供します。
主な機能:
- 複雑な価格設定: 顧客企業ごとの価格、数量割引、契約価格
- 承認フロー: 購入申請の承認ワークフロー
- 見積管理: 見積作成、承認、注文への変換
- 複数アカウント管理: 親会社・子会社などの階層構造に対応
- 在庫管理・納期管理: リアルタイム在庫表示、納期回答
特徴:
- B2B特有の複雑な商習慣に対応
- 購買担当者の業務効率化
(3) 統合プラットフォームによる両対応の強み
Commerce Cloudは、B2CとB2Bの両方を1つのプラットフォームで提供します。
統合のメリット:
- B2CとB2Bの両方を展開する企業が、1つのプラットフォームで管理できる
- 顧客データを一元化し、営業・マーケティング・サポートで活用
- 2024年発表の次世代Commerce Cloudでは、統合がさらに強化
4. Salesforce他製品との連携メリット
(1) Service Cloudとの連携(カスタマーサポート一元化)
Commerce CloudとService Cloud(カスタマーサポートツール)を連携できます。
連携メリット:
- 顧客の購買履歴・問い合わせ履歴を一元管理
- サポート担当者が購買状況を参照しながら対応可能
- 問い合わせ対応の品質向上と時間短縮
(2) Marketing Cloudとの連携(顧客データ一元化・マーケティング最適化)
Commerce CloudとMarketing Cloud(マーケティングオートメーション)を連携できます。
連携メリット:
- 顧客の購買履歴・行動データをMarketing Cloudに取り込み
- パーソナライズされたメールマーケティング、広告配信
- マーケティング施策の効果測定と最適化
(3) 統合されたCRMによる顧客体験向上
Commerce Cloudは、Salesforce CRMと統合されています。
統合のメリット:
- 営業・マーケティング・カスタマーサポート・ECサイトの顧客データを一元化
- 部署をまたいで顧客情報を共有し、一貫した顧客体験を提供
- 営業担当者がECサイトでの購買履歴を参照し、提案に活かす
5. 導入事例と導入検討時のポイント
(1) 日本での導入実績(ユニクロ、資生堂、ワコール等40サイト)
日本でも約1年半で40サイトが導入されています(2024年時点)。
主要な導入企業:
- ユニクロ
- 資生堂
- ワコール
- TSI(東京スタイル)
共通点:
- グローバル展開を目指す中~大手企業
- 高単価商材を扱う企業
- ブランド価値を重視する企業
(2) 富士フイルムの海外展開事例(マレーシア・シンガポール)
富士フイルムは、Commerce Cloudを活用して海外展開を実現しました。
導入背景:
- スマートフォン向けECサイト構築
- 海外市場(マレーシア、シンガポール)への進出
導入効果:
- 多言語・複数通貨対応により、海外展開をスムーズに実現
- グローバル対応の強みを活用
※導入事例の効果は企業規模・業種により異なります。
(3) 料金体系(GMVの2%/ユーザー/月)と導入コスト
Commerce Cloudの料金体系は、GMV(流通取引総額)ベースです。
料金:
- GMVの2%/ユーザー/月(年間契約が必要)
- アクセス課金のため、客単価が低い場合はコストが見合わない可能性がある
注意点:
- 海外決済方法への対応には、カートリッジ(部品)の組み込みが必要で、追加開発コストが発生する可能性がある
- 機能が豊富な分、導入・運用には専門知識が必要で、学習コストや開発リソースが必要
※料金体系は変更される可能性があるため、具体的な見積もりは公式サイトで確認してください。
(4) 向いている企業(グローバル展開、中~大手、高単価商材)
Commerce Cloudが向いている企業は以下の通りです。
向いている企業:
- グローバル展開を目指す中~大手企業
- 高単価商材を扱う企業(客単価が高い)
- Salesforceの他製品(CRM、Marketing Cloud、Service Cloud等)をすでに利用している企業
- AI機能(Einstein)を活用してコンバージョン率を向上させたい企業
- ヘッドレスコマースで独自のフロントエンドを構築したい企業
向いていない可能性がある企業:
- 小規模ECサイト(アクセス数が少ない)
- 低単価商材を大量に販売する企業(GMV課金のため、コストが見合わない可能性)
- 導入・運用の専門知識・リソースがない企業
6. まとめ:Commerce Cloudが向いている企業とは
Salesforce Commerce Cloudは、AI(Einstein)を標準搭載し、グローバル展開に強みを持つエンタープライズ向けECプラットフォームです。B2C・B2B両対応で、2024年には統合プラットフォーム(ユニファイドコマース)を発表し、さらに進化を続けています。
成功させるポイント:
- 目的を明確にする: グローバル展開か、AI活用か、Salesforce他製品との連携か、目的を明確にする
- 料金体系を確認: GMVの2%/ユーザー/月で、自社のビジネスモデルに合うか検証
- 導入体制を整備: 専門知識を持つパートナー企業の活用、社内リソースの確保
- 段階的に導入: 小規模で試して効果を測定してから本格展開
次のアクション:
- 自社のEC戦略を整理する(グローバル展開、AI活用等)
- Commerce Cloudの公式サイトで最新情報を確認する
- Salesforce公式またはパートナー企業にデモ・見積もりを依頼する
- 導入事例(ユニクロ、資生堂、富士フイルム等)を参考にする
Salesforce Commerce Cloudを適切に活用し、顧客体験の向上と売上拡大を実現しましょう。
※この記事は2025年12月時点の情報です。Salesforce Commerce Cloudの機能・料金は変更される可能性があるため、導入時は公式サイトで最新情報を確認してください。
