営業担当者からセールスマネージャーへ昇進したけれど、何から始めればいいか分からない...
B2B企業で営業実績を積み、セールスマネージャー(営業課長・営業部長等)に昇進した方の多くが、「プレイヤーとしては成果を出せたが、マネージャーとして何をすべきか分からない」という壁に直面します。「チーム目標はどう設定する?」「メンバー育成はどうやる?」「自分も売るべき?それとも育成に専念?」といった疑問は尽きません。
この記事では、セールスマネージャーの役割と求められるスキル、プレイヤーとの違い、陥りやすい失敗パターンと対処法を解説します。
この記事のポイント:
- セールスマネージャーは売上管理だけでなく、人材育成・戦略立案・モチベーション管理が主要業務
- プレイヤーとマネージャーは全く異なるスキルセットが求められる(個人成績→チーム成績、自分で売る→メンバーに売らせる)
- 求められるスキルはリーダーシップ・コーチング力・データ分析力・戦略立案力の4つ
- よくある失敗パターンはプレイングマネージャー化・マイクロマネジメント・非現実的な目標設定
- トッププレイヤーが優秀なマネージャーになれない理由はマインドセット転換の難しさ
セールスマネージャーとは|営業チームを統率する管理職の役割
セールスマネージャーは、営業チームの最高責任者として、部署やチームを統率し、売上管理・人材育成・戦略立案を担当する管理職です。プレイヤー(個人営業担当者)とは異なり、チーム全体の成果を最大化することが最終目標となります。
(1) セールスマネージャーの定義と位置付け
セールスマネージャーは、以下の責任を担います:
チーム全体の売上目標達成:
- 個人売上ではなく、チーム全体の売上・受注件数・成約率等の目標管理
- 目標未達時の原因分析と改善施策の立案・実行
- 経営層への報告・提案
メンバーの育成・指導:
- 各メンバーの長所・短所を見極め、個別指導
- 1on1(1対1の面談)による定期的なフィードバック
- 研修機会の提供・スキル開発の支援
営業戦略の立案・実行:
- 市場分析・競合分析に基づく営業戦略の設計
- 営業プロセス・オペレーションの構築・改善
- 新規ツール(SFA・CRM等)の導入・活用
(2) 企業規模・業種別のマネージャー像の違い
セールスマネージャーの役割は、企業規模・業種・成長フェーズによって大きく異なります:
| 企業規模 | マネージャー像 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 小規模企業(従業員30名以下) | プレイングマネージャー | 自ら営業活動を行いながら、少数のメンバーを指導 |
| 中堅企業(従業員30-500名) | チームマネージャー | 営業チーム(5-15名)の目標管理・育成・戦略立案 |
| 大企業(従業員500名以上) | 営業部長・営業本部長 | 複数チームの統括、経営戦略への関与、予算管理 |
※この記事では、中堅企業のチームマネージャー(営業課長・マネージャー職)を中心に解説します。
セールスマネージャーの主要業務|売上管理・人材育成・戦略立案の5つの柱
セールスマネージャーの主要業務は、以下の5つに分類されます(出典: Mazrica, 2024年)。
(1) 目標設定と売上管理|チーム目標の設計とKPI管理
主な業務:
- チーム全体の売上目標・受注件数・新規顧客獲得数等の設定
- 各メンバーへの個別目標の割り当て(スキル・経験に応じた調整)
- KPI(重要業績評価指標)の設定と進捗管理
- 週次・月次での実績確認と目標との乖離分析
重要なポイント:
- 非現実的な目標設定はチーム全体のモチベーション低下につながる
- 各メンバーのスキル・経験・担当エリアを考慮した個別目標設定が重要
- 目標未達時は原因を分析し、改善施策を速やかに実行
(2) 営業戦略の立案と構築|市場分析・競合分析・アプローチ設計
主な業務:
- 市場動向・競合他社の分析
- 自社製品・サービスの強み・弱みの把握
- ターゲット顧客の明確化(企業規模・業種・課題別)
- 営業アプローチの設計(新規開拓・既存顧客深耕・パートナー連携等)
重要なポイント:
- プレイヤー時代の「勘と経験」から、データに基づく戦略立案へ転換
- 競合他社の動向を把握し、差別化ポイントを明確化
- 営業戦略はチーム全体に共有し、実行可能な施策に落とし込む
(3) 人材育成とメンバー指導|1on1・研修機会の提供・スキル開発
主な業務:
- 1on1(1対1の面談)の定期実施(週次または月次)
- 各メンバーの商談同行・ロールプレイによる実践指導
- 研修機会の提供(社内研修・外部セミナー・オンライン学習等)
- 商談プロセス・提案書・プレゼン資料のレビュー・フィードバック
重要なポイント:
- 各メンバーの長所・短所を見極め、個別にモチベーションを与える方法を見出す
- 画一的な指導ではなく、個別対応が効果的(出典: Cyzen, 2024年)
- トッププレイヤーの成功パターンをチーム全体に共有・横展開
(4) モチベーション管理|個別対応・強化と動機付け
主な業務:
- 各メンバーのモチベーション状態の把握
- 目標達成時の称賛・インセンティブ設計
- 目標未達時の励まし・改善支援
- チーム全体の一体感醸成(定例会議・チームイベント等)
重要なポイント:
- メンバーによってモチベーション要因は異なる(金銭的報酬・承認・成長機会等)
- 個別対応を怠ると、メンバーの成長が停滞し、チーム全体の成果に影響
- 定期的な1on1でメンバーの状態を把握し、早期に問題を察知
(5) 営業プロセスの検証と改善|データ分析・オペレーション最適化
主な業務:
- SFA(営業支援システム)・CRM(顧客関係管理)を活用した営業活動の可視化
- リード獲得から受注までのプロセス分析(どこでボトルネックが発生しているか)
- 成約率・商談化率・リードタイム等のKPI分析
- 営業プロセス・オペレーションの改善施策の立案・実行
重要なポイント:
- データ分析力が2024年以降、セールスマネージャーに求められるスキルとして重視されている(出典: eセールスマネージャー、2024年)
- SFA・CRMを活用し、「感覚」ではなく「データ」に基づく改善施策を実行
- 営業プロセス全体を俯瞰し、ボトルネックを特定・解消
セールスマネージャーに求められるスキル|リーダーシップ・コーチング・データ分析
セールスマネージャーには、プレイヤーとは異なるスキルセットが求められます。
(1) リーダーシップ|チームを牽引し、ビジョンを示す力
主なスキル:
- チーム全体のビジョン・目標を明確に示す
- メンバーを鼓舞し、困難な状況でもチームを牽引
- 意思決定力(目標未達時の改善策、新規施策の採用等)
- 経営層への報告・提案・交渉
習得方法:
- リーダーシップ研修・マネジメント研修の受講
- 他部門の優秀なマネージャーとの情報交換
- 書籍・オンライン学習(例: 「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」等)
(2) コーチング・育成力|メンバーの長所を見極め、個別指導
主なスキル:
- 各メンバーの長所・短所の見極め
- 1on1での効果的なフィードバック(傾聴・質問・承認)
- 目標設定の支援(SMARTゴール設定等)
- 商談同行による実践的な指導
習得方法:
- コーチング研修の受講
- 1on1の定期実施(週次または月次)による実践
- メンバーとの信頼関係構築(心理的安全性の確保)
(3) データ分析力|SFA・CRMを活用した営業活動の可視化
主なスキル:
- SFA・CRMの活用(営業活動の記録・分析)
- KPI設定・測定・分析(売上・受注率・商談化率等)
- 営業プロセスのボトルネック特定
- データに基づく改善施策の立案
習得方法:
- SFA・CRM(例: Salesforce、eセールスマネージャー、HubSpot等)の公式トレーニング受講
- 営業データの可視化(ダッシュボード作成・レポート作成)
- データ分析ツール(Excel、BIツール等)の活用スキル習得
(4) 戦略立案・プロセス設計力|営業プロセス全体の設計・改善
主なスキル:
- 市場分析・競合分析
- 営業戦略の立案(ターゲット顧客・アプローチ方法・差別化ポイント)
- 営業プロセス設計(リード獲得→商談化→受注→継続取引)
- 営業ツール(SFA・CRM・MA等)の選定・導入
習得方法:
- 営業戦略立案の書籍・セミナー受講
- 他社の成功事例・ベストプラクティスの研究
- セールスマネジメントモデルの活用(体系的なスキル習得)
プレイヤーとマネージャーの違い|マインドセット転換の重要性
セールスマネージャーに求められるのは、プレイヤー時代とは全く異なるマインドセット(考え方・価値観)です。
(1) 個人成績からチーム成績へ|評価基準の転換
プレイヤー時代:
- 評価基準: 個人の売上・受注件数・成約率
- 目標: 自分の目標達成
- 関心: 自分の商談・顧客
マネージャーとして:
- 評価基準: チーム全体の売上・受注件数・成約率
- 目標: チーム全体の目標達成
- 関心: チーム全体の営業活動・メンバーの成長
マインドセット転換のポイント:
- 自分の成績ではなく、チーム全体の成績を最優先
- 自分が売るよりも、メンバーが売れるように支援することが重要
- 「自分が一番売れる」という意識から、「チームで最大の成果を出す」という意識へ
(2) 「自分で売る」から「メンバーに売らせる」へ
プレイヤー時代:
- 自分で顧客と商談し、自分で受注する
- 個人のスキル・経験・人脈が成果を左右
- 時間の使い方: 商談・提案書作成・顧客対応
マネージャーとして:
- メンバーに商談させ、メンバーが受注できるように支援
- チーム全体のスキル・プロセス・ツールが成果を左右
- 時間の使い方: 1on1・戦略立案・プロセス改善・データ分析
マインドセット転換のポイント:
- 自分が売るのではなく、メンバーが売れる仕組みを作る
- メンバーの商談同行・フィードバックに時間を使う
- プレイヤー時代の成功パターンをチーム全体に横展開
(3) トッププレイヤーが優秀なマネージャーになれない理由
「トッププレイヤーが優秀なマネージャーになれない」という課題は、多くの企業で見られます(出典: Sherpa Works, 2024年)。
理由:
- スキルセットの違い: プレイヤーとしてのスキル(個人で売る力)とマネジメントスキル(チームに売らせる力)は全く異なる
- マインドセット転換の難しさ: 「自分が売る」から「メンバーに売らせる」への転換が難しい
- 育成の経験不足: プレイヤー時代は個人プレーが中心で、育成経験がない
- 無意識の比較: 「自分ならもっと上手くできる」という意識から、メンバーを過小評価してしまう
対処法:
- セールスマネジメントモデルを活用して、体系的にマネジメントスキルを習得(出典: Sherpa Works, 2024年)
- マネジメント研修・コーチング研修の受講
- 経験豊富なマネージャーからのメンタリング
- マインドセット転換の重要性を認識し、意識的に行動を変える
セールスマネージャーが陥りやすい失敗パターンと対処法
セールスマネージャーが陥りやすい失敗パターンと、その対処法を解説します。
(1) プレイングマネージャー化|自ら売りすぎて育成を怠る
失敗パターン:
- 自分が売った方が早いため、自ら商談に出てしまう
- メンバー育成に時間を割かず、チーム全体のスキルが向上しない
- 短期的には成果が出るが、長期的にはチームが育たない
対処法:
- マネージャーの役割は「自分で売る」ではなく「メンバーに売らせる」と認識
- 自分の時間の使い方を見直す(商談時間を減らし、1on1・育成に時間を割く)
- メンバーの商談同行・フィードバックを優先
- 自分が売るのは、新規市場開拓・重要顧客対応等の限定的なケースのみ
(2) マイクロマネジメント|過度な管理でメンバーの主体性を奪う
失敗パターン:
- すべての商談に同行し、細かく指示を出す
- メンバーの自主性・創意工夫を奪い、モチベーション低下
- メンバーが「言われたことしかやらない」状態になる
対処法:
- メンバーに裁量を与え、失敗を許容する文化を作る
- 目標・方向性を示し、具体的な手法はメンバーに任せる
- 商談同行は「指示」ではなく「フィードバック」の機会と位置づける
- 定期的な1on1で進捗確認し、困っている時だけ支援
(3) 目標設定の誤り|非現実的な目標設定によるモチベーション低下
失敗パターン:
- 経営層からの目標をそのままメンバーに割り振る
- 各メンバーのスキル・経験を考慮せず、画一的な目標設定
- 目標未達が続き、チーム全体のモチベーションが低下
対処法:
- 各メンバーのスキル・経験・担当エリアを考慮した個別目標設定
- 目標達成可能性(ストレッチ目標だが達成可能)を考慮
- 目標設定時にメンバーと対話し、納得感を得る
- 目標未達時は原因を分析し、改善施策を速やかに実行
(4) 個別対応の不足|画一的な指導によるメンバー成長の停滞
失敗パターン:
- すべてのメンバーに同じ指導方法を適用
- 各メンバーの長所・短所を把握せず、画一的な育成
- メンバーの成長が停滞し、離職率が上昇
対処法:
- 各メンバーの長所・短所を見極め、個別にモチベーションを与える方法を見出す(出典: Cyzen, 2024年)
- 1on1の定期実施でメンバーの状態を把握
- モチベーション要因は人それぞれ(金銭的報酬・承認・成長機会等)
- 個別対応により、メンバーの成長を加速
まとめ|優秀なセールスマネージャーになるための実践ステップ
セールスマネージャーは、売上管理だけでなく、人材育成・戦略立案・モチベーション管理が主要業務です。プレイヤーとは全く異なるスキルセット(リーダーシップ・コーチング力・データ分析力・戦略立案力)とマインドセット転換が求められます。
(1) セールスマネジメントモデルで体系的にスキル習得
実践ステップ:
- マインドセット転換: 「自分で売る」から「メンバーに売らせる」への意識転換
- スキル習得: マネジメント研修・コーチング研修の受講、書籍・オンライン学習
- 1on1の定期実施: 週次または月次でメンバーと1対1の面談を実施
- SFA・CRM活用: 営業活動を可視化し、データに基づく改善施策を実行
- 営業プロセス改善: ボトルネックを特定し、プロセス全体を最適化
- セールスマネジメントモデル活用: 体系的な手法・フレームワークを学ぶ(出典: Sherpa Works, 2024年)
(2) 2024年のトレンド|データ分析力・デジタルツール活用の重視
2024年以降、セールスマネージャーに求められるスキルとして、データ分析力とデジタルツール活用が重視されています(出典: eセールスマネージャー、2024年)。
最新トレンド:
- インサイドセールスマネージャーの需要増加: リモート営業体制の構築が重要に
- データ分析力の重視: SFA・CRMを活用した営業活動の可視化・改善
- デジタルツールの活用: AI・自動化ツールによる営業プロセスの効率化
次のアクション:
- 自分の役割を明確化する(売上管理・人材育成・戦略立案・モチベーション管理・プロセス改善)
- マインドセットを転換する(個人成績→チーム成績、自分で売る→メンバーに売らせる)
- マネジメントスキルを体系的に習得する(研修・書籍・オンライン学習・メンタリング)
- 1on1を定期実施し、メンバーの状態を把握・個別支援
- SFA・CRMを活用し、データに基づく営業プロセス改善を実行
- 失敗パターン(プレイングマネージャー化・マイクロマネジメント等)を避ける
- 最新トレンド(データ分析力・デジタルツール活用)をキャッチアップ
優秀なセールスマネージャーになるためには、プレイヤー時代とは異なるスキル・マインドセットの習得が不可欠です。体系的な学習と実践を重ね、チーム全体の成果を最大化しましょう。
