「営業」と「セールス」という言葉が混在していて、違いがよく分からない...
営業職への就職・転職を検討している人の多くが、「営業とセールスって何が違うの?」「求人情報でインサイドセールス、フィールドセールス、営業企画など色々な職種名があるけど、どう違うの?」といった疑問を抱えています。
実際のところ、「営業」と「セールス」は企業・業界によって定義が異なり、明確な使い分けがない場合も多いのが実態です。しかし、一般的には営業は長期的な関係構築を重視し、セールスは短期的な販売に焦点を当てるという違いがあります。
この記事では、「営業」と「セールス」という言葉の違い、営業/セールスの種類と分類、求められるスキル、2024年のデジタル化トレンドを体系的に解説します。営業職への就職・転職を検討している人が、自分に合った営業スタイルとキャリアパスを理解できるよう、実用的な情報をお届けします。
この記事のポイント:
- 営業は長期的な関係構築と顧客課題の解決、セールスは短期的な販売と商品魅力の伝達に重点
- 実務上は同義語として使われることが多く、企業・業界により定義が異なる
- 営業/セールスはB2B/B2C、フィールド/インサイド、アウトバウンド/インバウンド等で分類される
- 営業職に最も求められるスキルは傾聴力・ヒアリング力(7,134人の調査結果)
- 2024年のトレンドはAI統合、デジタルセールスルーム(DSR)、セールスイネーブルメント
1. 「営業」と「セールス」という言葉が使い分けられる背景
(1) 日本語と英語の違い
「営業」は日本語、「セールス」は英語(sales)です。
営業(えいぎょう):
- 日本語の伝統的な表現
- 「営利を目的として事業を営むこと」という広義の意味
- 「営業部」「営業担当」など日本企業で広く使われる
セールス(sales):
- 英語の「売る」という意味
- 「訪問や販売活動を通じて商品を売る行為」という狭義の意味
- 外資系企業や近年のスタートアップで「セールス」という職種名を使うことが多い
背景: 日本では従来、「営業」という言葉が一般的でしたが、グローバル化やスタートアップの増加により、「セールス」という英語表現が浸透してきました。
(2) 企業・業界による使い分けの実態
企業・業界により、「営業」「セールス」の使い分けは異なります。
日本の伝統的企業:
- 「営業部」「営業担当」という職種名が一般的
- 長期的な関係構築を重視する営業スタイル
外資系企業・スタートアップ:
- 「セールス」「インサイドセールス」「フィールドセールス」という職種名が一般的
- 明確な分業体制(マーケティング → インサイドセールス → フィールドセールス)
- 短期的な成果とKPI管理を重視
SaaS業界:
- 職種がさらに細分化(SDR、BDR、AE、CSM等)
- 「セールス」という英語表現が主流
実態: 企業・業界により使い分けが異なり、「営業」と「セールス」の明確な境界線はありません。求人情報では、同じ職務内容でも企業により「営業」「セールス」と表記が異なることがあります。
2. 営業とセールスの定義と違い
(1) 営業:長期的な関係構築と顧客課題の解決
「営業」は、長期的な関係構築と顧客課題の解決に重点を置く営業スタイルです。
営業の特徴:
- 長期的視点: 単発の契約ではなく、継続的な取引関係を目指す
- 顧客課題の解決: 商品を売るだけでなく、顧客の課題を理解し、解決策を提案
- 関係構築: 顧客との信頼関係を築き、長期的なパートナーシップを目指す
- 広いスコープ: 契約後のフォローアップ、アフターサービスも営業の役割
例:
- B2B企業の法人営業(IT、製造業、建設業等)
- 顧客企業の課題をヒアリングし、最適なソリューションを提案
- 契約後も定期的に訪問し、追加提案・課題解決を継続
(2) セールス:短期的な販売と商品魅力の伝達
「セールス」は、短期的な販売と商品魅力の伝達に焦点を当てる営業スタイルです。
セールスの特徴:
- 短期的視点: 目の前の契約獲得を重視
- 商品魅力の伝達: 商品の特徴・メリットを効果的に伝える
- クロージング: 商談を契約に結びつける力
- 狭いスコープ: 契約獲得までが主な役割(契約後はカスタマーサクセス等に引き継ぐ)
例:
- SaaS企業のフィールドセールス
- インサイドセールスが育成したリードに商談を行い、契約獲得
- 契約後はカスタマーサクセスチームに引き継ぐ
(3) 実務上は同義語として使われることが多い
重要なポイント: 実務上、「営業」と「セールス」は同義語として使われることが多く、明確な使い分けがない企業も多数あります。
理由:
- 多くの企業では、営業担当者が長期的な関係構築も短期的な販売も両方担当している
- 企業文化や業界により、「営業」「セールス」という言葉の使い方が異なる
- 日本では伝統的に「営業」という言葉が一般的で、「セールス」は近年浸透してきた表現
注意点: 求人情報や企業の説明を見る際は、「営業」「セールス」という言葉だけで判断せず、具体的な職務内容(B2B/B2C、対面/非対面、長期/短期等)を確認することが重要です。
3. 営業/セールスの種類と分類
(1) 顧客別(B2B営業・B2C営業)
営業は顧客のタイプにより分類されます。
B2B営業(法人営業):
- 対象: 企業や団体
- 特徴: 意思決定に時間がかかる、複数の関係者が関与、契約単価が高い
- 例: IT企業がCRMシステムを企業に販売
B2C営業(個人営業):
- 対象: 個人消費者
- 特徴: 意思決定が早い、個人の判断、契約単価が低い
- 例: 保険会社が個人に保険商品を販売
(2) 接触形式別(フィールドセールス・インサイドセールス)
営業は顧客との接触形式により分類されます。
フィールドセールス:
- 特徴: 顧客先を訪問して対面で営業活動を行う従来型の営業スタイル
- メリット: 信頼関係を構築しやすい、複雑な提案が可能
- デメリット: 移動時間がかかる、訪問できる顧客数に限界
- 例: 企業を訪問して商談、デモ、契約
インサイドセールス:
- 特徴: 電話・メール・オンラインツールを活用した非対面の営業スタイル
- メリット: 移動時間不要、多数の顧客にアプローチ可能、効率的
- デメリット: 信頼関係の構築に時間がかかる場合がある
- 例: 電話でヒアリング、Web会議で商談
ハイブリッド型: 初期アプローチはインサイドセールス、重要な商談はフィールドセールスで対面という組み合わせも増えています。
(3) アプローチ別(アウトバウンド・インバウンド)
営業は顧客へのアプローチ方法により分類されます。
アウトバウンド営業:
- 特徴: 企業側から顧客に積極的にアプローチ
- 手法: テレアポ、飛び込み営業、DM送付
- メリット: 即座にアプローチ可能、短期的な成果を出しやすい
- デメリット: 断られることが多い、効率が低い場合がある
インバウンド営業:
- 特徴: 顧客からの問い合わせや資料請求に基づく営業
- 手法: SEO、コンテンツマーケティング、ウェビナー等でリード獲得
- メリット: 商談化率が高い、顧客の関心度が高い
- デメリット: 成果が出るまでに時間がかかる(3-6ヶ月以上)
(4) SaaS業界の職種細分化(SDR・BDR・AE・CSM等)
SaaS業界では、営業プロセスがさらに細分化されています。
SDR(Sales Development Representative):
- 役割: インバウンドリード(問い合わせ、資料請求等)の育成
- 活動: ヒアリング、ニーズ確認、商談化
BDR(Business Development Representative):
- 役割: アウトバウンドでの新規顧客開拓
- 活動: ターゲット企業リストの作成、架電、アポイント獲得
AE(Account Executive):
- 役割: 商談とクロージング
- 活動: デモ、提案、見積もり、契約
CSM(Customer Success Manager):
- 役割: 契約後の顧客支援、解約防止
- 活動: オンボーディング、定期フォロー、アップセル・クロスセル
メリット: 分業化により、各段階に特化した専門人材を配置し、営業効率を最大化できます。
4. 営業/セールスに求められる主要スキル
(1) 傾聴力・ヒアリング力(顧客の声を引き出す)
営業職に最も求められるスキルは、傾聴力・ヒアリング力です。
重要性: 7,134人の法人営業担当者への調査(セレブリックス実施)では、傾聴力が最重要スキルとされています。顧客の声を引き出して課題を発見することが成果に直結するためです。
実践ポイント:
- 顧客の話を最後まで聞き、途中で遮らない
- オープンクエスチョン(「どのような課題がありますか?」)で顧客の本音を引き出す
- 顧客の言葉を言い換えて確認(「つまり〇〇ということですね?」)
- 沈黙を恐れず、顧客が話すまで待つ
失敗例:
- 顧客の話を聞かず、一方的に製品説明
- 顧客の課題を十分にヒアリングせず、的外れな提案
(2) 信頼構築力・共感力
顧客との信頼関係を構築することが、営業成功の基盤です。
実践ポイント:
- 顧客の課題に共感し、「その気持ちはよく分かります」と伝える
- 約束を必ず守る(メール返信、資料送付、訪問時間等)
- 顧客の立場で考え、顧客にとって最善の選択肢を提案
- 正直に対応する(「分からないことは分からない」と伝え、後日回答)
効果: 信頼関係が構築されると、顧客は「この営業担当者に相談したい」と思い、競合よりも優先して選ばれます。
(3) 説明力・プレゼンテーション力
商品の魅力を分かりやすく伝える力が必要です。
実践ポイント:
- 専門用語を避け、顧客が理解できる言葉で説明
- 結論から先に伝える(PREP法:結論 → 理由 → 具体例 → 結論)
- 顧客の課題と商品のメリットを紐付けて説明
- 視覚資料(スライド、デモ)を活用し、イメージしやすくする
例:
- 悪い例: 「当社のCRMは高機能で...」(機能の羅列)
- 良い例: 「御社の課題である営業情報の共有不足を、当社のCRMで解決できます。具体的には...」(課題と解決策を紐付け)
(4) 課題発見力・ロジカルシンキング
顧客が気づいていない課題を発見し、論理的に提案する力が必要です。
実践ポイント:
- 顧客の業界・ビジネスモデルを理解する
- 顧客の話から課題を抽出する(「現在の〇〇という状況は、△△という課題があるのでは?」)
- 論理的に説明する(「A → B → Cという流れで、この商品が御社の課題を解決します」)
効果: 顧客が気づいていない課題を指摘し、解決策を提案できると、「この営業担当者は頼りになる」と評価されます。
(5) タイムマネジメント
限られた時間で最大の成果を出すため、時間管理が重要です。
実践ポイント:
- 優先順位をつけ、成約確度の高い顧客にフォーカス
- 移動時間を最小化(インサイドセールスの活用、訪問ルートの最適化)
- タスクを明確にし、期限を設定
- SFA/CRMツールで営業活動を記録し、効率化
重要性: 営業は多数の顧客を同時に担当するため、タイムマネジメントができないと、重要な顧客へのフォローが遅れ、商談を逃すリスクがあります。
5. 営業のデジタル化トレンド(2024年)
(1) AI統合(顧客データ分析・購買意図予測)
2024年の最大のトレンドは、生成AIの活用です。
AIの活用例:
- 顧客データ分析: 過去の商談データからパターンを抽出し、成約確度を予測
- 購買意図予測: 顧客のWeb行動(サイト訪問、資料ダウンロード)から購買意図を予測
- 営業戦略のパーソナライズ: 顧客ごとに最適な提案内容・タイミングをAIが提示
- メール下書き: AIが顧客に応じたメール文面を自動生成
効果: AIにより、営業担当者は「何を、誰に、いつ」アプローチすべきかを効率的に判断できます。
(2) デジタルセールスルーム(DSR)の普及
デジタルセールスルーム(DSR)は、オンラインミーティングツールやチャットを通じて企業と顧客がリアルタイムでコミュニケーションを行うデジタル空間です。
DSRの特徴:
- オンラインで商談、デモ、契約締結まで完結
- 複数の関係者が同時にアクセスし、情報共有
- 契約までのプロセスをデジタル化し、スピードアップ
予測: 2025年までにB2B取引の80%がデジタルチャネルで行われると予測されています(Gartner調査)。
(3) セールスイネーブルメント
セールスイネーブルメントは、トップパフォーマーの分析と知識・プロセスの言語化により、営業チーム全体の業績を向上させる施策です。
実践方法:
- トップパフォーマーの商談を分析し、成功パターンを抽出
- 知識・プロセスをマニュアル化し、全営業担当者で共有
- 定期的なトレーニングで営業スキルを底上げ
効果: 新人のランプタイム(戦力になるまでの期間)を短縮し、営業チーム全体の成果を向上できます。
(4) 営業DXの進捗状況(中小企業白書2024)
中小企業庁の2024年版「中小企業白書」によると、営業DXの進捗は以下の通りです。
DX段階別企業比率:
- 段階1(デジタイゼーション): 2023年時点で全体の39.3%
- 段階2(デジタライゼーション): 2023年時点で全体の26.9%
- 段階3(デジタルトランスフォーメーション): 2019年の9.5% → 2023年の26.9%と3倍近く増加
現状: 2023年時点でもDX段階1~2の企業は66.2%と過半数を占めており、多くの企業はデジタル化が途上段階にあります。
(5) 生産年齢人口減少と営業効率化の必要性
日本の生産年齢人口(15-64歳)は、2050年には2021年比29.2%減少すると見込まれています(国立社会保障・人口問題研究所)。
影響:
- 営業担当者の確保が困難になる
- 限られた人材で最大の成果を出す必要
- 営業の効率化・デジタル化が不可避
対応: AI、DSR、セールスイネーブルメント等のデジタル技術を活用し、営業効率を最大化することが求められます。
6. まとめ:営業職・セールス職のキャリア選択
「営業」と「セールス」は、一般的には営業が長期的な関係構築と顧客課題の解決に重点を置き、セールスが短期的な販売と商品魅力の伝達に焦点を当てるという違いがあります。しかし、実務上は同義語として使われることが多く、企業・業界により定義が異なります。
営業職・セールス職のキャリア選択のポイント:
- 自分に合った営業スタイルを選ぶ: B2B/B2C、対面/非対面、長期/短期、アウトバウンド/インバウンド等の分類を理解し、自分の強みに合ったスタイルを選択
- 求められるスキルを身につける: 傾聴力、信頼構築力、説明力、課題発見力、タイムマネジメントを磨く
- デジタル化に対応する: AI、DSR、セールスイネーブルメント等の最新トレンドを学び、デジタルツールを活用できる営業担当者を目指す
次のアクション:
- 求人情報を見る際は、「営業」「セールス」という言葉だけでなく、具体的な職務内容(B2B/B2C、対面/非対面、長期/短期等)を確認する
- 自分の強み(コミュニケーション力、分析力、粘り強さ等)と営業スタイルの相性を考える
- 営業に求められる主要スキル(傾聴力、信頼構築力、説明力等)を学び、実践する
- 最新のデジタルツール(SFA、CRM、AI等)の活用方法を学ぶ
- 営業経験者やキャリアアドバイザーに相談し、自分に合った営業職を見つける
営業職・セールス職は、顧客に価値を提供し、企業の成長を支える重要な役割です。自分に合った営業スタイルを見つけ、必要なスキルを身につけることで、やりがいのあるキャリアを築けます。
※営業スタイルやスキルは業界・商材により異なるため、自社に適した手法を選択することが重要です。(この記事は2025年1月時点の情報です)
