採用活動の成果が見えない、どこを改善すればいいか分からない...
B2Bデジタルプロダクト企業の人事担当者の多くが、採用活動の効率化に悩んでいます。「応募は来るけど選考通過率が低い」「どの施策が効果的か分からない」「特定の担当者に依存している」といった課題は珍しくありません。
採用活動を可視化し、データに基づいて改善するための手法が「採用ファネル」です。この記事では、採用ファネルの基礎知識から設計方法、各ステージのKPI、改善施策まで、B2B企業・スタートアップでの実践方法を解説します。
この記事のポイント:
- 採用ファネルは認知→応募→選考→内定→入社の各段階を可視化し、ボトルネックを特定できる
- パーチェス・インフルエンス・ダブルの3種類があり、目的に応じて使い分ける
- 各段階のKPIを設定することで、データドリブンな採用活動が可能になる
- ATS(採用管理システム)の活用で効率的なデータ収集と分析ができる
- 職種別(エンジニア・営業・CS等)に適切な改善策を実施することが重要
採用活動の可視化における課題とファネルの役割
(1) 採用活動のブラックボックス化
B2B企業の採用活動では、以下のような課題が発生しがちです:
よくある課題:
- 応募者数は把握しているが、どの段階で離脱が多いか分からない
- 各採用チャネル(求人サイト・SNS・リファラル等)の効果が測定できていない
- 経験や勘に頼った採用活動で、再現性がない
- 特定の担当者に依存しており、異動や退職時に採用活動が停滞する
採用ファネルを導入することで、採用活動の各段階を数値化し、客観的に評価できるようになります(参考: BizReach withHR)。
(2) 属人化からの脱却とデータドリブン採用
採用ファネルを活用すると、以下のメリットが得られます:
メリット:
- 全体の俯瞰: 認知から入社までの全プロセスを一覧で把握
- ボトルネックの特定: 通過率が低い段階を容易に発見
- 施策の効果測定: 改善施策の前後で数値を比較
- 再現性の向上: 特定の個人に依存しない採用活動の実現
例えば、応募は多いが面接通過率が低い場合、選考基準の見直しや面接官トレーニングが必要と判断できます(参考: Wantedly)。
採用ファネルの基礎知識
(1) 採用ファネルとは何か
採用ファネルとは、候補者が企業を認知してから入社承諾に至るまでのプロセスを段階的に可視化した概念です。マーケティングのカスタマージャーニーと同様に、各段階での人数と通過率を測定することで、採用活動の効果を定量的に評価できます。
(2) 基本の6段階(認知→興味→検討→応募→選考→採用)
一般的な採用ファネルは以下の6段階で構成されます:
基本の6段階:
- 認知: 企業やポジションを知る(Webメディア・SNS・イベント等)
- 興味: 企業に興味を持つ(採用サイト閲覧・資料請求等)
- 検討: 応募を検討する(求人内容の確認・口コミ調査等)
- 応募: 実際に応募する(エントリーフォーム送信)
- 選考: 書類選考・面接を受ける
- 採用: 内定承諾・入社手続き
各段階で人数と通過率を測定し、どこで候補者が離脱しているかを把握します(参考: Reccoo Blog)。
(3) 3種類のファネル(パーチェス・インフルエンス・ダブル)
採用ファネルには3つの種類があり、目的に応じて使い分けます:
パーチェスファネル:
- 求職者が企業を認知してから入社に至るまでの心理変化を段階的に示す
- 採用プロセスの可視化と最適化に活用
インフルエンスファネル:
- 入社後の従業員による外部発信や紹介活動(リファラル採用)を表す
- 社員の発信力を高め、認知拡大に活用
ダブルファネル:
- パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたもの
- 採用プロセス全体と入社後のエンゲージメントを統合管理
(参考: Wantedly)
(4) B2B企業・スタートアップでの活用意義
B2Bデジタルプロダクト企業やスタートアップでは、以下の理由で採用ファネルの活用が特に重要です:
活用意義:
- 限られたリソース: 少人数の採用チームで効率的に運用する必要がある
- 高度人材の獲得競争: エンジニア・プロダクトマネージャー等の採用競争が激化
- 企業認知度の低さ: 大手企業に比べて認知段階からの取り組みが必要
- スピード重視: 事業成長に合わせた迅速な採用活動が求められる
2024年11月時点では、エンジニア市場での競争が激化しており、データドリブンな採用ファネル戦略の重要性がさらに高まっています(参考: Offers Magazine)。
採用ファネル設計の具体的手順
(1) 目標設定(ターゲット人材像・採用人数・コスト・スピード)
ファネル設計の第一歩は、明確な目標設定です:
設定すべき目標:
- ターゲット人材像: 職種・経験年数・スキルセット・志向性
- 採用人数: 四半期・年間の採用目標
- コスト: 1人あたりの採用コスト目安(求人広告費・人材紹介費等)
- スピード: 応募から入社までの期間目標
例: 「シニアエンジニア3名を3ヶ月以内、1人あたり採用コスト150万円以内で採用」
(2) ファネル段階の定義
自社の採用プロセスに合わせて、ファネルの各段階を定義します。基本の6段階をベースに、自社独自の段階を追加することも可能です。
カスタマイズ例:
- カジュアル面談の段階を追加
- 技術課題選考の段階を追加
- リファラル応募の段階を追加
(3) ペルソナ設定(候補者の詳細プロフィール)
ペルソナとは、ターゲット候補者の詳細な架空プロフィールです。年齢・経験・スキル・志向性・情報収集方法などを具体的に設定します。
ペルソナ例(シニアエンジニア):
- 年齢: 28-35歳
- 経験: Web開発5年以上、SaaS企業での開発経験あり
- スキル: React・TypeScript・AWS
- 志向性: 技術的挑戦とチーム文化を重視
- 情報収集: Qiita・技術ブログ・Twitter
ペルソナを設定することで、各段階でのアプローチ方法が明確になります(参考: BizReach withHR)。
(4) カスタマージャーニー設計
カスタマージャーニーとは、候補者が各段階でどのような体験をするかを時系列で描いたものです。
各段階での候補者の行動例:
- 認知段階: 技術ブログを読む、SNSで企業名を見る
- 興味段階: 採用サイトを閲覧、会社説明会に参加
- 検討段階: 求人内容を確認、口コミサイトをチェック
- 応募段階: エントリーフォーム送信、カジュアル面談申込
- 選考段階: 書類選考・面接・技術課題
- 内定段階: オファー面談・入社条件確認
候補者の視点で各段階を設計することで、候補者体験(Candidate Experience)の向上につながります(参考: むすび株式会社)。
(5) 各段階のチャネル設定(Webメディア・SNS・求人サイト等)
各段階で候補者にリーチするためのチャネルを設定します:
認知・理解段階:
- 技術ブログ・採用オウンドメディア
- SNS(Twitter・LinkedIn・Wantedly)
- 技術イベント・カンファレンス登壇
好意・想起段階:
- 求人サイト(Green・Wantedly・ビズリーチ等)
- リマインドメール・ターゲティング広告
- ウェビナー・セミナー
個人化・コミット段階:
- カジュアル面談
- オフィス見学・座談会
- 現場社員との1on1
(参考: 採用マーケティングの教科書)
各ステージのKPIと測定方法
(1) 認知・理解段階(認知母数・Webメディア閲覧数)
測定すべきKPI:
- 認知母数(技術ブログ・SNSのリーチ数)
- 採用サイト訪問数
- 求人ページ閲覧数
- イベント参加者数
測定方法:
- Google Analytics等のアクセス解析ツール
- SNSアナリティクス(Twitter Analytics・LinkedIn Analytics等)
- イベント管理システム
(2) 好意・想起段階(求人応募数・イベント参加数)
測定すべきKPI:
- 求人応募数(チャネル別)
- 説明会・カジュアル面談申込数
- 資料請求数・問い合わせ数
測定方法:
- ATS(採用管理システム)での応募管理
- イベント管理システム
- CRM(顧客関係管理)ツール
(3) 個人化・コミット段階(書類選考通過率・面接通過率)
測定すべきKPI:
- 書類選考通過率
- 1次面接通過率
- 2次面接通過率
- 最終面接通過率
測定方法:
- ATSでの選考進捗管理
- スプレッドシートでの手動管理(ATS未導入の場合)
適正な通過率の目安:
- 書類選考通過率: 30-50%
- 1次面接通過率: 20-40%
- 最終面接通過率: 30-50%
(参考: まるごと人事)
(4) 内定・入社段階(内定承諾率・入社率)
測定すべきKPI:
- 内定承諾率(内定者のうち承諾した割合)
- 入社率(承諾者のうち実際に入社した割合)
- 内定辞退理由
測定方法:
- ATSでの内定管理
- 内定辞退者へのアンケート・ヒアリング
適正な内定承諾率:
- 一般的には70-90%が目安
- エンジニア職では競争激化により60-80%程度の場合もある
(5) 全体コンバージョン率とボトルネック箇所の特定
全体コンバージョン率の計算:
- 認知から入社までの全体通過率を計算
- 例: 認知1,000人 → 応募50人 → 内定5人 → 入社4人の場合、全体コンバージョン率は0.4%
ボトルネック箇所の特定:
- 各段階の通過率を比較し、極端に低い段階を特定
- 例: 応募→書類選考の通過率が10%の場合、書類選考基準が厳しすぎる可能性
データ分析により、改善すべき優先度の高い段階を明確にできます(参考: Reccoo Blog)。
ボトルネック分析と改善施策
(1) 通過率データからのボトルネック特定
ボトルネックを特定する際は、以下のステップで分析します:
分析ステップ:
- 各段階の人数と通過率を集計
- 業界・職種の平均値と比較
- 自社の過去データと比較
- 通過率が極端に低い段階を特定
- その段階での離脱理由を仮説立てる
(2) 認知段階の改善(採用ブランディング・SNS発信)
認知が不足している場合の改善施策:
- 技術ブログの定期更新(週1回以上)
- エンジニアによるSNS発信の促進
- 技術カンファレンスへの登壇
- プレスリリース・メディア露出の強化
- Wantedly・Green等の採用メディアへの投稿
注意点:
- 即効性は低く、中長期的な取り組みが必要
- 継続的な発信が重要
(3) 応募段階の改善(求人票最適化・応募フォーム簡素化)
応募数が不足している場合の改善施策:
- 求人票の内容を充実(仕事内容・技術スタック・開発環境)
- 応募フォームを簡素化(入力項目を最小限に)
- 給与・待遇を明示(可能な範囲で)
- リモートワーク・フレックス等の働き方を明記
具体例:
- 応募フォームの入力項目を10個から5個に削減 → 応募数が30%増加
- 技術スタックを詳細に記載 → エンジニアの応募が増加
(参考: GlobalCareer.com)
(4) 選考段階の改善(面接調整の迅速化・候補者体験向上)
選考通過率が低い場合の改善施策:
- 面接調整の迅速化(応募から1週間以内に1次面接)
- 選考基準の明確化と面接官トレーニング
- フィードバックの迅速化(選考結果を3日以内に通知)
- カジュアル面談の実施(選考前に相互理解を深める)
候補者体験向上のポイント:
- 面接での質問内容を事前に一部共有
- オフィス見学・社員との座談会の機会を提供
- 選考プロセスの全体像と所要期間を明示
2024年時点では、候補者体験の向上が差別化要因となっています(参考: Offers Magazine)。
(5) 内定承諾率の改善(オファー面談・入社前フォロー)
内定承諾率が低い場合の改善施策:
- オファー面談の実施(経営陣との対話・質問対応)
- 入社前フォロー(定期的な連絡・懇親会)
- 柔軟な入社日調整
- リファレンスチェックの実施(候補者の不安解消)
内定辞退の主な理由:
- 他社からのより良い条件のオファー
- 入社後の業務内容・キャリアパスへの不安
- 企業文化・チームとのフィット感への懸念
内定辞退理由を分析し、事前に不安を解消することが重要です。
(6) 職種別の改善策(エンジニア・営業・CS等)
エンジニア採用の改善策:
- 技術ブログ・GitHubでの技術発信
- 技術課題選考の実施(実務スキルの確認)
- 技術スタック・開発環境の透明性向上
- リモートワーク・フレックスの柔軟性
営業職採用の改善策:
- 営業プロセス・インセンティブ制度の明示
- トップセールスとの面談機会
- キャリアパス・昇進制度の説明
CS職採用の改善策:
- 顧客対応事例の共有
- CS組織の体制・役割分担の説明
- キャリアアップの機会(CSマネージャー・カスタマーサクセスアーキテクト等)
職種により重視するポイントが異なるため、ペルソナに合わせた施策が必要です(参考: Wantedly)。
まとめ:採用ファネル管理で成果を出すポイント
採用ファネルを活用することで、採用活動の各段階を可視化し、データに基づいた改善が可能になります。
成果を出すための重要ポイント:
- 目標と指標の明確化: 各段階のKPIを設定し、定期的に測定
- ボトルネックの特定: 通過率が低い段階を優先的に改善
- 職種別の最適化: エンジニア・営業・CS等、職種に合わせた施策
- 候補者体験の向上: 迅速なフィードバック・透明性のあるコミュニケーション
- 継続的な改善: 最低3-6ヶ月のデータを蓄積し、傾向を分析
次のアクション:
- 自社の採用プロセスを6段階で整理する
- 過去3ヶ月の各段階の人数と通過率を集計する
- ATS(採用管理システム)の導入を検討する
- ボトルネック段階を特定し、改善施策を1つ実施する
データドリブンな採用活動で、効率的な人材獲得と事業成長を実現しましょう。
※この記事は2024年時点の情報です。採用市場の環境変化により、効果的なファネル設計は変動する可能性があります。自社の状況に合わせて柔軟に調整してください。
