広報KPIとは?広報活動の可視化と説明責任
広報活動の効果測定に悩んでいませんか?「どれだけ成果が出ているのか分からない」「経営層にうまく説明できない」「何を指標にすればいいか分からない」——こうした課題を抱えるB2B企業の広報担当者は少なくありません。
広報KPIは、広報活動の効果を定量的・定性的に測定する指標です。この記事では、広報KPIの基本から、3つの分類(活動KPI・露出KPI・結果KPI)、設定手順、効果測定ツールまで実務視点で解説します。
この記事のポイント:
- 広報KPIは活動量・露出量・成果の3種類に分類され、それぞれ役割が異なる
- KPIピラミッドのフレームワークで「情報接触→認知変化→行動変化」を6ゾーンに分けて測定
- 最終目標(KGI)から逆算してKPIを設定し、経営戦略と連動させる
- 広報KPIは企業ごとに異なり正解はない、成熟度に応じて重視する指標を変える
- 2024年時点で77.7%の企業が広報効果測定を実施、45.6%が重要度が上がったと回答
広報KPIとは?広報活動の可視化と説明責任
(1) KPIとKGIの違い:中間指標と最終目標
広報KPIを理解するには、まずKPIとKGIの違いを押さえる必要があります。
KGI(Key Goal Indicator):
- 重要目標達成指標
- 最終的に達成すべき目標
- 例:「ブランド認知度を50%にする」「問い合わせ件数を年間1,000件にする」
KPI(Key Performance Indicator):
- 重要業績評価指標
- KGI達成のための中間指標を数値化したもの
- 例:「プレスリリースを月10本配信」「メディア掲載数を月20件にする」
(出典: PR TIMES MAGAZINE「広報PR活動における目標設定とKPIの立て方・具体例と実践の5つのポイントを解説」)
KPIはKGI達成のためのプロセス指標であり、定期的に進捗を確認しながら改善を重ねていくものです。
(2) 広報効果測定の難しさと重要性
広報効果測定は「永遠のテーマ」とされ、正解がないと言われています。その理由は以下の通りです:
測定が難しい理由:
- 広報活動が売上に直接つながる因果関係を証明しにくい
- ブランドイメージ向上などの定性的な価値を数値化しづらい
- 短期的な成果よりも中長期的な影響が大きい
(出典: PR TIMES MAGAZINE「広報PR活動における目標設定とKPIの立て方・具体例と実践の5つのポイントを解説」)
それでも測定が重要な理由:
- 社内評価がしやすくなり、他部署・経営層の理解を得やすくなる
- 改善点を特定でき、広報活動の質を高められる
- 予算の妥当性を説明しやすくなる
(3) 2024年の実施状況:77.7%の企業が効果測定を実施
経済広報センターの調査によると、2024年時点で77.7%の企業・団体が広報効果測定を実施しており、45.6%が「重要度が上がった」と回答しています。
(出典: 経済広報センター「企業広報の基本 | 効果測定」)
広報効果測定の重要性は年々高まっており、経営層への説明責任を果たすためにも、KPIの設定と測定が不可欠になっています。
広報KPIの3つの分類:活動KPI・露出KPI・結果KPI
広報KPIは「活動KPI」「露出KPI」「結果KPI」の3種類に分類され、それぞれ役割が異なります。
(1) 活動KPI:プレスリリース配信数、記者発表会回数
活動KPI:
- 自社でコントロール可能な広報活動量の指標
- 例:プレスリリース配信数、記者発表会回数、SNS投稿数、取材対応件数
設定例:
- 「X月までにプレスリリースをXX本配信」
- 「四半期ごとに記者発表会を1回開催」
活動KPIは最もコントロールしやすい指標であり、年間活動目標・計画に組み込むことが推奨されます。
(出典: 広報会議「『戦略的広報』実現のために3つのKPIを設定しよう」)
(2) 露出KPI:メディア掲載数、SNSリーチ数
露出KPI:
- 情報が外部に露出した量の指標
- 例:メディア掲載数、SNSリーチ数、ウェブサイト訪問数、動画再生回数
設定例:
- 「月間メディア掲載数を20件にする」
- 「SNSフォロワー数を年間で10,000人増やす」
露出KPIは広報活動の可視化に有効ですが、露出量だけを追うと本質的な成果(認知・態度変容)を見失う恐れがあります。
(出典: 広報会議「『戦略的広報』実現のために3つのKPIを設定しよう」)
(3) 結果KPI:問い合わせ件数、ブランド認知度
結果KPI:
- 広報活動の成果を示す指標
- 例:問い合わせ件数、ブランド認知度、企業イメージスコア、採用応募数
設定例:
- 「ブランド認知度を50%にする」
- 「問い合わせ件数を前年比120%にする」
結果KPIは最終成果に近い指標ですが、広報活動との因果関係を証明するのは困難です。他のマーケティング施策との相乗効果も考慮する必要があります。
(出典: 広報会議「『戦略的広報』実現のために3つのKPIを設定しよう」)
KPIピラミッド:情報接触・認知変化・行動変化の6ゾーンフレームワーク
KPIピラミッドは、広報効果を「情報接触」「認知変化」「行動変化」の3段階に分け、それぞれを定量・定性の2軸で測定するフレームワークです。
(1) 情報接触段階:定量(露出数)・定性(トーン)
定量指標:
- メディア掲載数、SNSリーチ数、インプレッション数
定性指標:
- 記事のトーン(ポジティブ・ネガティブ・ニュートラル)
- 露出メディアの質(影響力の高いメディアか)
情報接触段階では、「どれだけの人に情報が届いたか」と「どのような形で届いたか」を測定します。
(2) 認知変化段階:定量(認知率)・定性(イメージ変化)
定量指標:
- ブランド認知率、検索ボリューム、指名検索数
定性指標:
- 企業イメージ変化、ブランドイメージスコア
認知変化段階では、「どれだけの人が企業・ブランドを認知したか」と「どのようなイメージを持たれているか」を測定します。
(3) 行動変化段階:定量(問い合わせ数)・定性(態度変容)
定量指標:
- 問い合わせ件数、資料請求数、採用応募数、購買行動
定性指標:
- 態度変容(購入意向・推奨意向の変化)
行動変化段階では、「どれだけの人が具体的な行動を起こしたか」と「態度がどう変化したか」を測定します。
(出典: 電通PRコンサルティング「【広報効果測定】KPIの設定方法は?フレームワーク『KPIピラミッド』で可視化しよう」)
(4) 成熟度フェーズに応じたKPI設定:拡大期は露出量、品質改善期は行動変化
広報活動の成熟度に応じて、重視するKPIを変えることが推奨されます。
拡大期(立ち上げ期):
- 露出量(情報接触)を重視
- まずは認知度を高めることを優先
品質改善期:
- 認知変化・行動変化を重視
- 質の高い露出やユーザー行動変化を追求
(出典: 電通PRコンサルティング「【広報効果測定】KPIの設定方法は?フレームワーク『KPIピラミッド』で可視化しよう」)
自社の広報活動がどのフェーズにあるかを見極め、適切なKPIを設定することが重要です。
広報KPIの設定手順:最終目標からの逆算アプローチ
広報KPIは最終目標(KGI)から逆算して設定することが推奨されます。
(1) 経営戦略に基づくKGI設定:誰に何と思われたいか
まず、経営戦略に基づいてKGI(最終目標)を設定します。
KGI設定のポイント:
- 「誰に何と思われたいか」を明確化
- 経営戦略と連動させる
- 測定可能な形で記述する
設定例:
- 「ターゲット業界の意思決定者に『革新的な企業』と認知される」
- 「既存顧客の推奨意向(NPS)を70以上にする」
(出典: PRオートメーション「広報・PRのKPIとは?目的から逆算して目標設定する方法【効果測定研究会レポート】」)
(2) KGI達成のための中間指標(KPI)の特定
KGIを達成するために必要な中間指標(KPI)を特定します。
特定の手順:
- KGI達成に必要な要素を洗い出す
- 各要素を測定可能な指標に落とし込む
- 活動KPI・露出KPI・結果KPIの3分類で整理
例: KGI: 「ターゲット業界の意思決定者に『革新的な企業』と認知される」
KPI:
- 活動KPI: 「革新的な取り組みに関するプレスリリースを月2本配信」
- 露出KPI: 「業界メディアでの掲載数を月10件にする」
- 結果KPI: 「ブランドイメージ調査で『革新的』の項目を前年比120%にする」
(3) 期限・対象・数値の具体化
KPIは期限・対象・数値を具体的に設定することが重要です。
具体化の例:
- 悪い例: 「プレスリリースを増やす」(抽象的)
- 良い例: 「X月までにYYコンテンツをXX本配信」(具体的)
(出典: PRオートメーション「広報・PRのKPIとは?目的から逆算して目標設定する方法【効果測定研究会レポート】」)
(4) バルセロナ原則:量から質への転換、広告換算から脱却
バルセロナ原則は、広報・PR業界の国際的な測定基準であり、「量から質への転換」を推奨しています。
バルセロナ原則の要点:
- 広告換算額(量)よりも目標・成果・質を重視
- 露出量だけでなく、認知・態度変容を測定
- ビジネス成果との関連性を示す
(出典: ELNET「【ELspot+】広報としての目標設定、どうしてる?[前編]」)
広告換算額は参考値として使えますが、定性的な価値(ブランドイメージ向上等)も測定する必要があります。
効果測定ツールとレポーティング方法
広報KPIを測定するには、適切なツールとレポーティング方法が必要です。
(1) メディアモニタリングツール(クリッピングサービス等)
主な機能:
- 新聞・雑誌・ウェブメディアの掲載記事を自動収集
- 記事のトーン分析(ポジティブ・ネガティブ)
- 広告換算額の算出
コスト目安:
- 月額数万円〜数十万円(収集範囲により変動)
代表的なツール:
- クリッピングサービス各社(PR TIMESクリッピング、共同通信PRワイヤー等)
(2) SNS分析ツール(エンゲージメント測定)
主な機能:
- SNS投稿のリーチ数・エンゲージメント数を測定
- フォロワー推移、投稿パフォーマンス分析
- ハッシュタグ分析、競合比較
コスト目安:
- 無料〜月額数千円(各SNSの公式アナリティクス)
- 月額数万円〜(高機能な有料ツール)
代表的なツール:
- 各SNSの公式アナリティクス(X Analytics、Meta Business Suite等)
- 有料ツール(Hootsuite、Buffer等)
(3) アンケート調査(ブランド認知度・イメージ測定)
主な用途:
- ブランド認知度調査
- 企業イメージ調査
- 態度変容測定
コスト目安:
- 1回数十万円〜(調査規模・サンプル数により変動)
実施方法:
- 自社で実施(無料アンケートツール使用)
- 調査会社に依頼(本格的な調査)
(4) 経営層への報告:インプット・アウトプット・アウトカムの3段階
経営層への報告では、インプット・アウトプット・アウトカムの3段階で整理するのが効果的です。
インプット:
- 広報活動の投入量(プレスリリース配信数、記者発表会回数等)
アウトプット:
- 活動の直接的な結果(メディア露出、SNS反応等)
アウトカム:
- 最終的な成果(ステークホルダーへの影響、ブランド認知・態度変容等)
(出典: 経済広報センター「企業広報の基本 | 効果測定」)
この3段階で報告することで、広報活動の価値を経営層に分かりやすく伝えられます。
まとめ:広報KPIで実現する戦略的広報
広報KPIは、活動量・露出量・成果を測定する指標であり、経営戦略と連動させることで戦略的広報を実現できます。
広報KPIには正解がなく、企業ごとの目標・成熟度に応じて設定する必要があります。最終目標(KGI)から逆算し、活動KPI・露出KPI・結果KPIの3分類で整理することが推奨されます。
次のアクション:
- 自社の広報活動の成熟度フェーズを確認する(拡大期か品質改善期か)
- 経営戦略に基づくKGI(最終目標)を設定する
- KGI達成のために必要なKPI(中間指標)を特定する
- 測定しやすい指標から始め、段階的に高度化する
- 経営層への報告方法を整備する(インプット・アウトプット・アウトカムの3段階)
広報KPIの設定と測定には時間がかかりますが、広報活動の可視化と説明責任を果たすために不可欠です。自社の状況に応じて、段階的に取り組んでください。
