オウンドメディアサイトの作り方:目的設定から運用体制まで

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

オウンドメディアサイトを立ち上げたいけれど、何から始めればいいかわからない...

B2B企業のマーケティング責任者として、「オウンドメディアサイトを立ち上げたい」と考えているものの、「具体的な構築手順は?」「予算はどれくらい必要?」「運用体制をどう整えればいいの?」といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

オウンドメディアサイトは、リード獲得やブランディングに有効な手段ですが、目的が不明確なまま構築すると、方向性が定まらず運用が続かないリスクがあります。また、構築費用は無料〜300万円以上と幅広く、適切な選択をすることが重要です。

この記事では、オウンドメディアサイトの立ち上げステップ(目的設定、ターゲット設計、プラットフォーム選定、コンテンツ戦略、運用体制構築)と、成功のための注意点・予算感を実践的に解説します。

この記事のポイント:

  • オウンドメディアサイトは「ブログ形式で情報発信するWebサイト」で、コーポレートサイトとは目的が異なる
  • BtoB企業の90%がリード獲得と資料請求を主目的として運営している
  • 構築方法は①サイト作成サービス、②CMS活用、③完全カスタム開発の3つ。費用は無料〜300万円以上
  • SEOがオウンドメディアサイトの中心。自然検索からの流入が主な集客チャネル
  • 効果が出るまで通常6ヶ月〜1年以上。鎌倉新書の「いい葬儀」は2018年に自然検索流入が前年比37〜267%増加

オウンドメディアサイトとは何か

(1) オウンドメディアサイトの定義(自社保有のWebサイト)

オウンドメディアサイトとは、企業が自社で保有・運営するWebサイトのことです。

オウンドメディア(Owned Media)は「企業が自社で保有するメディア」の総称で、Webサイト、ブログ、メルマガ、会報誌などを含みますが、現代では**「ブログ形式の情報サイト」**を指すことが多いです(ミエルカ調査)。

オウンドメディアサイトの特徴:

  • ブログ形式で定期的に記事を更新
  • SEO対策を施し、検索流入を獲得
  • 読者の課題解決やブランディングを目的とする
  • リードジェネレーション(問い合わせ・資料請求)につなげる

(2) 通常の企業サイト・コーポレートサイトとの違い

オウンドメディアサイトと通常の企業サイト・コーポレートサイトの違いは、目的とコンテンツの性質です。

コーポレートサイト:

  • 企業情報や製品情報を掲載する公式サイト
  • 静的なコンテンツが中心(会社概要、製品カタログ等)
  • 更新頻度は低い(数ヶ月〜年単位)

オウンドメディアサイト:

  • 読者の課題解決やブランディングを目的とした情報サイト
  • 動的なコンテンツが中心(ブログ記事、ノウハウ記事等)
  • 定期的に更新(週次・月次)

広義ではコーポレートサイトもオウンドメディアに含まれますが、この記事では主に「ブログ形式の情報サイト」としてのオウンドメディアサイトを中心に解説します。

(3) オウンドメディアサイトの種類(ブログ、情報サイト等)

オウンドメディアサイトには、目的や形式に応じてさまざまな種類があります。

主な種類:

1. BtoB向けリード獲得型

  • 業界ノウハウや実践的な情報を発信し、リード獲得を目指す
  • 例: ferret(Webマーケティング情報)、LISKUL(営業・マーケティングノウハウ)

2. ブランディング型

  • 企業の価値観や専門性を発信し、ブランドイメージを確立
  • 例: サイボウズ式(働き方・チームワーク情報)

3. 採用オウンドメディア

  • 企業文化や価値観を発信し、優秀な人材を獲得
  • 例: メルカリ採用サイト、サイボウズ採用サイト

4. 製造業向け技術情報発信型

  • 製品・技術情報を発信し、専門性をアピール
  • 例: 山洋電気「TECH-COMPASS」

これらの種類を参考に、自社の目的に合ったオウンドメディアサイトを設計することが重要です。

オウンドメディアサイト構築の目的設定

(1) リード獲得・資料請求(BtoB企業の90%が主目的)

オウンドメディアサイトの最も一般的な目的は、リード獲得と資料請求です。

BtoB企業の90%がリード獲得と資料請求を主目的としてオウンドメディアを運営しています(マーケティング戦略部調査、2025年)。また、BtoB企業の40%がすでにオウンドメディアを保有しており、競争が激化しています。

リード獲得の仕組み:

  1. SEO記事で検索流入を獲得
  2. 記事内で自社製品・サービスの価値を伝える
  3. 問い合わせフォームや資料請求ボタンでリード化
  4. リードナーチャリング(育成)を経て商談化

成功事例として、鎌倉新書の「いい葬儀」は2018年に自然検索流入が前年比37〜267%増加、2019年には売上が71%増加しました。

(2) ブランディング・認知度向上

オウンドメディアサイトは、企業や製品の認知度・好感度を高め、独自の価値やイメージを確立するブランディングにも有効です。

ブランディング効果:

  • 専門性や信頼性をアピールし、業界内でのポジションを確立
  • 読者の課題を解決する有益なコンテンツで好感度を向上
  • 企業文化や価値観を発信し、共感を得る

オウンドメディアは**BtoC企業で最も効果的な戦術(44.2%)、BtoB企業でも2番目に効果的(28%)**とされています(マーケティング戦略部調査、2025年)。

(3) 採用強化(企業文化・価値観の発信)

近年、採用オウンドメディアが増加しており、企業文化や価値観の発信を通じて優秀な人材を獲得する動きが活発です(TECH HIRE調査、2025年)。

採用オウンドメディアの効果:

  • 企業の「らしさ」や働き方を発信し、共感する人材を集める
  • 社員インタビューやプロジェクト事例で職場の雰囲気を伝える
  • 入社後のミスマッチを減らし、定着率を向上
  • 求職者とのマッチング精度を高める

2025年は、採用オウンドメディアがトレンドとして注目されています。

(4) SEO・自然検索流入の安定化

オウンドメディアサイトでは、SEO(検索エンジン最適化)がサイト構築の中心となります。自然検索からの流入が主な集客チャネルとなるため、キーワード設計が最重要です。

SEO効果のメリット:

  • 質の高いSEOコンテンツは長期的に安定した検索流入を生み出す
  • 有料広告への依存を減らし、マーケティングコストを削減
  • 検索上位表示により、信頼性・権威性が向上

ただし、効果が出るまで通常6ヶ月〜1年以上かかるため、短期的な成果を期待すべきではないことに注意が必要です。

オウンドメディアサイトの構築方法と費用

(1) レベル別の構築方法(サイト作成サービス、CMS活用、完全カスタム開発)

オウンドメディアサイトの構築は、レベル別に3つの選択肢があります(バズ部調査)。

①サイト作成サービス(簡単・低コスト):

  • Wix、Jimdoなどのサイト作成サービスを利用
  • 専門知識不要で、テンプレートを選んで作成
  • 費用: 無料〜月額数千円
  • 適用対象: 小規模企業、初心者、予算が限られている場合

②CMS活用(WordPress等):

  • WordPress、はてなブログPro、note proなどのCMSを利用
  • ある程度のカスタマイズが可能
  • 費用: 数万円〜50万円程度(初期構築費)
  • 適用対象: 中小企業、ある程度の予算がある場合

③完全カスタム開発(大規模・高度):

  • 制作会社に依頼し、独自にシステムを設計・開発
  • 企業の要件に合わせて完全にオリジナルのサイトを構築
  • 費用: 100万円〜300万円以上
  • 適用対象: 大企業、高度な機能が必要な場合

これらの選択肢から、自社の予算・目的・運用体制に合った方法を選定します。

(2) 費用相場(無料〜300万円以上)

オウンドメディアサイトの構築費用は、無料〜300万円以上と幅広いです(バズ部調査)。

費用の内訳:

簡易的なサイト(50万円程度):

  • WordPressなどのCMSを利用
  • テンプレートベースのデザイン
  • 基本的なSEO設定

コンテンツ戦略込み(100〜300万円):

  • コンテンツ戦略の策定
  • オリジナルデザインの制作
  • SEOキーワード設計
  • 初期記事の制作(10〜30記事)

大規模カスタム開発(300万円以上):

  • 完全オリジナルのシステム開発
  • 高度な機能実装(会員機能、検索機能等)
  • 専任のプロジェクトチーム

構築費用は制作会社により大きく異なるため、複数の見積もりを比較し、目的と予算に応じた選択が重要です。

(3) CMS選定のポイント(WordPress、はてなブログPro、note pro等)

CMS(Content Management System / コンテンツ管理システム)は、専門知識がなくてもWebサイトを構築・運営できるツールです。

主要CMS:

WordPress:

  • 世界シェアNo.1のCMS(全Webサイトの43%以上が利用)
  • カスタマイズ性が高く、プラグインが豊富
  • 適用対象: 中小企業〜大企業、ある程度の技術リソースがある場合

はてなブログPro:

  • 日本で人気のブログサービス
  • 簡単に始められ、独自ドメイン設定も可能
  • 適用対象: 小規模企業、初心者、運用コストを抑えたい場合

note pro:

  • クリエイター向けプラットフォーム
  • デザイン・操作性がシンプルで使いやすい
  • 適用対象: 小規模企業、ブランディング重視の場合

CMS選定では、導入難易度と機能性のバランスを考慮し、自社の運用体制に合ったツールを選ぶことが重要です。

オウンドメディアサイトの立ち上げ手順

(1) ターゲット設計とペルソナ設定

オウンドメディアサイトの立ち上げでは、まずターゲットと目的を明確に定義することが必須です。

ターゲット設計のステップ:

  1. ペルソナ設定: 想定読者を具体的に定義(年齢、役職、課題、情報収集方法等)
  2. 課題の洗い出し: ペルソナが抱える課題・疑問をリストアップ
  3. 情報ニーズの特定: どのような情報を求めているかを明確化

例えば、「B2B SaaS企業のマーケティング担当者(経験3-10年)」をペルソナとし、「オウンドメディアの立ち上げ手順を知りたい」という課題を設定します。

(2) キーワード設計とコンテンツ戦略

SEOがオウンドメディアサイトの中心となるため、キーワード設計が最重要です。

キーワード設計のステップ:

  1. キーワード調査: Googleキーワードプランナー等で検索ボリュームを調査
  2. 競合分析: 検索上位サイトのコンテンツを分析
  3. キーワードの優先順位付け: 検索ボリューム・競合性・ビジネス関連性でランク付け
  4. コンテンツカレンダー作成: 月次・週次の記事制作スケジュールを策定

コンテンツ戦略:

  • 顧客獲得、採用、ブランディングなど目的に応じたコンテンツを設計
  • ペルソナの課題を解決する実践的な記事を作成
  • 定期的に更新し、SEO評価を高める

(3) プラットフォーム選定とサイト構築

ターゲット・キーワード設計が完了したら、プラットフォーム選定とサイト構築を進めます。

プラットフォーム選定のポイント:

  • 予算(無料〜300万円以上)
  • 運用体制(技術リソースの有無)
  • 必要な機能(会員機能、検索機能等)

サイト構築のステップ:

  1. CMS選定: WordPress、はてなブログPro、note pro等から選択
  2. デザイン設計: ブランドイメージに合ったデザインを作成
  3. SEO設定: メタタグ、構造化データ、サイトマップ等の基本設定
  4. 初期記事の制作: 10〜30記事を制作し、立ち上げ時から流入を獲得

(4) 運用体制の構築とKPI設定

オウンドメディアサイトは、構築後も継続的なコンテンツ制作と更新が必要です。運用コスト(人件費・制作費)を事前に見積もり、予算を確保すべきです。

運用体制の例:

  • 編集長: コンテンツ戦略の立案、全体管理
  • ライター: 記事制作(社内または外注)
  • デザイナー: 図版・デザイン制作
  • SEO担当: キーワード分析、SEO最適化

主要KPI:

  • PV(ページビュー): 記事の閲覧数
  • 自然検索流入数: SEO経由の訪問者数
  • リード獲得数: 問い合わせ・資料請求の件数
  • コンバージョン率: 訪問者のうちリード化した割合

これらのKPIを定期的にモニタリングし、改善施策を実施することが重要です。

成功事例と2025年のトレンド

(1) BtoB成功事例(山洋電気「TECH-COMPASS」、freee「経理ハッカー」等)

BtoB企業のオウンドメディアサイト成功事例をご紹介します。

山洋電気「TECH-COMPASS」(製造業):

  • 製品・技術情報を発信するオウンドメディア
  • 専門性をアピールし、エンジニアやバイヤーの信頼を獲得
  • 製造業でのオウンドメディア活用の成功例(Director Bank調査)

freee「経理ハッカー」:

  • 経営者向けに経理効率化情報を提供
  • リード獲得を主目的とし、月間数十万PVを達成
  • 実践的なノウハウ記事で読者の課題を解決

鎌倉新書「いい葬儀」:

  • 2018年に自然検索流入が前年比37〜267%増加
  • 2019年には売上が71%増加
  • SEO戦略の成功事例

これらの事例は、明確な目的設定と質の高いコンテンツ制作により、長期的な成果を上げています。

(2) 採用オウンドメディアの増加(2025年トレンド)

2025年は、採用オウンドメディアが増加しています(TECH HIRE調査、2025年)。

採用オウンドメディアの特徴:

  • 企業文化や価値観を発信し、共感する人材を集める
  • 社員インタビューやプロジェクト事例で職場の雰囲気を伝える
  • 求職者とのマッチング精度を向上

成功事例:

  • メルカリ採用サイト
  • サイボウズ採用サイト
  • サイバーエージェント採用サイト

これらのサイトは、デザインとコンテンツ構成で差別化を図り、優秀な人材を獲得しています。

(3) 製造業でのオウンドメディア活用

製造業でもオウンドメディアの成功事例が増加しています。技術力や専門性のアピールに活用されています。

製造業の成功事例:

  • 山洋電気「TECH-COMPASS」(モーター・制御機器メーカー)
  • キーエンス(計測機器メーカー)
  • 三菱電機(総合電機メーカー)

製造業では、技術情報や導入事例を発信することで、エンジニアやバイヤーの信頼を獲得し、問い合わせ増加につなげています。

※成功事例のPV数やリード獲得数は、企業規模・業種・投資額により結果が異なります。(この記事は2024年11月時点の情報です)

まとめ:自社に合ったオウンドメディアサイト構築のポイント

オウンドメディアサイトは、リード獲得やブランディングに有効な手段ですが、目的が不明確なまま構築すると、方向性が定まらず運用が続かないリスクがあります。立ち上げ前の戦略設計が必須です。

この記事のポイントを振り返ると:

  • オウンドメディアサイトは「ブログ形式で情報発信するWebサイト」で、コーポレートサイトとは目的が異なる
  • BtoB企業の90%がリード獲得と資料請求を主目的として運営
  • 構築方法は①サイト作成サービス、②CMS活用、③完全カスタム開発の3つ。費用は無料〜300万円以上
  • SEOがオウンドメディアサイトの中心。キーワード設計が最重要
  • 効果が出るまで通常6ヶ月〜1年以上。鎌倉新書の「いい葬儀」は2018年に自然検索流入が前年比37〜267%増加

次のアクション:

  • 自社の目的を明確にする(リード獲得、ブランディング、採用等)
  • ターゲット(ペルソナ)を具体的に設定する
  • 予算と運用体制を整理し、構築方法を選定する(サイト作成サービス、CMS活用、完全カスタム開発)
  • キーワード設計とコンテンツ戦略を策定する
  • 複数の制作会社から見積もりを取得し、比較検討する

自社に合ったオウンドメディアサイト構築で、長期的な集客基盤とブランド資産を構築しましょう。

よくある質問

Q1オウンドメディアサイトの構築にかかる費用はどれくらい?

A1無料〜300万円以上と幅広いです。簡易的なサイトなら50万円程度、コンテンツ戦略込みなら100〜300万円が相場です。サイト作成サービス(Wix、Jimdo等)なら無料〜月額数千円、CMS活用(WordPress等)なら数万円〜50万円、完全カスタム開発なら100万円〜300万円以上です。制作会社により大きく異なるため、複数の見積もりを比較すべきです。

Q2オウンドメディアサイトの構築方法は?初心者でも作れるか?

A2レベル別に3つの選択肢があります。①サイト作成サービス(簡単・低コスト、Wix、Jimdo等)、②CMS活用(WordPress、はてなブログPro、note pro等)、③完全カスタム開発(大規模・高度、制作会社に依頼)。初心者ならサイト作成サービスかCMSが推奨されます。WordPressは世界シェアNo.1で、カスタマイズ性が高く、プラグインが豊富です。

Q3オウンドメディアサイトの効果が出るまでどのくらいかかる?

A3SEO中心の戦略のため、通常6ヶ月〜1年以上かかります。鎌倉新書の「いい葬儀」は2018年に自然検索流入が前年比37〜267%増加、2019年には売上が71%増加した成功事例がありますが、これは長期的な取り組みの結果です。短期的な成果を期待せず、継続的なコンテンツ制作と更新が必要です。

Q4オウンドメディアサイトとコーポレートサイトの違いは?

A4目的とコンテンツの性質が異なります。コーポレートサイトは企業情報や製品情報を掲載する公式サイトで、静的なコンテンツが中心です。オウンドメディアサイトは読者の課題解決やブランディングを目的とした情報サイトで、ブログ形式で定期的に記事を更新します。BtoB企業の90%がリード獲得と資料請求を主目的として運営しています。

Q52025年のオウンドメディアサイトのトレンドは?

A52025年は採用オウンドメディアが増加しています。企業文化や価値観を発信し、求職者とのマッチング精度を高める動きが活発です。また、製造業でもオウンドメディアの成功事例が増加しており、山洋電気の「TECH-COMPASS」など技術情報発信が活発化しています。BtoB企業の40%がすでにオウンドメディアを保有しており、競争が激化しています。

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Decisense編集部

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