オウンドメディアを始めたけれど、成果が出ているのか分からない...
B2B企業のマーケティング担当者として、「オウンドメディアを立ち上げたものの、PVは増えているが、事業の数字が改善しない」「そもそも何を目指して運営しているのか分からなくなってきた」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
オウンドメディアは、目的が曖昧なまま始めると失敗しやすいと言われています。「PV獲得」そのものを主目的にしてしまうと、事業の数字が改善しない「オウンドメディアは調子いいけれど、事業の数字はよくない」という現象が起こります。
この記事では、オウンドメディアの5大目的(認知拡大、リード獲得、育成、採用、ブランディング)を体系的に解説し、各目的に対するKPI設定、コンテンツ戦略、成功事例、失敗要因まで実践的に提示します。
この記事のポイント:
- オウンドメディア運営の本質は「事業課題の解決」であり、PV獲得そのものは目的ではない
- 主な目的は認知拡大、リード獲得、ナーチャリング、採用、顧客エンゲージメント向上の5つ(宣伝会議調査ではブランディングが最多)
- KGI(最終目標)とKPI(中間指標)を明確に設定し、定期的に振り返ることが重要
- SMART原則(具体性、測定可能性、達成可能性、関連性、期限)に基づいてKPIを設定
- 運営メンバー全員で目的を共有することで、間違った方向に進むのを防ぐ
オウンドメディアの目的とは何か
(1) オウンドメディア運営の本質は「事業課題の解決」
オウンドメディア運営の**本来の目的は「事業課題の解決」**です(ferret One調査)。
「PVを増やす」「記事を更新する」といった活動は、あくまで手段であり、目的ではありません。オウンドメディアを通じて、自社の事業課題(リード不足、認知度不足、採用難等)を解決することが本質です。
事業課題の例:
- リードが不足しており、新規顧客獲得が進まない
- 市場での認知度が低く、指名検索が少ない
- 採用応募が集まらず、優秀な人材を獲得できない
- 既存顧客のエンゲージメントが低く、解約率が高い
これらの課題を解決する手段として、オウンドメディアが有効かどうかを検討することが重要です。
(2) 目的設定がなぜ重要なのか
オウンドメディアで目的設定が重要な理由は、目的を意識せずに始めると、後で方向性がブレる原因になるためです。
目的設定の重要性:
- リソースの最適配分: 限られた人員・予算を、どの活動に集中すべきか明確になる
- KPI設定の基準: 目的に応じた適切なKPI(成功指標)を設定できる
- 運営メンバーの意識統一: 全員で目的を共有することで、間違った方向に進むのを防ぐ(ferret One調査)
- 経営層への説明責任: 目的とKPIが明確であれば、成果を定量的に報告できる
オウンドメディアの運営は長期的な取り組みになるため、最初の目的設定が成否を左右します。
(3) 目的と手段を見誤るリスク(PV至上主義の落とし穴)
オウンドメディアでよくある失敗パターンは、「PV獲得」が主目的になってしまうことです(ferret One調査)。
PV至上主義の落とし穴:
- PVは増えているが、リード獲得や売上につながらない
- トレンド記事ばかり書いて、自社の専門領域から外れる
- 「オウンドメディアは調子いいけれど、事業の数字はよくない」という現象が起こる
PVは重要な指標ですが、あくまで中間指標(KPI)であり、最終目標(KGI)ではありません。目的と手段を見誤ると、本来の目標達成ができなくなります。
オウンドメディアの5大目的
(1) 認知拡大・ブランディング
オウンドメディアの最も一般的な目的は、認知拡大とブランディングです。宣伝会議の調査では、ブランディングが最多の目的として挙げられています(PR TIMES MAGAZINE調査)。
認知拡大・ブランディングの狙い:
- 市場での認知度を高め、指名検索(社名・製品名での検索)を増やす
- 専門性や信頼性をアピールし、業界内でのポジションを確立
- ユーザー目線のコンテンツ提供を通じて、信頼関係を構築
成功事例:
- サイボウズ式(働き方・チームワーク情報)
- 北欧、暮らしの道具店(ライフスタイル提案)
これらのオウンドメディアは、企業の価値観や専門性を発信することで、ブランドイメージを確立しています。
(2) リード獲得(見込み客の創出)
BtoB企業にとって、**リード獲得(見込み客の創出)**は最重要目的の一つです。
リード獲得の狙い:
- SEO記事で検索流入を獲得
- 記事内で自社製品・サービスの価値を伝える
- 問い合わせフォームや資料請求ボタンでリード化
- リードナーチャリング(育成)を経て商談化
INNOVA調査によると、主な目的は検索流入の増加、リード獲得、ブランド強化とされています。
成功事例:
- ferret(Webマーケティング情報): 月間500万PV超、月間250件以上のリード獲得
- LISKUL(営業・マーケティングノウハウ): 月間100万PV以上、多数のリードを創出
(3) ナーチャリング(見込み客の育成)
ナーチャリングとは、見込み客を顧客へと育成し、長期的な関係を築くことです(INNOVA調査)。
ナーチャリングの狙い:
- 検討初期段階の見込み客に、段階的に情報を提供
- メールマガジンやホワイトペーパーで継続的に接点を持つ
- 購買意欲を醸成し、商談化・成約へとつなげる
ナーチャリング向けコンテンツ例:
- 業界動向レポート
- 導入事例・成功事例
- ウェビナー・セミナー案内
ナーチャリングを目的とする場合、単発の記事だけでなく、継続的なコンテンツ提供が重要です。
(4) 採用・リクルーティング
近年、採用・リクルーティングを目的としたオウンドメディアが増加しています(INNOVA調査、PR TIMES MAGAZINE調査)。
採用・リクルーティングの狙い:
- 企業文化や価値観を発信し、共感する人材を集める
- 社員インタビューやプロジェクト事例で職場の雰囲気を伝える
- 入社後のミスマッチを減らし、定着率を向上
- 求職者とのマッチング精度を高める
成功事例:
- サイボウズ採用サイト
- メルカリ採用サイト
- サイバーエージェント採用サイト
2024年のトレンドとして、採用オウンドメディアが注目されています。
(5) 顧客エンゲージメントの向上
既存顧客との関係を深め、顧客エンゲージメントを向上させることも重要な目的です(INNOVA調査)。
顧客エンゲージメント向上の狙い:
- 既存顧客向けに有益な情報を継続的に提供
- 製品の活用方法や成功事例を共有し、満足度を向上
- リピート購入やアップセル・クロスセルを促進
- 解約率(チャーン)を低減
エンゲージメント向上向けコンテンツ例:
- 製品活用ガイド
- ユーザー成功事例
- アップデート情報・新機能紹介
これらのコンテンツを通じて、既存顧客のロイヤルティを高めることができます。
目的に応じたKPI・KGI設定
(1) KGIとKPIの違い(最終目標と中間指標)
オウンドメディアの成果を測定するには、**KGI(最終目標)とKPI(中間指標)**を明確に設定することが重要です(PR TIMES MAGAZINE調査)。
KGI(Key Goal Indicator / 最終目標):
- 売上目標(年間〇〇万円)
- リード獲得数(月間〇〇件)
- 商談化数(月間〇〇件)
- 採用応募数(月間〇〇件)
KPI(Key Performance Indicator / 中間指標):
- PV(ページビュー): 記事の閲覧数
- UU(ユニークユーザー): 訪問者数
- CV(コンバージョン): 問い合わせ・資料請求の件数
- 検索順位: 狙ったキーワードでの順位
- SNSシェア数: 記事の拡散状況
KPIはKGI達成の進捗を測る指標であり、定期的にモニタリングして改善施策を実施します。
(2) SMART原則に基づくKPI設定
KPIを設定する際は、SMART原則に基づくことが推奨されます(PR TIMES MAGAZINE調査、ferret One調査)。
SMART原則:
- S(Specific / 具体性): 具体的な数値目標を設定(「PVを増やす」ではなく「月間10万PV」)
- M(Measurable / 測定可能性): 測定可能な指標を選ぶ(Google Analytics等で計測)
- A(Achievable / 達成可能性): 現実的に達成可能な目標を設定
- R(Relevant / 関連性): 事業目標と関連する指標を選ぶ
- T(Time-bound / 期限): 達成期限を設定(「6ヶ月後」「2025年3月末」等)
例: 「6ヶ月後に月間10万PV、月間20件のリード獲得を達成する」
(3) 目的別KPI例(認知拡大→PV・UU、リード獲得→CV・商談化数等)
オウンドメディアの目的に応じて、適切なKPIを設定します。
目的別KPI例:
認知拡大・ブランディング:
- PV(月間〇〇万PV)
- UU(月間〇〇万UU)
- 指名検索数(「社名」での検索回数)
- SNSフォロワー数・エンゲージメント率
リード獲得:
- CV数(問い合わせ・資料請求の月間〇〇件)
- CVR(コンバージョン率: 訪問者のうちCV化した割合)
- リード獲得単価(CPA)
ナーチャリング:
- メルマガ登録数(月間〇〇件)
- 商談化率(リードのうち商談化した割合)
- 再訪問率(リピーター割合)
採用・リクルーティング:
- 採用応募数(月間〇〇件)
- 採用サイトPV(月間〇〇万PV)
- 内定承諾率(内定者のうち承諾した割合)
顧客エンゲージメント:
- 既存顧客の記事閲覧数(月間〇〇PV)
- 解約率(チャーン)の低減
- アップセル・クロスセル率
これらのKPIを定期的にモニタリングし、PDCAサイクルで改善を回します。
目的別のコンテンツ戦略
(1) ペルソナ設定とテーマ設計
オウンドメディアのコンテンツ戦略では、**ペルソナ(ターゲットとなる架空の人物像)**を具体的に設定することが重要です(ferret One調査)。
ペルソナ設定の例:
- 年齢: 35歳
- 役職: B2B SaaS企業のマーケティング担当者
- 課題: リード獲得が進まず、上司から成果を求められている
- 情報収集方法: Google検索、業界メディア、SNS
ペルソナの課題や興味に対応するテーマ・コンテンツを設計することで、読者の共感を得やすくなります。
(2) 認知拡大向けコンテンツ(SEO重視、幅広いテーマ)
認知拡大を目的とする場合、SEOを重視し、幅広いテーマで記事を作成します。
認知拡大向けコンテンツ例:
- 業界用語解説(「〇〇とは?」)
- トレンド記事(「2025年の〇〇動向」)
- 比較記事(「〇〇と△△の違い」)
- ノウハウ記事(「〇〇の始め方」)
これらのコンテンツを通じて、潜在層(まだ自社を知らない層)にリーチし、認知度を高めます。
(3) リード獲得向けコンテンツ(課題解決型、CTA設置)
リード獲得を目的とする場合、課題解決型のコンテンツを作成し、記事内に**CTA(Call to Action / 行動喚起)**を設置します。
リード獲得向けコンテンツ例:
- 課題解決記事(「〇〇の悩みを解決する方法」)
- 導入事例・成功事例
- ホワイトペーパー・資料ダウンロード
- 無料トライアル・デモ案内
記事の最後に「資料請求はこちら」「無料相談はこちら」などのCTAを設置し、リード化を促します。
(4) 採用向けコンテンツ(企業文化・価値観発信)
採用を目的とする場合、企業文化や価値観を発信するコンテンツを作成します。
採用向けコンテンツ例:
- 社員インタビュー(「〇〇部の一日」)
- プロジェクト事例(「〇〇プロジェクトの裏側」)
- 企業文化・バリュー紹介
- オフィス・働き方紹介
これらのコンテンツを通じて、求職者が「この会社で働きたい」と感じるような情報を提供します。
目的設定の失敗パターンと成功事例
(1) 失敗パターン:目的が曖昧なまま開始
オウンドメディアでよくある失敗パターンは、目的が曖昧なまま開始してしまうことです。
失敗の兆候:
- 「とりあえず記事を書いている」状態
- KPIが設定されておらず、成果を測定できない
- 運営メンバー間で目的の認識がバラバラ
- 経営層に成果を報告できない
このような状態では、方向性がブレやすく、長期的な成果を上げることが難しくなります。
(2) 失敗パターン:PV獲得が主目的になる
もう一つの失敗パターンは、PV獲得が主目的になってしまうことです(ferret One調査)。
失敗の兆候:
- PVは増えているが、リード獲得や売上につながらない
- トレンド記事ばかり書いて、自社の専門領域から外れる
- 「オウンドメディアは調子いいけれど、事業の数字はよくない」という現象
PV獲得は重要ですが、あくまで中間指標(KPI)であり、最終目標(KGI)ではありません。
(3) 成功事例から学ぶ目的設定のポイント
成功しているオウンドメディアは、明確な目的設定と戦略的運用を行っています(INNOVA調査、LANY調査)。
成功事例のポイント:
ferret(Webマーケティング情報):
- 目的: リード獲得
- KPI: 月間500万PV超、月間250件以上のリード獲得
- 戦略: SEO重視、実践的なノウハウ記事
サイボウズ式(働き方・チームワーク情報):
- 目的: ブランディング・採用
- KPI: 企業イメージ向上、採用応募増加
- 戦略: 企業文化・価値観の発信
鎌倉新書「いい葬儀」:
- 目的: リード獲得
- 成果: 2018年に自然検索流入が前年比37〜267%増加、2019年に売上71%増加
- 戦略: SEO戦略の徹底
これらの成功事例に共通するのは、目的を明確にし、それに応じたKPI設定とコンテンツ戦略を実行している点です。
まとめ:自社に合った目的設定のポイント
オウンドメディアは、目的が曖昧なまま始めると失敗しやすいツールです。明確な目的設定と戦略的運用が、成功の鍵となります。
この記事のポイントを振り返ると:
- オウンドメディア運営の本質は「事業課題の解決」であり、PV獲得そのものは目的ではない
- 主な目的は認知拡大、リード獲得、ナーチャリング、採用、顧客エンゲージメント向上の5つ
- KGI(最終目標)とKPI(中間指標)を明確に設定し、定期的に振り返る
- SMART原則(具体性、測定可能性、達成可能性、関連性、期限)に基づいてKPIを設定
- 運営メンバー全員で目的を共有することで、間違った方向に進むのを防ぐ
次のアクション:
- 自社の事業課題を整理し、オウンドメディアで解決できる課題を特定する
- 5大目的(認知拡大、リード獲得、ナーチャリング、採用、顧客エンゲージメント)から、自社に合った目的を選択する
- KGI(最終目標)とKPI(中間指標)をSMART原則に基づいて設定する
- ペルソナを具体的に設定し、目的に応じたコンテンツ戦略を策定する
- 運営メンバー全員で目的を共有し、定期的にKPIを振り返る
自社に合った目的設定で、オウンドメディアを事業成長のエンジンに変えましょう。
