オウンドメディアの目的とはB2B企業の戦略設計ガイド

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

オウンドメディアを始めたけれど、成果が出ているのか分からない...

B2B企業のマーケティング担当者として、「オウンドメディアを立ち上げたものの、PVは増えているが、事業の数字が改善しない」「そもそも何を目指して運営しているのか分からなくなってきた」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

オウンドメディアは、目的が曖昧なまま始めると失敗しやすいと言われています。「PV獲得」そのものを主目的にしてしまうと、事業の数字が改善しない「オウンドメディアは調子いいけれど、事業の数字はよくない」という現象が起こります。

この記事では、オウンドメディアの5大目的(認知拡大、リード獲得、育成、採用、ブランディング)を体系的に解説し、各目的に対するKPI設定、コンテンツ戦略、成功事例、失敗要因まで実践的に提示します。

この記事のポイント:

  • オウンドメディア運営の本質は「事業課題の解決」であり、PV獲得そのものは目的ではない
  • 主な目的は認知拡大、リード獲得、ナーチャリング、採用、顧客エンゲージメント向上の5つ(宣伝会議調査ではブランディングが最多)
  • KGI(最終目標)とKPI(中間指標)を明確に設定し、定期的に振り返ることが重要
  • SMART原則(具体性、測定可能性、達成可能性、関連性、期限)に基づいてKPIを設定
  • 運営メンバー全員で目的を共有することで、間違った方向に進むのを防ぐ

オウンドメディアの目的とは何か

(1) オウンドメディア運営の本質は「事業課題の解決」

オウンドメディア運営の**本来の目的は「事業課題の解決」**です(ferret One調査)。

「PVを増やす」「記事を更新する」といった活動は、あくまで手段であり、目的ではありません。オウンドメディアを通じて、自社の事業課題(リード不足、認知度不足、採用難等)を解決することが本質です。

事業課題の例:

  • リードが不足しており、新規顧客獲得が進まない
  • 市場での認知度が低く、指名検索が少ない
  • 採用応募が集まらず、優秀な人材を獲得できない
  • 既存顧客のエンゲージメントが低く、解約率が高い

これらの課題を解決する手段として、オウンドメディアが有効かどうかを検討することが重要です。

(2) 目的設定がなぜ重要なのか

オウンドメディアで目的設定が重要な理由は、目的を意識せずに始めると、後で方向性がブレる原因になるためです。

目的設定の重要性:

  • リソースの最適配分: 限られた人員・予算を、どの活動に集中すべきか明確になる
  • KPI設定の基準: 目的に応じた適切なKPI(成功指標)を設定できる
  • 運営メンバーの意識統一: 全員で目的を共有することで、間違った方向に進むのを防ぐ(ferret One調査)
  • 経営層への説明責任: 目的とKPIが明確であれば、成果を定量的に報告できる

オウンドメディアの運営は長期的な取り組みになるため、最初の目的設定が成否を左右します。

(3) 目的と手段を見誤るリスク(PV至上主義の落とし穴)

オウンドメディアでよくある失敗パターンは、「PV獲得」が主目的になってしまうことです(ferret One調査)。

PV至上主義の落とし穴:

  • PVは増えているが、リード獲得や売上につながらない
  • トレンド記事ばかり書いて、自社の専門領域から外れる
  • 「オウンドメディアは調子いいけれど、事業の数字はよくない」という現象が起こる

PVは重要な指標ですが、あくまで中間指標(KPI)であり、最終目標(KGI)ではありません。目的と手段を見誤ると、本来の目標達成ができなくなります。

オウンドメディアの5大目的

(1) 認知拡大・ブランディング

オウンドメディアの最も一般的な目的は、認知拡大とブランディングです。宣伝会議の調査では、ブランディングが最多の目的として挙げられています(PR TIMES MAGAZINE調査)。

認知拡大・ブランディングの狙い:

  • 市場での認知度を高め、指名検索(社名・製品名での検索)を増やす
  • 専門性や信頼性をアピールし、業界内でのポジションを確立
  • ユーザー目線のコンテンツ提供を通じて、信頼関係を構築

成功事例:

  • サイボウズ式(働き方・チームワーク情報)
  • 北欧、暮らしの道具店(ライフスタイル提案)

これらのオウンドメディアは、企業の価値観や専門性を発信することで、ブランドイメージを確立しています。

(2) リード獲得(見込み客の創出)

BtoB企業にとって、**リード獲得(見込み客の創出)**は最重要目的の一つです。

リード獲得の狙い:

  • SEO記事で検索流入を獲得
  • 記事内で自社製品・サービスの価値を伝える
  • 問い合わせフォームや資料請求ボタンでリード化
  • リードナーチャリング(育成)を経て商談化

INNOVA調査によると、主な目的は検索流入の増加、リード獲得、ブランド強化とされています。

成功事例:

  • ferret(Webマーケティング情報): 月間500万PV超、月間250件以上のリード獲得
  • LISKUL(営業・マーケティングノウハウ): 月間100万PV以上、多数のリードを創出

(3) ナーチャリング(見込み客の育成)

ナーチャリングとは、見込み客を顧客へと育成し、長期的な関係を築くことです(INNOVA調査)。

ナーチャリングの狙い:

  • 検討初期段階の見込み客に、段階的に情報を提供
  • メールマガジンやホワイトペーパーで継続的に接点を持つ
  • 購買意欲を醸成し、商談化・成約へとつなげる

ナーチャリング向けコンテンツ例:

  • 業界動向レポート
  • 導入事例・成功事例
  • ウェビナー・セミナー案内

ナーチャリングを目的とする場合、単発の記事だけでなく、継続的なコンテンツ提供が重要です。

(4) 採用・リクルーティング

近年、採用・リクルーティングを目的としたオウンドメディアが増加しています(INNOVA調査、PR TIMES MAGAZINE調査)。

採用・リクルーティングの狙い:

  • 企業文化や価値観を発信し、共感する人材を集める
  • 社員インタビューやプロジェクト事例で職場の雰囲気を伝える
  • 入社後のミスマッチを減らし、定着率を向上
  • 求職者とのマッチング精度を高める

成功事例:

  • サイボウズ採用サイト
  • メルカリ採用サイト
  • サイバーエージェント採用サイト

2024年のトレンドとして、採用オウンドメディアが注目されています。

(5) 顧客エンゲージメントの向上

既存顧客との関係を深め、顧客エンゲージメントを向上させることも重要な目的です(INNOVA調査)。

顧客エンゲージメント向上の狙い:

  • 既存顧客向けに有益な情報を継続的に提供
  • 製品の活用方法や成功事例を共有し、満足度を向上
  • リピート購入やアップセル・クロスセルを促進
  • 解約率(チャーン)を低減

エンゲージメント向上向けコンテンツ例:

  • 製品活用ガイド
  • ユーザー成功事例
  • アップデート情報・新機能紹介

これらのコンテンツを通じて、既存顧客のロイヤルティを高めることができます。

目的に応じたKPI・KGI設定

(1) KGIとKPIの違い(最終目標と中間指標)

オウンドメディアの成果を測定するには、**KGI(最終目標)とKPI(中間指標)**を明確に設定することが重要です(PR TIMES MAGAZINE調査)。

KGI(Key Goal Indicator / 最終目標):

  • 売上目標(年間〇〇万円)
  • リード獲得数(月間〇〇件)
  • 商談化数(月間〇〇件)
  • 採用応募数(月間〇〇件)

KPI(Key Performance Indicator / 中間指標):

  • PV(ページビュー): 記事の閲覧数
  • UU(ユニークユーザー): 訪問者数
  • CV(コンバージョン): 問い合わせ・資料請求の件数
  • 検索順位: 狙ったキーワードでの順位
  • SNSシェア数: 記事の拡散状況

KPIはKGI達成の進捗を測る指標であり、定期的にモニタリングして改善施策を実施します。

(2) SMART原則に基づくKPI設定

KPIを設定する際は、SMART原則に基づくことが推奨されます(PR TIMES MAGAZINE調査、ferret One調査)。

SMART原則:

  • S(Specific / 具体性): 具体的な数値目標を設定(「PVを増やす」ではなく「月間10万PV」)
  • M(Measurable / 測定可能性): 測定可能な指標を選ぶ(Google Analytics等で計測)
  • A(Achievable / 達成可能性): 現実的に達成可能な目標を設定
  • R(Relevant / 関連性): 事業目標と関連する指標を選ぶ
  • T(Time-bound / 期限): 達成期限を設定(「6ヶ月後」「2025年3月末」等)

例: 「6ヶ月後に月間10万PV、月間20件のリード獲得を達成する」

(3) 目的別KPI例(認知拡大→PV・UU、リード獲得→CV・商談化数等)

オウンドメディアの目的に応じて、適切なKPIを設定します。

目的別KPI例:

認知拡大・ブランディング:

  • PV(月間〇〇万PV)
  • UU(月間〇〇万UU)
  • 指名検索数(「社名」での検索回数)
  • SNSフォロワー数・エンゲージメント率

リード獲得:

  • CV数(問い合わせ・資料請求の月間〇〇件)
  • CVR(コンバージョン率: 訪問者のうちCV化した割合)
  • リード獲得単価(CPA)

ナーチャリング:

  • メルマガ登録数(月間〇〇件)
  • 商談化率(リードのうち商談化した割合)
  • 再訪問率(リピーター割合)

採用・リクルーティング:

  • 採用応募数(月間〇〇件)
  • 採用サイトPV(月間〇〇万PV)
  • 内定承諾率(内定者のうち承諾した割合)

顧客エンゲージメント:

  • 既存顧客の記事閲覧数(月間〇〇PV)
  • 解約率(チャーン)の低減
  • アップセル・クロスセル率

これらのKPIを定期的にモニタリングし、PDCAサイクルで改善を回します。

目的別のコンテンツ戦略

(1) ペルソナ設定とテーマ設計

オウンドメディアのコンテンツ戦略では、**ペルソナ(ターゲットとなる架空の人物像)**を具体的に設定することが重要です(ferret One調査)。

ペルソナ設定の例:

  • 年齢: 35歳
  • 役職: B2B SaaS企業のマーケティング担当者
  • 課題: リード獲得が進まず、上司から成果を求められている
  • 情報収集方法: Google検索、業界メディア、SNS

ペルソナの課題や興味に対応するテーマ・コンテンツを設計することで、読者の共感を得やすくなります。

(2) 認知拡大向けコンテンツ(SEO重視、幅広いテーマ)

認知拡大を目的とする場合、SEOを重視し、幅広いテーマで記事を作成します。

認知拡大向けコンテンツ例:

  • 業界用語解説(「〇〇とは?」)
  • トレンド記事(「2025年の〇〇動向」)
  • 比較記事(「〇〇と△△の違い」)
  • ノウハウ記事(「〇〇の始め方」)

これらのコンテンツを通じて、潜在層(まだ自社を知らない層)にリーチし、認知度を高めます。

(3) リード獲得向けコンテンツ(課題解決型、CTA設置)

リード獲得を目的とする場合、課題解決型のコンテンツを作成し、記事内に**CTA(Call to Action / 行動喚起)**を設置します。

リード獲得向けコンテンツ例:

  • 課題解決記事(「〇〇の悩みを解決する方法」)
  • 導入事例・成功事例
  • ホワイトペーパー・資料ダウンロード
  • 無料トライアル・デモ案内

記事の最後に「資料請求はこちら」「無料相談はこちら」などのCTAを設置し、リード化を促します。

(4) 採用向けコンテンツ(企業文化・価値観発信)

採用を目的とする場合、企業文化や価値観を発信するコンテンツを作成します。

採用向けコンテンツ例:

  • 社員インタビュー(「〇〇部の一日」)
  • プロジェクト事例(「〇〇プロジェクトの裏側」)
  • 企業文化・バリュー紹介
  • オフィス・働き方紹介

これらのコンテンツを通じて、求職者が「この会社で働きたい」と感じるような情報を提供します。

目的設定の失敗パターンと成功事例

(1) 失敗パターン:目的が曖昧なまま開始

オウンドメディアでよくある失敗パターンは、目的が曖昧なまま開始してしまうことです。

失敗の兆候:

  • 「とりあえず記事を書いている」状態
  • KPIが設定されておらず、成果を測定できない
  • 運営メンバー間で目的の認識がバラバラ
  • 経営層に成果を報告できない

このような状態では、方向性がブレやすく、長期的な成果を上げることが難しくなります。

(2) 失敗パターン:PV獲得が主目的になる

もう一つの失敗パターンは、PV獲得が主目的になってしまうことです(ferret One調査)。

失敗の兆候:

  • PVは増えているが、リード獲得や売上につながらない
  • トレンド記事ばかり書いて、自社の専門領域から外れる
  • 「オウンドメディアは調子いいけれど、事業の数字はよくない」という現象

PV獲得は重要ですが、あくまで中間指標(KPI)であり、最終目標(KGI)ではありません。

(3) 成功事例から学ぶ目的設定のポイント

成功しているオウンドメディアは、明確な目的設定と戦略的運用を行っています(INNOVA調査、LANY調査)。

成功事例のポイント:

ferret(Webマーケティング情報):

  • 目的: リード獲得
  • KPI: 月間500万PV超、月間250件以上のリード獲得
  • 戦略: SEO重視、実践的なノウハウ記事

サイボウズ式(働き方・チームワーク情報):

  • 目的: ブランディング・採用
  • KPI: 企業イメージ向上、採用応募増加
  • 戦略: 企業文化・価値観の発信

鎌倉新書「いい葬儀」:

  • 目的: リード獲得
  • 成果: 2018年に自然検索流入が前年比37〜267%増加、2019年に売上71%増加
  • 戦略: SEO戦略の徹底

これらの成功事例に共通するのは、目的を明確にし、それに応じたKPI設定とコンテンツ戦略を実行している点です。

まとめ:自社に合った目的設定のポイント

オウンドメディアは、目的が曖昧なまま始めると失敗しやすいツールです。明確な目的設定と戦略的運用が、成功の鍵となります。

この記事のポイントを振り返ると:

  • オウンドメディア運営の本質は「事業課題の解決」であり、PV獲得そのものは目的ではない
  • 主な目的は認知拡大、リード獲得、ナーチャリング、採用、顧客エンゲージメント向上の5つ
  • KGI(最終目標)とKPI(中間指標)を明確に設定し、定期的に振り返る
  • SMART原則(具体性、測定可能性、達成可能性、関連性、期限)に基づいてKPIを設定
  • 運営メンバー全員で目的を共有することで、間違った方向に進むのを防ぐ

次のアクション:

  • 自社の事業課題を整理し、オウンドメディアで解決できる課題を特定する
  • 5大目的(認知拡大、リード獲得、ナーチャリング、採用、顧客エンゲージメント)から、自社に合った目的を選択する
  • KGI(最終目標)とKPI(中間指標)をSMART原則に基づいて設定する
  • ペルソナを具体的に設定し、目的に応じたコンテンツ戦略を策定する
  • 運営メンバー全員で目的を共有し、定期的にKPIを振り返る

自社に合った目的設定で、オウンドメディアを事業成長のエンジンに変えましょう。

よくある質問

Q1オウンドメディアの目的は何か?

A1主な目的は認知拡大、リード獲得、ナーチャリング、採用、顧客エンゲージメント向上の5つです。宣伝会議の調査ではブランディングが最多の目的として挙げられています。ただし、本質は「事業課題の解決」であり、PV獲得そのものは目的ではありません。自社の事業課題に合わせて、最適な目的を設定することが重要です。

Q2KPIとKGIの違いは何か?

A2KGI(Key Goal Indicator)は最終目標で、売上目標、リード獲得数、商談化数などを指します。KPI(Key Performance Indicator)はKGI達成の進捗を測る中間指標で、PV、UU、CV、検索順位などがあります。KPIはSMART原則(具体性、測定可能性、達成可能性、関連性、期限)に基づいて設定し、定期的にモニタリングして改善施策を実施します。

Q3目的設定で失敗しないためのポイントは?

A3①運営メンバー全員で目的を共有すること、②目的と手段を見誤らないこと(PV至上主義に陥らない)、③定期的にKPIを見直し調整すること、④自社の事業課題に合わせた設定をすることが重要です。目的が曖昧なまま始めると、方向性がブレやすく、長期的な成果を上げることが難しくなります。

Q4オウンドメディアでPV獲得を目的にしてはいけないのか?

A4PV獲得そのものを主目的にすると、「オウンドメディアは調子いいけれど、事業の数字はよくない」という現象が起こります。PVは重要な指標ですが、あくまで中間指標(KPI)であり、最終目標(KGI)ではありません。事業課題の解決(リード獲得、売上向上等)を最終目標とし、PVはその進捗を測る指標として位置付けるべきです。

Q52024年のオウンドメディアのトレンドは?

A52024年は戦略的運用と目的設定の明確化がトレンドです。11月に「コンテンツマーケティング・グランプリ2024」が開催され、最も輝いたオウンドメディアが表彰されました。マーケティング、ブランディング、人材採用、社内教育、社内報を目的とするオウンドメディアが注目されており、成功の鍵は明確な目的設定と戦略的運用にあります。

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Decisense編集部

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