市場セグメントとは?セグメンテーションの基本と実践方法

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/21

市場セグメントとは:定義と重要性

「ターゲット市場を明確にしたいけれど、どう市場を分ければいいのか分からない...」B2Bマーケティング担当者や事業企画担当者の多くが、こうした悩みを抱えているのではないでしょうか。

市場セグメンテーション(市場細分化)は、効果的なマーケティング戦略の出発点です。しかし、どのような軸で市場を分ければよいのか、どのセグメントを狙うべきか、明確に理解している方は意外に少ないのが現状です。

この記事では、市場セグメントの基礎知識から4つの変数、実践方法(STP分析)、成功事例、注意点まで、B2Bマーケティング担当者・事業企画担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

この記事のポイント:

  • セグメントは市場を細分化したグループ、セグメンテーションは市場細分化のマーケティング活動
  • 4つの主要変数で分類:人口動態(年齢、所得等)、地理的(居住地域等)、心理的(価値観等)、行動(購入頻度等)
  • STP分析(セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング)の順で実施
  • 4Rの原則で評価:Rank(市場規模)、Realistic(成長性)、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)
  • 過度な細分化は管理コスト増大を招くため、適切な粒度でのセグメント設定が重要

(1) セグメントとは:市場を細分化したグループ

セグメント(Segment)とは、市場を特定の軸で細分化したグループのことです。

セグメントの具体例:

BtoC市場:

  • 「20代女性」「30代男性」(年齢・性別による分類)
  • 「東京都在住」「大阪府在住」(地理的分類)
  • 「健康志向」「価格重視」(価値観による分類)
  • 「月1回購入」「週1回購入」(購入頻度による分類)

BtoB市場:

  • 「従業員100人未満の中小企業」「従業員1000人以上の大企業」(企業規模による分類)
  • 「製造業」「IT・通信業」(業種による分類)
  • 「業務効率化目的」「売上拡大目的」(導入目的による分類)

セグメントは、年齢、性別、居住地、行動などの属性で市場を分けることで出現する集団やまとまりです。

(2) セグメンテーションとは:市場細分化のマーケティング活動

セグメンテーション(Segmentation)とは、市場細分化のことで、自社の対象となる市場を特定の軸で細分化するマーケティング活動を指します。

セグメンテーションとセグメントの違い:

用語 意味
セグメンテーション 市場を細分化する「活動・プロセス」 市場を年齢・性別で分類する作業
セグメント 細分化された「グループ・結果」 「20代女性」「30代男性」という各グループ

セグメンテーションの目的:

  • 顧客ニーズの明確化: グループごとに異なるニーズを把握
  • 効率的な予算配分: 効果の高いセグメントにリソースを集中
  • 競争優位性の確立: 特定セグメントに特化した製品・サービス提供
  • 顧客満足度向上: セグメントごとに最適化された施策を実施

セグメンテーションは、画一的なマーケティングから脱却し、顧客ニーズに合わせたパーソナライズされた訴求を可能にします。

(3) なぜセグメンテーションが重要なのか:顧客ニーズの明確化と効率的な予算配分

現代の消費者・企業は多様化しており、画一的なマーケティングでは効果が得られにくくなっています。セグメンテーションが重要な理由は以下の通りです。

1. 顧客ニーズの多様化

  • 同じ製品・サービスでも、顧客により求める価値が異なる
  • 例: BtoB SaaSツールを「コスト削減」のために導入する企業と「売上拡大」のために導入する企業では、重視する機能が異なる

2. マーケティング予算の効率化

  • すべての顧客に同じアプローチをすると、無駄なコストが発生
  • セグメントごとに最適化された施策を実施することで、ROIが向上

3. 競合との差別化

  • 特定のセグメントに特化することで、競合との差別化が可能
  • 例: 「大企業向け」ではなく「従業員100-500人の成長企業向け」に特化

4. 顧客満足度の向上

  • 自分に合った製品・サービス・メッセージを受け取ることで、顧客満足度が向上
  • 長期的な関係構築とロイヤリティ向上につながる

セグメンテーションのメリット:

  • マーケティング予算のROI向上(効果の高いセグメントに集中投資)
  • 顧客満足度の向上(ニーズに合った訴求)
  • 新規市場開拓の明確化(未開拓のセグメントの発見)
  • 競争優位性の確立(特定セグメントでのNo.1を目指す)

2025年現在、デジタルデータ活用による精緻なセグメンテーションが主流化しており、Web行動履歴、購買データ、CRM情報を統合分析する企業が増えています。

セグメンテーションの4つの変数:市場を細分化する軸

セグメンテーションには、主に4つの変数(軸)が用いられます。複数の変数を組み合わせることで、より精緻なセグメント作成が可能です。

(1) 人口動態変数(デモグラフィック):年齢、性別、所得、職業など

人口動態変数(デモグラフィック)は、年齢、性別、所得、職業、学歴など客観的な属性による分類です。最も基本的で、データ収集が比較的容易なセグメンテーション変数です。

BtoC市場の人口動態変数:

変数
年齢 10代、20代、30代、40代、50代以上
性別 男性、女性
所得 年収300万円未満、300-500万円、500-800万円、800万円以上
職業 会社員、公務員、自営業、学生、主婦
学歴 高卒、大卒、大学院卒
家族構成 独身、既婚(子供なし)、既婚(子供あり)

BtoB市場の人口動態変数(Firmographics):

変数
企業規模 従業員数(10人未満、10-100人、100-500人、500人以上)
売上規模 年商1億円未満、1-10億円、10-100億円、100億円以上
業種 製造業、IT・通信業、金融業、サービス業など
企業形態 上場企業、非上場企業、スタートアップ
設立年数 創業5年未満、5-10年、10-30年、30年以上

人口動態変数のメリット:

  • データが入手しやすい(国勢調査、企業データベース等)
  • 測定が客観的で明確
  • セグメントサイズの推定が容易

人口動態変数の注意点:

  • 属性だけでは顧客のニーズや価値観を完全には把握できない
  • 同じ年齢・性別でも、ライフスタイルや価値観は多様

(2) 地理的変数(ジオグラフィック):国、都道府県、気候など

地理的変数(ジオグラフィック)は、国、都道府県、気候など地理的条件による分類です。地域ごとに異なる文化、気候、購買習慣を考慮したセグメンテーションが可能です。

地理的変数の例:

変数
国・地域 日本、北米、欧州、アジア
都道府県 東京都、大阪府、愛知県など
都市規模 大都市、地方都市、郊外、農村部
気候 寒冷地、温暖地、多雨地域
人口密度 高密度、中密度、低密度

地理的変数の活用例:

小売業(コンビニ):

  • オフィス街: ランチメニュー、コーヒー、文房具を充実
  • 住宅街: 食材、日用品、子供向け商品を充実
  • 駅前: 通勤客向けの朝食、雑誌、スイーツを充実

BtoB企業:

  • 都市部: 対面営業を中心とした戦略
  • 地方: オンライン営業・ウェビナーを中心とした戦略

地理的変数のメリット:

  • 物流・配送コストの最適化
  • 地域特性に応じた製品・サービス提供
  • 店舗展開・拠点配置の戦略立案

地理的変数の注意点:

  • 地域内でも顧客ニーズは多様(単独での使用は不十分)
  • 複数変数との組み合わせが効果的

(3) 心理的変数(サイコグラフィック):価値観、ライフスタイル、性格など

心理的変数(サイコグラフィック)は、価値観、ライフスタイル、性格など心理的要素による分類です。より深い顧客理解が可能ですが、データ収集が難しいという特徴があります。

心理的変数の例:

変数
価値観 健康志向、環境配慮、価格重視、品質重視
ライフスタイル アクティブ、インドア派、家族重視、仕事重視
性格 保守的、革新的、リスク回避型、冒険好き
興味関心 スポーツ、旅行、グルメ、読書、音楽
社会的地位意識 ステータス重視、実用性重視

心理的変数の活用例:

スターバックス:

  • ターゲット: 「第三の場所(自宅・職場以外のくつろぎ空間)」を求める価値観を持つ顧客
  • 訴求: 高品質なコーヒーと快適な空間という情緒的価値

BtoB SaaSツール:

  • 革新的な企業: 最新技術・機能を前面に訴求
  • 保守的な企業: 安定性・実績・サポート体制を前面に訴求

心理的変数のメリット:

  • 深い顧客理解が可能
  • ブランド戦略・コミュニケーション戦略に直結
  • 競合との差別化が明確になる

心理的変数の注意点:

  • データ収集が難しく、コストが高い(アンケート、インタビュー等が必要)
  • 測定が主観的になりやすい
  • 個人情報保護法やプライバシー配慮が必要

※心理的変数のデータ収集には個人情報保護法やプライバシー配慮が必要です。データ利用の透明性を確保し、適切な同意取得を行いましょう。

(4) 行動変数(ビヘイビア):購入頻度、利用状況、ロイヤリティなど

行動変数(ビヘイビア)は、購入頻度、利用状況、ロイヤリティなど行動パターンによる分類です。過去の行動データに基づくため、客観的で測定可能なセグメンテーションが可能です。

行動変数の例:

変数
購入頻度 初回購入、月1回、週1回、日常的
購入金額 低額購入、中額購入、高額購入
利用状況 ヘビーユーザー、ライトユーザー、休眠ユーザー
ロイヤリティ ロイヤル顧客、スイッチャー(競合製品も購入)
購入のきっかけ 価格、機能、デザイン、口コミ
利用シーン 自宅、職場、外出先

行動変数の活用例:

ECサイト:

  • 初回購入者: 初回限定クーポン提供、使い方ガイド送付
  • リピーター: 新商品の先行案内、ポイント優遇
  • 休眠顧客: 特別オファー、サービス改善のフィードバック依頼

BtoB SaaSツール:

  • ヘビーユーザー: アップセル・クロスセルの提案
  • ライトユーザー: 利用促進のためのオンボーディング強化
  • 解約リスク顧客: 個別フォロー、サポート強化

行動変数のメリット:

  • 過去の行動データに基づくため、客観的で測定可能
  • CRM、MAツール、Webアクセス解析で容易にデータ収集可能
  • 即座にマーケティング施策に反映しやすい

行動変数の注意点:

  • 過去の行動だけでは、将来のニーズを完全には予測できない
  • 行動データがない新規顧客には適用困難

複数変数の組み合わせ:

実際のセグメンテーションでは、複数の変数を組み合わせて精緻なセグメントを作成することが一般的です。

例: BtoB SaaSツールのセグメント

  • セグメント1: 「従業員100-500人の製造業で、業務効率化目的、導入検討中」
    • 人口動態(企業規模・業種) + 行動(導入目的・検討段階)
  • セグメント2: 「従業員10-50人のIT企業で、売上拡大目的、既存顧客」
    • 人口動態(企業規模・業種) + 行動(導入目的・顧客ステータス)

このように複数変数を組み合わせることで、より具体的でアクションにつながるセグメントを作成できます。

※セグメンテーションの変数や手法は業種・製品により最適解が異なるため、自社の状況に応じた選択が必要です。

セグメンテーションの実践方法:STP分析と4Rの原則

セグメンテーションは、STP分析の一部として実施するのが一般的です。また、作成したセグメントは4Rの原則で評価します。

(1) STP分析の全体像:セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング

STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3ステップで構成されるマーケティング戦略フレームワークです。

STP分析の3ステップ:

ステップ1: セグメンテーション(市場細分化)

  • 市場を特定の軸で細分化
  • 4つの変数(人口動態、地理的、心理的、行動)で分類
  • 例: 「従業員100-500人の製造業」「従業員10-50人のIT企業」

ステップ2: ターゲティング(標的市場の選定)

  • 細分化した市場の中から、どのセグメントを狙うかを決定
  • 4Rの原則(後述)で評価し、最適なセグメントを選択
  • 例: 「従業員100-500人の製造業」を標的市場に選定

ステップ3: ポジショニング(市場における立ち位置の決定)

  • 選定したセグメントにおいて、競合との差別化ポイントを明確化
  • どのような価値を提供するか、どのように認知されたいかを定義
  • 例: 「製造業に特化した業務効率化SaaSツール」としてポジショニング

STP分析の重要性:

セグメンテーションが適切でないと、後続のターゲティング・ポジショニングも失敗します。STP分析は順番通りに実施することが重要です。

(2) セグメンテーションとターゲティングの違い:市場細分化 vs 標的選定

セグメンテーションとターゲティングは、しばしば混同されますが、その役割は明確に異なります。

観点 セグメンテーション ターゲティング
意味 市場細分化 標的市場の選定
目的 市場を複数のグループに分ける どのグループを狙うか決定
結果 セグメント(複数のグループ) ターゲット(狙う特定のグループ)
「20代女性」「30代男性」「40代女性」... 「20代女性」を標的に選定

具体例:

セグメンテーション:

  • セグメント1: 従業員10-50人の中小企業
  • セグメント2: 従業員100-500人の中堅企業
  • セグメント3: 従業員1000人以上の大企業

ターゲティング:

  • 上記セグメントの中から、「セグメント2: 従業員100-500人の中堅企業」を標的として選定

セグメンテーションは「市場を分ける作業」、ターゲティングは「その中から選ぶ作業」です。

(3) 4Rの原則でセグメントを評価:Rank(市場規模)、Realistic(成長性)、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)

セグメンテーションで作成したセグメントは、4Rの原則で評価し、ターゲットとして選定すべきかを判断します。

4Rの原則:

要素 意味 評価ポイント
Rank(市場規模) セグメントの規模は十分か 市場規模、顧客数、売上ポテンシャルが十分にあるか
Realistic(成長性) セグメントは成長しているか 今後の市場成長が見込まれるか、トレンドに合致しているか
Reach(到達可能性) セグメントにアプローチできるか 広告、営業、流通チャネルでセグメントに到達できるか
Response(測定可能性) セグメントの反応を測定できるか KPI設定、効果測定、データ収集が可能か

4Rの原則の具体例:

セグメント: 「従業員100-500人の製造業」

要素 評価 判断
Rank 日本国内に約5,000社存在、市場規模500億円 ✅ 十分な市場規模
Realistic デジタル化需要が高まり、年10%成長予測 ✅ 成長性あり
Reach 製造業向けメディア、展示会、Web広告でアプローチ可能 ✅ 到達可能
Response 問い合わせ数、資料ダウンロード数で測定可能 ✅ 測定可能

総合判断: すべての4Rを満たすため、ターゲットとして選定

4Rを満たさないセグメントの例:

セグメント: 「従業員5人未満の零細企業」

要素 評価 判断
Rank 企業数は多いが、1社あたりの予算が少ない ❌ 売上ポテンシャルが低い
Realistic 成長性は見込まれる ✅ 成長性あり
Reach 特定のメディアがなく、リーチが困難 ❌ 到達困難
Response 問い合わせ率が低く、効果測定が難しい ❌ 測定困難

総合判断: 4Rを満たさないため、ターゲットとして不適切

4Rの原則を用いることで、投資対効果の高いセグメントを選定できます。

※4Rの原則の評価基準は企業により解釈が異なる場合があります。自社の事業戦略や目標に応じて、評価の重み付けを調整することが重要です。

セグメンテーションの成功事例:業種別の活用方法

実際にセグメンテーションを活用して成果を上げている企業の事例を紹介します。

(1) 小売業の事例:コンビニのオフィス街・住宅街での品揃え変更

企業: コンビニエンスストア各社

セグメンテーション:

  • 地理的変数: 店舗立地(オフィス街、住宅街、駅前、ロードサイド等)
  • 行動変数: 来店時間帯、購入商品カテゴリ

セグメント別の戦略:

セグメント 品揃え戦略 施策
オフィス街 ランチメニュー、コーヒー、文房具 平日昼のレジ増員、Wi-Fi完備
住宅街 食材、日用品、子供向け商品 夕方の品揃え強化、地域密着型サービス
駅前 朝食、雑誌、スイーツ 朝の営業時間拡大、通勤客向けキャンペーン
ロードサイド 弁当、飲料、車用品 駐車場完備、ドライブスルー

成果:

  • セグメントごとに最適化された品揃えにより、売上向上
  • 在庫回転率の改善、廃棄ロスの削減

成功要因:

  • 地理的変数と行動変数を組み合わせた精緻なセグメンテーション
  • POSデータによる継続的な効果測定と改善

(2) サービス業の事例:スターバックスの第三の場所という情緒的価値訴求

企業: スターバックス

セグメンテーション:

  • 心理的変数: 価値観(「第三の場所」を求める顧客)
  • 人口動態変数: 都市部在住、比較的高所得

ターゲット:

  • 「自宅(第一の場所)・職場(第二の場所)以外のくつろぎ空間(第三の場所)」を求める顧客
  • 高品質なコーヒーと快適な空間という情緒的価値を重視する顧客

戦略:

  • 快適な座席、Wi-Fi、電源完備
  • 長時間滞在を歓迎する雰囲気
  • バリスタによる手作り感のあるコーヒー提供
  • ブランドイメージの統一(ロゴ、内装、接客)

成果:

  • 高価格帯でも支持される強いブランドロイヤリティの構築
  • 競合との明確な差別化

成功要因:

  • 心理的変数(価値観)に基づくセグメンテーション
  • 情緒的価値を前面に押し出したポジショニング

(3) BtoB企業の事例:企業規模・業種・導入目的によるセグメント化

BtoB企業における一般的なセグメンテーション事例:

セグメンテーション:

  • 人口動態変数(Firmographics): 企業規模(従業員数)、業種
  • 行動変数: 導入目的(業務効率化、売上拡大、コスト削減等)

セグメント別の戦略:

セグメント1: 従業員100-500人の製造業、業務効率化目的

  • 訴求内容: 工程管理の効率化、ペーパーレス化、生産性向上
  • マーケティング施策: 製造業向けメディア広告、業界展示会出展
  • 営業戦略: 製造業に強い営業担当を配置、導入事例集の提供

セグメント2: 従業員10-50人のIT企業、売上拡大目的

  • 訴求内容: 営業活動の効率化、顧客管理の高度化、商談管理
  • マーケティング施策: Web広告、ウェビナー、無料トライアル
  • 営業戦略: オンライン営業中心、導入支援の充実

成果:

  • セグメントごとに最適化されたメッセージにより、成約率向上
  • 業種別の導入実績を蓄積し、信頼性向上

成功要因:

  • 人口動態変数と行動変数の組み合わせによる精緻なセグメンテーション
  • SFA/CRMによる顧客データ管理と継続的な改善

※事例として紹介される企業の戦略は特定の時点・市場環境でのものであり、そのまま適用できるとは限りません。自社の状況に応じてカスタマイズが必要です。

セグメンテーション実施の注意点:よくある失敗と改善策

セグメンテーションには、いくつかの典型的な失敗パターンがあります。これらを理解し、事前に回避することが重要です。

(1) 過度な細分化のリスク:管理コスト増大とリソース分散

失敗パターン:

  • 「できるだけ細かくセグメントを分ければ、効果が上がるはず」と考え、10個以上のセグメントを作成
  • 結果、管理コストが増大し、リソースが分散
  • 各セグメントへの施策が中途半端になり、効果が出ない

改善方法:

1. セグメント数を絞る

  • 初期段階では3-5個程度のセグメントに絞る
  • 管理可能な範囲で設定

2. 重要度でセグメントを優先順位付け

  • 4Rの原則で評価し、効果の高いセグメントに集中
  • 優先度の低いセグメントは「その他」として一括管理

3. 段階的な細分化

  • まず大きなセグメントで施策を実施
  • 効果が確認できたら、さらに細分化を検討

適切な粒度の判断基準:

  • 各セグメントに対して、明確に異なる施策が実施できるか?
  • 各セグメントの市場規模は、投資に見合うか?
  • 管理・測定にかかるコストは適切か?

(2) セグメント設定後の見直しの重要性:市場環境や顧客ニーズの変化に対応

失敗パターン:

  • セグメントを一度設定したら、そのまま固定化
  • 市場環境や顧客ニーズが変化しても、セグメントを見直さない
  • 結果、セグメントが実態と合わなくなり、施策の効果が低下

改善方法:

1. 定期的な見直しサイクルの設定

  • 年1-2回、セグメントの妥当性を評価
  • 市場環境の変化、顧客ニーズの変化を確認

2. 継続的なデータ収集と分析

  • 顧客アンケート、営業フィードバック、Webアクセス解析などでデータを収集
  • セグメントごとの施策効果を測定

3. 柔軟な調整

  • 効果の低いセグメントは統合または削除
  • 新しく浮上したセグメントは追加
  • セグメント定義の微調整(例: 企業規模の区切りを変更)

見直しのタイミング:

  • 年次の事業計画策定時
  • 新製品・サービスのローンチ時
  • 市場環境の大きな変化時(経済危機、法規制変更等)

(3) 心理的変数のデータ収集コスト:個人情報保護法やプライバシー配慮

失敗パターン:

  • 心理的変数(価値観、ライフスタイル等)のデータを収集しようとするが、適切な手法がない
  • アンケートやインタビューを実施するが、回答率が低い、コストが高い
  • プライバシー配慮が不十分で、顧客の不信感を招く

改善方法:

1. データ収集方法の選択

  • 既存データの活用: 購買履歴、Webアクセス履歴から心理的傾向を推測
  • アンケート: 簡潔な質問で負担を軽減、インセンティブ提供
  • インタビュー: 少数の詳細インタビューで深い洞察を得る

2. プライバシー配慮

  • データ利用目的の明示
  • 個人情報保護法に準拠したデータ管理
  • オプトアウト機能の提供

3. コスト対効果の評価

  • 心理的変数の収集コストと、それによる効果を比較
  • コストが高い場合は、人口動態変数や行動変数で代替できないか検討

心理的変数の代替手法:

  • 「健康志向」という心理的変数 → 「健康食品の購入頻度」という行動変数で代替
  • 「環境配慮」という心理的変数 → 「エコ商品の購入履歴」という行動変数で代替

心理的変数は深い顧客理解につながりますが、コストとプライバシーのバランスを取ることが重要です。

まとめ:セグメンテーションで実現する効果的なマーケティング

市場セグメンテーション(市場細分化)は、効果的なマーケティング戦略の基盤です。適切なセグメンテーションを行うことで、顧客ニーズの明確化、効率的な予算配分、競争優位性の確立が可能になります。

セグメンテーション成功のポイント:

1. 4つの変数を理解し、複数を組み合わせる

  • 人口動態(年齢、性別、企業規模、業種等)
  • 地理的(居住地域、店舗立地等)
  • 心理的(価値観、ライフスタイル等)
  • 行動(購入頻度、利用状況等)

2. STP分析の順序を守る

  • セグメンテーション → ターゲティング → ポジショニング
  • セグメンテーションが適切でないと、後続プロセスも失敗

3. 4Rの原則でセグメントを評価

  • Rank(市場規模)、Realistic(成長性)、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)
  • すべての4Rを満たすセグメントを選定

4. 適切な粒度でセグメントを設定

  • 過度な細分化は管理コスト増大とリソース分散を招く
  • 3-5個程度のセグメントから始める

5. 定期的な見直しと調整

  • 年1-2回、セグメントの妥当性を評価
  • 市場環境や顧客ニーズの変化に対応

6. ツールを活用した効率化

  • MA(マーケティングオートメーション)、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)でデータ管理・分析
  • リアルタイムセグメンテーションによるパーソナライズ施策

次のアクション:

  • 自社の対象市場を4つの変数で分類してみる
  • 複数変数を組み合わせて3-5個のセグメントを作成
  • 4Rの原則で各セグメントを評価
  • 効果の高いセグメントを1-2個選定し、試験的に施策を実施
  • 効果を測定し、継続的に改善

セグメンテーションは「設定して終わり」ではなく、継続的に改善していくことが成功の鍵です。自社に合ったセグメンテーションで、効果的なマーケティング戦略を実現しましょう。

よくある質問

Q1セグメンテーションとターゲティングの違いは?

A1セグメンテーションは市場を細分化する作業、ターゲティングは細分化した中から標的を選定する作業です。セグメントは市場を分けたグループ全体、ターゲットは企業が狙う特定のセグメントを指します。

Q2どの変数を使うべきか?

A2製品・サービスの特性に応じて選択します。複数変数の組み合わせが効果的で、例えば「東京都在住で30代の男性」のような複合セグメントを作成します。BtoB市場では企業規模・業種・導入目的、BtoC市場では消費者属性・行動パターンが一般的です。

Q3セグメンテーションのメリットは?

A3顧客ニーズの明確化、効率的な予算配分、競争優位性の確立、顧客満足度向上が主なメリットです。セグメントごとに最適化されたマーケティング施策を実施することで、投資対効果を高められます。

Q44Rの原則とは何か?

A4セグメント評価基準で、Rank(市場規模)、Realistic(成長性)、Reach(到達可能性)、Response(測定可能性)の4つです。すべての4Rを満たすセグメントを選定することで、投資対効果の高いターゲティングが可能になります。

Q5セグメントはいくつ作るべきか?

A5初期段階では3-5個程度のセグメントに絞ることが推奨されます。過度な細分化は管理コスト増大とリソース分散を招くため、管理可能な範囲で設定し、段階的に細分化を検討することが重要です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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