マーケティングオートメーションツールとは?機能と選び方を解説

著者: Decisense編集部公開日: 2025/12/3

リード管理が煩雑になっていて、どのMAツールを選べば良いか分からない…

B2B企業のマーケティング担当者の多くが、リード獲得・育成の効率化を検討する際に「MAツールが多すぎて何を基準に選べば良いか分からない」「予算と効果のバランスが心配」という悩みを抱えています。見込み客のフォローアップが属人化し、成果が見えにくいという課題は深刻です。

この記事では、MAツールの基本概念、主要機能、選定基準を解説し、BowNow・HubSpot・Marketing Cloud Account Engagement(Pardot)などの主要ツールを公平に比較します。導入失敗パターンと回避策も提示し、実務に即した判断材料を提供します。

この記事のポイント:

  • MAツールはリード獲得・育成を自動化し、マーケティング活動を効率化するツール
  • 国内MA市場は2021年600億円→2026年865億円見込みで急成長中
  • BtoB向けとBtoC向けを混同しないことが選定の第一歩
  • 企業規模・予算・既存システム連携性で最適なツールが異なる
  • 導入しただけでは成果は出ず、運用体制と戦略が不可欠

なぜMAツールが必要なのか

(1) BtoB企業が直面するリード管理の課題

BtoB企業のマーケティング活動には、以下のような課題があります:

リード管理の属人化:

  • 見込み客のフォローアップが担当者任せで、優先順位が不明確
  • 商談化の基準があいまいで、成果が見えにくい
  • 担当者の異動・退職でリード情報が消失するリスク

業務の非効率:

  • メール配信、フォームからの問い合わせ対応を手動で実施
  • リードの関心度を判断するデータが散在し、営業へのパス基準が不明確
  • 展示会やウェビナーで獲得したリードが放置されがち

データ活用の不足:

  • Web訪問履歴、メール開封率などの行動データを営業活動に活かせていない
  • どのコンテンツが効果的かを測定できない

これらの課題を解決するのがMAツールです。

(2) MAツールがもたらす業務効率化と成果

MAツール導入により、以下の効果が期待できます:

リード育成の自動化:

  • メール配信、リードスコアリング(関心度の数値化)を自動化
  • 見込み客の行動に応じたシナリオ設定で、適切なタイミングでフォロー
  • 展示会のフォローアップでは40%以上のアポイント率を達成した事例もあります(BowNow調査)

営業効率の向上:

  • リードスコアリングで優先順位を明確化し、営業リソースを最適配分
  • 商談化率・受注率を導入前後で比較し、ROIを測定可能

データドリブンなマーケティング:

  • Web訪問履歴、メール開封率、資料ダウンロードなどの行動データを一元管理
  • どのコンテンツが効果的かを可視化し、施策改善に活用

MAツールの基礎知識

(1) MAツールの定義と主要機能

MA(マーケティングオートメーション)とは、リード獲得・育成を自動化し、マーケティング活動を効率化するツールです。主要機能は以下の通りです:

リード管理:

  • Webフォーム作成、ランディングページ作成
  • リード情報の一元管理
  • リードスコアリング(関心度の数値化)

メールマーケティング:

  • メール配信の自動化
  • セグメント別配信(業種、役職、行動履歴別など)
  • 開封率・クリック率の測定

リードナーチャリング(育成):

  • シナリオ設定(例: 資料ダウンロード後に3日後・7日後にフォローメール自動送信)
  • Web訪問履歴、資料ダウンロードなどの行動トラッキング
  • 商談化の最適なタイミングを判断し、営業にパス

レポート・分析:

  • リード獲得数、商談化率、受注率などのKPI可視化
  • ROI(投資対効果)の測定

(2) MAツール市場の現状と成長見込み

MAツール市場は急成長しています:

国内市場規模:

  • 2021年: 600億円(矢野経済研究所調査)
  • 2026年: 865億円見込み(同調査)
  • 2024年: 4億810万米ドル(約600億円)、2033年: 8億4,810万米ドル(約1,250億円)、CAGR 8.5%(IMARC Group予測)

デジタルマーケティング市場全体:

  • 2024年: 3,672億4,000万円
  • 2025年: 4,190億2,000万円見込み(前年比114.1%)

(出典: 矢野経済研究所、IMARC Group、ITトレンド)

市場トレンド:

  • CRM・MA・CDPの機能を統合した「オールインワン型」ツールが増加
  • AI(人工知能)を活用したMAツールの機能強化(予測分析、推奨アクション提案など)が2024年以降さらに進む見込み

(3) CRM・SFA・CDPとの違い

MAツールと類似のツールとの違いは以下の通りです:

ツール 主な目的 主な機能
MA(マーケティングオートメーション) リード獲得・育成 メール配信、リードスコアリング、シナリオ設定
CRM(顧客関係管理) 顧客情報の一元管理 顧客データベース、問い合わせ履歴管理
SFA(営業支援システム) 営業活動の効率化 商談管理、営業プロセス可視化、売上予測
CDP(顧客データプラットフォーム) 顧客データ統合 複数データソースからの顧客情報統合・分析

近年は、MAとCRMを統合した「オールインワン型」ツール(HubSpot、Salesforce等)が増えています。

MAツールの選び方

(1) BtoB向けとBtoC向けの違い

MAツール選定時に最も重要なのは、BtoB向けとBtoC向けを混同しないことです:

BtoB向けMAツール:

  • 長期的なリード育成(検討期間が数ヶ月〜1年以上)
  • 企業情報(企業規模、業種、役職など)を重視
  • リードスコアリング、営業パス機能が充実
  • 代表例: BowNow、Marketing Cloud Account Engagement(Pardot)、Marketo

BtoC向けMAツール:

  • 短期的な購買促進(検討期間が数日〜数週間)
  • 個人の行動履歴(閲覧履歴、購買履歴など)を重視
  • キャンペーン管理、プッシュ通知機能が充実
  • 代表例: Marketing Cloud、Adobe Campaign

選定時の注意:

  • 目的に合わないツールを選ぶと、機能が過剰・不足して失敗の原因となります
  • 自社のビジネスモデルがBtoB/BtoCのどちらかを明確にしてから選定してください

(出典: ferret One「【2025年最新】MAツール比較10選!運用タイプ別にわかる診断チャート付き」)

(2) 企業規模・予算別の選定基準

企業規模と予算により、最適なツールが異なります:

小規模企業(従業員50人未満、リード月50件以下):

  • 初期費用0円、月額1〜5万円の低価格ツール
  • 機能はシンプルで使いやすさ重視
  • 代表例: BowNow(初期費用0円、月額1.2万円〜)、HubSpot無料プラン

中堅企業(従業員50〜500人、リード月50〜500件):

  • 月額5〜30万円の中価格帯ツール
  • リードスコアリング、シナリオ設定が充実
  • 代表例: HubSpot Professional(月額約10万円〜)、SATORI(月額14.8万円〜)

大企業(従業員500人以上、リード月500件以上):

  • 月額30万円以上の高価格帯ツール
  • 高度なカスタマイズ、既存システム連携が可能
  • 代表例: Marketing Cloud Account Engagement(Pardot、月額15万円〜)、Marketo(要問い合わせ)

注意点:

  • リード数が月50件以下の場合、MAツール導入よりもスプレッドシート管理で十分な場合が多いです
  • 料金は変更の可能性があるため、公式サイトで最新情報をご確認ください

(出典: SATORI「【2025年最新】MAツール10社比較・選び方<目的別>」)

(3) 既存システムとの連携性

MAツールは既存のCRM・SFAとの連携が重要です:

Salesforce利用企業:

  • Marketing Cloud Account Engagement(Pardot)がネイティブ連携
  • リードデータの自動同期、営業パスが円滑

Microsoft Dynamics 365利用企業:

  • Marketing(旧Marketo)が連携可能

既存CRM未導入企業:

  • HubSpot(MA・CRM・SFA統合のオールインワン型)が選択肢
  • 初期費用を抑えたい場合はBowNow(外部CRMとAPI連携可能)

API連携:

  • ほとんどのMAツールはAPI連携可能ですが、設定の難易度・コストが異なります
  • 導入前に連携性を確認し、必要に応じてベンダーにサポートを依頼してください

(4) 導入実績とサポート体制

導入実績が豊富なツールは、ベストプラクティスやサポートが充実しています:

国内MAツール市場シェア(DataSign Web行動ログ調査):

  1. BowNow(シェア1位)
  2. Marketing Cloud Account Engagement(Pardot、シェア2位)
  3. HubSpot(シェア3位)

導入実績を確認すべきポイント:

  • 同業種・同規模企業の導入事例があるか
  • 継続率・解約率(公表されている場合)
  • ユーザーコミュニティ・勉強会の有無

サポート体制:

  • 日本語サポートの有無(海外ツールは要確認)
  • オンボーディング支援(初期設定・運用立ち上げ支援)
  • 電話・チャット・メールサポートの対応時間

(出典: ferret One「【2025年最新】MAツール比較10選!運用タイプ別にわかる診断チャート付き」)

主要MAツールの比較

(1) BowNow:国内シェア1位の特徴と料金

特徴:

  • 国内シェア1位(DataSign調査)
  • BtoB特化、初心者でも使いやすいシンプルな操作性
  • 無料プランあり(機能制限あり)

主な機能:

  • リードスコアリング、メール配信、Webフォーム作成
  • Web訪問履歴トラッキング
  • Salesforce・kintone等の外部CRM連携可能

料金:

  • 初期費用: 0円
  • 月額: 1.2万円〜(スタンダードプラン)
  • 無料プラン: あり(機能制限あり)

適性:

  • 小〜中規模企業(従業員50〜300人)
  • 初めてMAツールを導入する企業
  • 予算を抑えたい企業

導入事例:

  • Startia Raiseは展示会フォローアップで40%以上のアポイント率を達成

(出典: BowNow公式サイト、BowNow「マーケティングオートメーションの事例18選」)

※最新の料金は公式サイトをご確認ください。

(2) HubSpot:オールインワン型の特徴と料金

特徴:

  • MA・CRM・SFA統合のオールインワン型
  • 無料プランあり(基本機能のみ)
  • 世界中で19万社以上が導入(2024年時点)

主な機能:

  • リードスコアリング、メール配信、ランディングページ作成
  • CRM(顧客管理)、SFA(営業支援)が統合
  • ブログ・SEO・ソーシャルメディア管理も可能

料金:

  • 無料プラン: 0円(基本機能のみ)
  • Starter: 月額約2万円〜
  • Professional: 月額約10万円〜
  • Enterprise: 月額約40万円〜

適性:

  • 中〜大規模企業(従業員50人以上)
  • MA・CRM・SFAを統合したい企業
  • インバウンドマーケティング(コンテンツマーケティング)を重視する企業

導入事例:

  • 読売新聞グループはメール開封率改善などの成果を達成

(出典: HubSpot公式サイト、HubSpot「マーケティングオートメーション導入の成功事例12選」)

※最新の料金は公式サイトをご確認ください。

(3) Marketing Cloud Account Engagement(Pardot):大規模企業向けの特徴と料金

特徴:

  • Salesforceが提供するBtoB向けMAツール
  • 国内シェア2位(DataSign調査)
  • Salesforceとネイティブ連携し、リードデータの自動同期が円滑

主な機能:

  • リードスコアリング、グレーディング(企業属性による評価)
  • メール配信、ランディングページ作成
  • Salesforce CRM・SFAとの統合
  • 高度なレポート・分析機能

料金:

  • Growth: 月額15万円〜(最大10,000リード)
  • Plus: 月額30万円〜(最大10,000リード)
  • Advanced: 月額60万円〜(最大75,000リード)
  • Premium: 月額108万円〜(最大75,000リード)

適性:

  • 大規模企業(従業員500人以上)
  • Salesforceを既に導入している企業
  • 高度な分析・カスタマイズが必要な企業

(出典: Salesforce公式サイト、Salesforce「MA(マーケティングオートメーション)おすすめツール15選を比較」)

※最新の料金は公式サイトをご確認ください。

(4) その他の主要ツール(SATORI、Marketo等)

SATORI:

  • 国産BtoB向けMAツール
  • 匿名リードの可視化機能が特徴
  • 月額14.8万円〜

Marketo(Adobe Marketo Engage):

  • 大企業向け高機能MAツール
  • Adobe Experience Cloudと統合
  • 料金は要問い合わせ(高価格帯)

その他:

  • Adobe Campaign(BtoC向け)
  • Oracle Eloqua(大企業向け)
  • Salesforce Marketing Cloud(BtoC向け)

複数のツールを比較検討し、無料トライアルで試すのが推奨されます。

導入時の注意点

(1) 導入前に明確にすべき課題と目的

MAツール導入前に、以下を明確にしてください:

自社の課題:

  • リード獲得数が不足しているのか
  • リード育成(ナーチャリング)ができていないのか
  • 営業パスの基準があいまいなのか

MAツールで達成したいこと:

  • リード獲得数を月〇件増やす
  • 商談化率を〇%向上させる
  • 営業担当者の業務時間を週〇時間削減する

注意:

  • 「達成したいこと」が明確でないまま導入すると、ツールを使いこなせず失敗します
  • 自社の課題を整理した上で、それを解決できる機能を持つツールを選定してください

(出典: ferret One「【2025年最新】MAツール比較10選!運用タイプ別にわかる診断チャート付き」)

(2) よくある失敗パターンとその回避策

失敗パターン1: BtoB/BtoC向けを混同

  • BtoC向けツールをBtoB企業が導入し、機能が合わず失敗
  • 回避策: 自社のビジネスモデルに合ったツールを選定

失敗パターン2: 導入しただけで運用しない

  • ツールを導入しただけで、シナリオ設定やコンテンツ作成を行わず成果が出ない
  • 回避策: 専任担当者を1-2名配置し、週10-20時間の運用時間を確保

失敗パターン3: 高機能すぎて使いこなせない

  • 大企業向けの高機能ツールを中小企業が導入し、複雑すぎて運用できない
  • 回避策: 企業規模・リソースに合ったツールを選定

失敗パターン4: 既存システムとの連携が不十分

  • CRM・SFAとのデータ連携がうまくいかず、手動作業が発生
  • 回避策: 導入前に連携性を確認し、必要に応じてベンダーにサポートを依頼

(3) 運用体制とリソースの確保

MAツールを使いこなすために必要なリソースは以下の通りです:

人員:

  • 専任担当者1-2名(マーケティング担当者)
  • シナリオ設計、コンテンツ作成のスキルが必要

時間:

  • 週10-20時間の運用時間が目安
  • 初期設定(シナリオ設定、セグメント作成など)に1〜3ヶ月

コンテンツ:

  • メールテンプレート、ランディングページ、ホワイトペーパーなどのコンテンツ準備
  • コンテンツがなければMAツールは効果を発揮しません

注意:

  • MAツールを導入しただけでは成果は出ません
  • 適切な運用体制と戦略が不可欠です

(4) 効果測定とROIの評価方法

導入後の効果測定は以下のKPIで評価してください:

KPI(重要業績評価指標):

  • リード獲得数(月次・四半期)
  • 商談化率(リードのうち商談に至った割合)
  • 受注率(商談のうち受注に至った割合)
  • ROI(投資対効果)= (売上増加額 - 導入コスト)/ 導入コスト

評価タイミング:

  • ROIは6ヶ月〜1年で評価するのが一般的
  • 短期的な効果(リード獲得数)と長期的な効果(受注率)を分けて測定

導入前後の比較:

  • 導入前の数値をベースラインとして記録
  • 導入後の数値と比較し、改善幅を測定

まとめ:目的別おすすめの選定基準

MAツールはリード獲得・育成を自動化し、マーケティング活動を効率化するツールです。国内MA市場は2021年600億円→2026年865億円見込みで急成長していますが、導入しただけでは成果は出ず、運用体制と戦略が不可欠です。

目的別おすすめの選定基準:

初めてMAツールを導入する中小企業:

  • BowNow(初期費用0円、月額1.2万円〜、シンプルな操作性)
  • HubSpot無料プラン(MA・CRM統合、基本機能のみ)

MA・CRM・SFAを統合したい中〜大規模企業:

  • HubSpot Professional(月額約10万円〜、オールインワン型)

Salesforceを既に導入している大規模企業:

  • Marketing Cloud Account Engagement(Pardot、月額15万円〜、ネイティブ連携)

高度な分析・カスタマイズが必要な大企業:

  • Marketo(Adobe Marketo Engage、要問い合わせ)

次のアクション:

  • 自社の課題と目的を明確にする(リード獲得数増加、商談化率向上など)
  • BtoB/BtoCのどちらのビジネスモデルかを確認
  • 3〜5社の公式サイトで詳細を確認する(最新の料金・機能)
  • 無料トライアルで実際に操作性を試す
  • 導入実績のある企業の事例を参考にする

自社に合ったMAツールで、リード獲得・育成の効率化とマーケティング成果の最大化を目指しましょう。

よくある質問

Q1MAツールの導入コストはどれくらいですか?

A1初期費用0円〜、月額1〜5万円(小規模企業向け)、月額5〜30万円(中堅企業向け)、月額30万円以上(大企業向け)が一般的です。企業規模・機能により変動するため、無料トライアルで試すことが推奨されます。最新の料金は各社公式サイトをご確認ください。

Q2中小企業でもMAツールは必要ですか?

A2リード数が月50件以上なら効果が期待できます。それ以下の場合はスプレッドシート管理でも十分な場合が多いです。リード育成の自動化や営業効率化を目指す場合は、BowNowやHubSpot無料プランなど低価格ツールから始めるのが適切です。

Q3BtoB向けとBtoC向けMAツールの違いは?

A3BtoB向けは長期的なリード育成(検討期間数ヶ月〜1年以上)とリードスコアリング機能が充実し、BtoC向けは短期的な購買促進(検討期間数日〜数週間)とキャンペーン管理が充実しています。目的に合わないツールを選ぶと失敗の原因となります。

Q4導入後の効果測定はどうすれば良いですか?

A4リード獲得数、商談化率、受注率を導入前後で比較してください。ROI(投資対効果)は6ヶ月〜1年で評価するのが一般的です。短期的な効果(リード獲得数)と長期的な効果(受注率)を分けて測定することが重要です。

Q5MAツールを使いこなすために必要なリソースは?

A5専任担当者1-2名、週10-20時間の運用時間が目安です。シナリオ設計やコンテンツ作成のスキルも必要です。初期設定(シナリオ設定、セグメント作成など)に1〜3ヶ月かかることが一般的です。

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Decisense編集部

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