マーケティングオートメーションと顧客管理を連携してリード育成を最適化する方法

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/7

マーケティング部門と営業部門の連携、うまくいっていますか?

B2B企業のマーケティング・営業担当者の多くが、「マーケが獲得したリードが営業に活かされていない」「商談につながりそうなリードを取りこぼしている」「同じ見込み客に重複してアプローチしてしまう」といった課題を抱えています。

こうした課題を解決するのが、マーケティングオートメーション(MA)と顧客管理システム(CRM)の連携です。この記事では、MAとCRMを連携させてリード育成を最適化する方法を解説します。

この記事のポイント:

  • MAは見込み顧客の獲得・育成、CRMは既存顧客との関係維持を担当し、両者の連携で部門間の情報共有が実現
  • 連携により、リードスコアリング、自動アサイン、重複アプローチの防止が可能に
  • 導入事例では商談創出2.5倍、アプローチ率75%改善といった成果も
  • 成功には顧客情報整備、スコアリング設計、運用体制の構築が不可欠

MAとCRMの連携が求められる背景

マーケティングオートメーションと顧客管理システムの連携は、なぜ重要なのでしょうか。その背景にある課題を整理します。

(1) マーケティング部門と営業部門の分断問題

多くのB2B企業では、マーケティング部門と営業部門がそれぞれ別のシステムを使い、情報が分断されています。

よくある分断の状況:

  • マーケがExcelやMAツールでリード管理、営業はCRM/SFAで顧客管理
  • リードの引き渡しがメールや口頭ベースで、情報が欠落
  • マーケの施策効果(どのリードがどの施策経由か)が営業に伝わらない
  • 営業の商談状況がマーケに共有されず、マーケ施策の改善につながらない

NECソリューションイノベータの資料によると、MAとCRMを連携させることで「マーケティング部門と営業部門の垣根を超えて顧客行動を把握し、業務を効率化できる」とされています。

(2) リードの取りこぼし・対応遅れの課題

部門間の分断は、具体的なビジネス機会の損失につながります。

発生しやすい問題:

  • 熱度の高いリードへの対応が遅れ、競合に先を越される
  • マーケが獲得したリードが営業でフォローされない(取りこぼし)
  • 同じ見込み客にマーケと営業が別々にアプローチ
  • リードの優先度がわからず、全件を同じように対応してしまう

2024年のMA市場調査によると、CRMとMAの統合が重要テーマとなっており、自動リードスコアリングと確度の高いリードのみを営業に引き渡すシステムが主流化しています。

MAとCRMの違いと役割分担

MAとCRMを効果的に連携させるためには、それぞれの役割を正しく理解することが重要です。

(1) MA:見込み顧客の獲得・育成(顧客になる前)

MAは、まだ顧客になっていない見込み顧客(リード)の獲得・育成を担当するツールです。Salesforce公式の解説によると、MAは「企業のマーケティング活動を自動化し、顧客との関係を効率的に構築・管理するツール」と定義されています。

MAの主な機能:

  • リード管理: 展示会、Webサイト、広告、セミナーなど多様なチャネルからのリード情報を一元管理
  • リードスコアリング: Web訪問、メール開封、資料ダウンロードなどの行動を数値化し、購買意欲を評価
  • リードナーチャリング: メール配信の自動化により、見込み顧客を段階的に育成
  • 行動履歴の分析: Webサイトの閲覧履歴、メールへのリアクションを計測・分析

(2) CRM:既存顧客との関係維持・向上(顧客になった後)

CRMは、すでに顧客になった企業・個人との関係維持・向上を担当するシステムです。

CRMの主な機能:

  • 顧客情報の一元管理: 属性情報、購買履歴、問い合わせ履歴などを管理
  • 商談・案件管理: 営業活動の進捗、契約状況を管理
  • 顧客対応の履歴管理: 過去のやり取りを参照し、適切な対応を実現
  • レポート・分析: 売上予測、顧客分析などを実施

SATORIの解説によると、「MAは見込み顧客をターゲット、CRMは既存顧客をターゲットとする」ため、両者を連携させることで顧客ライフサイクル全体をカバーできます。

(3) SFAとの関係性

SFA(営業支援システム)は、CRMの一部として位置づけられることが多いツールです。

SFAの主な機能:

  • 営業活動のプロセス管理
  • 商談管理(パイプライン管理)
  • 売上予測
  • 営業担当者のアクション管理

MAで育成したリードをSFA/CRMに連携し、商談・契約管理まで一気通貫で行えるのが理想的な姿です。

MA×CRM連携の具体的なメリット

MAとCRMを連携させることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

(1) 部門間の情報共有とリードの一元管理

連携の最大のメリットは、マーケティング部門と営業部門の情報共有です。

実現できること:

  • マーケが獲得したリードの情報(流入経路、興味関心、行動履歴)が営業に自動連携
  • 営業の商談状況がマーケに共有され、施策効果の測定が可能に
  • リード情報を一箇所で管理し、重複や情報の欠落を防止
  • 顧客のライフサイクル全体を可視化

日立ソリューションズの資料によると、「顧客情報を単に蓄積するだけでなく、CRMと連携して常に最新かつ正確な状態で共有可能にする」ことがMAの根幹機能とされています。

(2) リードスコアリングと自動アサインの実現

連携により、熱度の高いリードを自動的に営業へ引き渡す仕組みを構築できます。

リードスコアリングの活用例:

  • Webサイトの特定ページ(料金ページ、導入事例)閲覧: +10点
  • メール開封: +3点、クリック: +5点
  • 資料ダウンロード: +15点
  • セミナー参加: +20点
  • スコア合計が50点を超えたら営業に自動アサイン

自動アサインのルール例:

  • 業種・企業規模に応じて担当営業を自動振り分け
  • 地域別に担当営業を自動アサイン
  • 特定の商材に興味を持ったリードは専門チームへ

(3) 重複アプローチの防止とマーケティング効果の可視化

連携により、リードや顧客へのアプローチ状況を全社で共有できます。

防止できる問題:

  • 同じ見込み客にマーケと営業が別々にアプローチ
  • 営業がアプローチ中のリードにマーケがキャンペーンメール送信
  • 過去に失注した顧客への不適切なアプローチ

可視化できる効果:

  • どの施策(展示会、Web広告、セミナーなど)が商談に貢献したか
  • リード獲得から商談化、受注までの期間と転換率
  • チャネル別のROI(投資対効果)

データ同期とワークフロー設計のポイント

MA×CRM連携を成功させるためには、データ同期とワークフローの設計が重要です。

(1) 双方向同期・片方向同期・同期頻度の設定

データ同期の方法にはいくつかのパターンがあります。

双方向同期:

  • MA → CRM、CRM → MA の両方向でデータを同期
  • リード情報の更新がどちらで行われても反映される
  • 設定が複雑になりがちで、競合解決ルールが必要

片方向同期:

  • MA → CRM または CRM → MA の一方向のみ
  • シンプルで管理しやすいが、情報の更新が一方に依存

同期頻度の設定:

  • リアルタイム同期: 即座に反映されるが、システム負荷が高い
  • 定期同期(10分、1時間、1日など): 負荷は低いが、情報にタイムラグが発生

自社の業務フローに合わせて、最適な設定を検討することが重要です。

(2) MQL・SQL判定基準とSLA設定

マーケティング部門と営業部門の連携には、リードの判定基準とSLA(サービスレベル合意)の設定が有効です。

MQL・SQLの定義:

  • MQL(Marketing Qualified Lead): マーケティング部門が「営業に引き渡すに値する」と判定したリード
  • SQL(Sales Qualified Lead): 営業部門が「商談化の見込みがある」と判定したリード

SLA設定の例:

  • MQLに対して、営業は24時間以内に初回アプローチを行う
  • 営業がSQLと判定しない場合は、48時間以内にその理由をフィードバック
  • MQL → SQL の転換率目標: 30%

こうした基準を明文化することで、部門間の認識のズレを防ぎ、連携をスムーズにできます。

(3) 重複データ管理とフィールドマッピング

データ連携では、重複データの管理とフィールドマッピングが重要です。

重複データ管理:

  • 同一人物・同一企業のレコードが複数作成されないようルールを設定
  • メールアドレスや企業名をキーにした重複チェック
  • 重複が発生した場合のマージルール(どちらの情報を優先するか)

フィールドマッピング:

  • MA側のフィールド(会社名、役職など)とCRM側のフィールドを紐付け
  • 必須フィールドの欠落がないかチェック
  • 日付形式、選択肢の値など、データ形式の整合性を確認

導入時の注意点とよくある失敗

MA×CRM連携の導入には、いくつかの注意点があります。

(1) 顧客情報整備とスコアリング設計の不備

MAツールを導入しても、期待した効果が得られないケースがあります。

よくある失敗:

  • 顧客情報が整備されていない(重複、欠落、不正確なデータが多い)
  • スコアリング基準が適切でない(営業が求めるリードと乖離)
  • リードの定義がマーケと営業で異なる
  • 運用体制が構築されていない(誰が、いつ、何をするかが曖昧)

対策:

  • 導入前にデータクレンジング(重複削除、欠落項目の補完)を実施
  • スコアリング基準を営業と協議して設計
  • MQL、SQLの定義を明文化して合意
  • 運用マニュアルを作成し、担当者を明確化

(2) 運用体制の構築とベンダーサポート活用

MAとCRMの連携には、技術的な対応が必要です。

技術的な対応事項:

  • API連携の設定
  • フィールドマッピングの定義
  • 同期ルール・競合解決ルールの設定
  • テスト・検証の実施

導入初期には専門知識が必要なため、MAベンダーやSIパートナーの支援を活用することが推奨されます。また、主要なMA×CRMの組み合わせとしては、HubSpot(MA・CRM一体型)、Pardot+Salesforce、Marketo+Salesforceなどがあり、自社の規模・業種・既存システムに応じて選定することが重要です。

まとめ:MA×CRM連携を成功させるために

マーケティングオートメーションと顧客管理システムの連携は、マーケティング部門と営業部門の分断を解消し、リード育成を最適化するための有効な手段です。連携により、リードの一元管理、スコアリングと自動アサイン、重複アプローチの防止、マーケティング効果の可視化が実現できます。

導入事例ではMAを活用して商談創出を2.5倍に増加させた事例や、ライフネット生命が4チャネル統合により見込み客へのアプローチ率を75%改善した事例も報告されています(SATORI公式サイトより)。

次のアクション:

  • 自社のマーケ・営業連携の課題を整理する
  • MAとCRMの連携要件(データ項目、同期ルール、SLA)を定義する
  • 主要なMA×CRMツールの情報を収集する
  • ベンダーやSIパートナーに相談し、導入計画を策定する
  • 小規模なPoC(概念実証)で効果を検証する

2024年のグローバルMA市場は69.5億ドル(2028年には96.8億ドル予測)に成長しており、AI活用やオムニチャネル対応がさらに進展しています。自社のマーケティング・営業活動を次のレベルに引き上げるために、MA×CRM連携を検討してみてはいかがでしょうか。

よくある質問

Q: MAとCRMの違いは何ですか? A: MAは見込み顧客の獲得・育成を担当し(顧客になる前のフェーズ)、CRMは既存顧客との関係維持・向上を担当します(顧客になった後のフェーズ)。両者を連携させることで、リード獲得から顧客化、その後のフォローまで一気通貫で管理できます。

Q: MAとCRMを連携させる具体的なメリットは? A: リード情報の一元管理、重複アプローチの防止、熱度の高いリードを自動で営業へ引き継ぎ、マーケティング効果の可視化などが実現できます。導入企業では商談創出2.5倍といった成果も報告されています。

Q: どのようなMA×CRM組み合わせがありますか? A: HubSpot(MA・CRM一体型)、Pardot+Salesforce、Marketo+Salesforceなどが代表的です。自社の規模・業種・既存システム・予算に応じて選定することが重要です。詳細は各ベンダーの公式サイトで確認してください。

Q: MA×CRM連携の導入にはどれくらいかかりますか? A: システム連携設定、データマッピング、運用体制構築を含めて数週間〜数ヶ月が目安です。導入初期はベンダーサポートやSIパートナーの支援を活用することを推奨します。導入前にROIを検討し、見積もりを取得してください。

よくある質問

Q1MAとCRMの違いは何ですか?

A1MAは見込み顧客の獲得・育成を担当(顧客になる前)、CRMは既存顧客との関係維持を担当(顧客になった後)。両者を連携させることで顧客ライフサイクル全体をカバーできます。

Q2MAとCRMを連携させる具体的なメリットは?

A2リード情報の一元管理、重複アプローチの防止、熱度の高いリードの自動引き継ぎ、マーケティング効果の可視化が実現。商談創出2.5倍の事例もあります。

Q3どのようなMA×CRM組み合わせがありますか?

A3HubSpot(MA・CRM一体型)、Pardot+Salesforce、Marketo+Salesforceなどが代表的。自社の規模・業種・既存システムに応じて選定します。

Q4MA×CRM連携の導入にはどれくらいかかりますか?

A4システム連携設定、データマッピング、運用体制構築を含めて数週間〜数ヶ月が目安。導入初期はベンダーサポートやSI支援の活用を推奨します。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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