マーケティング部門と営業部門の連携、うまくいっていますか?
B2B企業のマーケティング・営業担当者の多くが、「マーケが獲得したリードが営業に活かされていない」「商談につながりそうなリードを取りこぼしている」「同じ見込み客に重複してアプローチしてしまう」といった課題を抱えています。
こうした課題を解決するのが、マーケティングオートメーション(MA)と顧客管理システム(CRM)の連携です。この記事では、MAとCRMを連携させてリード育成を最適化する方法を解説します。
この記事のポイント:
- MAは見込み顧客の獲得・育成、CRMは既存顧客との関係維持を担当し、両者の連携で部門間の情報共有が実現
- 連携により、リードスコアリング、自動アサイン、重複アプローチの防止が可能に
- 導入事例では商談創出2.5倍、アプローチ率75%改善といった成果も
- 成功には顧客情報整備、スコアリング設計、運用体制の構築が不可欠
MAとCRMの連携が求められる背景
マーケティングオートメーションと顧客管理システムの連携は、なぜ重要なのでしょうか。その背景にある課題を整理します。
(1) マーケティング部門と営業部門の分断問題
多くのB2B企業では、マーケティング部門と営業部門がそれぞれ別のシステムを使い、情報が分断されています。
よくある分断の状況:
- マーケがExcelやMAツールでリード管理、営業はCRM/SFAで顧客管理
- リードの引き渡しがメールや口頭ベースで、情報が欠落
- マーケの施策効果(どのリードがどの施策経由か)が営業に伝わらない
- 営業の商談状況がマーケに共有されず、マーケ施策の改善につながらない
NECソリューションイノベータの資料によると、MAとCRMを連携させることで「マーケティング部門と営業部門の垣根を超えて顧客行動を把握し、業務を効率化できる」とされています。
(2) リードの取りこぼし・対応遅れの課題
部門間の分断は、具体的なビジネス機会の損失につながります。
発生しやすい問題:
- 熱度の高いリードへの対応が遅れ、競合に先を越される
- マーケが獲得したリードが営業でフォローされない(取りこぼし)
- 同じ見込み客にマーケと営業が別々にアプローチ
- リードの優先度がわからず、全件を同じように対応してしまう
2024年のMA市場調査によると、CRMとMAの統合が重要テーマとなっており、自動リードスコアリングと確度の高いリードのみを営業に引き渡すシステムが主流化しています。
MAとCRMの違いと役割分担
MAとCRMを効果的に連携させるためには、それぞれの役割を正しく理解することが重要です。
(1) MA:見込み顧客の獲得・育成(顧客になる前)
MAは、まだ顧客になっていない見込み顧客(リード)の獲得・育成を担当するツールです。Salesforce公式の解説によると、MAは「企業のマーケティング活動を自動化し、顧客との関係を効率的に構築・管理するツール」と定義されています。
MAの主な機能:
- リード管理: 展示会、Webサイト、広告、セミナーなど多様なチャネルからのリード情報を一元管理
- リードスコアリング: Web訪問、メール開封、資料ダウンロードなどの行動を数値化し、購買意欲を評価
- リードナーチャリング: メール配信の自動化により、見込み顧客を段階的に育成
- 行動履歴の分析: Webサイトの閲覧履歴、メールへのリアクションを計測・分析
(2) CRM:既存顧客との関係維持・向上(顧客になった後)
CRMは、すでに顧客になった企業・個人との関係維持・向上を担当するシステムです。
CRMの主な機能:
- 顧客情報の一元管理: 属性情報、購買履歴、問い合わせ履歴などを管理
- 商談・案件管理: 営業活動の進捗、契約状況を管理
- 顧客対応の履歴管理: 過去のやり取りを参照し、適切な対応を実現
- レポート・分析: 売上予測、顧客分析などを実施
SATORIの解説によると、「MAは見込み顧客をターゲット、CRMは既存顧客をターゲットとする」ため、両者を連携させることで顧客ライフサイクル全体をカバーできます。
(3) SFAとの関係性
SFA(営業支援システム)は、CRMの一部として位置づけられることが多いツールです。
SFAの主な機能:
- 営業活動のプロセス管理
- 商談管理(パイプライン管理)
- 売上予測
- 営業担当者のアクション管理
MAで育成したリードをSFA/CRMに連携し、商談・契約管理まで一気通貫で行えるのが理想的な姿です。
MA×CRM連携の具体的なメリット
MAとCRMを連携させることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
(1) 部門間の情報共有とリードの一元管理
連携の最大のメリットは、マーケティング部門と営業部門の情報共有です。
実現できること:
- マーケが獲得したリードの情報(流入経路、興味関心、行動履歴)が営業に自動連携
- 営業の商談状況がマーケに共有され、施策効果の測定が可能に
- リード情報を一箇所で管理し、重複や情報の欠落を防止
- 顧客のライフサイクル全体を可視化
日立ソリューションズの資料によると、「顧客情報を単に蓄積するだけでなく、CRMと連携して常に最新かつ正確な状態で共有可能にする」ことがMAの根幹機能とされています。
(2) リードスコアリングと自動アサインの実現
連携により、熱度の高いリードを自動的に営業へ引き渡す仕組みを構築できます。
リードスコアリングの活用例:
- Webサイトの特定ページ(料金ページ、導入事例)閲覧: +10点
- メール開封: +3点、クリック: +5点
- 資料ダウンロード: +15点
- セミナー参加: +20点
- スコア合計が50点を超えたら営業に自動アサイン
自動アサインのルール例:
- 業種・企業規模に応じて担当営業を自動振り分け
- 地域別に担当営業を自動アサイン
- 特定の商材に興味を持ったリードは専門チームへ
(3) 重複アプローチの防止とマーケティング効果の可視化
連携により、リードや顧客へのアプローチ状況を全社で共有できます。
防止できる問題:
- 同じ見込み客にマーケと営業が別々にアプローチ
- 営業がアプローチ中のリードにマーケがキャンペーンメール送信
- 過去に失注した顧客への不適切なアプローチ
可視化できる効果:
- どの施策(展示会、Web広告、セミナーなど)が商談に貢献したか
- リード獲得から商談化、受注までの期間と転換率
- チャネル別のROI(投資対効果)
データ同期とワークフロー設計のポイント
MA×CRM連携を成功させるためには、データ同期とワークフローの設計が重要です。
(1) 双方向同期・片方向同期・同期頻度の設定
データ同期の方法にはいくつかのパターンがあります。
双方向同期:
- MA → CRM、CRM → MA の両方向でデータを同期
- リード情報の更新がどちらで行われても反映される
- 設定が複雑になりがちで、競合解決ルールが必要
片方向同期:
- MA → CRM または CRM → MA の一方向のみ
- シンプルで管理しやすいが、情報の更新が一方に依存
同期頻度の設定:
- リアルタイム同期: 即座に反映されるが、システム負荷が高い
- 定期同期(10分、1時間、1日など): 負荷は低いが、情報にタイムラグが発生
自社の業務フローに合わせて、最適な設定を検討することが重要です。
(2) MQL・SQL判定基準とSLA設定
マーケティング部門と営業部門の連携には、リードの判定基準とSLA(サービスレベル合意)の設定が有効です。
MQL・SQLの定義:
- MQL(Marketing Qualified Lead): マーケティング部門が「営業に引き渡すに値する」と判定したリード
- SQL(Sales Qualified Lead): 営業部門が「商談化の見込みがある」と判定したリード
SLA設定の例:
- MQLに対して、営業は24時間以内に初回アプローチを行う
- 営業がSQLと判定しない場合は、48時間以内にその理由をフィードバック
- MQL → SQL の転換率目標: 30%
こうした基準を明文化することで、部門間の認識のズレを防ぎ、連携をスムーズにできます。
(3) 重複データ管理とフィールドマッピング
データ連携では、重複データの管理とフィールドマッピングが重要です。
重複データ管理:
- 同一人物・同一企業のレコードが複数作成されないようルールを設定
- メールアドレスや企業名をキーにした重複チェック
- 重複が発生した場合のマージルール(どちらの情報を優先するか)
フィールドマッピング:
- MA側のフィールド(会社名、役職など)とCRM側のフィールドを紐付け
- 必須フィールドの欠落がないかチェック
- 日付形式、選択肢の値など、データ形式の整合性を確認
導入時の注意点とよくある失敗
MA×CRM連携の導入には、いくつかの注意点があります。
(1) 顧客情報整備とスコアリング設計の不備
MAツールを導入しても、期待した効果が得られないケースがあります。
よくある失敗:
- 顧客情報が整備されていない(重複、欠落、不正確なデータが多い)
- スコアリング基準が適切でない(営業が求めるリードと乖離)
- リードの定義がマーケと営業で異なる
- 運用体制が構築されていない(誰が、いつ、何をするかが曖昧)
対策:
- 導入前にデータクレンジング(重複削除、欠落項目の補完)を実施
- スコアリング基準を営業と協議して設計
- MQL、SQLの定義を明文化して合意
- 運用マニュアルを作成し、担当者を明確化
(2) 運用体制の構築とベンダーサポート活用
MAとCRMの連携には、技術的な対応が必要です。
技術的な対応事項:
- API連携の設定
- フィールドマッピングの定義
- 同期ルール・競合解決ルールの設定
- テスト・検証の実施
導入初期には専門知識が必要なため、MAベンダーやSIパートナーの支援を活用することが推奨されます。また、主要なMA×CRMの組み合わせとしては、HubSpot(MA・CRM一体型)、Pardot+Salesforce、Marketo+Salesforceなどがあり、自社の規模・業種・既存システムに応じて選定することが重要です。
まとめ:MA×CRM連携を成功させるために
マーケティングオートメーションと顧客管理システムの連携は、マーケティング部門と営業部門の分断を解消し、リード育成を最適化するための有効な手段です。連携により、リードの一元管理、スコアリングと自動アサイン、重複アプローチの防止、マーケティング効果の可視化が実現できます。
導入事例ではMAを活用して商談創出を2.5倍に増加させた事例や、ライフネット生命が4チャネル統合により見込み客へのアプローチ率を75%改善した事例も報告されています(SATORI公式サイトより)。
次のアクション:
- 自社のマーケ・営業連携の課題を整理する
- MAとCRMの連携要件(データ項目、同期ルール、SLA)を定義する
- 主要なMA×CRMツールの情報を収集する
- ベンダーやSIパートナーに相談し、導入計画を策定する
- 小規模なPoC(概念実証)で効果を検証する
2024年のグローバルMA市場は69.5億ドル(2028年には96.8億ドル予測)に成長しており、AI活用やオムニチャネル対応がさらに進展しています。自社のマーケティング・営業活動を次のレベルに引き上げるために、MA×CRM連携を検討してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
Q: MAとCRMの違いは何ですか? A: MAは見込み顧客の獲得・育成を担当し(顧客になる前のフェーズ)、CRMは既存顧客との関係維持・向上を担当します(顧客になった後のフェーズ)。両者を連携させることで、リード獲得から顧客化、その後のフォローまで一気通貫で管理できます。
Q: MAとCRMを連携させる具体的なメリットは? A: リード情報の一元管理、重複アプローチの防止、熱度の高いリードを自動で営業へ引き継ぎ、マーケティング効果の可視化などが実現できます。導入企業では商談創出2.5倍といった成果も報告されています。
Q: どのようなMA×CRM組み合わせがありますか? A: HubSpot(MA・CRM一体型)、Pardot+Salesforce、Marketo+Salesforceなどが代表的です。自社の規模・業種・既存システム・予算に応じて選定することが重要です。詳細は各ベンダーの公式サイトで確認してください。
Q: MA×CRM連携の導入にはどれくらいかかりますか? A: システム連携設定、データマッピング、運用体制構築を含めて数週間〜数ヶ月が目安です。導入初期はベンダーサポートやSIパートナーの支援を活用することを推奨します。導入前にROIを検討し、見積もりを取得してください。
