KPIの作り方とは?設定手順・具体例・運用のコツを解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/19

KPIが求められる背景

B2B SaaS企業がビジネスを成長させる中で、「どの指標を追いかければいいのか分からない」「目標設定が曖昧で、成果が出ているか判断できない」といった悩みを抱える担当者は少なくありません。

この記事では、KPIの作り方を設定手順から部門別の具体例、運用のコツまで実務視点で解説します。

この記事のポイント:

  • KPIは最終目標(KGI)達成のための中間指標を数値化したもの
  • 設定にはSMARTの法則(Specific・Measurable・Achievable・Relevant・Time-bound)を活用
  • KPIツリーを作成することで、KGI達成に必要なKPIを洗い出し、今すべきことを明確化
  • マーケ・営業・CS・開発など、部門の役割に応じた指標を設定
  • KPIを設定しすぎると業務の柔軟性が失われ、モチベーションが低下する(5-10個程度に厳選)

(1) データドリブン経営の重要性

データドリブン経営とは、データに基づいて意思決定を行う経営スタイルです。勘や経験だけに頼らず、定量的な指標を用いることで、以下のような効果が期待できます。

  • 意思決定の精度向上: 客観的なデータに基づき、合理的な判断が可能
  • 成果の可視化: 施策の効果を数値で把握でき、改善点が明確になる
  • 組織全体の目標共有: 数値目標を共有することで、各メンバーが何を目指すべきか理解しやすくなる

しかし、やみくもにデータを集めても、適切な指標を設定しなければ成果につながりません。KPIは、データドリブン経営を実現するための重要な要素です。

(2) 目標管理と進捗の可視化

KPIを設定することで、目標達成までの進捗を可視化できます。

KPIがない場合:

  • 目標が曖昧で、メンバーが何を優先すべきか分からない
  • 施策の効果が見えず、改善すべき点が不明確
  • 期末になって初めて目標未達が判明し、手遅れになる

KPIがある場合:

  • 週次・月次で進捗を確認でき、早期に軌道修正が可能
  • 達成すべき数値が明確で、メンバーの行動が具体化される
  • データに基づいた振り返りができ、次のアクションが決めやすい

KPIとは:基礎知識

(1) KPIの定義:重要業績評価指標

KPI(Key Performance Indicator)は、重要業績評価指標と訳され、最終目標(KGI)達成のための中間指標を数値化したものです。

KPIの特徴:

  • 最終目標に向けた進捗を測定できる
  • 定量的(数値)で表現される
  • 定期的に測定・評価される

(2) KGI(最終目標)とKPI(中間指標)の違い

KGIとKPIは、しばしば混同されますが、以下のような関係性があります。

KGI(Key Goal Indicator):

  • 組織の最終目標を数値化したもの
  • 例:年間売上高1億円、年間新規契約件数100件

KPI(Key Performance Indicator):

  • KGI達成のための中間指標
  • 例:月間リード獲得数500件、商談化率20%、受注率30%

設定の順序:

  1. まずKGI(最終目標)を決定する
  2. KGI達成に必要な中間指標(KPI)を洗い出す
  3. KPI同士の関係性を整理し、優先順位をつける

いきなりKPIを決めず、KGIから逆算することが重要です。

(3) KPIツリーとは何か

KPIツリーとは、KGIを頂点に、それを達成するために必要なKPIを階層構造で整理したものです。

KPIツリーの例(B2B SaaS企業の売上目標):

KGI: 年間売上高1億円
├─ KPI: 年間新規契約件数100件
│  ├─ KPI: 月間リード獲得数500件
│  │  ├─ KPI: Webサイト訪問者数10,000人
│  │  └─ KPI: コンバージョン率5%
│  └─ KPI: 商談化率20%
│     └─ KPI: 受注率30%
└─ KPI: 平均契約単価100万円

KPIツリーを作成することで、KGI達成のために「今すべきこと」が明確になります。

KPIの作り方:5つのステップ

KPIを効果的に設定するには、以下の5つのステップを踏むことが推奨されます。

(1) ステップ1:KGI(最終目標)を明確に設定する

最初のステップは、組織の最終目標(KGI)を明確にすることです。

KGI設定のポイント:

  • 経営戦略と連動した目標にする
  • 具体的な数値で表現する(曖昧な表現を避ける)
  • 達成期限を明確にする(1年後、3年後など)

例:

  • NG:「売上を増やす」
  • OK:「2025年12月末までに年間売上高1億円を達成する」

(2) ステップ2:KPIツリーを作成してKPIを洗い出す

KGIを達成するために必要な要素を分解し、KPIツリーを作成します。

作成手順:

  1. KGI達成に必要な要素を分解する

    • 例:年間売上高1億円 = 新規契約件数 × 平均契約単価
  2. 各要素をさらに細分化する

    • 例:新規契約件数 = リード獲得数 × 商談化率 × 受注率
  3. KPI同士が四則演算で計算できる関係にあることを確認する

    • これにより、成果の検証や軌道修正がしやすくなる

(3) ステップ3:SMARTの法則でKPIを設計する

SMARTの法則は、KPI設定時の5つの要素を表す原則です。

SMARTの5要素:

  • S(Specific:具体的): 曖昧さを排除し、誰が見ても理解できる表現にする
  • M(Measurable:測定可能): 数値で測定できる指標にする
  • A(Achievable:達成可能): 現実的に達成できる目標にする(高すぎず低すぎず)
  • R(Relevant:関連性がある): KGIや組織目標と関連性のある指標にする
  • T(Time-bound:期限が明確): いつまでに達成するか期限を設定する

SMART適用例:

  • NG:「Webからのリード獲得を増やす」
  • OK:「Webサイトからの月間リード獲得数を3ヶ月以内に500件達成する」

(4) ステップ4:過去データを参考に達成可能な数値を設定

KPIの数値は、過去のデータを参考にしながら設定することが重要です。

設定の考え方:

  • 過去の実績を分析し、「達成できるか否かのラインの少し上」を目指す
  • 高すぎる目標はメンバーのモチベーション低下につながる
  • 低すぎる目標は成長の機会を逃す

例(月間リード獲得数):

  • 過去3ヶ月の実績:350件、380件、420件
  • 平均:約380件
  • KPI設定:月間500件(約130%の成長を目指す)

(5) ステップ5:KPI未達時の回復策と運用ルールを決定

KPIを設定したら、未達時の対応策と運用ルールを事前に決めておくことが重要です。

決めておくべきこと:

  • KPI未達時にどのような対応を取るか(軌道修正の基準)
  • KPIの見直しタイミング(月次、四半期ごとなど)
  • KPI達成状況の共有方法(週次ミーティング、ダッシュボードなど)

部門別KPI設定の具体例

B2B SaaS企業では、部門の役割に応じてKPIを設定することが一般的です。

(1) マーケティング部門のKPI(リード獲得数・コンバージョン率・CPAなど)

マーケティング部門は、営業部門にリードを提供する役割を担います。

代表的なKPI:

  • 月間リード獲得数(Webサイト、広告、ウェビナーなど)
  • コンバージョン率(Webサイト訪問者のうち、リード化した割合)
  • CPA(Cost Per Acquisition):1件のリード獲得にかかったコスト
  • MQL(Marketing Qualified Lead):営業に引き渡す質の高いリード数

具体例:

  • KGI:年間新規契約件数100件
  • KPI:月間MQL数200件、商談化率20%(= 月間商談数40件)

(2) 営業部門のKPI(受注件数・ARR・商談化率など)

営業部門は、マーケティングから引き渡されたリードを商談化し、受注する役割を担います。

代表的なKPI:

  • 月間受注件数
  • ARR(Annual Recurring Revenue):年間経常収益
  • 商談化率(リードのうち、商談に進んだ割合)
  • 受注率(商談のうち、受注に至った割合)
  • 平均商談期間(リードから受注までの期間)

具体例:

  • KGI:年間ARR 1億円達成
  • KPI:月間受注件数10件、平均契約単価100万円、受注率30%

(3) カスタマーサクセス部門のKPI(チャーンレート・NPS・LTVなど)

カスタマーサクセス部門は、顧客の成功を支援し、契約継続率を高める役割を担います。

代表的なKPI:

  • チャーンレート(解約率):月次または年次の解約率
  • NPS(Net Promoter Score):顧客推奨度
  • LTV(Life Time Value):顧客生涯価値
  • オンボーディング完了率(導入支援を完了した顧客の割合)
  • アップセル・クロスセル率(既存顧客からの追加受注)

具体例:

  • KGI:年間チャーンレート5%以下
  • KPI:月次チャーンレート0.5%以下、NPS 50以上、オンボーディング完了率90%

(4) 開発部門のKPI(リリース頻度・バグ発見率・開発速度など)

開発部門は、プロダクトの品質向上と開発速度の最適化を担います。

代表的なKPI:

  • リリース頻度(週次、月次のリリース回数)
  • バグ発見率(リリース後のバグ件数)
  • 開発速度(ストーリーポイント、ベロシティなど)
  • コードカバレッジ(テストコードがカバーする範囲)
  • リードタイム(機能追加の要求から本番環境リリースまでの期間)

具体例:

  • KGI:顧客満足度向上、プロダクト品質改善
  • KPI:月次リリース回数4回、本番環境バグ件数5件以下、リードタイム2週間以内

(5) 経営企画部門のKPI(売上高・営業利益率・ROIなど)

経営企画部門は、全社の財務目標や経営戦略の達成を管理します。

代表的なKPI:

  • 月間売上高、年間売上高
  • 営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)
  • ROI(Return On Investment):投資対効果
  • キャッシュフロー(営業CF、投資CF、財務CF)
  • 従業員1人あたりの売上高

具体例:

  • KGI:年間売上高1億円、営業利益率20%
  • KPI:月間売上高833万円、営業利益率18%以上、ROI 150%以上

KPI運用のコツとよくある失敗

KPIを設定しただけでは成果につながりません。運用のコツと、よくある失敗例を知っておくことが重要です。

(1) よくある失敗例1:KPIを設定しすぎる(カルビー3,000個KPI設定の失敗)

KPIを設定しすぎると、管理負荷が増大し、本質的な成果に集中できなくなります。

カルビーの事例:

  • 3,000個のKPIを設定した結果、業務の柔軟性が失われた
  • メンバーのモチベーションが低下し、KPI達成が目的化してしまった

推奨される対応:

  • KPIは「重要な」指標に絞り、5-10個程度に厳選する
  • 部門ごとに最も重要な2-3個のKPIに集中する

(2) よくある失敗例2:パーセンテージをKPIに設定し母数が減少

コンバージョン率や解約率などのパーセンテージをKPIに設定すると、母数が減少してもKPI達成となり、KGI未達となる可能性があります。

問題の例:

  • KPI:コンバージョン率5%
  • 前月:Webサイト訪問者10,000人 × 5% = リード500件
  • 当月:Webサイト訪問者8,000人 × 5% = リード400件
  • → コンバージョン率は達成しているが、リード数は減少

推奨される対応:

  • パーセンテージだけでなく、絶対数(リード獲得数)もKPIに設定する
  • 母数(Webサイト訪問者数)も併せて管理する

(3) よくある失敗例3:部門ごとの部分最適に陥る

部門ごとにKPIを設定すると、全体最適を損ない、組織全体として成果が出ない状況に陥ることがあります。

問題の例:

  • マーケ部門:リード獲得数を増やすため、質より量を重視
  • 営業部門:質の低いリードが増え、商談化率が低下
  • → 全体として受注件数が伸びない

推奨される対応:

  • 部門間でKPIの連動性を確認する
  • 全体のKGI達成に向けて、部門間で協力する仕組みを作る

(4) よくある失敗例4:KPI未達時の回復策がない

KPI未達時の対応策を事前に決めていないと、問題発生時に適切な対応ができません。

推奨される対応:

  • KPI未達時の回復策を事前に決めておく
  • 週次・月次で進捗を確認し、早期に軌道修正する
  • KPIツリーを使い、どの要素がボトルネックかを特定する

(5) 運用のコツ:定期的な見直しと柔軟な調整

KPIは一度設定したら終わりではなく、定期的に見直し、柔軟に調整することが重要です。

見直しのタイミング:

  • 月次:進捗確認、軌道修正
  • 四半期ごと:KPIの妥当性評価、数値の見直し
  • 年次:KGI達成状況の振り返り、次年度のKPI設計

見直しの観点:

  • 市場環境の変化(競合の動向、顧客ニーズの変化)
  • 組織の成長段階(スタートアップ期、成長期、成熟期)
  • KPI達成状況(達成しやすすぎる、難しすぎる)

まとめ:KPIでビジネスの成果を最大化

KPIの作り方を理解し、適切に設定・運用することで、ビジネスの成果を最大化できます。

この記事のまとめ:

  • KPIは最終目標(KGI)達成のための中間指標を数値化したもの
  • いきなりKPIを決めず、KGIを決定してから逆算する
  • KPIツリーを作成し、KGI達成に必要なKPIを洗い出す
  • SMARTの法則(Specific・Measurable・Achievable・Relevant・Time-bound)で設計
  • マーケ・営業・CS・開発など、部門の役割に応じた指標を設定
  • KPIを設定しすぎず、5-10個程度に厳選する
  • 定期的に見直し、柔軟に調整する

次のアクション:

  • 自社のKGI(最終目標)を明確にする
  • KPIツリーを作成し、必要なKPIを洗い出す
  • SMARTの法則でKPIを設計し、過去データを参考に数値を設定
  • KPI未達時の回復策と運用ルールを決定する
  • 週次・月次で進捗を確認し、早期に軌道修正する

適切なKPI設定と運用で、データドリブン経営を実現し、ビジネスの成果を最大化しましょう。

※この記事は2024年11月時点の情報です。KPIの目標値は業界や企業規模、市場環境により異なるため、自社の状況に応じて設定してください。

よくある質問

Q1KPIとKGIの違いは何ですか?

A1KGI(Key Goal Indicator)は組織の最終目標を数値化したもの(例:売上高1億円、契約件数100件)です。KPI(Key Performance Indicator)はKGI達成のための中間指標(例:月間リード獲得数500件、商談化率20%)です。いきなりKPIを決めず、まずKGIを決定してから中間指標としてKPIを設定することが重要です。

Q2KPIツリーとはどのように作成するのですか?

A2KGIを頂点に、それを達成するために必要なKPIを階層構造で整理したものです。作成手順は、①KGIを設定→②KGI達成に必要な要素を分解→③各要素をさらに細分化→④KPI同士が四則演算で計算できる関係にあることを確認→⑤優先度を決めて実行です。これにより、今すべきことが明確になります。

Q3部門やチームごとに適切なKPIをどう設定すればよいですか?

A3マーケ部門はリード獲得数・CPA、営業部門は受注件数・ARR、CS部門はチャーンレート・NPS、開発部門はリリース頻度・バグ発見率など、部門の役割に応じた指標を設定します。部分最適に陥らないよう、全体のKGIとの連動性を確認し、部門間で矛盾しないKPIを設計することが重要です。

Q4KPI設定時のSMARTの法則とは何ですか?

A4Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限が明確)の5要素です。例:「Webサイトからの月間リード獲得数を3ヶ月以内に500件達成する」のように、曖昧さを排除し、達成可能か否かのラインの少し上を目指す数値に設定します。

Q5KPIを設定しすぎるとどうなりますか?

A5カルビーの事例では3,000個のKPIを設定した結果、業務の柔軟性が失われ、メンバーのモチベーションが低下しました。KPIは「重要な」指標に絞り、5-10個程度に厳選することが推奨されます。多すぎると管理負荷が増大し、本質的な成果に集中できなくなります。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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