営業組織の効率化を図りたいが、内勤営業とインサイドセールスの違いが分からない
B2B企業の営業マネージャーの多くが、営業組織の効率化・分業化を検討する中で、「内勤営業とインサイドセールスは何が違うのか?」「どちらを導入すべきか?」といった疑問を抱えています。
この記事では、内勤営業とインサイドセールスの関係、他の営業手法との違い、必要なスキルとツール、立ち上げ手順、最新の市場動向まで詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 内勤営業とインサイドセールスは同じ意味で、電話・メール・Web会議など非対面で行う営業活動を指す
- フィールドセールス(訪問・対面商談)、テレアポ(アポ獲得のみ)とは目的と役割が異なる
- SDR(反響型)とBDR(新規開拓型)の2つのモデルがあり、自社の状況に合わせて選択
- MA・SFA・CTI・Web会議ツールが主要ツールで、データ一元管理が成功の鍵
- 日本の導入率は40.6%で、米国の80%と比較してまだ成長余地が大きい
- 2024年、AI活用が43%に達し、前年の24%から倍増
内勤営業とインサイドセールスの関係
内勤営業とインサイドセールスの関係を明確にします。
内勤営業とインサイドセールスは同じ意味
内勤営業とインサイドセールスは同じ意味で、電話・メール・オンライン会議など非対面ツールで行う営業活動を指します。社内に留まって営業活動を行うため、「インサイド(内勤)・内勤型営業」と呼ばれています。
呼び方の違い:
- 内勤営業: 日本で従来から使われてきた用語
- インサイドセールス: 米国で確立された営業手法を指す用語で、戦略的な営業活動を強調
非対面営業が注目される背景
非対面営業(内勤営業・インサイドセールス)が注目される背景には、以下の要因があります:
効率化ニーズ:
- 移動時間・コストの削減(訪問営業の非効率性)
- 1日あたりの接触件数の増加(訪問3-5件 → 電話・Web会議10-20件)
働き方改革:
- リモートワーク推進(2020年以降のコロナ禍で加速)
- ワークライフバランスの向上
市場環境の変化:
- 顧客の情報収集がオンライン化(Webサイト、ウェビナー、SNS等)
- 初回商談前に顧客が十分な情報を持つようになり、訪問の必要性が低下
これらの要因により、内勤営業・インサイドセールスの導入が進んでいます。
インサイドセールスの基本概念と他手法との違い
インサイドセールスの基本概念と、他の営業手法との違いを解説します。
インサイドセールスとは何か
インサイドセールスは、電話・メール・Web会議など非対面ツールを活用して、リードにアプローチする営業手法です。主な活動内容は以下の通りです:
主な活動:
- リードクオリフィケーション: 見込み顧客の購買可能性を見極める
- リードナーチャリング: 見込み顧客を育成し、購買意欲を高める
- 商談設定: 有望なリードをフィールドセールスに引き渡し、商談をセッティング
- データ収集: 顧客の課題・ニーズ・予算・決裁プロセス等の情報を収集
フィールドセールスとの違い
インサイドセールスとフィールドセールスは、役割分担により効率化を図る営業体制です。
インサイドセールス:
- 活動場所: 社内(非対面)
- 主な役割: リード育成、商談設定まで
- 活動量: 1日10-20件の接触が可能
フィールドセールス:
- 活動場所: 顧客訪問(対面)
- 主な役割: 商談から受注まで
- 活動量: 1日3-5件の訪問が一般的
この分業により、フィールドセールスは質の高い商談に集中でき、受注率が向上します。
テレアポとの違い
インサイドセールスとテレアポは、目的と活動範囲が大きく異なります。
テレアポ:
- 目的: アポ獲得のみ
- 活動内容: 電話でアポイントを取得し、訪問営業につなげる
- 評価指標: アポ獲得数
インサイドセールス:
- 目的: ヒアリング・関係構築・データ収集など複数の目的
- 活動内容: リード育成、ニーズ把握、購買意欲の醸成、商談設定
- 評価指標: 商談設定数、商談化率、リードの質
インサイドセールスは、単なるアポ取りではなく、戦略的な営業活動です。
SDRとBDRの2つのモデル
インサイドセールスには、SDR(反響型)とBDR(新規開拓型)の2つのモデルがあります。
SDR(Sales Development Representative):
- 対象: 問い合わせや資料請求など、自社に関心を示したリード
- 活動: 反響に対応し、ニーズをヒアリングして商談設定
- 適用場面: Webマーケティングが充実しており、リード獲得が安定している企業
BDR(Business Development Representative):
- 対象: ターゲットリスト(業界・企業規模等で選定)の企業
- 活動: 能動的にアプローチし、関心を喚起して商談設定
- 適用場面: 新規市場開拓、ターゲット企業が明確な場合
自社の状況に合わせて、まずは一つのモデルで実績を作ることが推奨されます。
インサイドセールスに必要なスキルとツール
インサイドセールスに必要なスキルセットと主要ツールを解説します。
必要なスキルセット
インサイドセールスに必要な主なスキル:
コミュニケーションスキル:
- 電話・メール・Web会議での効果的なコミュニケーション
- 対面と異なり、声のトーン・言葉選びが重要
ヒアリングスキル:
- 顧客の潜在的なニーズを引き出す質問力
- 課題・予算・決裁プロセスを把握する能力
データ分析スキル:
- SFA/MAツールのデータを分析し、優先順位を判断
- リードスコアリングに基づくアプローチ
タイムマネジメント:
- 1日10-20件の接触をこなす効率的な時間管理
MA・SFA・CTI・Web会議ツール
インサイドセールスの活動を支える主要ツール:
MA(Marketing Automation):
- マーケティング活動を自動化し、リードを育成
- メール配信、Webサイト訪問履歴、スコアリング機能
- 主要ツール: HubSpot、Marketo、Pardot
SFA(Sales Force Automation):
- 営業活動を効率化・可視化するツール
- 案件管理、活動履歴記録、売上予測
- 主要ツール: Salesforce、Mazrica、HubSpot CRM
CTI(Computer Telephony Integration):
- 電話とコンピューターを統合するシステム
- 通話記録、自動ダイヤル、通話メモのCRM連携
- 主要ツール: MiiTel、カイクラ
Web会議ツール:
- オンラインでの商談・デモ実施
- 主要ツール: Zoom、Google Meet、Microsoft Teams
ツール選定の基準と注意点
ツール選定時の基準と注意点:
選定基準:
- 課題の明確化: 何を解決したいのか(リード管理、活動可視化、通話記録等)
- 既存ツールとの連携: MAとSFAのデータ連携が可能か
- 使いやすさ: 無料トライアルで実際に試す
- 料金: 初期費用・月額費用が予算内か
注意点:
- ツール設定の難易度: IT知識やプログラミング知識が必要な場合があり、習得に時間がかかる
- 社内での共有: 導入目的や使用方法を社内で共有しないと、投資対効果が低くなる
※ツールの機能や料金プランは更新される可能性があるため、最新情報は公式サイトで確認してください。(執筆時点: 2025年11月)
インサイドセールスの立ち上げ手順
インサイドセールス組織を立ち上げる具体的な手順を解説します。
チーム編成:マネージャーと実務メンバー
インサイドセールスチームの編成では、マネージャーと実務メンバーをバランス良く配置することが重要です。
マネージャー(1名):
- チーム全体の戦略立案・KPI管理
- フィールドセールス・マーケティングとの連携
- 社内異動(営業部門からの登用)または外部採用
実務メンバー(3-5名でスタート):
- リード対応・育成・商談設定の実務
- 社内異動と外部採用を組み合わせる
- 新卒採用も選択肢(育成に時間はかかるがコストは抑えられる)
ツール導入とデータ一元管理
活動ログや顧客データを一元管理できるツールを必ず導入します。
データ一元管理の重要性:
- リードの状況(ステータス、興味領域、過去の接触履歴)を全員が把握
- 商談設定時にフィールドセールスに引き継ぐ情報の質が向上
- PDCAサイクルを回すためのデータ蓄積
導入の優先順位:
- SFA: 案件管理・活動履歴記録が最優先
- MA: リード育成が本格化してから導入(初期はSFAだけでも可)
- CTI: 通話記録・効率化が必要になってから追加
KPI設定と段階的な目標調整
KPI設定は、立ち上げ当初と成熟期で異なります。
立ち上げ当初(最初の3ヶ月):
- 優先事項: 動かして数を集めること
- KPI: アプローチ件数、接触件数(質よりも量を重視)
- 目標: プロセスの確立、データ蓄積
成熟期(3ヶ月以降):
- 優先事項: 質の向上
- KPI: 商談設定数、商談化率、リードの質(受注率)
- 目標: 段階的にKPIのハードルを上げる
一度設定したKPIはそれで終わりではなく、進捗状況や次のKPIへの遷移率を勘案して、変更や追加などのチューニングを常に行う必要があります。
営業部門との連携強化
インサイドセールスとフィールドセールスの連携が、成功の鍵です。
連携のポイント:
- 定期ミーティング: 週次でフィードバックを共有(リードの質、商談化率、受注状況)
- リード定義の統一: 「商談設定すべきリード」の基準を明確化
- 情報の引き継ぎ: SFAで顧客情報・ヒアリング内容を詳細に記録
よくある課題:
- リードの質に関する認識のずれ: インサイドセールスが「有望」と判断したリードが、フィールドセールスには「まだ早い」と見える
- 解決策: フィードバックをもとにリードスコアリングの基準を調整
営業部門との連携を密にし、フィードバックをもとにプロセスを継続的に改善することが成功の鍵です。
市場動向と導入事例
日本におけるインサイドセールスの最新動向と導入事例を紹介します。
日本の導入率40.6%、成長余地の大きさ
2024年の調査によると、日本のインサイドセールス導入率は40.6%に達しています。一方、米国の導入率は80%であり、日本にはまだ成長余地が大きいと言えます。
導入率の推移:
- 2020年以降、コロナ禍を契機にリモート営業が普及
- BtoB SaaS企業を中心に導入が進む
- 今後も中堅企業・大企業での導入が加速する見込み
グローバル市場:
- 2024年のグローバル市場規模は7.18億ドル(SalesGrid調べ)
AI活用の進展(43%が導入)
2024年の調査では、AI活用が営業組織で43%に達し、前年の24%から倍増しています。
主なAI活用用途:
- コール文字起こし・分析: 通話内容を自動で文字起こしし、重要ポイントを抽出(MiiTel等)
- メール自動生成: リードへのフォローメールを自動生成
- 顧客リサーチ: 企業情報・ニュース・SNS投稿を収集し、アプローチのヒントを提供
2024年10月のトレンド:
- Inside Sales Conference 2024に1,000名以上が参加
- マルチモーダルAI(音声・テキスト・画像データの統合分析)が注目を集めた
人材市場の変化:
- インサイドセールスを前職とする人材が前年比2倍の19%に増加
- 専門キャリアとして定着しつつある
成功事例に学ぶ運用ポイント
BtoB企業の成功事例から、運用ポイントを抽出します(電通デジタル調べ)。
成功パターン:
- SDRモデルで安定したリード対応: Webマーケティングで獲得したリードに迅速対応し、商談化率30%を達成
- BDRモデルでターゲット企業開拓: 業界・企業規模でターゲットを絞り、能動的アプローチで新規顧客を開拓
- 分業体制の確立: インサイドセールスが商談設定、フィールドセールスが受注に集中し、全体の受注率が向上
共通する成功要因:
- MA・SFA・CTIツールの活用によるデータ一元管理
- 営業部門との密な連携とフィードバックループ
- KPIの段階的調整(最初は量、成熟期は質)
※導入事例は企業規模・業種・既存体制により結果が異なるため、自社の状況に合わせて参考にしてください。
まとめ:効果的なインサイドセールス組織の構築
内勤営業・インサイドセールスを効果的に導入するには、明確な理解と計画的な立ち上げが必要です。
内勤営業とインサイドセールスの関係:
- 同じ意味で、電話・メール・Web会議など非対面で行う営業活動
- フィールドセールス(訪問)、テレアポ(アポ取りのみ)とは役割が異なる
2つのモデルと選択:
- SDR(反響型): Webマーケティングで獲得したリードに対応
- BDR(新規開拓型): ターゲット企業に能動的にアプローチ
- まずは一つのモデルで実績を作る
立ち上げのポイント:
- マネージャー + 実務メンバー3-5名でスタート
- MA・SFA・CTI・Web会議ツールを導入し、データ一元管理
- 立ち上げ当初は「量」を優先、成熟期は「質」を重視
- 営業部門と密に連携し、フィードバックで改善
市場動向:
- 日本の導入率40.6%、米国80%と比較して成長余地が大きい
- AI活用が43%に達し、前年の24%から倍増
- 専門キャリアとして定着しつつある
次のアクション:
- 自社の営業プロセスを整理し、インサイドセールスの役割を明確化する
- SDRまたはBDRのどちらのモデルが適しているか検討する
- MA・SFA・CTIツールを比較検討し、無料トライアルで試す
- マネージャー候補を選定し、チーム編成計画を立てる
- 3-6ヶ月の立ち上げ期間を想定し、段階的にKPIを設定する
自社に合ったインサイドセールス組織の構築で、営業効率化と売上向上を実現しましょう。
