データ分析基盤を構築したいが、どのDWHを選べばいいか分からない...
B2Bデジタルプロダクト企業のデータエンジニアや分析担当者の多くが、「BigQuery」という名前は聞いたことがあるものの、具体的にどんな特徴があり、どう活用すればいいのか分からないと感じています。「サーバーレスとは?」「料金体系はどうなっている?」「RedshiftやSnowflakeとの違いは?」といった疑問は尽きません。
この記事では、Google BigQueryの基本概念から特徴、料金体系、実務での活用方法まで、データ分析基盤の構築を検討しているB2B企業担当者向けに分かりやすく解説します。
この記事のポイント:
- BigQueryはGoogleが提供するフルマネージド型のサーバーレスデータウェアハウス
- ペタバイト級のデータを数秒〜数分で処理できる超高速性能が特徴
- 毎月1TiBまでのクエリ処理と10GiBのストレージが無料で利用可能
- サーバーレスのためインフラ管理が不要で、データ分析に集中できる
- RedshiftやSnowflakeと比較して環境構築の負荷が低く、運用コストを抑えられる
1. BigQueryが注目される背景
(1) ビッグデータ分析の必要性
B2B SaaS企業では、顧客の行動ログ、売上データ、マーケティングデータ、製品利用データなど、日々膨大なデータが蓄積されます。これらのデータを分析することで、顧客理解の深化、マーケティング施策の最適化、製品改善のヒント発見などが可能になります。
しかし、データ量が増えるにつれて従来のデータベースでは処理速度が低下し、分析に時間がかかるようになります。テラバイト級、ペタバイト級のデータを高速に分析するためには、専用のデータウェアハウス(DWH)が必要とされています。
(2) クラウドDWHの進化とサーバーレスの優位性
クラウドDWHは従来、Amazon Redshiftのようにインスタンス(仮想サーバー)を管理する必要がありました。インスタンスのサイズ設定、スケーリング、パッチ適用などの運用負荷が課題でした。
これに対してBigQueryは「サーバーレス」アーキテクチャを採用し、インフラ管理が完全に不要です。データをアップロードしてSQLを実行するだけで、リソースは自動的にスケールします。この運用負荷の低さが、データエンジニアのリソースが限られる中堅企業にも支持される理由です。
2. BigQueryの概要:サーバーレスデータウェアハウス
(1) BigQueryとは何か:Googleのフルマネージド型DWH
BigQueryは、Googleが提供するフルマネージド型のクラウドデータウェアハウスです。2010年にリリースされ、Googleの内部で使われていた技術を一般向けに公開したものです。
主な特徴は以下の通りです:
- フルマネージド: サーバーの設定・管理・保守が不要
- サーバーレス: インフラのプロビジョニングやスケーリングが自動
- SQL対応: 標準SQLで分析可能、既存のSQLスキルがそのまま活用できる
- 容量無制限: 0バイトからペタバイト級まで、データサイズの制限がない
(出典: Google Cloud「BigQuery overview」公式ドキュメント、2024年)
(2) サーバーレスアーキテクチャの特徴
サーバーレスとは、サーバーの管理・運用が不要で、リソースが自動的にスケールするアーキテクチャのことです。BigQueryでは以下のような利点があります:
- 即座に利用開始: Google Cloudアカウントがあればすぐにクエリを実行可能
- 運用負荷ゼロ: パッチ適用、バックアップ、障害対応などが不要
- 自動スケーリング: クエリの規模に応じて自動的にリソースが割り当てられる
- 従量課金: 使った分だけ支払う料金体系(無料枠あり)
これにより、データエンジニアはインフラ運用ではなく、データ分析そのものに時間を使えるようになります。
(3) ストレージとコンピュートの分離
BigQueryは「ストレージ」(データ保管)と「コンピュート」(データ処理)が分離されたアーキテクチャを採用しています。
- ストレージ: データを保存する容量(GB/TB単位)
- コンピュート: クエリを実行する処理リソース(TiB単位で課金)
この分離により、ストレージとコンピュートがそれぞれ独立してスケールできます。例えば、大量のデータを保存しつつ、必要なときだけ大規模なクエリを実行する、といった柔軟な運用が可能です。
3. BigQueryの主な特徴と強み
(1) 超高速処理(TB・PB級のデータを数秒〜数分)
BigQueryは、Googleの「Dremel」という技術をベースにしており、MPP(Massively Parallel Processing:大規模並列処理)によって超高速な分析が可能です。
処理速度の目安:
- TB(テラバイト)級: 数秒で処理
- PB(ペタバイト)級: 数分で処理
例えば、数十億行のログデータを数秒で集計することができます。これは、Googleの検索エンジンで培われた技術が活かされています。
(出典: DSK「初心者でもわかるBigQuery入門|導入方法や使い方を徹底解説!」、2024年)
(2) 自動スケーリングと容量無制限
BigQueryは容量無制限で、データサイズに応じて自動的にリソースがスケールします。
- データ容量: 0バイトからペタバイト級まで対応
- クエリの規模: 小規模なクエリから大規模な集計まで自動で最適化
- 同時実行: 複数のユーザーが同時にクエリを実行しても性能が保たれる
このため、データ量が増えても事前にインスタンスをアップグレードする必要がなく、運用負荷が大幅に軽減されます。
(3) SQLによる分析と豊富なツール連携
BigQueryは標準SQLに対応しており、既存のSQLスキルがそのまま活用できます。また、主要なBIツール・データ分析ツールとの連携も豊富です。
主な連携ツール:
- BIツール: Tableau、Looker、Power BI、Google Data Studio(Looker Studio)
- ETLツール: Apache Airflow、dbt、Fivetran、Stitch
- プログラミング言語: Python、Java、Go、Node.jsのクライアントライブラリ
これにより、既存のワークフローにBigQueryを組み込むことが容易です。
(4) BigQuery MLと機械学習統合
BigQuery MLは、SQLだけで機械学習モデルを構築・実行できる機能です。データをエクスポートすることなく、BigQuery内で完結します。
主な機能:
- 分類・回帰モデル: 顧客の購買予測、解約予測など
- クラスタリング: 顧客セグメンテーション
- 時系列予測: 売上予測、需要予測
- 推薦システム: レコメンドエンジンの構築
データサイエンティストがいなくても、SQLの知識があれば機械学習を活用できる点が特徴です。
(5) GA4連携とマーケティング活用
Google Analytics 4(GA4)のデータをBigQueryに連携することで、Webサイトやアプリの行動データを詳細に分析できます。
活用例:
- ユーザーの行動パターン分析(どのページから離脱が多いか)
- コンバージョン経路の可視化(どの流入経路が効果的か)
- カスタムレポート作成(GA4の標準レポートでは取得できないデータ)
B2B SaaS企業のマーケティング担当者にとって、リード獲得施策の効果測定に有用です。
4. 料金体系:オンデマンド料金とBigQuery Editions
(1) ストレージ料金とコンピュート料金の仕組み
BigQueryの料金は、「ストレージ料金」と「コンピュート料金」の2つで構成されます。
ストレージ料金:
- データの保存容量に応じて課金(GB単位)
- 圧縮後のサイズで計算されるため、実際のコストは抑えられる傾向
コンピュート料金:
- クエリ処理(データ分析)に使用するリソースに対して課金
- オンデマンド料金またはBigQuery Editionsのいずれかを選択
(出典: Google Cloud「BigQuery pricing」公式料金ページ、2024年)
(2) 無料枠(1TiB/月のクエリ、10GiBのストレージ)
BigQueryには無料枠があり、小規模な分析であれば無料で利用できます。
無料枠の内容:
- クエリ処理: 毎月最初の1TiB(約1TB)まで無料
- ストレージ: 10GiBまで無料
- 読み込み・エクスポート: 無料
例えば、毎月数百GBのデータをクエリする程度であれば、無料枠で十分にカバーできます。
(3) オンデマンド料金 vs BigQuery Editions
BigQueryのコンピュート料金には2つのモデルがあります。
オンデマンド料金:
- クエリで処理したデータ量(TiB単位)に応じて課金
- 料金目安: 1TiBあたり約$6.25(2024年12月時点で約900円前後)
- メリット: 使った分だけ支払う、初期コストが低い
- デメリット: 大規模なクエリを実行すると高額になる可能性
BigQuery Editions(Standard、Enterprise、Enterprise Plus):
- 自動スケーリング機能を備えた定額制プラン
- 料金目安: 月額数万円〜数十万円(プランにより異なる)
- メリット: コストが予測可能、高度な機能(災害対策、高速化)が利用可能
- デメリット: 利用量が少ない場合はオンデマンドより割高
2023年3月に料金体系が変更され、BigQuery Editionsが導入されました。従来の定額料金プランは廃止されているため、最新の料金体系を公式サイトで確認することが重要です。
(出典: DSK「Google BigQuery の料金体系を解説」、2024年)
(4) コスト最適化のポイント
BigQueryの料金を抑えるには、以下のような工夫が推奨されます。
コスト最適化の方法:
- パーティション分割: 日付やカテゴリでデータを分割し、必要な範囲だけクエリする
- クエリのプレビュー: 実行前にクエリコストを見積もる機能を活用
- キャッシュの活用: 同じクエリを再実行する場合、キャッシュが利用される(無料)
- クラスタリング: 頻繁に検索するカラムでデータを並べ替え、処理量を削減
クエリ処理量に応じて課金されるため、大規模なクエリを実行する際は事前にコストを見積もることが重要です。
5. 活用事例と導入ステップ
(1) B2B SaaS企業での活用シーン
B2B SaaS企業におけるBigQueryの代表的な活用シーンは以下の通りです。
活用例:
- プロダクト利用ログ分析: どの機能がよく使われているか、どこで離脱が多いか
- リード獲得施策の効果測定: どの流入経路がコンバージョンにつながっているか
- カスタマーサクセス: 解約リスクの高い顧客を予測し、フォローアップ
- 売上分析: 売上データを時系列で分析し、トレンドを把握
- マーケティングデータの統合: 広告データ、Webサイトデータ、CRMデータを一元管理
これらの分析により、データドリブンな意思決定が可能になります。
(2) 他DWHとの比較(Redshift・Snowflake)
BigQueryと他の主要なクラウドDWHを比較すると、以下のような違いがあります。
BigQuery vs Redshift vs Snowflake:
| 項目 | BigQuery | Redshift | Snowflake |
|---|---|---|---|
| アーキテクチャ | サーバーレス | インスタンス管理 | 中間的(仮想ウェアハウス) |
| 運用負荷 | 低い(自動管理) | 高い(インスタンス管理必要) | 中程度 |
| 処理速度 | 超高速(MPP) | 高速(MPP) | 高速(MPP) |
| 料金体系 | オンデマンド/定額 | インスタンス課金 | ストレージ+コンピュート |
| 無料枠 | あり(1TiB/月) | なし | あり(トライアル期間) |
| クラウド | Google Cloud | AWS | マルチクラウド |
選定基準:
- BigQuery: サーバーレスで運用負荷を抑えたい、Google Cloudを利用している
- Redshift: AWSを利用している、インスタンス管理に慣れている
- Snowflake: マルチクラウドで運用したい、柔軟なスケーリングが必要
(出典: DSK「【2大DWH】BigQueryとRedshiftを徹底比較!」、2025年)
どのDWHも高性能ですが、運用負荷とクラウド環境の違いが選定の決め手になります。導入検討時は、最新の公式ドキュメントで仕様を確認することが推奨されます。
(3) 導入の基本ステップ(Google Cloudアカウント作成〜クエリ実行)
BigQueryの導入は、以下のステップで進めます。
導入ステップ:
- Google Cloudアカウント作成: 無料枠で開始可能(クレジットカード登録が必要)
- プロジェクト作成: Google Cloud Consoleでプロジェクトを作成
- BigQueryの有効化: APIを有効化し、BigQueryコンソールにアクセス
- データセット作成: データを格納するデータセット(データベースに相当)を作成
- データのアップロード: CSV、JSON、Avro等のファイルをアップロード
- クエリ実行: SQLエディタでクエリを記述し、実行
SQLの知識があれば、数時間で導入から分析開始まで進められます。
(出典: DSK「初心者でもわかるBigQuery入門|導入方法や使い方を徹底解説!」、2024年)
6. まとめ:BigQueryでデータ分析基盤を構築する
BigQueryは、サーバーレスで運用負荷が低く、ペタバイト級のデータを超高速で分析できるクラウドデータウェアハウスです。無料枠があるため、まずは小規模に試してから本格導入を検討できます。
次のアクション:
- Google Cloudの無料枠でBigQueryを試してみる
- 自社のデータ分析ニーズを整理する(データ量、クエリ頻度、予算)
- RedshiftやSnowflakeとも比較し、クラウド環境・運用負荷・コストを検討する
- 公式ドキュメントで最新の料金体系と機能を確認する
BigQueryを活用することで、データドリブンな意思決定が可能になり、B2B SaaS企業の成長を加速できます。
※この記事は2024-2025年時点の情報です。料金や機能は変更される可能性があるため、導入時は公式サイトで最新情報をご確認ください。
