ECサイトのマーケティングオートメーション活用|自動化施策と導入のポイント

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/25

ECサイトの売上を伸ばしたいけれど、人手もリソースも足りない...

ECサイトの運営担当者の多くが、「もっと売上を伸ばしたい」「カート放棄をなんとかしたい」「リピート購入を増やしたい」と感じながらも、日々の業務に追われて手が回らないという課題を抱えています。そんな中で注目されているのが、マーケティングオートメーション(MA)による自動化施策です。

この記事では、ECサイトにおけるMAの役割から、具体的な自動化シナリオ、ツール選定のポイント、導入・運用のコツまでを詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • ECサイトの平均カゴ落ち率は70.19%。自動化で機会損失を取り戻せる可能性がある
  • 主要な自動化シナリオは「カゴ落ちリマインド」「レコメンド」「ステップメール」「購入後フォロー」
  • MAツールの導入効果は売上の数%〜10%程度が現実的な目安
  • 月商数千万円規模が導入の目安。小規模ECはメール配信ツールから始めるのも選択肢
  • ECカートシステムとの連携が成功の鍵

1. ECサイトにマーケティングオートメーションが必要な理由

(1) 新規顧客獲得コストの高騰と既存顧客育成の重要性

EC事業者を取り巻く環境は年々厳しくなっています。Web広告費の高騰により、新規顧客を獲得するコストは上昇傾向にあります。また、人口減少により市場全体のパイが縮小する中で、新規顧客獲得だけで売上を伸ばし続けることが困難になっています。

こうした背景から、既存顧客との関係を深め、リピート購入やLTV(顧客生涯価値)を高める施策の重要性が増しています。マーケティングオートメーションは、顧客の行動に応じた適切なタイミングでのコミュニケーションを自動化することで、この課題に対応する手段の一つです。

(2) カゴ落ち率70.19%の現実|自動化で取り戻す機会損失

ECサイトにおける大きな課題の一つが「カゴ落ち(カート放棄)」です。

カゴ落ちに関するデータ(2025年時点):

  • 世界平均のカゴ落ち率:70.19%
  • 日本国内のカゴ落ち率:68.2%
  • スマートフォン利用時はさらに高い傾向(最大90%近くというデータも)

つまり、カートに商品を入れた顧客のうち、約7割が購入を完了せずに離脱しているのです。仮に月間1,000万円分の商品がカートに入れられているサイトであれば、約700万円分が購入に至らないまま放置されていることになります。

カゴ落ち対策として、放棄から一定時間後に「お買い忘れはありませんか?」というリマインドメールを自動送信する施策は、定番かつ有力な手法です。MAツールを使えば、こうしたリマインドを手動で行う必要がなくなります。

2. ECにおけるMAの役割|顧客獲得とCRM

(1) MAツールとメール配信ツールの違い

MAツールを検討する際に、「メール配信ツールと何が違うの?」という疑問を持つ方は少なくありません。

メール配信ツール:

  • 一斉配信が中心
  • セグメント分けして配信は可能だが、基本は手動で設定
  • 配信時間を指定してまとめて送信

MAツール:

  • 顧客の行動に応じて自動配信
  • シナリオ機能で「◯◯したら△△を送る」を自動化
  • 複数チャネル(メール、LINE、SMSなど)を連携
  • 顧客ごとにパーソナライズした内容を配信

選び方のポイント: 「とりあえずメルマガを送りたい」ならメール配信ツール、「顧客の行動に応じた自動化シナリオを組みたい」ならMAツールが適しています。

(2) One to Oneマーケティングの実現

MAツールを活用することで、顧客一人ひとりに合わせた「One to Oneマーケティング」が実現できます。

One to Oneマーケティングの具体例:

  • 閲覧した商品に基づいたレコメンドメール
  • 購入履歴に基づいた関連商品の提案
  • 誕生月に合わせたクーポン配信
  • 購入頻度に応じたリピート促進メール

従来、こうした個別対応は人手で行うには限界がありました。MAツールを使えば、顧客データと行動履歴をもとに自動でパーソナライズされたコミュニケーションが可能になります。

3. ECサイトの主要な自動化シナリオ|カート放棄からリピート促進まで

(1) カゴ落ちリマインドメール|放棄から一定時間後に自動送信

カゴ落ち対策の定番施策です。

シナリオ設計例:

  • カート放棄から30分後:「お買い忘れはありませんか?」
  • カート放棄から24時間後:「カートの商品はまだ残っています」
  • カート放棄から72時間後:「在庫が残りわずかです」(※実際に在庫が少ない場合のみ)

実装のポイント:

  • 商品画像とリンクを含めてワンクリックでカートに戻れるようにする
  • 送信タイミングは複数回に分けてテストし、最適化する
  • 購入完了した顧客には送らないよう除外条件を設定

(2) レコメンドメール|閲覧履歴に基づく商品提案

顧客の閲覧履歴や購入履歴をもとに、おすすめ商品を提案するメールです。

シナリオ設計例:

  • 商品ページを閲覧したが購入しなかった場合:「こちらの商品もおすすめです」
  • 特定カテゴリを複数回閲覧した場合:「人気商品をピックアップ」
  • 購入から一定期間後:「前回ご購入いただいた商品と相性の良い商品」

実装のポイント:

  • ECカートシステムとの連携が必須(閲覧履歴データの取得)
  • 商品データベースとの連携でリアルタイムな在庫・価格を表示
  • パーソナライズ精度を高めるために継続的なチューニングが必要

(3) ステップメール|会員登録後の段階的フォロー

会員登録や初回購入後に、段階的にメールを送るシナリオです。

シナリオ設計例(会員登録後):

  • 登録直後:ウェルカムメール(初回購入クーポン)
  • 3日後:サイトの使い方・おすすめカテゴリ紹介
  • 7日後:人気商品ランキング紹介
  • 14日後:まだ購入されていない場合は限定オファー

実装のポイント:

  • 途中で購入した場合は次のシナリオに移行させる
  • メールの開封状況に応じて内容を変える分岐も有効
  • 送りすぎに注意(週1-2通程度が目安)

(4) 購入後フォロー|レビュー依頼・リピート促進

購入後のフォローでリピートにつなげるシナリオです。

シナリオ設計例:

  • 購入直後:サンクスメール(配送状況確認リンク)
  • 商品到着後(推定日):レビュー投稿依頼
  • 購入から30日後:リピート購入のおすすめ(消耗品の場合)
  • 購入から60日後:関連商品の提案

実装のポイント:

  • 商品カテゴリによってリピート期間を調整する
  • レビュー投稿のインセンティブ(ポイント付与など)を検討
  • 複数商品を購入した場合は商品ごとにフォローを設計

(5) マルチチャネル活用|メール・LINE・SMSの使い分け

メールだけでなく、LINEやSMSなど複数のチャネルを活用することで、到達率とエンゲージメントを高められます。

チャネルごとの特徴:

チャネル 開封率 即時性 向いている用途
メール 詳細な情報提供、レコメンド
LINE 短いお知らせ、クーポン配布
SMS 緊急性の高い通知、本人確認

活用のポイント:

  • LINEは開封率が非常に高く、カゴ落ちリマインドやセール告知に効果的
  • 顧客の希望するチャネルを選べるようにする
  • チャネルをまたいだシナリオ設計(メール開封しなければLINEで再送など)も有効

4. EC向けMAツールの選び方と比較

(1) ECカートシステムとの連携性

EC向けMAツールを選ぶ際に最も重要なのは、自社のECカートシステムとの連携性です。

連携が必要な情報:

  • 顧客情報(会員データ)
  • 閲覧履歴(どの商品を見たか)
  • カート情報(カートに入れた商品)
  • 購入履歴(何を買ったか、いつ買ったか)

確認すべきポイント:

  • 使用しているECカートシステムとの標準連携があるか
  • API連携が必要な場合、開発工数はどの程度か
  • リアルタイム連携か、バッチ連携か

連携がスムーズでないと、カゴ落ちリマインドやレコメンドメールの精度が下がり、効果が限定的になります。

(2) 月商規模別の選定基準|数千万円が導入の目安

MAツールの導入効果は、ECサイトの規模によって大きく変わります。

月商規模別の目安:

月商規模 推奨アプローチ
数百万円以下 メール配信ツールで基本的な自動化から
数千万円〜1億円 EC向けMAツール導入を検討
1億円以上 高機能MAツールでフル活用

判断のポイント:

  • MAツールの月額費用に対して、期待できる効果が見合うか
  • 現状のメール配信でどの程度の成果が出ているか
  • 運用体制(MAを運用できる人材がいるか)

月商が数千万円規模に達していない場合、MAツールの費用対効果が限定的になる可能性があります。その場合は、まずメール配信ツールで基本的なシナリオ(カゴ落ちメール、ステップメールなど)を構築し、規模拡大後にMAツールへ移行するのも現実的な選択肢です。

(3) 主要EC向けMAツールの特徴比較

EC向けに対応したMAツールは複数あります。以下は主な選定ポイントです。(特定ツールの推奨ではなく、比較軸としてご参考ください)

選定時の比較軸:

  • ECカートシステムとの連携実績
  • 料金体系(従量課金か月額固定か)
  • シナリオ設計の柔軟性
  • レコメンドエンジンの精度
  • LINE連携の有無
  • サポート体制(日本語対応、導入支援)

導入検討時のアクション:

  • 複数のツールベンダーから提案を受ける
  • 自社のECカートシステムとの連携実績を確認する
  • 無料トライアルやデモで操作感を確認する
  • 導入事例(同業種・同規模)を参考にする

※料金・機能は変更される可能性があります。最新情報は各ベンダーの公式サイトをご確認ください。

5. MA導入・運用のポイント|データ連携と効果測定

(1) ECカートとMAツールのデータ連携設計

MA導入の成否は、データ連携の精度にかかっていると言っても過言ではありません。

連携設計のポイント:

連携するデータの定義:

  • どのデータを連携するか(顧客、商品、行動、購入)
  • 連携頻度(リアルタイムか、バッチか)
  • データ形式と項目の整備

除外条件の設定:

  • 購入済み顧客へのカゴ落ちメール除外
  • 配信停止希望者への配信除外
  • テストアカウントの除外

初期設計の重要性: 導入後にデータ連携を修正するのは手間がかかります。導入前に十分な設計を行い、テスト環境で動作確認してから本番運用を開始しましょう。

(2) 効果測定とKPI設定|売上の数%〜10%が現実的

MAツールの効果を測定するためのKPI設定が重要です。

測定すべきKPI:

  • メール開封率
  • クリック率(CTR)
  • コンバージョン率(CVR)
  • リピート率
  • MA経由の売上額・売上比率

現実的な効果の目安: MAツールを運用して期待できる効果は、売上の数%〜10%程度と言われています。「MA導入で売上が倍増」といった過度な期待は避け、現実的な目標を設定しましょう。

効果測定のポイント:

  • 導入前後で比較できるベースラインを設定しておく
  • 施策ごとにA/Bテストを行い、最適化を継続する
  • 月次でKPIをレビューし、シナリオを改善する

(3) 導入事例|GRL(CVR 7倍改善)、日本生協連の成果

MAツールの導入事例をいくつか紹介します。

GRL(グレイル)- アパレルEC: MAツールによる施策の最適化で、CVR(コンバージョン率)が最大7倍改善した事例が報告されています。カゴ落ちメールやレコメンドメールの精度向上により、購入率を大幅に改善しました。

日本生協連「くらしと生協」: 2,830万会員に対してOne to Oneコミュニケーションを実現。大規模な会員基盤に対して、個別最適化されたメール配信を自動化しています。

注意点: これらの成果は各企業の規模、業種、運用体制により異なります。あくまで参考情報として捉え、自社での効果を過度に期待しないことが重要です。

6. まとめ:MAでECサイトの売上を最大化する

マーケティングオートメーションは、ECサイトの売上向上に貢献する有効なツールの一つです。ただし、導入すれば自動的に売上が上がる「魔法のツール」ではありません。

MA導入を検討する際のポイント:

導入が適している場合:

  • カゴ落ち率が高く、機会損失を感じている
  • リピート購入を増やしたい
  • 顧客の行動に応じたパーソナライズを実現したい
  • 月商数千万円以上の規模がある

導入前に確認すべきこと:

  • ECカートシステムとの連携可否
  • 運用体制(MAを担当できる人材がいるか)
  • 期待する効果と費用対効果の試算
  • 現状のメール配信での成果

次のアクション:

  • 自社のカゴ落ち率を把握する
  • 現在のメール配信状況を棚卸しする
  • ECカートシステムの連携オプションを確認する
  • 複数のMAツールベンダーから情報収集する

自社の規模と課題に合わせて、適切なツールと運用体制を構築し、ECサイトの売上最大化を目指しましょう。

よくある質問:

Q: BtoB向けMAとEC向けMAの違いは? A: BtoB向けMAはリード育成・スコアリングが中心で、商談化を目的としています。EC向けMAはカート放棄対策、レコメンド、リピート促進など購買行動に直結する自動化が中心です。顧客の購買サイクルと自動化シナリオが大きく異なります。

Q: MAツール導入に必要なデータ連携は? A: ECカートシステムとの連携が必須です。顧客の閲覧履歴、カート情報、購入履歴をMAツールに連携することで、行動に応じた自動配信が可能になります。API連携またはツール標準機能で実現します。連携の精度がMAの効果を左右します。

Q: MAの効果測定はどうすればよい? A: メール開封率、クリック率、CVR、リピート率をKPIに設定します。MA導入で売上の数%〜10%程度の効果が現実的な目安です。施策ごとにA/Bテストを行い、継続的に最適化していくことが重要です。

Q: 小規模ECでもMAの費用対効果は出る? A: 月商数千万円規模が導入の目安です。それ以下の規模では、ツールコストに対して効果が限定的になる可能性があります。まずはメール配信ツールで基本的な自動化(カゴ落ちメール、ステップメールなど)から始め、規模拡大後にMA導入を検討するのが現実的です。

よくある質問

Q1BtoB向けMAとEC向けMAの違いは?

A1BtoB向けMAはリード育成・スコアリングが中心で商談化を目的とします。EC向けMAはカート放棄対策、レコメンド、リピート促進など購買行動に直結する自動化が中心。顧客の購買サイクルと自動化シナリオが大きく異なります。

Q2MAツール導入に必要なデータ連携は?

A2ECカートシステムとの連携が必須です。顧客の閲覧履歴、カート情報、購入履歴をMAツールに連携することで、行動に応じた自動配信が可能になります。連携の精度がMAの効果を左右します。

Q3MAの効果測定はどうすればよい?

A3メール開封率、クリック率、CVR、リピート率をKPIに設定します。MA導入で売上の数%〜10%程度の効果が現実的な目安。施策ごとにA/Bテストを行い、継続的に最適化していくことが重要です。

Q4小規模ECでもMAの費用対効果は出る?

A4月商数千万円規模が導入の目安です。それ以下の規模ではツールコストに対して効果が限定的になる可能性があります。まずはメール配信ツールで基本的な自動化から始め、規模拡大後にMA導入を検討するのが現実的です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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